ここは朝陽学園1階の保健室。


キーン コーン カーン コーン♪


今日は怪我人や具合悪い子がいなかったから時間が経つのが長く感じた午前中。
まぁ養護教諭である聖の出番がないのは生徒の健康を思えば何よりなんだけどね。
さて、えりぽんが作ってくれたお弁当食べようっと♪


コンコン


「しつれいしま〜す!」

今日もやってきた聞き馴染みのある甲高い声。
聖が「どうぞー」と言う前にドアが開いて「ふくぬらさぁ〜ん!」と叫んで、ためらいもなく胸に飛び込んでくる。

「優樹ちゃん、譜久村は旧姓だからw『ふく"む"ら』だし。」

聖の言うことなんて気にも留めないで、優樹ちゃんは聖の胸に顔を埋めてスリスリしている。
すっかり中等部の制服が似合うようになっても甘え方は幼稚園の頃と同じなんだよなぁ。
 
「優樹ちゃんお昼は?」
「お昼?お昼は今です。」
「いやお昼ご飯は食べたかな?って。」
「あー。お弁当食べたょ?」
「早いのねー。」
「さっき授業中に食べちゃったw」
「あー早弁いけないんだー。担任の先生に言っちゃうぞ?」
「担任なんかこわくないもーん♪」
「じゃあさゆみさんに言っちゃおうかな?w」
「ハハにはナイショにしててぇ〜!チチにもぉ〜!」

両手を合わせてスリスリして頼み込む優樹ちゃんが可愛い。

「ナイショにしてあげるから、午後からは真面目に授業受けるんだよ?」
「が、がんばるぅ…」
「うん、がんばってね。」

頭を撫でてヨシヨシしてあげたら「イヒヒヒw」って笑った。

「ふくぬ…、じゃない聖せんせー、ベッド借りていい?」
「今日は誰もいないからいいよ。」
「わぁ〜い!」

具合悪い生徒がいない日に限ってだけど毎日恒例行事のようにベッドを借りに来る優樹ちゃん。
ベッドの周りをカーテンでしっかり覆ってから顔と手だけ出して「ばぁ〜い」と手を振ってくる。

「相変わらずねw …さて、聖はおべんとおべんと♪」


コンコン


またドアがノックされる。優樹ちゃんの後のノックも毎日恒例なんだけどね…w

「どうぞー。」
「オッスかーちゃん。」

やっぱり息子の遥。いつまでもお子様だと思ってたのに、すっかりえりぽんに似て男前になっちゃって。

「学校では『かーちゃん』じゃないでしょ?」
「はいはい聖先生。」
「あーほら、ネクタイ緩んでるし、Yシャツの裾も出てるし、第一ボタンも閉めないとダメでしょ?」
「自分でやるって…。」

昔は一人で靴下も履けなかったのに、母親にあれこれされるのが恥ずかしい年頃なんだなぁ。

「遥お昼は?」
「もう食べた。」
「まさか授業中じゃないよね?」
「なんで分かったの?」
「隣の優樹ちゃんと一緒にでしょ?」
「あーまーちゃん言っちゃったのかよー。」
「明日からは休み時間に食べて、授業はちゃんと受けなさい?」
「は〜い…。」

口を尖らせながら丸椅子に座ってグルグル回転する遥。

「そうそう、優樹ちゃんもう来てるよ?」
「んだよ早く言ってよー。」

そう言いながら優樹ちゃんのいるベッドのカーテンを開けて中に入ると早速イチャイチャ声が聞こえてくる。
全く誰に似たんだか…って、聖たちと田中さん達よねw


コンコン


「また?…どーぞー。」
「失礼します!遥先輩見ませんでしたか?」

ドアが開くとそこには、顔は見た事があるけど名前までは知らない中等部の女の子達がいっぱい。
全員は見えないけど15〜20人ぐらい?

「今日は見てないな。屋上かもね?」
「みんな屋上だって!じゃあ失礼しまーす!」

キャーキャー言いながら走って屋上へ向かう女の子の群れ…遥のファンクラブでもあるのかしら。
聖以外誰も近寄らなかったえりぽんと違うのはこういうところ。

「さっ、やっとお弁当食べれる〜。」

白地にピンクと黄緑色のチェック柄が可愛いお弁当袋出して、お箸入れも出して、お茶も用意して、準備万端!


コンコン


…もういい加減に…と思ったけど、その音はドアからではなく、聖の後ろの窓からで。

「へっ?」

窓の外にいたのは世界で一番愛しいあの人。
慌ててカギを開けに向かう聖。

「ちょっ、どうしたの?」
「にーっw この辺走り込んでたら学校が見えたけん、聖の仕事ぶりを見に来たとー。」
「勝手に入っちゃダメなんだよ?玄関に警備員さんいるのに。」
「警備員なんかが衣梨の動きを追えるわけなかよw…にしても…白衣の聖やばかぁ…」

そんな手握ってウットリした目で見ないでよ…。

「なぁ聖、今休み時間やろ?…ちょっと抜け出さん?」
「えーでもぉ…」
「…いいやろ?」

チュッと軽く唇を重ねられた。すぐに口は離されたけどえりぽんの色っぽい視線は離れることはなくて。
風に運ばれてきた爽やかな汗の匂いが聖を高ぶらせて、下腹部の奥の方がトクトク疼く。
聖は白衣のポケットを探る。

「…聖それは?」
「体育倉庫の鍵…」
「準備万端やんw」
「もぉ…」

えりぽんに窓の外から軽々抱っこされて外に出る。

「はるかー!かーちゃん借りてくから留守番頼むっちゃよー!」
「またかよー!!」

遥のふてくされた声を背中に聞きながら、えりぽんと愛の巣へと向かった。
ハァ…本当ダメな親ね…。







生田家の未来の日常 保健室の聖せんせー編



(80-403)Ifマンションの未来の日常 保健室のまーどぅー編へ つづく...
 

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