BBSPINKちゃんねる内で発表されたチャングムの誓いのSS(二次小説)を収集した保管庫です

   チャングム×ハン尚宮  −尽・未来際− 1/3       壱参弐様


[水剌間の一角]
 王様の湯治から数ヵ月が過ぎた。水剌間からは今日も忙しく立ち振る舞う女官たちの
賑やかな声が聞こえてくる。
 ハン最高尚宮は手際よく尚宮たちに指示を出し、王様の食事の準備を行っていた。
 ハン最高尚宮がすべき準備は食事だけではなかった。食事に纏わる故事や物語を用意す
る必要があったのだ。
 ハン最高尚宮はチャングムに声をかけた。
「チャングム、今晩来なさい。」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 暴君と呼ぶに相応しい先代王に比べて当代は穏やかな性格で、仕える者が恐怖に怯える
ことはない。しかし王様は生来玉体が壮健ではないため、常日頃接する者たちは、王様が
少しでも安らげるように、配意しなければならなかった。
 水剌間を担当するハン最高尚宮もその一人であった。あるいはより重要な役割を担って
いた。
 なぜなら、まつりごとを掌る者達には多少を問わず思惑があり、医官達、そして閨房に
就く至密達も様々な力関係とは無縁ではない。だから王様に接する時、多くの者たちは、
自派の要望を伝えようと躍起になっている。
 しかし水剌間にいる者は、他に比べれば下心を持つことが少ない。だから唯一、王様も
気を張らないひとときが過ごせるのである。
 王様の御膳の合間に物語る慣行は、先代の最高尚宮から始まった。先代のチョン最高尚
宮は、それまでの最高尚宮と違い私欲が無く、ただひたすら王の健勝を願う方だったので
ある。現在の水剌間のハン最高尚宮も、その先代の考えに従っていた。

 王様に物語を供するため、ハン最高尚宮は前の最高尚宮がそうしたように、自身も書物
をひもとき、また尚宮や内人を呼んでは新しい出来事や変わった物語を仕入れるので
あった。
 それは輪番制で、1人について定期的には半月に1度、その他面白い話があれば随時
ハン最高尚宮に聞かせなければならないこととなっていた。

 多くの者は半月に1度でも、話題作りに四苦八苦した。だがチャングムは3日と置かず
ハン最高尚宮の部屋に出向いている。
 チャングムは子供のころは山間の村に育ち、他の内人とは異なる環境で暮らしていた。
お互いが近しい関係であることに気付くまでは、チャングムはハン最高尚宮にすら幼少時
の思い出を語らなかった。だから夢中でウサギを追いかけたことなど、野山を駆け巡った
体験は、ハン最高尚宮にとっても物珍しいのだ。
 それに、常に体当たりで行動し、失敗の中から知恵と人の輪を築いていけるのも彼女の
力であった。チャングムは今でもしばしば菜園に足を運び、今栽培している薬草の様子を
聞いたりもしていた。
 だから彼女が話題に困ることはなかったのである。

 しかしチャングムが頻繁に出向くのは、その他にも理由がある。
 チャングムはハン尚宮と母のことを語り合いたかった。母が宮中でどのように過ごして
いたのかをもっと知りたかった。ハン尚宮を通して母の息吹を感じたかった。
 ハン尚宮もまたチャングムに、母親としてのミョンイの姿を聞きたがった。自分が戦慄
きながら行かせてしまったミョンイが、短い間とはいえ家族と共に幸せな時を過ごしてい
たことを知ると、自分を捉えていた痛苦が、少しだけ癒された。

 そして、もう一つの、より重要な理由があった。
 ハン最高尚宮への話題の提供は、時間を区切らず行ってよい。だから時には夜更けまで、
チャングムはハン尚宮の部屋にいることができた。だからどうなのか。つまり・・・
そういうことである。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[ハン最高尚宮の部屋]
 二人の関係は王様の湯治を機会に始まった。
 ハン尚宮もチャングムも、毎日こうしていてもよかった。だがこうなる前から、二人の
親密さは人の羨むところであった。ハン最高尚宮は今や水剌間の責任者として、
尚宮から見習いに至るまで掌握しなくてはならない。一人チャングムのみを優遇する
訳にはいかない。
 チャングムもまた、多忙なハン尚宮をこれ以上独り占めできないと知っていた。

