「ふ、ふじゅんいせい、こーゆー、ですよ……………」
「………イヤ、だったの?」

そ…そんなに悲しそうな顔…しなくてもいいじゃないですかぁ……。
佐藤君の腕の中で、さくらは、内心、独りごちる。




最近、佐藤君は、近くのスタジオを借りて作曲や既存曲のミキシングなどに没頭していた。
もともとピアノやドラムを習っていて、音楽的な素養はひととおり身に付けているのだ。
こういったことに興味を持つのも必然だったのかもしれない。
現に、佐藤君がミキシングして作ったテープが、音楽が苦手な同級生の助けになったことも数知れない。

さくらは、佐藤君がスタジオに通うのにいつも付いてきていた。
……というのも、スタジオの賃借契約自体は佐藤君のお父さんがしていたものの、
当日の受付がおぼつかない佐藤君を危うんだ両親がさくらを頼りにした、ということがひとつ。
もうひとつは、他ならぬ佐藤君が

「小田ちゃんがいいんだもん!」

と、さくらに簡単なヴォーカルやコーラスを頼むから、という理由だった。


ふたりとも、飛んで帰って仕度して、スタジオに着くのは4時半頃。
中学生のふたりだから、スタジオを借りられるのは6時まで。
だから、佐藤君はいつも、到着するや否やもどかしげにパソコンを起動し、ドラムやキーボードを繋いで作業を始めるのが常だった。

……………が。

今日の佐藤君は、なぜか様子が違う。
スタジオにはいつものように飛び込んだものの、持参したノートパソコンを脇へ放り、ドスンとソファーに腰を下ろす。

「どうしたんですか?」
「何が?」
「何が、って……」

ある意味正直者(?)の佐藤君だ。ご機嫌斜めなのは、傍から見ていても判る。

「気分、乗らないんですか?」
「そんなこと、ないけどさぁ……」

立ったままのさくらを上目遣いで見ながら、ぷくっと頬を膨らませる。
いつもなら、そんな子どもっぽさに吹き出してしまうさくらだが、今日はただただ困惑して佐藤君を見詰めるばかりだ。

「今日、さ………」

珍しく佐藤君が言い澱む。こういうときは、言葉をじっくりと捜しているのだと、さくらは知っている。
だから、佐藤君が言葉を発するのをじっと待つ。

「隣のクラスの、男子がさ………」
「はい?」

さくらは、それを聞いてキョトンとする。

「ほら、ほーかご………」
「ああ!」

ようやく、言わんとしていることが分かった。
が、佐藤君はそんなさくらの様子を見て、ますます頬を膨らませる。

「アイツきて、小田ちゃん、明日ダメって言ってた……」
「あの人、風紀委員会の学年委員長ですよ。で、明日、登校時の服装チェックの当番を決める話し合いがあるって……」
「でもでも!」

佐藤君はますます頬を膨らませる。

「まさの、今のデモ、こっからがかんじんなのに……」
「明日だけ、ですってば」

さくらは、佐藤君の隣にそっと腰を下ろし、よしよしとなだめるように頭を撫でた。
佐藤君は、気持ちよさそうに目を閉じ、掌の感触をうっとりした顔で味わっている。

ところが。

いつもならこれでご機嫌を直してニコニコと作業に取り掛かる佐藤君、の筈だった。
ところが、今回はガバッと体を起こし、さくらに向き直り、ひた、と、強い視線を当てる。

「佐藤さん?」
「……………」
「えー、と……」

佐藤君はいつまでも口を開かない。
気まずくなったさくらが何か言おうとするが、言葉が浮かばない。
佐藤君は、そのまま、ずいっと顔を寄せてきた。
反射的にそれから逃げるようにさくらは体を反らす。
佐藤君は益々顔を、躰を、近付けてくる。
さくらも、後ろに手を付き、ぐうっと仰け反る。
ポフッ、と、背中で音がした。
気が付いたら、さくらはソファーに背を預け、佐藤君はさくらに覆い被さっていた。

「な、何、を………」
「どっか行っちゃいそうだから」
「だ、誰、が………?」
「さくらちゃん」
「い、行かないです、よぉ………」
「明日、行くでしょ?まさ、放ったらかして」
「だから、それは………」

いつの間にか、肩を押さえていた手が外れていた。
何か言葉を発しようと開けた口に、佐藤君の唇が重なった。
するりと、舌が滑り込んできて、さくらの舌に絡もうとする。
意図せず、さくらの舌は逃げるように動く。
佐藤君は、許さない。
さくらの舌を追いかけ、強引に絡ませる。

