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本物? その2
しかし、スクリーンの静寂に比して、
室内の男たちの興奮は、最高潮に達していた。
「ど、どういうことだよ、あれドウターちゃんじゃないの!?」
「でも、本人はエルシーだって言ってたけど」
「ま、まって、ゾニトリウムなんかにレイプされて妊娠したんだよな」
「妊娠したって事は、じゃあ、あの巨乳!?」
「え、じゃあ、ドウターちゃんのオッパイって……」
「落ち着けよ、プリンセスがコロシアムに居たのって、何年前の事だと思ってるんだよ」
渦巻く疑念と爆発寸算の狂乱。
マライズが真性のレア物であったことは、まちがいなかった。
けれど、その映像がもたらした混乱と興奮を裏付けるためのピースは、
なにひとつ残されていない。
優に、男たちの年収数年分にも匹敵する高価なマライズは、
すでに再生機の中で、白く石化したガラス片へと朽ちている。
ただ、記憶の中だけに残る情景と、重大な事実が、
人々の口だけを媒介され、不確実な噂として街中にひろがっていく。
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