 だから、今日は久しぶりの、いや、つい4日前も来たのだから客観的には全然久しくも
なんともないのだが、二人にとってはとても久しぶりに感じる逢瀬であった。
 チャングムは、山菜の保存法について話した。天日に干したとき、茹でてから日陰で
干したとき、粉末にしたとき、塩と灰をまぶしたとき。下処理によって風味や食感だけで
なく、食べた人の体調も変わるようだ。まだはっきりは判らないが、調べていこうと
思っていると話した。

 ひとしきり話し終えると、チャングムは、
 「尚宮様、ねぇ。」
と甘えた声を出す。ハン尚宮もチャングムの手に自分の手を重ねる。やや時を置いて、
チャングムを引き寄せ、しばらく口付けを楽しむ。

 そしてハン尚宮は、うなじを、耳を、目を愛撫し始めた。徐々に胸元、そしてそこから
下の方へと進めていった。
 チャングムはハン尚宮の乳房をつかもうとする。だが、ハン尚宮はその手を退け、
自分の背中に回し、愛撫を続けた。
 しばらくして、チャングムはハン尚宮の上に四つん這いになって乗り掛かり、
やや強引にハン尚宮の中に指を入れようとした。しかしハン尚宮はまたしてもその手を
受け入れず、逆にチャングムの敏感な部分に、下から手を差し入れ、他方の手は
チャングムの胸を揉むのであった。
 チャングムが熔けかかって、達しようとする頃、ようやくハン尚宮はチャングムを
受け入れ、自分の体内を感じさせた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 足繁くハン最高尚宮の元に通うチャングムを、勉強熱心だと褒める者がいれば、
取り入りたいのだとやっかむ者もいる。

 もちろん多くの者は、二人がそんな関係にあることを知らなかった。
 同期から上の者は、ミョンイがいなくなってからのハン尚宮が、一向に靡(なび)かない
のを知っていた。後輩たちの間では、堅物尚宮で通っていた。
 また、当然ながら二人も、水剌間など人目のあるところでは努めて気配を見せまい
とした。だから傍目には、相変わらず弟子に厳しく接する師匠に見えたはずである。

 しかしハン最高尚宮は確かに変わった。ほとんどの者は、彼女が変わったのは地位が
変わったからで、貫禄がつき余裕ができたからだと考えていた。
 だが、彼女の変化はそれだけではなかった。時折見せる喜色満面の笑顔は、今までの
彼女からは考えられないものだった。

 もしハン最高尚宮の変化の、真の意味するところに気付く者がいるとすれば、
それは第一にチェ尚宮であっただろう。
 幼い頃からペギョンを知り、恐らくミョンイとの関係も知っている。ミョンイなき後、
彼女が一変したのも見ている。だから今、もし、ハン最高尚宮の近くにチェ尚宮がいた
ならば、チャングムと結ばれてすぐに、それと気付いたであろう。
 あんなにペギョンの顔が輝いているのは、ミョンイの事件以来のことだ。だから彼女は、
彼女の心を解(ほぐ)す何かを得たのだ、と。

 しかし、その何かについては、容易に判明しなかったと思われる。
 まず、、ペギョンがミョンイ以外の誰かとそうなることは、彼女の今までの振る舞いからは
考えにくい。
 また、様々な状況からチャングムとの関係を疑わしく感じたとしても、チャングム自身は
以前から、ペギョンに嬉しそうにくっついて笑顔を振りまいており、何ら変わっていない。
 だから、ペギョンの変化の真相については、チェ尚宮とて確信はできなかったであろう。

