BBSPINKちゃんねる内で発表されたチャングムの誓いのSS(二次小説)を収集した保管庫です

   チャングム×ハン尚宮  −尽・未来際− 3/3       壱参弐様


[ハン最高尚宮の部屋]
 「チャングム、持ってきてくれた?」
 「はい、今日は2瓶お持ちしました。それから肴もご用意しました。」
 「ありがとう、じゃあ戴きましょうか。さ、お前も。」

 今日はハン尚宮の巻き髪は解かれ、背中に垂らされている。
 しばし酒を味わう。さすがにチャングムも、酒量を弁(わきま)え、少しずつ楽しむ。
しかし、
 「尚宮様。ねぇ尚宮様〜。」
 ハン尚宮の手を撫でるチャングム。
 「酔ってきたみたいね。」
 「尚宮様〜。」
 「飲む時は、自分が先に酔っちゃだめなのよ。」
 「お酒に酔っているんじゃありません。尚宮様に酔い痴(し)れているのです。」
 この子ったら! こんなことを言うなんて。全く、すぐ調子にのって。そこがまた、
とても可愛いのだけれど。
 ふふっ。・・・、私を超えていると感じる時もあれば、まだまだ子供だと思うときもある。
 ・・・でもこの子は本当に、私を受け止められるのだろうか?

 「ねえ、チャングム。・・・お前のお母様、ミョンイなき後の私は、屍(かばね)のように
 生きてきた。何も言わず何も見ず。自ら何かしようとはしなかった。
  お前は私以上に辛い目に遭いながら、どうしてそのように強く生きられるのか。
 私はずっと不思議だった。お前のその輝きが、前向きに取り組む心が、どれほど私を
 励ましてくれたことか。」
 「私は、ただ、そうすることが自分の生きる望みだったから・・・そうすることが
 母の望みだったから・・・それが自分自身だったから、そうしてきただけです。
 どうしてそのように生きられるかと言われても、私にはそれ以外は考えられなかった
 だけで・・・。」
 「そうなの。」
 「はい、尚宮様。」
 この子はこう言うけれど、そして私の前では、ほとんど見せないけれど、
癒されない想いは続くのだろう。気持ちが纏(まと)まらないこともあるのだろう。

 私は今まで、抱くことは"安らぎを与えること"だと思っていた。そうではなくて、
"与えられること"でもあることを、この子と出会って知った。
 私を抱くことで、この子の気持ちが少しでも解(ほぐ)れるなら・・・。私の痛みはいい、
か弱い姿をさらけ出すことになってもいい。お前だけには、素直な私でいよう。
 「今夜は好きなだけ、自分の思うままにしなさい。それにこうしている間は、
 私を師匠と思わなくてもいい。私はあなたの愛しい人。だから存分にしていいから。」
 そう言うと、ハン尚宮は手をチャングムの肩に添えた。

 チャングムがハン尚宮の唇を軽くついばみ始める。上唇を舌先でくすぐり、次に下唇を
付け左右に動かす。互いの粘膜が柔らかく擦れあう。ハン尚宮はこれを特に好んだ。
直接の快感とは違うが、口元がぞっとする感触がいい。
 チャングムは舌を小さく差し入れ、ハン尚宮の歯だけを舐めていく。ハン尚宮が自分も
舌を絡ませようとすると、ふいに口を離し、そうさせまいとする。
 「ママニィム!」
 ハン尚宮の勝手な振る舞いを咎め立てするかのような口振りで囁くと、また口を
近付ける。上下の唇を塞いで同時に味わう。再び舌を入れ、今度は大きく掻き回してくる。
ハン尚宮が舌を合わせようとしても無視を決め込む。その間、チャングムはハン尚宮と
指を絡め、もう片方の手は肩を優しく揉んでいる。
 やっとチャングムはハン尚宮の舌を捉え、粘っこいような吐息と、粘っこいような
唾液を共に押し付け、動かし、そして軽く吸わせる。吸われる舌を小刻みに動かすと、
放すまいとハン尚宮の舌が追いかけてくる。
 しばらくの間、チャングムはハン尚宮の口内を味わった。動きに合わせて自分を求めて
くるハン尚宮がいじらしい。

 チャングムはハン尚宮をゆっくり押し倒した。うなじを味わい、耳元に息を吹きかける。
襟元をはだけ、手を乳房に当て、軽く押し潰す。首筋を舐める。乳房を揉みながら、
人差し指だけでその中心を、触るか触らないかぐらいの力で弄くる。中心が尖ってきても
それ以上続けず、そ知らぬ顔で脇の下を舐め始める。
 ハン尚宮は身を捩(よじ)って、胸への愛撫を求める。そんなハン尚宮を見て、指先で少し
転がす。ハン尚宮は耐え切れなくなったのか、チャングムの頭を自分の乳房に導く。
 チャングムは軽く口に含むと舌先だけで、軽く押す。尖った中心を押すだけで何も
しない。ハン尚宮の乳首が更に硬くなるのを感じながら、チャングムはミン尚宮の言葉を
思い返していた。
 「これは会話よ。愛しながら相手の身体に問いかけるの。どうして欲しいのかね。
  答えが返ってこないなら、少し待つのもいいようね。ちゃんと返事が返ってきたら、
 また少しやってあげる。
  普通にお喋りしてても、どっちかだけが喋っていたらつまんないでしょ。」
  うまく話しが噛み合って、相手の壷(つぼ)に嵌(はま)っても、安心しちゃだめ。
 その動きだけに夢中にさせたら、豊かさや膨らみが出ないから・・・。」

