多人数で神話を創る試み『ゆらぎの神話』の、徹底した用語解説を主眼に置いて作成します。蒐集に於いて一番えげつないサイトです。

人物
 建築家?神学者?第一次地獄開放の際、紀神の助力を得るために各地に紀神の神殿を建立して回った。

ヘルベルトの『地獄党宣言』に於ける記述

シェオルとゲヘナは双子だった。二人は父親に育てられてすくすくと育っていた。母親はいなかった。二人は、他の子供たちに母親がいて、自分たちにはいないことを、よく二人だけで考え合った。離婚したのだとか、死んだのだとかいう話はもう言い飽きてしまったので、二人はだんだんと荒唐無稽な理由を考えては、それで一緒に笑いあうようになった。ある時、シェオルが、母さんはハルバンデフに連れ去られたのだ、と言って、ゲヘナは大笑いした。それがあまりにもありふれてつまらない話なので、そんなつまらない話をいまさら口にするシェオルがおかしかったのだ。しかしその話をたまたま立ち聞きしてしまった父親はなぜだかひどく怒りだし、ゲヘナを家から追い出してしまった。こうしてシェオルとゲヘナは永遠に別たれた。シェオルは悲嘆にくれ、それ以後の一生のあいだ涙を流していない時はなかったと言われる。ゲヘナのその後については、巷間に流布している話のとおりである。ゲヘナが地獄の王になったのか、それとも逆に天界の主人になったのかは、ここでは問わない。ただひとつ言えるのは、ゲヘナの名が意味するものは地獄でも天界でもなく、一人の紀人でもなく、「故郷を追われたひとびと」すべてを意味するのだ、ということである。同じように、シェオルの名は「愛する者を奪われたひとびと」すべてを意味するのである。ゲヘナの名において、われわれはわれわれの戦いを開始し、シェオルの名において、われわれはわれわれの友人への愛を始める。われわれはこの二つの名においてわれわれ自身の勝利を得るか、さもなくば、倒れ伏すだろう。しかしわれわれが倒れ伏すのもまた、この二つの名のもとにおいてなのだ。

ヘルベルト地獄党宣言』)

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