 ところで、残念ながらチェ尚宮は、二人の関係を知り得る状況にいなかった。
相変わらず太平間で、鬱々と過ごすしかなかった。宮中の様子は兄からの手紙や、時折
食材を運びに来る内人から知る程度であり、勘のいいチェ尚宮であっても、さすがに
そこまで察知はできなかったのである。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 ここにもう一人、友人の変化を知る者がいた。宮中に上がって以来、チャングムの
ことが大好きなヨンセンである。
 どうしてチャングムが好きなのか、それは判らない。子供の頃、自分に優しく接して
くれたことがきっかけであるだろう。だが、内人になった後の、チャングムの彼女に
対するあしらいを見れば、そこまで好きでいられるのが不思議な気もしてくる。
 よくは判らないものの、彼女はチャングムだけを見守り続けていたのである。

 ヨンセンが異変に気付いたのは、王様の湯治に随行した時であった。
 ハン最高尚宮とチャングムが外出から戻った時、ミン尚宮とヨンセンは不在であった。
 暫(しば)らくして、小壜(びん)を抱えて帰ってきたヨンセンは、休み支度をしている
チャングムの様子が、何というか、普段は単純に愛くるしい表情なのだが、今日は
目が、どことなく潤んでいるのを感じた。

 「チャングム、どこへ行ってきたの? ひょっとして温泉?」
 「ううん。家鴨以外にも変わった食材がないか、王宮で使えそうなものがあったらと思って
見てきただけ。 ね、ヨンセンは? その壜は何?」
 「チャンイ達のお土産にしようと思って汲んできたの。チャングム、出かけて楽しかった?」
 「うん。」
 そしてヨンセンは、なんとなく仄(ほの)かな薫りを感じた。この薫り、チャングムのものでは
ない。
 彼女は、何分チャングムだけを見ていたので、ある意味では、ハン尚宮よりも
チャングムを熟知しているのである。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[水剌間の一角]
 ある日のこと、ハン最高尚宮は御膳の指示に忙しく、チャングムは当番ではなかった。
二人がいないのを確認して、ヨンセンはミン尚宮に話しかけた。
 「湯治に随行したとき、チャングムが最高尚宮様と出かけてったじゃないですか。
 あのー、私思うんですけど・・・。」
 「何よ、言いかけて止めないの。」
 「あの、たぶんねー、あの二人・・・。あの・・・。」
 「だから何なのよ。二人で温泉に行ったかもしれないってこと?」
 「仲がいいなって思って。」
 「そりゃそうよ。チャングムは、最高尚宮様の部屋子だったんだし、競合でも補助内人
 としてついていたんだし。それにあんただって、十分仲良しじゃない。」
 「それだけじゃないような気がするんです。」
 「まあ最近の最高尚宮様は、以前にも増して、よくチャングムをお部屋に呼ばれるわね。
 でも、もっと磨こうとされているのよ。私だって、部屋に行く度にお話を持って
いかなきゃならないし、それだけじゃなくって、尚宮がいかに内人に範を垂れるべきか、
こんこんとご指導されるわよ。あのお部屋じゃまったく気が休まらないわ。
 それに厨房の中の二人を見てごらんなさいよ。チャングムに対しては、特に厳しく
されて。私だったら付いていけないわ。まあ、あんたもしっかり勉強しなさい。」

 とは言ったものの、ミン尚宮も気になった。それで二人の様子を窺って見ることにした。
 「別になんてことないじゃないの。以前となにも変わった様子はないし。 あれっ。
 でも何か変ね。あんな感じだったかしら。」

 そのとき調理をするチャングムの手がハン尚宮の腕に触れ、その瞬間ハン尚宮がさっと
身をかわしたのである。それはなんとなく、例えば好意を持つ者達が意識するあまりに
意図せぬ接触を避けるかのように映るのであった。
 そう考えてみれば、二人の、特にハン尚宮の所作の一つ一つが、そしてチャングムへの
眼差しの注ぎ方が気になってしまう。
 「ひょっとして!」