 さっきから尚宮様は吐息を重ね、私の手や腕や身体に縋(すが)り付いてくる。
ミン尚宮様のおっしゃっていたことは、こんな感じなのか。、

 チャングムはハン尚宮を裏返すと、背中を擦り、肩を揉むように掴んでいく。脚を絡め、素肌を
密着させる。ハン尚宮は徐々に汗ばみ、肌同士が吸い付くような快さを感じていた。今は腿(もも)に
触られるだけで、反応してしまう。
 ハン尚宮の上体を起こし、ようやくチャングムは乳房を愛撫し始めた。舌の裏側で舐め、口に
頬張り、やや動きを遅くして様子を見る。ふっと手を内股に進め、軽く触ったかと思うと手を離す。
 愛でてくれるのか、くれないのか、ハン尚宮は、期待しては裏切られるチャングムの愛撫に
翻弄された。翻弄されながら、感じていく。感じながらもハン尚宮は思った。
 こんな子だったっけ? 今までは、自分がしたいことを押し付けてくるばかりだった
けど。
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[水剌間の一角]
 「チャングム、昨日遅かったってヨンセンから聞いたわよ。ということは、・・・して差し
 上げたんでしょ。」
 「お酒の嗜み方をご指導戴いていただけ、です。」
 「私には判るの。今日の最高尚宮様って、とても和(にこ)やかでいらしたわ。で、どうだった?」
 「・・・何とか受け入れて戴きましたが、どうなのか、よくは判りませんでした。」
 「まあ、あのご様子だとうまく行ったってことね。ほんと、いいわね。じゃあね、もっといろいろと
 教えてあげなくっちゃね。」
 「よろしくお願いします。あ、でも同じ時にっていうのはどうしたらいいんでしょうか。」
 「それはとーっても難しいわ。自分の感情を盛り上げ過ぎても駄目だし、相手も協力して
 くれないとね。もうちょっと経ってから、話すわ。」
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[ハン最高尚宮の部屋]
 今日は、チャンイが話をする日である。
 「最高尚宮様、明国の北にある国に、人形の形をした胡桃を割る道具があるそうです。」
 「そう。」
 「その人形の形をした胡桃を割る道具が、甘いものや香ばしい木の実や、芳しい
 飲み物の国に連れて行ってくれるそうです。」
 「それは幻想的ね。」
 ハン尚宮は、話しの内容にはそれほど関心がなかった。ただチャンイの仕草や表情を、
注意深く観察していた。
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[カン・ドックの家]
 「おじさーん、あれ? おばさん、おじさんは?」
 「あらチャングム。あの人は、仕入れに出掛けてって、明後日にならないと戻らないよ。」
 「それじゃあおばさん、あのお酒を10壜ほどいただけませんか。」
 「どうしたの? お前、酒の味を覚えたのかい?」
 「ハン尚宮様が、ご所望されるので、時々お相伴させて戴いています。」
 「それにしちゃ最近よく買いに来るね。」
 「ハン尚宮様が他の尚宮様達とご懇談される時に、お入用なので。」
 「言ってくれれば、こっちから届けるのに。」
 「いえ、まだ各厨房の尚宮様にお試し戴いているだけなので、それほどはいらない
 のです。」
 「そうかい。じゃ持っていきな。お代は後で・・・。」
 「はい、これ。ハン尚宮様からです。お支払いしておくようにと。」
 「悪いね。
  ところでチャングム、最近ハン最高尚宮様とよくいるのかい?」
 「はい。お料理の他にも、会議のお手伝いなどさせて戴いています。」
 「ふーん、そうかい。チャングム、最高尚宮様と一緒にいて楽しいかい?」
 「はい。お会いできて、教えていただくのが嬉しいです。」
 「そうかい。ねえチャングム。お前とハン最高尚宮様は、生きてきた長さが違うんだよ。
 お前がいくら判ったつもりでも、判りきれないところがあるんだよ。」
 「・・・。」
 「だからあんまり調子に乗るんじゃないよ。そのー、そうしている時は構わないけど・・・。」
 「えっ?」
 「だからそうしている時はいいけど。」
 「・・・はい。」
 「それ以外のときは、弁えなくちゃだめだよ。いつも一歩退(ひ)いて、お仕えするんだよ。
 お前よりもずっとずっとご苦労されているんだから、そのことを忘れちゃいけないよ。」
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[ハン最高尚宮の部屋]
 チャングムが来て物語を供している。
 そしていつものようにチャングムが誘い、ハン尚宮がそれに応え、口付けが始まる。
 ここしばらくは、主にチャングムがハン尚宮を抱いている。今もハン尚宮の背後から、
うなじを噛み、背中を舐め臀部を擦っている。

