海辺のカフカ〈下〉

著者村上 春樹
出版社新潮社 (2002/09)
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内容紹介 15歳の誕生日に家を出た少年は、高松で「長いあいだ探し求めていた場所」と感じる私立図書館にたどり着く。館長の佐伯さんと手伝いの大島さんが運営するその図書館に、毎日のように通う少年。しかし8日目の夜、突然意識を失った少年は、神社の境内で血まみれになって倒れていることに気づく。一方、東京中野区で猫探しを仕事とする老人ナカタさんは、ある日、縦長の帽子をかぶり、長靴をはいた奇妙な男と出会う。第2次大戦中に起こった不可解な事件、「カラスと呼ばれる少年」、1枚の絵画と歌、殺人、少女の幽霊…。多元的で重層的に構築されていく物語たちはミステリアスに絡み合いながら、やがて高松へと収斂(しゅうれん)する。   かつて『アンダーグラウンド』でオウム真理教の破壊的な物語と対峙した村上春樹は、それに拮抗(きっこう)するだけの力をもつ物語の再興を自らの命題とした。その命題へのチャレンジといえるのが本書である。『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』の内的世界と、『ねじまき鳥クロニクル』で追求した歴史と個の関係は、より深化し、子どもの夢と大人たちのつくりあげた現実の狭間にある迷宮のなかで、さ迷い、成長していくひとりの「少年」へと結実した。そして、ギリシャ悲劇における親子のあり様や、『源氏物語』に登場する生霊などの文学的モチーフが巧みに取り入れられたストーリーは、強力な吸引力をもって読者を離さない。   15歳の誕生日、少年は夜行バスに乗り、家を出た。一方、猫探しの老人・ナカタさんも、なにかに引き寄せられるように西へと向かう。暴力と喪失の影の谷を抜け、世界と世界が結びあわされるはずの場所を求めて。15歳になった僕は二度と戻らない旅に出た。古い図書館の書架には秘密が満ちている。夜の風がはなみずきの枝を揺らせるとき、いくつかの想いは静かにかたちをとり始める。県を越えて陸路で四国を移動するとき、人々は深い森と山を越えることになる。いちど道を見失うと、戻るのは困難だ。   長身で寡黙、世界でいちばんタフな15歳になりたいと思っていた少年。中野区、ネコ、図書館、四国をキーワードに、暴力と喪失の影を抜け、世界と世界が結びあうはずの場所を求めて2度と戻らない旅に出る-。長篇書下ろし。
感想
2006年06月20日(火) 21:04:39 Modified by hinoki_21




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