 ミン尚宮はハン最高尚宮の生真面目なイメージが強すぎて、ヨンセンに言われるまでは、
そんなこととは思い付きもしなかったのである。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[ミン尚宮の部屋]
 数日後、ミン尚宮はヨンセンを部屋に呼び付けた。
 「ねえヨンセン、あなたが言っていたことって、ひょっとして・・・て、て、対食!」
 「そうです。」
 「うーん、何というか。うーん。ま、そりゃ一応駄目ってことだけど、皆やって
 いるしね。というか、うーん最高尚宮様がねえ。私そっちの方がびっくりよ。」
 「どうしてですか。」
 「だって、あんたも知ってのとおり、あの方はそういうことはなさらない方でしょ。
  ずっと前に先輩の尚宮様から、最高尚宮様は以前一人だけいらっしゃったと聞いた
 ことがあるわ。だけどその方がお若くして病気で退宮されからは、なさろうとはされ
 なかったそうよ。
  でもあのお美しさとお上品さでしょ。私達が内人の時も、お心をお寄せした者が少なく
 なかったんだけど、迷惑そうな趣きだったわ。

  それに相手がチャングムとはねえ。それも驚きね。
  あの子、以前から最高尚宮様にまとわりついていたのに、全然相手にされてなかった
 じゃない。何で今頃そんなことになったのかしら。お気に召されたなら、部屋子の時に
 していればよかったのに。あれっ? ひょっとしてあなた泣いてるの。」
 「・・・(泣)。」
 「まあ仕方ないわね。こういうのはお互いがあってだし、あなたにもきっといい人が
 見つかるわよ。」
 「・・・(泣)。」
 「泣かないのよ。別に対食で子を成すわけじゃないし、相手は一人と決まったわけ
 じゃないし、チャングムって今まで全然しなかったんでしょ。チャングムがそういう
 ことになったんなら、もしかしてチャンスかも知れないわよ。」
 「どうして・・・。」
 「だってあんたもチャングムも、部屋子の時に教えてもらえなかったんでしょ。だから
 しようにもできないのよ。だからチャングムがそうなったら、ひょっとしてあなたもお
 相手してもらえるかもね。」
 「そうなんですか。」
 「そうよ、それに私には判るの。たぶんチャングムはね、絶対いろいろやってみると
 思うの。」
 「何のことですか。」
 「ま、あなたは余計なことを考えなくていいわ。でも他の人に話して回っちゃいけ
 ないわよ。
  それから、チャングムが話すまで問い詰めちゃ駄目よ。そんなことしたら嫌われる
 だけだから。だからあなたはチャングムをずっと待っていなさい。」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[ミン尚宮の部屋]
 チャングムはミン尚宮に呼ばれた。
 「あんた、ひょっとして最高尚宮様と、いい仲じゃないの?」
 「はい、母のように慕っております。」
 「そうじゃなくて、別に隠すことないわよ。母のようにって部分もあるだろうけど、
 そうじゃなくて好き合っているんでしょ?」
 「ええっ!」
 「あたし、ミン尚宮様には全てお見通しよ。最高尚宮様って不器用なんだもん。隠すの
 ならもっとうまくやんなきゃ。で、どうなの。うまくいってるの?」
 「そんなこと聞かれても困ります、けど。  へへっ。まあ、いい感じです。」
 「もーっ、妬(や)けるわね。でも、あのお堅い最高尚宮様を落とすなんて、あんたも
 やるわね。どうやったの。何かあったの。」
 「そんな、落とすなんてことありません。ただ、何となくそうなっただけです。」
 「でも良かったわね。私も最高尚宮様が心配だったの。就任される時とか、
 チョン尚宮様のこととか、ご苦労が続いたでしょ。でもこれで気持ちも落ち着く
 だろうし。そういう時って、なかなか人には言えないことを言えるでしょ。お悩みの
 ことを聞いてさし上げてね。」
 「はい、そうします。」
 「でも何か相談があったら、いつでも乗るわよ。あたしに任して。」
 「ええ、お願いします。」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[ハン最高尚宮の部屋]
 今日もチャングムから話を聞いている。
 「尚宮様、私思うんですけど、食材を水剌間で育ててみては如何でしょうか?」
 「どうしてそう思うの。」
 「司餐院(サオンウォン)からは、食べるのに適した時期に収穫され、同じような
 大きさの食材が運ばれてきます。でもたとえば野菜は、日々成長し、その時々によって
 味わいが変わります。若い間は柔らかいがクセがあり、収穫期を逃すと硬く、そして
 花や実を付け始めます。そういった変化を知れば、食材の取り扱いに新しい工夫が
 できるように思うのです。もちろん全部は無理ですが、数種類の野菜なら、勉強用に
 栽培できると思います。」
 「じゃ、やってごらんなさい。」
 「ありがとうございます。」

