お話のまとめ方 Ver 0.90


1.お話を構成するもの
2.お話の構造
3.お話のまとめ方
4.実例




■1.お話を構成するもの
文章がいくつかの文に分けられ、文が文節や単語からつくられるように、
お話も『要素』の集合からつくられている。
この『要素』を的確に理解することが、お話を理解することにつながり、
お話がどんな『要素』からできているかという『構造』を把握するのに役立ちます。
お話の『要素』の代表としては、以下の三つの大きな分類があります。
かなり抽象化した上位概念なので、下位の具体例がどれにあてはまるかは各自で判断してください。

い.情報・事実の提示
ろ.状況の変化・提示もしくは行動
は.感情・葛藤の描写・変化

【い.情報・事実の提示の例】
○昔々あるところにお爺さんとお婆さんがいました
○〈登場人物(任意)〉は〈舞台(異世界・学園・戦場・職場等)〉にいる
○〈舞台〉に関わる歴史・出来事等(昔神と悪魔の戦いがあった〜等)
○〈人物〉のもつ〈アイテム〉は実は〜(事実の発覚)
○〈人物〉は実は〜という設定で……
○〈問題〉に対する〈解決策〉の提示

【ろ.状況の変化・提示もしくは行動の例】
○突然美少女が〈人物〉のもとへやってくる
○〈人物A〉が〈人物B〉に告白する
○〈人物〉の縁者もしくは〈人物〉自身が何らかの危機に陥る
○〈人物〉は状況の変化を起こそうと行動をする
○〈人物A〉は〈人物B〉をかばう行動をする

【は.感情・葛藤の描写・変化】
○提示された情報や状況に対する〈人物〉の感情
○〈人物〉の行動や目的に関する感情
○Hシーンでいえば、純愛・羞恥・苦痛・嫌悪など




■2.お話の構造
例えば『桃太郎』がどんな要素からできているか考えると、

昔あるところにお爺さんとお婆さんがいて(a 事実・状況の提示)、
二人は桃太郎を授かる(b 状況の変化、)、桃太郎は特殊な出生である(c 事実の提示)。
桃太郎は成長し(d 状況の変化)、鬼退治にいき(e 状況の変化)、鬼を退治する(f 状況の変化)。
鬼が退治されたことで、財宝や平和を手に入れる(g 非常に大きな状況の変化)。

お話の終着点として、非常に大きな状況の変化があるのはお約束。
上記のお話は、a〜gの7つの要素に分解でき、それらで構成されてます。
お供の動物に関する要素を省いたりしてますが、それでもお話として機能してるのが分かるでしょうか。

お話をまとめるというのは、もとのお話を要素に分解し、再構成してお話を作り直すことです。
この作業で、冗長な要素や重要でない要素を削ることで、お話はスリムになります。
逆にいえば、お話をまとめたものというのは、必要な要素だけを抽出したものとも言えます。
ですので、的確に要素を理解できれば、必要な要素だけを拾い集めるのが容易になります。
お話を読むにあたって、要素を把握するということがどういうことか理解いただけるでしょうか。


次に『一寸法師』の例を考えてみます。
体の大きさが一寸である一寸法師(事実の提示)は、お姫様の護衛になって(状況の変化)、
鬼が襲ってきて(状況の変化)、鬼を退治する(状況の変化)。
お姫様は鬼を退治した一寸法師に恋をして(感情の描写)、
魔法の品であるうちでの小槌で(事実の提示)一寸法師を大きくする(状況の変化)

ここで、「あれ?」と思った人はセンスがあります。
おかしいところがどこか気付いた人は、もう教える必要がないかもしれません。
ここで、『鬼を退治する』という要素だけに注目してください。そして桃太郎のお話と比較してください。
一寸法師と桃太郎の鬼退治は同じでしょうか? もちろん違いますね。
<一寸法師はその小さな体をいかして鬼を退治した>という要素が抜けているのです。
この要素は、一寸法師のお話を一寸法師のお話たらしめる、重要な要素であるといえます。
こういった重要な要素を落としてしまうのは、お話のまとめ方としては悪いと言えます。
逆に、一寸法師のお話のテーマが<特殊な出生をいかした英雄譚>だと見抜ければ、
そのテーマにそった要素は重要である可能性が高く、要素を拾うのに役に立ちます。