「うっ……ふぅっ……………」

視界は、目を閉じた佐藤君の顔で塞がれている。
ジュルジュルと、唾液が吸われているのをぼんやりと感じる。
目では見えているのに、耳で音は聞こえているのに、真っ白な世界にぼんやりと漂っているような気がする。
顔が、離れた。
つぅっと、唾液がふたりの唇を繋ぎ、プツッと切れてさくらの唇に吸い込まれる。

「さくらちゃん………」

佐藤君は、唇で首筋をまさぐる。
胸に、そっと手を置く。そのままやわやわと指を沈める。
さくらは、スッと目を閉じた。
瞼の裏が、熱い。
熱さが、目尻からこぼれた。
それに驚いた佐藤君が顔を上げる。

「さくらちゃん?」
「………」
「やっぱり、イヤ、だった?」

眉を下げて、泣きそうな顔をして、佐藤君が言う。

「ごめんね。もう、しないから………」
「……違う」
「………え?」
「此処じゃ、イヤ」
「あ……………」

ようやく思い出した。
ここは、貸しスタジオだったっけ。

「こんなところじゃ、ヤだぁ………」

体を起こし、さくらを抱き起こす。そのまま、ギュッと抱き締める。

「ごめんね………」

さくらは、ふるふるとかぶりを振る。

「カラダ、アツい」
「え?」
「治まら、ないよぉ………」
「さくらちゃん?」
「ウチ、近いから、このまま、来て………」

ごくん。
佐藤君の喉が、大きな音を立てる。


「あん……はぁ……はっ……んあぁぁ……はぁぁぁん……………」

佐藤君の指が、さくらの肌を滑る。
さくらは、それに合わせるかのように、細く、高く、啼く。
まるで歌うように。
佐藤君が、胸に顔を埋めて、屹立した頂を舌で転がし、甘噛みし、ちゅうちゅうと吸い上げる。
幾度も吸い上げられた、僅かに縮れていた筈の桜色のそれは、すっかり熟れて、サクランボのように赤くなっている。

部屋に入り、ドアを閉めると、さくらは、むしゃぶりつくように佐藤君に唇を押し付けてきた。
佐藤君もそれに応えて、ギュッと抱き締めて舌で唇を割り、さくらの口中に滑り込ませる。
無我夢中で互いを味わい、ちょっと苦しくなって唇を離した。
潤んだ大きな瞳で、上目遣いに見つめられると、頭が真っ白になってきた。
そっと、さくらの制服のネクタイに手をかける。

「取るね……………」

シュルッと微かな音を立て、パサッとネクタイが床に落ちる。
それが合図であったかのように、もどかしげに互いが互いの服に手をかける。
気が付くと、ふたりは一糸纏わぬ生まれたままの姿で、抱き合って互いの唇をむさぼりあっていた。

どちらから誘ったのだろう?
次に気が付いたときには、ベッドの上で見詰めあっていた。

「さくらちゃん、きれい………」

うっとりと、佐藤君が呟く。
恥ずかしそうに頬を染め、目を閉じてさくらが僅かに顔を逸らす。

「……こっち、見て」

佐藤君の声に、閉じていた目を開け、佐藤君を、もう一度、見上げる。
滑らかな大理石のような肌。真っ直ぐな瞳。ほんのり顔を赤くした、愛しい愛しいひと。
もう少年ではなく、まだ青年には早すぎる、危うい年頃の、ひと。

「大好きだよ……………」

ちゅっと、軽く唇を合わせた。
そのまま、唇は首筋を這い、鎖骨の上を撫でる。
ピクン、と、さくらの躰が反応する。
掌が、さくらの膨らみを包む。
そのまま指を沈ませて柔らかさを味わい、指の股に頂を挟んでコロコロと転がす。

「ふぁ……」

うっとりとしたような声が、初めて上がった。

「イイ、の?」
「うん………」
「もっとして、良い?」

ますます赤くなった顔が、こくんと、縦に動く。

掌で膨らみを包み直し、そっと揉みながら掌の腹で頂を転がす。
もう片方の膨らみに唇を寄せ、ちゅっと音を立てて吸う。

「あ……」

ちょっとだけ掠れたような啼き声が上がる。
頂を唇で挟み込み、舌でちろちろと先端を舐める。口を開けて頂を頬張り、ちゅうちゅうと吸い上げる。
小さく可愛く縮れていた乳首が、口の中でプックリと膨れて、まん丸くなってきた。

「んあぁぁぁ……はぁぁん……………」

喉を張り、細く高い啼き声が絶え間なく上がる。
まるで、春先の鶯が鳴き始めるような声に、佐藤君も勃然となる。

肩を、腕を撫で、脇腹に指を滑らせた。
ピクッ、と、さくらの躰が軽く跳ねる。
びろうどのように滑らかな肌は、何処を触っても気持ち良い。
手は、知らぬ間に、さくらの腹を、尻を撫で、太股を擦っていた。
気が付くと、さくらは、もじもじと、足を軽く擦り合わせるように動かしている。