 「ところでチャングム、お母様の飲食抜記持っているかしら? ちょっと見せて
 くれない。」
 「はい。私がこの日記を退膳間で見つけたときは、最高尚宮様にご説明できなくて、
 本当に済みませんでした。」
 「そんなこともあったわね。
  ミョンイって、いつもこうやって丁寧に書き留めていたから。私も読んで、改めて
 いろんなことを思い出すわ。
  私たちが内人だった頃は先の王の時代で、みんな粗相のないように神経を尖らせて
 いたわ。作るのを楽しむとか、新しいお料理を考えている余裕なんてとても無かった。
 もうへとへとだった。
  遅くにやっと部屋に戻れて、そしてミョンイと一日の出来事を話すのが、一番楽し
 かった。今はお前が側にいてくれて、こうやって話しをしてくれて、そんなお前の顔を
 見る事ができて、私はとても楽しいわ。」
 「尚宮様・・・。ねっ、尚宮様。」
 「本当にお前って悪い子ね。」
 ハン尚宮、チャングムの手を取る。
 「どうしてそんなことをおっしゃるのですか。私、尚宮様のお言付けを守る良い子です。」
 「そうだといいんだけど。こっちにいらっしゃい。」

 それからまた、いつもの夜が過ぎていく。

 ハン尚宮は思った。
 こうやってこの子をわが手中に置けることは、この上もない幸せ。
 この子もずいぶん口付けがうまくなったものだ。初めてのときは、舌を入れただけで
驚いていたのが面白かったわね。今は私を優しく受け止め、絡ませ、時々吸い上げてくる。
 反応もよくなってきた。私が動かすと、肌が粟立つのが判るわ。それがまた面白い。
 ミョンイもこうやって私を楽しんでいたのね。あの頃は夢中だったから、そんなこと
ちっとも知らなかったけれど。

 チャングムも考えた。
 ハン尚宮様は私を愛しんでくださるが、なかなか受け入れてくださらない。私も
ハン尚宮様を戴きたいのに。

 そうだ!
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[ミン尚宮の部屋]
 「ミン尚宮様、教えていただきたいのです。」
 「何よ。」
 「あの、あの・・・。」
 「ああ、あのことね。で、どうなの。」
 「私はいいんですけど、ハン尚宮様があんまり、その・・・、あんまり良くなさそう
 な感じです。私どうしたらいいのか判らなくって。」
 「もうちょっと詳しく話してよ。だいたいどっちがやっているの?」
 「私もしたいんですけど、お許ししただけません。」
 「で、あんたはいいの?」
 「ええ、私はいつもです。でもハン尚宮様とは、初めてしたときは、いい感じだった
 のですが、今はうまくいきません。」
 「どんな風にしているのか教えてよ。」
 チャングムは説明を始めた。口付けから始まって、ハン尚宮が自分を昇らせていくこと。
 途中で何回かハン尚宮を触ろうとするのだけれど、ほとんど受け入れてもらえないこと。
 自分独りが果ててしまうこと。