■3.お話のまとめ方
以上のように、お話をまとめるというのは、お話がどんな要素でできているか構造化し、
要素ごとに分解し、必要な要素をとりだして再構成することだと理解いただけたでしょうか。
短いお話であればともかく、長いお話となると、どうやってまとめたらよいか難しいと感じる人もいると思います。

ですが、どんな長いお話も、実は短いシーン(場面)の連なりで、大きなお話をつくっています。
ですから、こういったものを『箱』としてとらえる視点があれば、そう難しくはありません。
プログラムでいうサブルーチンのようなものと考えてもらえれば、理解しやすいかもしれません。

□お話の導入部分
ここでは、登場人物や舞台に関する、『情報の提示』が重要です。
また、この部分の『状況』がお話が進むことでどう『変化』したかが重要であることも、よくあります。

□中盤
『状況の変化』である小イベントが多数あると思いますが、数に騙されず
お話全体で重要なものだけを見抜き、冗長な部分を読み飛ばすのか吉です。

□個別ルート
そのお話がそのお話足るには、何が必要かという視点で把握するのが吉です。

□終盤
真相が明かされて、『事実の提示』が多い場合があります。
『状況の変化』も重要で、「何故そうなったのか」、「誰が何の目的で引き起こしたのか」など、
状況が変化した後と、前に関係に注目すれば、全体の大きな箱が見えやすいと思われます。

□人物の感情描写
これがテーマになってるシーン(場面)がある場合は、見逃さないようにしましょう。
『事実の提示』ばかりに気がいっていると、この要素が抜け落ち淡白になりがちです。




■4.実例
wikiに載っているものや、メジャーなタイトルなどから実例をだしたいと思います。
ここは、わりと独立した扱いでいいかもしれません。今後追加していく可能性もありますので。

いつか、届く、あの空に。
これには、簡易版と詳細版があり比較しやすいので選びました。

まずは、87*氏 のまとめです。
『状況の変化』はあっても、『事実の提示』や『感情の描写』は無く、説明不足で唐突な印象を受けます。


次に、143氏 のまとめを見てみましょう。長いですが頑張ってください。
最初は『情報の提示』が主になっています。小さい『状況の変化』もありますが重要ではなさそうです。
「プロローグ・共通」はともかく、「異ならぬ世の終わりより」は『事実の提示』ばかりで、
お話としては退屈ですし、前の部分との関連は薄いようです。
ここで提示された情報が、これからのお話にどう関わるかはいったん保留して、読み進めましょう。

「ふたみルート 1/3」では、最終的に二人の関係(感情)が変化します。
また二人を取り巻く『状況の変化』もあります。
「真相ネタバレ」は『情報の提示』が主です。ここで「異ならぬ世の終わりより」との関連が回収されてます。
雲戌亥の目的がはっきりし、物語後半の『状況の変化』の理由が説明できるようになります。

終盤やエピローグでは、策がふたみへの愛ゆえに己を犠牲にしたので、
ふたみは愛する人と一緒に過ごせないという、欠落した『状況が提示』されていますが、
ふたみの愛の言葉で欠落は回復し、終着点に落ち着きます。
策は、自分自身に対しての、いわば命をかけた呪いの結果、狼殺しになったと『事実が提示』されており、
命をかけているが故に解けることはない強力な障害であるという『事実の提示』が、言霊の伏線で示されてますが、
この障害に、ふたみの愛が打ち勝ったことが分かります。策もふたみの愛に応えたからこそとの推測も立てられます。
欠落の回復によって調和がとれた状態になり、二人の愛の深さというカタルシスが得られるからこそ、
終着点にふさわしい『箱』が成り立っていると言えるでしょう。


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