 チャングムは、ハン尚宮を背中から愛しむのが好きだ。
 「尚宮様、こうしていると子供の頃を思い出します。子供の頃、尚宮様がお着替えに
 なるとき、その背中が本当にきれいで、とても憧れていたんですよ。ねぇ尚宮様。」
 「そうなの。お前に見られていたんなんてね。」
背中を撫でながらチャングムは続けた。
 「それに尚宮様、尚宮様はお休みになるとき、よく背中を向けておられて。私を嫌って
 おられるのかと、ちょっと寂しくもありましたけど・・・。」
 「そんなことはないわ。」
 「でも、それで尚宮様の背中を見ることができて。尚宮様がお休みになっておられる
 時に、尚宮様の背中に、そっと手を当ててみたことがあるんですよ。」
 「そうだったの。そんなことをしていたなんて、ちっとも気が付かなかったわ。」
 「だって、お怒りになったら大変ですから、よくお休みになっていることを確かめ
 ましたから。」
 背中から伸し掛かってハン尚宮の両手を握り、自分の乳房でハン尚宮の背中を愛撫
しながらチャングムは続ける。
 「それでね尚宮様、内人になったばかりの頃、尚宮様が私を負(お)んぶしてくださった
 ことがありましたよね。あの時、大好きな尚宮様の背中に触れられて、どきどき
 しました。もっと抱きしめたかったんですよ。」
 「うそおっしゃい。そんな元気はなかったくせに。」
 「そうでしたね。」
 チャングムはハン尚宮を横にし、自分も背後からハン尚宮の身体に自分の身体を
添わせて背中から責め続ける。乳房を揉み、首に手を回し、時々抱きしめては
またその肌を口で、頬で楽しむ。
 チャングムはハン尚宮の、かつて憧れた大きな背中が自分の中で小さく見えるのが
堪らなかった。肉体的な快感ではなく、精神的な欲望が充たされる。もっと味わいたい。
 チャングムはハン尚宮を再びうつ伏せにすると背中に舌を這わせた。大きく舐め、
小さく噛む。片脚でハン尚宮の脚を開き、中心に指を沿わせると、そこは既に濡れていた。
チャングムは指をゆっくり沈めていった。
 そして、ハン尚宮が昇り詰めるまで愛撫を続けた。
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[ハン最高尚宮の部屋]
 ヨンセンはハン最高尚宮に話しを供している。
 「最高尚宮様、御膳をお出しする際に、あしらいを工夫することを考えました。」
 「今でも、もやしで龍を作ったりしているわね。」
 「いえ、祝宴の場だけではなく、普段普段に季節を感じさせる色とりどりの草花、
 木の芽など添えてみてはいかがでしょうか。それから盛り付けも、平坦に並べる
 のではなく、えーっと、・・・(あれっ、どうだったっけ? 確かチャングムは、
 真ん中を高くだっけ、何て言ってたかしら。)えっと、」
 ヨンセンは焦っていたが、ハン尚宮は落ち着いて聞いていた。この子が真面目に
料理を学んでいることは、よく知っている。
 妹弟子に当たるヨンセンに、ハン尚宮も優しく言った。
 「ヨンセン、よく調べようとしていることは判りました。でももうあなたは、見習い達を指導
 しなければならないのだから、判りやすく相手に伝えることも必要よ。」
 「はい。」
 ヨンセンは安堵の表情でハン尚宮を見つめた。

 しかしハン尚宮は思った。チャングムはこの子と同じ部屋にいる。そう言えば時々
胸を触られるとか言っていた。なんて羨ま・・・いや、けしからん。それに何か言い
たげな顔付きをしている。
 「それで、他に何かあるの?」
 「いえ、もう一度勉強し直して参ります。」
 ハン尚宮に問い詰められるのを恐れ、ヨンセンは、そそくさと立ち去った。
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[ハン最高尚宮の部屋]
 今日もチャングムは、ハン尚宮の背中を中心に愛撫をしている。
 肩を噛み、うなじに口付け、背骨の脇を舐め上げる。ハン尚宮が体をくねらせ逃れよう
とすると、更に肩甲骨に吸い付き、離さない。噛まれた肩、吸われた背中は、軽く歯形が
残り赤くなっている。
 ハン尚宮は、無防備な背中から責められ、ただされるままに昂らせていく。
 背中の汗が光り始める。脇腹を擦り、徐々にチャングムの手がハン尚宮の胸に移り、
乳房を弄り始める。ハン尚宮は、声にならない声を発しながら、チャングムの手を退け
ようとした。だがチャングムはその動きを許そうとはせず、ハン尚宮の両手を背中に
回して一掴みにし、片手で乳首を摘みながら、纏めた腕を噛み、舐める。
 喘ぎが大きくなってくると、チャングムはハン尚宮をうつ伏せに寝かせた。お尻から
敏感な部分を探り当てる。触ると、その指に昂りが感じられる。軽く、優しく愛撫を
始める。
 手の平が濡れている。そこにそっと指を入れる。締め付けを感じ、かき回してやる。
喘ぎが少しずつ大きくなって背中が揺らめき始める。
 震える身体から香気が漂う。ハン尚宮様の薫り。堪らない。欲望に己を見失いそうだ。
自分の腰の辺りに快感がこみ上げる。もっと激しく・・・、いや、いけない、いけない。
 「独り言はだめよ。」