 「なるほどね。なんとなく判ったわ。じゃ、まずこの本を読んでごらんなさい。」
 「なんですかこれ。はぅ・とぅ・びあん・うぃず・らぶ? 圖解女性同性戀秘傳大全??
 をんな いとめでたし??? 何なんですか。」
 「あんただって普通の春画は持ってるんでしょ。これはそうじゃなくって、あんた
 みたいな人の為に書かれた本よ。遠い異国とか明国、倭国の本を訳したものなの。
 私、いろいろ研究しているんだから。」
 「でも、ハン尚宮様は、真心があればいい。技や道具に頼るのはと・・・。」
 「あのねチャングム、料理の場合はあなた見習いの時代からずっと、下拵(したごしら)えや
 包丁捌(さば)きを練習してきたでしょ。最高尚宮様がおっしゃっているのは、そっから
 先のことなの。大根の皮剥きも満足にできないんじゃ、始まらないでしょ。これも
 同じよ。だから読みなさいってば。」
 「えっと、女体を触るときは、まず、揉み解すようにして、息を・・・。それから、
 身体の奥は、やわらかく・・・。そして、言葉は最高の愛である、ふむふむ。」
 「ここで読まなくてもいいの。自分の部屋で読みなさい。で、だいたいのことが頭に
 入ったら、実践するからいらっしゃい。」
 「ミン尚宮様、そこまでしていただけるなんて。」
 「勘違いしないでよ。私がやるなんていってないわよ。とにかく何日か後に
 いらっしゃい。それと、しばらく最高尚宮様としない方がいいわね。中途半端に
 聞き齧(かじ)っている段階だと、迷うだけで、うまくいかないと思うから。」
 「そうなんですか。じゃあそうします。」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[ハン最高尚宮の部屋]
 ひとしきり話しが終わると、今日のチャングムはハン尚宮を誘おうとはしなかった。
ハン尚宮は、特に問いただすことなく、チャングムを去らせた。

[チャングムとヨンセンの部屋]
 「チャングム、今日は早かったのね。」
 「うん、お話しもすぐに終わったから。」
 「チャングム、ちょっと顔色が悪いわね。心配ごとでもあるの? ね、その本は何? 
 何か新しい調べもの?」
 「ちょっと勉強しようと思って。」
 「何か相談ごとがあったら、私に言ってね。」
 「うん、そうするわ。」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[水剌間の一角]
 「ミン尚宮様、一通り読み終わりました。」
 「それなら始めよっか。チャンイ、あなたもいらっしゃいよ。」
 「これミン尚宮、無駄口を叩いていないで、見習いの様子を見てきなさい。それに
 何です、チャンイ、チャングムまで。」
 「あ、最高尚宮様すみません。(小声で)ねえチャングム、あとで私の部屋に
 いらっしゃい。」

[ミン尚宮の部屋]
 「ミン尚宮様、何ですか。」
 「チャンイ、あんた前に手解(てほど)きして欲しいって言ってたわよね。今から指南してあげる
 から、しっかり聞きなさい。」

 「えっー本当ですか。私とうとうミン尚宮様と! でも何でチャングムがいるんですか。」
 「何言ってるのよ。誰があんたなんかと。」
 「でも尚宮様、お相手はいらっしゃらないのでしょう。」
 「昔ね、あんたたちぐらいの頃は、同じ部屋の子と付き合ってたわ。彼女は病気を
 理由に宮を出てったけれど、本当はね、いろいろあったの。(男を作って、逃げたなんて
 いえないし。)それからは他の部署の子とちょこっとね。まあいいじゃないのあたしの
 ことは。
  で、話しを戻して、これから皆もいろいろあるかもしれないから、練習しておくのよ。
 だいたいあんた達って子供の頃習っていないでしょ。先の王がひどくて内人もいっぱい
 お側に置かれたの。で、ちょうどあんた達が部屋子でお仕えする尚宮様が少な過ぎて、
 そういうことを教える人がいなかったのね。」
 「せっかくだから、ヨンセンも呼ばなくていいんですか。」
 とチャンイ。
 「あんまり人数が多いと、訳わかんなくなるし(あの子がいたら、チャングムにすぐ
 抱きつくから話しが進まないからね。)これぐらいがいいのよ。」