「ねぇ、さくらちゃん」
「……………?」

熱に浮かされたように見上げる潤んだ瞳。

「ココも、触りたい」

キュッと閉じられていた太股の力が緩む。
佐藤君は、それに合わせて、片手を股に滑り込ませた。

初めて触れた女のひとのそれは、とても潤っていた。
真ん中の筋に沿って指の腹を上下させると、プチュッ、と音を立てて花弁が開いた。
そのまま指の腹で撫で上げていると、コロッとしたものを指先に感じた。

「ぁあんっ!」
「キモチ、イイ?」

ブンブンと、大きく頷く。

「じゃあ……」

両腿に手を添え、ぐっと割り開く。
上の方に、たった今感触を味わった蕾がフルフルと揺れていた。
ソコに、唇を寄せていく。

「ダ、ダメッ!」
「……どうして?」
「き、汚い、から……」
「さくらちゃんに汚いトコなんて、無いよ」

そのまま蕾を唇で包む。ちゅっと吸い、ぺろっと舐める。

「んあぁ……あんっ!」

強烈な快感に、思わず体を反らす。……と、僅かに浮いた腰に枕があてがわれる。

「うれしい……キモチヨクなってくれて……」

今度は、本格的に股間に顔を埋めた。
余程キレイにしているのか、ほんの僅かに香る蜜以外に、何の匂いも無い。
トロトロと蜜が湧き出る泉に唇を寄せ、ジュルジュルと啜る。
ちょっとだけしょっぱい蜜は、今まで食べたどんなものよりも、美味しい。
指を入れてぐるぐるとナカをほぐす。少しでも、イタくないように。
さくらの躰に力が入る。
足首が、足の指が、何かを堪えるように、ピンと張る。

「くるしい、の……?」
「違うの。佐藤さんが、キモチヨクって……」
「佐藤さんじゃ、ない」
「……え?」
「なまえで、よんで」
「ま、優樹、さん?」
「さんも、いらない」
「じゃ…じゃあ……まさ、き?」
「そう」
「まさきに、触られたり、キスされたトコ、みんな、みんな、キモチ、イイ……………」
「でも……くるしそうな顔、してる………」

さくらは佐藤君の背に腕を回し、キュッと抱き付いた。
佐藤君に触れた肌から、快感がビクビクと体中を駆け巡る。

「キモチ、よすぎる、だけ………」
「さくらちゃん………」
「まさきも、ちゃん、やめて」
「……じゃあ、さくら?」
「……うん」
「愛してるよ。世界中のだれよりも、大好きだよ、さくら………」

どんなことでも練習はしておくもんだな、と、佐藤君は後で思ったそうだ。
まさか、生田君や工藤君と戯れに“れんしゅー”したゴムの着け方が役に立つなんて。
先を摘んでスルッと滑らせ、引っ張り上げて皮を納め、ストンと根元まで下ろしてぴったりと密着させる。
これだけのことを、もたつくことなく終え、さくらに覆い被さった。

「入れる、ね……」

緊張した面持ちで、僅かに頷くのを見て、握り締めたモノをさくらにあてがう。
懸命にほぐしたナカは、先っぽをチュルンと飲み込んでくれた。
そのままゆっくり腰を進めていく。
初めて“オトコ”を受け入れたナカはやっぱりキツい。
ナカのザラザラが佐藤君を刺激する。まだ出るには早いのだろうが、強烈な快感が脳髄を痺れさせる。
まだ全部入ってはいないが、ピタリと、ナニかが佐藤君の行く手を阻む。
これが“しょじょまく”というものなんだろうか?

「はあっ、はあっ、はあっ………」

さくらは懸命に息を吐いて力みを取ろうとするが、却って力が入ってしまっているようだ。
佐藤君は、躰を倒してちゅっと軽く口づける。
固く閉じていた瞼をうっすらと開き、涙目で佐藤君を見上げる。
佐藤君は、不意に視線を窓の方に流した。
怪訝そうに、さくらがそちらに目をやる。

今だ。

さくらをしっかりと抱き締め、グッと腰を入れる。
ぷつん、と、さくらの躰の中で音が響く。

「きゃああああぁぁぁっ!」

堪えに堪えていたが、それを上回る激痛に、さくらは思わず悲鳴を上げる。
そのまま、ふうっと意識を手放した。


ほんの僅かなその瞬間の後、佐藤君を見上げた。
痛みはあるが、最初のような激痛は治まっている。
佐藤君は、目にいっぱいの涙を堪えていた。
さくらの頭を撫でながら、譫言のように繰り返す。