 チャングムはミン尚宮の言葉を思い返し、動きを緩めた。自分だけが夢中になっては
いけないのだ。
 「会話っていうのは、相手の言葉を耳で聞くんじゃなくて、身体全体で聴くこと。
 最終的には、聴くんじゃなくて、引き出すようになれればいいわね。簡単に言えば
 焦(じ)らすって感じだけど、ちょっとそれとも違うわね。
  相手が欲しくてたまらないようにしてあげるっていうか。今やっているその動きだけ
 じゃなくって、相手がもっと自分を欲しがるように導いてあげるの。だから相手を良く
 見て、相手の気持ちを注意深く受け止める必要があるのよ。それが身体でする会話よ。」

 ハン尚宮は昇り詰める期待を抱え、しかし背後から責められているためにチャングムを
求めて抱き付くこともできず、ただ胸元にあるチャングムの片手にしがみ付き背中を震わせた。
 チャングムは、自分の気持ちを静めるために声を掛けた。
 「愛おしいです。私の手の中で私だけのものになっておられるお姿。」
 そう言って、ゆっくりとした動きから次第に激しくしていく。
 ハン尚宮がもうすぐ達しようとする間際で、また緩める。
 「・・・ねえ・・・。もっと・・・。」
 「尚宮様。愛おしく思います。」
 「・・・ねえ、お願いだから・・・。」
 「私に・・・酔われているお姿・・・そんな尚宮様が好き。」
 耳元で囁きながら、愛撫を続けるチャングム。強めては弱め、また激しくしては緩める。
 「もっと酔わせたい・・・。」
 身体を返し仰向けにしてやると、ハン尚宮はその腕を、チャングムの背中に回した。
抱きかかえられても、なお乳房を吸い、指で愛撫する。

 ハン尚宮が大きく喘ぎ、やっと果てるまで続けられ、ハン尚宮は深い吐息で応えた。
 チャングムは口付けをし、暫らくその吐息を飲み込んだ。
 ハン尚宮の息はまだ収まらず、今も胸や肩を上下させている。腰や腿に汗が光り、
快感の名残を留めている。

 「ハン尚宮様は私を欲しくないっておっしゃっておられたのに、今ではもっと欲しいっ
 て言われます。」
 「意地悪なことを言わないで。私がどう感じているのかは知ってるでしょ。」
 「いえ、尚宮様、こうしている時は、はっきりとおっしゃっていただかないと。」
 「あらあら、ずいぶんな物言いね。」
と答えたものの、にこにこしているチャングムの顔に、つい釣られてハン尚宮も笑い顔を見せた。

 笑いながらハン尚宮は思った。私を抱くこの子の手、身体。その柔らかさ、温かさ。
私を夢中で求めてくる、この子の気持ち。それを受け止めるとき、甘美な官能が私を包む。
そして心が、伸びやかに広がっていく。
 硬く強張り閉じ込んでいた心の中に、この子が入り込み、ミョンイの思い出・・・
思い出と共に、この子の愛おしさが少しずつ重なっていく。
 ハン尚宮は、久しく感じることのなかった、満ち足りた心地に浸った。
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[ハン最高尚宮の部屋]
 今日はミン尚宮が講話の当番である。
 「最高尚宮様、明より遠い異国に、夜伽を申し付けては一晩で飽き、殺(あや)めて
 しまう王がおられたそうです。」
 「どこにも大変な王様がいるものね。」
 「あるとき夜伽に選ばれた娘は、たいそう賢く、一晩に一つずつ物語を話し、
  『明日はもっと面白い話しがあります』と、王の気持ちを引き付け続けたのです。
  それは冒険物、恋物語、悲しい話、夢のような話、動物が出てくる寓話などなど、
 尽きる事がありませんでした。そして、とうとう千と一つの夜話を語り、ついには王も
 その女を寵愛し、殺めることはなかったそうです。
  この本は、その話をまとめたものです。これがあれば、もうお話に困ることは
 ないかと存じます。」
 「そう、そんなに面白い本があったの。では私に見せておくれ。」
 「最高尚宮様にお見せできれば幸いなのですが、何せこの本は異国の文字で
 書き綴られており、私からお聞かせしたく・・・(こんな便利な本をお渡しする訳には
 いかないわ。私が最高尚宮様に殺められないために仕入れたんだもの。)」
 「そう、それは残念ね。では聞かせておくれ。」
 「或る南の国に船乗りがおりました。遠く、海を渡り諸国から香辛料や、珍しい宝物を
 集めて・・・。」
 「なかなか面白いわ。また聞かせて頂戴ね。」