 「じゃ、早速口付けからね。えっとまずは、軽く唇を合わせる。それで徐々に吸いあう。
 それから舌を絡めるんだけど、最初はやさしく、その後は強く、舌だけでなく口の中
 全体を、歯も含めて触ったり舐めたりする。ということで、じゃ、やってみるから。」
 「え、尚宮様と私が! それとも、チャングムとされるんですか。」
 「違う違う。一人でこうやって舌を出して、頭の中で想像しながら、ひっこめて、
 回して、口をすぼめて。」

 尚宮さまのおちょぼ口って可愛い〜。この機会を逃してはなるまい。よしっ、思い切って
おねだりしよう。チャンイはそんなことを考えていた。
 ミン尚宮が二人に指示する。
 「これが訓練法よ。さ、やってみて。チャングムも。」
 二人、一生懸命舌を出して練習する。
 「毎日練習すること。そうすればうまくなるわ。舌の動きは基本だからね。」

 「尚宮様〜、やっぱりよく判りません。お願いです、一度だけお手本を見せてください。」
 「・・・全く。一度で済まなくなるから嫌だって言ってるのよ。」
 「本当に、二度と申しませんから。」
 「仕方ないわね・・・。じゃ、口付けだけよ。」
 しぶしぶ、ミン尚宮はチャンイにしてやることにした。軽く唇を合わせ、少しだけ舌を絡める。

 「うー。なんかとっても柔らかくて、温かかったです。またお願いしよっかな。」
 さすがにもうチャンイには呆れて、ミン尚宮はチャングムに問いかけた。
 「チャングム、あんたはいいわよね?」
 チャングムは頷いた。ミン尚宮とすることに抵抗感は無いのだが、特にしたいとも
思わなかったからだ。
 「あーあ、もっと一杯教えようと思ったけど、あなたがお喋りするものだから、
 ちっとも進まなかったわ。仕方ないから、続きは明後日にしましょう。チャンイ、
 次は黙って聞かないと、もう呼ばないわよ。」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[ハン最高尚宮の部屋]
 今日もチャングムは、何もせずに去ろうとした。さすがに不安になって、ハン尚宮は
聞いた。
 「チャングムどうしたの? 気分でも悪いの?」
 「いえ、別に。今日は早く休もうと思います。」
 「そう。じゃ、ゆっくりお休みなさい。」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[ミン尚宮の部屋]
 チャングムとチャンイが座って、ミン尚宮が話すのを待っている。
 「じゃ次は愛撫の仕方その1。これは体の表面を撫でる方法ね。忘れちゃいけないのは、
 女性の身体って言うのは・・・。」
 「でもどうして女体を勉強しているんですか?」
 真面目な顔でチャンイが尋ねる。

 ! 痛いところを突かれたわ。まさかチャングムとハン尚宮様のためにやっている
なんて言えないし。かと言ってチャングムと二人っきりで教えてると、こっちが変な気分に
なっちゃうからだけどね。
 戸惑いを隠し切れないミン尚宮。慌てて理屈を考える。
 「えっとね、男の体は単純なの。チャンイ、あんたも春画見て知ってるでしょ、あの
 出てるところを触ってあげたら、それで気持ちがよくなるらしいの。触り方も女の
 身体で練習すれば、ま、ちょっと形は違うけど、だいたいおんなじ様なもんよ。だけど、
 女の方はもっと繊細なの。それでね、どうやったら気持ちよくなるのか知らないと、
 殿方との時も自分がつまらなく感じて、嫌になることもあるらしいのよね。殿方も
 そんな風情はお好みでないと思うわ。だから勉強しておけば、自分も気持ちよくなる
 ようにできるし、殿方にも好まれるからよ。わかった?」
 「さすが、尚宮様。本当に良くご存知なんですね。私ずっと付いていきますっ!」