「さくら……ごめん、ね」
「まさき?」
「イタかったよね……ツラかったよね………」

胸がじんわりとアツくなった。
イタかったけど、それでも、佐藤君が、さくらが一番ツラくないようにしてくれたのは解っているから。
それなのに、このひとは、今もまだ躰を労わってくれて……………。

「大丈夫。……ね、それよりも………」
「なに?」
「動いて、キモチヨク、して………」
「でもでもでも!」
「このまま、中途半端な方が、ツラい、から………」

そう言って、佐藤君にしがみついた。触れた肌から電流の様に快感が広がる。
頬にキスをして、佐藤君の目を見詰める。

「ね、おねがい………」

佐藤君はキュッと唇を引き結ぶ。

始めは、ゆっくりとした抜き差しだった。
モノを半分くらい引き抜き、そっとまたさくらのナカに収める。
微かに、パチン、パチンと、肌と肌がぶつかり合う音がする。
ギリギリで収まっている佐藤君のモノが、さくらのナカのあちこちを刺激する。
啼きすぎて、少し掠れた高い声が、絶えずさくらの喉から湧き出る。
ナカの蜜は、動く度にどんどん増えていく。
だから、抜き差しも、滑るように早くなっていく。
さくらの啼き声も、どんどん高くなっていく。
肌の音も、バシン、バシンと、どんどん大きくなっていく。

「さくらっ!」
「まさきぃっ!」

さくらが背を反らして体を震わせる。
ナカでモノをギュウっと締め付けられ、佐藤君は真っ白な欲望を吐き出した。


佐藤君は、足を投げ出してベッドに座り込み、俯いてぽたぽたと涙をこぼしていた。
胸には、物憂げに、だけど幸福そうに微笑んでいる、さくらをしっかりと抱いて。

佐藤君が自分のモノをさくらから抜くときに、さくらの内股に触れて、ひと筋、真っ赤な跡が流れた。
それを見て、ずっと我慢していた涙が溢れてきた。
急いでゴムを始末して、ティッシュを引き寄せて自分とさくらの躰をを拭いた。
真っ赤に染まったティッシュを見て、涙が止まらなくなった。

気怠そうに、さくらは体を起こし、コテンと佐藤君にもたれた。

「ホントに……ごめんね」
「何が、ですか?」
「ツラかったでしょ?イヤだったでしょ?」

さくらは、ゆっくりとかぶりを振る。

「そんなこと、無いですけどね。でもこれ、風紀委員にあるまじき………」

佐藤君は、怪訝な顔をしてさくらを見る。
さくらは、顔を真っ赤にしながら、言う。

「ふ、ふじゅんいせい、こーゆー、ですよ……………」
「………イヤ、だったの?やっぱり?」

そ…そんなに悲しそうな顔…しなくてもいいじゃないですかぁ……。
佐藤君の腕の中で、さくらは、内心、独りごちる。そして、微笑んで答える。

「イヤですよ。まさき以外のひとに、こんなことされるのは」
「え?」
「初めてのひとがまさきで、こんなに、幸せなんですからね」

優しい口調と、優しい微笑みに、ようやく佐藤君の顔がほころぶ。

「じゃ、明日だけ、委員会の話し合いに行きますからね」

すっかり忘れていたそのことを聞いた瞬間、佐藤君はぷうっと頬を膨らませる。




次の週の火曜日から、さくらは朝早く服装チェックの為に校門に立っていた。
……なぜか隣に佐藤君を置いて。

翌日の話し合いの後、火曜日は仕事で早く登校しなければならないことを告げた瞬間

「まさも早く行く!」
「……はい?」
「行って、さくらちゃんの隣に居る!」
「……あのですね、風紀委員の仕事ですから」
「お手伝いする!」
「お手伝いって……」

ところが、これが意外に役に立ったのだ。
強面の上級生に注意して凄まれたとき、後ろから佐藤君がじろりと睨みつけると、その迫力に相手が驚く。
そして、不承不承ながら、ネクタイを直し、Yシャツを制服のズボンに収める。
その所為か、先生達からも、佐藤君がさくらと一緒に居ることを黙認されて、無事に係の期間を終えた。

朝、校門の前で、乱暴に結ばれた佐藤君のネクタイを、さくらがキュッと結び直す。
それが、一日の始まりのセレモニー。
そして、夕方、佐藤君が、さくらの部屋で、さくらのネクタイに手を掛ける。
それが、ふたりが愛し合う為のセレモニー……………。


とは言っても、ふたりの放課後は、相変わらずスタジオ通いがメインなのは言うまでもない。
そして、月に二度だけ、アリバイ作りのパソコンを持ったまま、さくらの部屋に手を繋いで向かうのだ。





儀式(セレモニー)       了
 

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