 「ところで・・・ミン尚宮、ちょっと教えて欲しいことがあるのだけれど。」
 「はい、何なりと。」
 「あなたチャングムのことで、最近何か気が付いたことはない?」
 「いえ、別に。相変わらず料理の工夫だといって、あちこち駆け回っていますけど。」
 「料理のことじゃなくて。」
 「チャングムの頭の中にはお料理しかないようです。(それとハン尚宮様のことも、
 ですけど。)」
 「その、誰か新しいお友達ができたのかと思って。焼厨房以外の、針房や至密とかの
 他所の者とか。なんだか最近、様子が変わったような気がして、ちょっと心配なの。」
 「そんな〜。チャングムはハン尚宮様だけですってば。(あっ、余計なことを
 言っちゃったかしら。)」
 「何ですって?」
 「いえ、あの・・・。」
 「どういうことなの。」
 「あの、最高尚宮様はチャングムに、お目を掛けられ、・・・。(これ以上言えないわよね。)」
 「それで?」
 「日々ご指導されて、チャングムも腕を上げて、末頼もしく・・・。(でもハン尚宮様が
 どう思われているのか聞きたいのよね。)」
 「だから何?」
 「最高尚宮様も、ますますご健勝であられ・・・。(あー、でもやっぱ上役のそういうことを
 知っておくのも、務(つと)めじゃないかしら。そうよね、知るべきよね。
 聞いちゃおうかな、駄目かな。どうする、どうするミン尚宮!)」
 「はっきりおっしゃい!」
 「それでは、恐れながら申し上げます。最高尚宮様、チャングムと睦(むつ)び合われて
 いるご様子、喜ばしく思っております。その・・・。」
 「あなた何言っているの!」
 「えー、まー、その、共寝(ともね)などされ、誠に御仲麗(おなか、うるわ)しく。」
 「知っているの?」
 「そりゃあ判りますってば。いぇ、存じておりますぅ。」
 「他に誰か、知る者はいるの?」
 「たぶんヨンセンだけです。同室ですので。」
 「そうね、それじゃあ仕方ないわね。ところでヨンセンとはどうなの?
 あの子ずいぶんチャングムに甘えているように見えるけど。」
 「それは大丈夫です。ヨンセンは、そういったことは全然知りません。
 ハン最高尚宮様が御付になった、チョン最高尚宮様のところの子でしたから。
 それにチャングムは、何とも思っていませんし。」
 「そう。」
 「それで・・・(そうよ、肝心のことを聞いとかなくっちゃね。それもこれも
 チャングムを指導するためよ。あたしが興味あるから、じゃないからね。)
 それで最高尚宮様、いかがですか?」
 「?」
 「あのー、そのー、あのー、お味です。 あっ、済みません、失礼なことを伺って。」
 「あなたね。あなたが教えたのね。だからあんなに・・・。これで得心したわ。
  でも本当に失礼ね、そんなこと聞くなんて。でも・・・そうね・・・悪くはないわ。
  あなた串焼きもだけど、こういうことを教えるのは、とてもお上手ね。」
 「恐縮いたします。日々研究、修練しております。」
 「では、いい教本などがあれば見せておくれ。私も精進するゆえ。」
 「えっ本当ですか。お任せください! えっと、これが最近手に入れた倭国の絵解きで
 ちょうど夜話の本と共にお持ちしておりましたが、『緊縛女体森 団鬼八作』で、様々な
 形で縛り上げ、愛を育んでいくもので、チャングムにはぴったりか・・・。」
 「これっ! 春画は禁じておろう!」
 「申し訳ありません。」
 「ふふふ、ちょっとからかっただけよ。でもありがとう、ミン尚宮。」
 「最高尚宮様・・・。」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[ハン最高尚宮の部屋]
 また別の夜。定例の進講の日である。
 もちろんチャングムは真面目に話し、ハン最高尚宮も真面目に聞いていた。
 だが終わると、
 「それで・・・。今日はすぐに戻らなくてはならない?」
 「いえ、特に何も。ヨンセンも休暇で出宮していますので、一人で医書を読む
 ぐらいです。」
 「じゃ、いいのね?」
 「ええ、私もすっごく欲しいです。それに、尚宮様からお誘いいただいたのですから、
 もっとうまくして差し上げます。」
 「そんなことはいいのよ、チャングム。いつも言っているでしょう。技の巧拙ではないと。
 私はお前の、心根(こころね)に触れたいのだと。」
 「判ってますってば。ねぇ尚宮様。」
いつものようにハン尚宮を求めようとする。

 「駄目。最近お前ばかりじゃない、だから今日は私が。
  言付けを守るって言ったでしょ。」
 「ねえ尚宮様。」
 「お前、本当に遠慮ってことを知らないのね。いいから任せなさい。そんなに
 言うことを聞かないなら、また追い出してしまうわよ!」
 「もぅ、尚宮様ってば。」
 チャングムは諦めて身を委ねた。