 「じゃ、続けるわね。今も言ったように女体は繊細だから、いきなり感じやすい
 ところを触ったら痛かったりして逆に気分が悪くなるものなの。だからまず手を握って、
 感情を高めていくの。これぐらいできるでしょ。じゃ、二人でやってみて。」
 チャングムとチャンイ、なんとなく手を擦る。
 「そうじゃなくて、もっと情感を込めて。好きですって気持ちを手から伝えるの。
 そうね、触れる前に、手をこすり合わせて温めとくといいかもね。
  じゃ次ね。こう抱きしめ合う。で忘れずにいたいのが、言葉ね。
  いつものチャングムみたいにペラペラ能書きを垂れるのは禁物よ。短く、『好き』とか
 『尚宮様』とか『チャンイ』とか。じゃ、やってみて。」
とりあえず抱きしめて、相手の名前を呼んでみる二人。

 「まあまあね。さっきよりは良くなったわ。じゃ、服の上から身体を触ってみて。
 肩とか腰とか、背中とか。今座ってやってるけども、立ってでも寝てても要領は同じ。
 つまり身体を密着させたり、腕全体で包み込んだり。まだ指は使わないで、
 手のひら全体でね。」
 言われるまま抱き合って擦ってみる。通常の抱擁よりはやや濃厚に感じるが、
これぐらいなら友人とでもできる。そう二人は感じた。
 「いいじゃない。その調子よ。今日はここまでにしておくから、続きは来週ね。
 次からはもうちょっと熱いのをやるから期待しておいて。」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[ハン最高尚宮の部屋]
 今夜の懇談の後も、ここ数週間と同様、チャングムは用件が終わると立ち去った。
 ハン尚宮は考えた。もしかして、もう嫌になったのかしら? それとも何か考え事を
しているのかしら?
 あの子は自分が納得するまで何も言わない子だから、このまま待つしかないのだろうか。

 それにしても抱きたい。あの子の身体を手の中におきたい。温もりを感じたい。

 あの子は割りと、けろりとしているけれど、私は何をされてもくすぐったくて、怖くて、
痛いような感じがして、恥ずかしかった。だけど、ミョンイは私の不安を消し去るように、
徐々に彼女の身体に馴染ませていった。
 素肌が触れ合う心地よさを教え、温もりを感じさせた。そして口付けを・・・。
 唇といわず、乳房といわず、身体中あらゆるところを火照らせた。
 やさしく愛撫されたり、きつく責められたり。何度となく私を愛しみ、喘がせた。

 時には何日もしてくれなくて、ただ待つしかなくて、欲しくて気持ちが弾けそうに
なったときに、思いっきり抱いてくれたっけ。

 ある夜、静寂があたりを包んだ。カシラダカの鳴き声もぴたりと止み、
衣擦れの音も、口付けの音も、二人の吐息すらこえなかった。ミョンイに包まれる
心地よさだけ。この世の中に、ミョンイと私しかいない、そんな感じがした。
 そして、身も心もミョンイの中に熔け、墜ちて行った。

 私も思いっきり抱いてやりたい。そうしてあの子を熔かして、熔かして、・・・。
ひょっとして私が溺れているのか。私ったら、最近はこの子が来る度にそんなことを
考えているなんて、愚かね。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[チャングムとヨンセンの部屋]
 チャングムはハン尚宮の部屋から自分の部屋に戻ると、ヨンセンに抱きついた。
きゅっと抱きしめ、何となく手を擦(さす)ったり身体を密着させたり。ミン尚宮の講義の
復習である。だが、本当はハン尚宮を抱きしめたかった。ここ1月近く、温もりに触れるのを
我慢しているのだ。
 
 そんな事情を知らないヨンセンは、訳がわからなかった。今の今まで、どれだけ
こちらが抱きついても、お返ししてくれたことはなかったのに。いったいこれは何? 
最近やっぱりおかしい。
 とは思いながらも、黙ってされるままにしておいた。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 チャングム×ハン尚宮 −尽・未来際−2/3 チャングム×ハン尚宮 −尽・未来際−3/3


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