 久しぶりにチャングムを味わう楽しみ。この子を追い詰め、私の手の中でいかせたい。
この子の、いつもはいろんなものを目にし、いろんなことを見つけては喜ぶこの子を、
その時は私だけを感じさせたい。
 それに・・・最近、いや以前からだが、ちょっと生意気なところがある。お仕置きを
してやらなくては。
 ハン尚宮の頭の中で、あれこれ考えが、楽しく駆け巡る。

 ハン尚宮はチャングムを愛で始めた。身体を火照らせるチャングム。
 この子の瞳。この瞳の中に、私だけを映したい。かつて私が、ミョンイにそうされた
ように。そうして、この子の全てを味わいたい。
 「チャングム、そろそろあそこの味も知っておくべきね。」
 「あそこって?」
 「手を貸しておくれ。」
 そういってハン尚宮は、チャングムの上体を起こして手を取り、中指を口に含み唾液を
絡ませた。そして、その手をチャングム自身の中に入れさせた。
 「このぐらいまで指を入れると、柔らかな中にちょっと違う感じがする所があるでしょ?
 わかる?」
 「うーん。確かに何かやや硬いような、ざらざらしたような。ねえ、尚宮様のも見せて
 ください。」
 「駄目よ、今日は任せなさいって言ったでしょ。黙って言われた通りにしなさい。
 今からここをね・・・。」
 そう言うとハン尚宮はチャングムの手を除け、脚を大きく広げさせ、自分の指を入れていく。
 「こうして圧したり、擦ったり・・・。」
 チャングムの肩が揺れた。肩だけでなく腰もそして特に脚が、ハン尚宮の手の動きに
応えるように震え始めた。
 「チャングム、気持ちいいでしょ?」
 チャングムは、痺れていた。甘美ではなく不快でもない。すぐ側(そば)の、敏感な所を
愛しまれている時とはまた違う体内の感触が、身体を奔(はし)る。そしてチャングムの
内側のそれは、徐々に大きさを増していく。
 「あっ・・・はぁ・・・」
 チャングムは声を抑えることができなかった。身体を支えるため、右手はハン尚宮の肩を
掴み、左手を腰の後ろで突っ張る。
 「じゃあ、もう一本指を入れてみましょうか。こんな風にね。」
 すっかり柔らかくなったチャングムのそこを、人差し指も犯し始めた。
 「チャングム、まだ果てちゃ駄目よ。頑張りなさい。」
といいながら撫でかき回す。濡れた壁がハン尚宮の指を包み、吸い、締め付ける。
締め付けていても、粘液が涎のように滴り、指の股に絡まっていく。くちゅ、くぷ。淫らな音が小さく響く。
 指をずん、と押し込み奥に食い込ませ、そしてすっと引き抜いてやる。親指で敏感な部分を弄び、
時折り強く押し付ける。中に入れた指の動きに合わせ、割れ目を覆う襞の一枚一枚を擦っていく。
小さな花弁は充血し、触れ始めた時より大きさを増して、熱く柔らかな抵抗感を指に与える。
 「尚宮様、あぁ・・・もう・・・っああ」
 「・・・果てても、何度でもいかせてあげる。」
 もう一度、中のざらついた部分に指先を当て、壁の前方に押し上げる。外側から親指を押し付け、
中にある指とで挟むようにして揉みしだく。

 「それに聞きたいことがあるの。お前、ミン尚宮からいろいろ教えてもらったでしょ。」
 チャングムは答えようとしたが、身体の動きに支配され思うように話せない。笑みだけを浮かべる。
 「どうして?」
 「・・・あっ・・・はぁ・・・」
 「ふふっ、答えられないようね。でも判っているわよ。」
 そう言いながら、揺らいで倒れそうになるチャングムの身体を右手で支え、愛撫を続ける。
 「うまくなりたいって思ったんでしょ?」
 チャングムは師が語るのを、ただ聞いていた。徐々に身体が反りだす。
 「本当にいけない子ね。私を感じさせたいって思ったんでしょ?」
 問われても、頭が回らない。
 「うまくしようと思うんじゃなくて、お前が心から楽しまないと、熔け合うことはできないのよ。」

 「それに、そんな心配をしなくてもいいのよ。とってもいいわよ・・・この頃。
 この前、口付けだけしたときは特にね・・・。」
 「ぁあ・・・尚宮様・・・」
 「お前をもっと味わいたくなったわ。あの後で、気持ちを鎮めるのに苦労したの。
 それで実はね、次の約束の日が待ち遠しかった。」

 ハン尚宮は、チャングムを横たえ、胸をちょっと吸う。チャングムは身体をくねらせた。
それを見て更に胸を舐め回し、尖った部分を何度も吸い上げてやる。
 「だからお前にも、そんな切なさを味わって貰わなくてはね。
 それで、ここをこうしたら、どんな感じかしら?」
 膝を曲げて脚を開かせ、指はそのまま滑(ぬめ)った中を動かす。口元をチャングムの
敏感な所に沈め、指を動かすと同時に舌先で、ほぐし、転がす。

 チャングムは背中を強張らせ、師の肩を両手で痛いぐらいに掴んだ。
 耐えられない。そう思っても、なおも動かされる指や舌に、痺れの波が、寄せては返す。
頭がちょっと痛く感じるほど、逆上(のぼ)せてくる。
 ついに・・・身体を仰け反らせ、びくん、びくん、と数回大きく痙攣した。喘ぎ声、いや
小さな呻き声のような音が喉から出る。大きな衝撃が身体を貫いた。
 チャングムは次第に脱力し、師の肩を掴む腕の力も抜け始めた。それを感じて、
ハン尚宮の手が止まった。
 「尚宮様、・・・もう、お許しください。」
 息衝(いきづ)きながら、チャングムが言う。
 「許すわけにはいかないわ。このまま部屋に戻ったら、火照りが残って辛いだけ。
 ・・・私がいいというまで感じなさい。」

 ハン尚宮は、長い深い口付けをし、舌を何度も絡める。そしてうなじを齧る。
チャングムの身体をうつ伏せにしたり、上体を起こしたりして延々と責め、
肌、手、舌、その動きで絶え間なく襲い掛かり、快感を与え続けた。
 汗ばむ身体から、噎せ返るような匂いが立ち込め、部屋を満たす。
 愛撫を続けながらハン尚宮は言う。
 「これからは私が教えてあげる。いろんな愛で方で、じっくり仕込んであげる。」

 もう丑の刻を過ぎたのか。チャングムは頭の隅でふと思った。
 しかし責め続けられ、何度も昇らされていく。脚が思うようには動かない。耳に音も
届かなくなり、限界・・・それがあるのかないのかすら、よく判らない。
ただ、師の温もりと愛撫だけに包まれている。

 ハン尚宮は、チャングムの身体中を味わい、果てても果てても、疲れて動けなくなるまで、
昇らせ続けた。
 静寂と共に落ちる奈落の底。チャングムが愉悦に満たされた淵に落ちていくのを、
ハン尚宮は感じ取った。

 チャングムの息が収まり、落ち着くまで身体を撫でてやりながら、ハン尚宮は思った。
 いつまでこの子と過ごせるのか。いつかは私以外を求める時も来るのだろうか。
 「チャングム、ずっと私のそばにいるの?」
 「はい。私、尚宮様だけを見ています。」
 「そう。」
 嬉しい。だがこの言葉、ミョンイから聞きたかった・・・。この子もいつかは
ミョンイのように・・・魅力的な子だから。
 今は宮中も落ち着き、そんな風潮は少なくなっているけど、他の者を抱き、他の者に
抱かれることになっても、私は堪えられるのだろうか。

 それでもいい、それがこの子なら。私はそれをも受け入れよう。この子を好きな気持ちは
揺るがない。そして私の想いは、この身体にしっかりと刻み込んだのだから。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 季節は巡り、風薫る頃。
 ハン尚宮は、最高尚宮としての務めを恙無(つつがな)く果たしていた。
 料理はもちろん、故事や異国の御伽噺、そして珍しい出来事を、面白おかしく御膳の
合間に語っていた。
 尚宮時代は口調も硬く、敬遠されることもあったハン最高尚宮である。だが下の者が
講話の際に語る様子を聞いて自省し、次第に話し方を心得るようになっていた。
 献立と話題。どちらもが滋味にあふれていた。そんな心和む御膳のひとときは、
王を癒し、ゆえに覚えもめでたかった。

 公務以外でも、ハン尚宮は満ち足りて過ごしていた。もちろんチャングムがいるから
である。初めて結ばれた時から曲折はあったものの、互いに愛で合う関係が、今も
続いていた。

 ハン最高尚宮がこの先気遣うべき事といえば、明国の使者の接待があった。
 しかし、これは当分先のことだ。また、長らく懸案だった世継の承認は既に受け、
暫らくは形式的な行事に過ぎない。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 そんなある日、宮中で会合が行われた。数日前からハン最高尚宮は準備に追われ、
チャングムとも碌に話せずにいた。
 尚宮全てが集まったその会議を無事終え、夜半、もう休もうかと思う頃、
チャングムはハン尚宮に呼び出された。
 チャングムは不思議に思いながら部屋に行った。懇談の約束はしていなかったからだ。

[ハン最高尚宮の部屋]
 部屋に入ると、ハン尚宮は文机(ふづくえ)の向こうで佇んでいた。面持ちに憂いが
漂っている。チャングムが来るのを見て、座り、片手を机に置いた。そのまま何も話さない。
 沈んだ様子に、チャングムも掛ける言葉が見つからず、着座して待った。
こんなに当惑しているのは珍しい。以前の頑(かたく)なな姿に戻ったような気がした。

 ハン尚宮は懊悩していた。先ほどチェ尚宮とした会話が去来する。そして、あの・・・。

 何も言わないままだったが、ややして、ハン尚宮は文机越しにチャングムの手を掴んだ。
いつものように優しく撫でるのではなく、強く握り締めた。チャングムは少し痛かったが、
されるままに任せた。

 しばらく待っても黙ったままなので、チャングムは仕方なく声を掛ける。
 「尚宮様、会議の資料のまとめなどいたしましょうか?」
 「やらなくていいわ。」
 「それでは、次の祝宴の献立を考えるために、書付を探してきます。」
 「それもしなくていい。」
 「では何か・・・。」
 「ここにいればいい。お前がここにいてくれれば、それでいい。」
 手を重ねたまま、半時近くもそうしていたであろうか。チャングムの手が痺れだした頃
ようやく、口を開いた。
 「お前、今晩はいいの?」
 「はい。」
 それを聞くと、また黙り込む。

 「尚宮様、もうお休みになられませんと。本日はお疲れでしたでしょう。」
 「・・・お前にいて欲しい。」
 そういうとハン尚宮は、チャングムを引き寄せ抱きしめた。

 「チャングム。」
 「はい、尚宮様。」
 「愛しさであれ憎しみであれ、共に過ごした時は、消えるものではない・・・」
 「・・・。」
 「分かち合った時が、想いを差し向けるのか。想いは拭い去れぬのか。」
 「母のことでしょうか?」
 「違う。」
 「私のことなら、私ずーっと尚宮様のことを想い続けます。」
 「遠く離れても振り返らずとも、追い求めるのか。」
 「・・・。」
 「気付かぬのも、慈悲なきことか。」
 「おっしゃっていることが判りません。」
 「情は、消えない・・・。それを忘れないで。」

 そう言うと、ハン尚宮は唇をチャングムの唇に寄せ、口付けを求めた。ゆっくりと、
唇を重ね・・・その時、涙が落ちてきてチャングムの頬を伝わった。
 チャングムも当惑した。お辛いことがあったのだろうか。チャングムは手のひらで
ハン尚宮の背中を軽く擦った。

 ハン尚宮は思っていた。あの者との時間も消し去ることはできない。それを思うと、
心の痛みは更に増す。だが、この子にそれを告げることはできない・・・。

 チャングムはそれ以上はせず、寝支度を整え、ハン尚宮を休ませた。添い寝をし、
肩や背中を撫でる。先ほど、強く自分の手を握り締めたハン尚宮の手を、握られた手で
そっと包む。
 そのうちお気持ちを伺える時も来るだろう。今日はゆっくりお休みになって戴こう。

 優しく触れられながら、ハン尚宮は眠りに就いた。
 内人の頃、気落ちしていると、こんな風にミョンイが優しく慰めてくれた。
強張った気持ちが解れ、ゆったりとした気分になれた。
 ミョンイなき後の年月は、味気ないものだった。この子のいない人生も、
私には考えられない。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 それからまた、二人は以前のように互いを頼りとして過ごした。
 いったいこの二人を分かつことなどできるのだろうか。二人ともそう信じていた。

 否、信じていた時間は続かなかった。ハン最高尚宮の清廉さを疎み、王のお気に入りと
なる有様を妬む者が少なからずいたのだ。

 数ヵ月後、王が昏倒した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 宮中から追われた者達。

 師はその時を、子の背で迎えた。己と同じ痛苦を、この子にも感じさせてしまうかと
思うと、やるせない。
 だが、師は疑わなかった。愛しい子の心に生き続けることを。いつも側にいて、見守り
導くことを。
 今まで己を支えてくれた気丈さは、これからはお前自身を奮い立たせるだろう。
 束の間迷うことがあっても、お前は決して道を見失うことはないだろう。
 だから・・・私は・・・安心していいのね・・・・・・

 子は師のその時を、背で見取り、師を・・・長らく痛ませてきた無念の正体を、初めて
知った。そして師が友を想う時、流していた涙と同じ涙を、憚ることなく流した。


 二人は離れ離れになった。しかしそれでも・・・二人を引き裂くことは、できなかった。
 師と友がそうであったように、師は子に、情を刻み込んだのだから。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――終―――


対食:
この言葉は、NHK版ではカットシーンにありました。具体的には、第9話 黙契式において、ノ尚宮が肉親のような部下の内人を自決させ、その子(ハンイ)を育てたということを、内人昇格予定者に話した後、チョン尚宮が繰り返させる言葉で出てきます。
「王に背き裏切る行為は如何なる行為であれ許されぬ」
  <以下カット>
  「目で見るだけでも」「言葉を交わすだけでも」「手に触れるだけでも」「心に思うだけでも」
  「例え相手が男ではなく、対食(テシク)であろうと同じ事」   *つまりここでいう”百合”のことです。
  <カットここまで>
「友をいたわり、決して裏切らず、」「女官の間に起こったことは」「どんなことでも洩らしてはならぬ」

なお、「宮廷女官チャングムの誓い」のすべて李 京源 (著, 原著), 鄭 銀淑 (原著, 翻訳) ISBN 434401071X P.162-165に、そのあたりの事情が端的に説明されています。説明に必要な部分のみ引用します。
・対食とは、女官の知人(女性に限る)を宮中に招いて食事をすることを許す制度
・それを口実に、その行為が行われていたため、隠語として定着
・その行為は尚宮はその世話をするムスリ、内人はルームメイトが相手  といわれる。

 チャングム×ハン尚宮 −尽・未来際−1/3 チャングム×ハン尚宮 −尽・未来際−2/3


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