BBSPINKちゃんねる内で発表されたチャングムの誓いのSS(二次小説)を収集した保管庫です

   チャングム×ハン尚宮×チェ尚宮 (13) −星望−1/3       壱参弐様


『……尚宮様のおっしゃるように……』

 その言葉に目が覚めた。明り取りの障子越し、月明かりが部屋に注いでいる。
ほの明かりの中、半身を起こして久しぶりの寝顔を眺める。
 こうしてずっと見続けていたい……。

 腰の辺りに温もりが伝わった。チャングムが寝返りを打ち、腿をぴたりと寄せてきた
から。そして私も何も身に纏っていない。
 脱いだそれを探すと、枕元に衣類一式がきちんと畳んで置かれていた。

 あれから……それともやはり……何もせぬまま、眠ってしまったのだろうか?
この様子だと……昨日は……。
 記憶の糸を手繰り寄せる。
 いったい、いつどうなって……。


 昨夜はあれから一杯話した。お前が子供だった頃のミョンイとの楽しい日々のこと。そして
私が宮でミョンイと過ごした時の話しも。
 ミョンイと突然別れることになり、辛くて仕方なかったけれども、独りぼっちとは
全然思わなかった。いつもミョンイを思いながら料理を作ってきたから。どこかで生きて
いると信じていたから。
 また必ず会って、あれも話そうこれも話そう。時折、ひとり甘酢の壷を掘り返し
眺めては語り掛け……。
 そうやって、ずっと宮で面影を偲ぶしかなかった……と。

 けれどお前と出会ってからは、寂しい気持ちが少しずつ癒されていき、時折ミョンイの
ことを忘れてしまうくらいに。
 特に……お前をウナム寺に送ったときには、それがこの子のためになるのだと自分に
言い聞かせつつも、お前のことばかり頭に浮かび、心配で仕方なくて。

 その後も私を励ましてくれたり助けてくれたり。よく頑張ってくれたわねって。
 私が最高尚宮になってからも、ずっと……。

 ひとしきり話しも終わり、そして。
 ミョンイに話したかったことをお前に話すことができて、とても嬉しい。私も心の
つかえが解けていく気がする、そんなことを言ったっけ。
 やっぱりミョンイは、私にこの子を下さったんだと思う。それはあなたの、
チャングムの幸せを願う気持ちもあるけれども。私ならこの子を託せるはずだと信じて
くれたのだろう。その思いをありがたく受け止めたい。

 そして私にもミョンイの一番の宝物を送ってくれた。宮で過ごす私のことを思って。
二度と会えない友に、友の最後の願いを伝えようとして。そしてもう水剌間に立つことの
できない自分の代わりに、この子と共に夢を叶えなさいと。きっとそう思っておられたの
だろうってそうも話したわね。
 今まで拭えなかった罪悪感、ミョンイからいつも守ってもらってきたのに、肝心の時に
何もできなかった悔しさが私を捉えて離さなかったけれど、お前に会えたことでほんの
少しは。
 ミョンイもひょっとして少しは、許してくれるんじゃないかと思えるようになったと。

 しばらく無言で見詰め合っている内に、互いの素性が知れて駆け寄り再会した時の
思いが、胸にこみ上げた。
 もう互いを隔てるものは無いと知った時の喜び。
 今の今まで口にすることも憚られた、ミョンイという名を存分に呼び合える喜び。
 あの時のことを思い出し、もう一度チャングムの頭を撫でた。

 そして……また。
 お前もあの日のように身を寄せてきて、あの子は私の胸に顔を埋めた。思わず、強く
強く抱き締めてしまい、そのままずっと長い間抱き締め合っていたっけ。


 他の誰かに奪われてしまうのではないかという不安。
 自分が独り占めしていていいのだろうかという恐れ。
 でも相手は? 女官である限り、いや万一そうでなくなっても、添い遂げる人を
見出すのは難しい。
 では、王の目に留まれば……我が子を抱く幸せは与えられようが、けれどこんな、
何でもやりたがりの子が、狭い部屋でじっとしていることに耐えられはしないだろう。
 何がこの子にとって、一番の道なのか……しかしそれは私が全て決められることでは
ない。この子自身が与えられた環境の中で考え、決め、動くべきなのだ。私はただ、
共に過ごせる間できるだけのことをするだけ。
 この子の温もりを感じながら、そんなことを考えていた。


 それから……あの子は顔を上げて、私の方に向けた。
 透き通った眼差しに見つめられて。
 互いの願いが互いに伝わる。

 それを成就したら自分がどう変わるのか自分でも判らない。

 いや本当は判っている。すぐに明日もまた明後日もその先もと願ってしまうだろう。
 けれど。宮に戻って同じことは続けられない。何より愛し合っているからといって、
私一人のものにしておくことは、この子のためにならないのだから。
 何度も繰り返した言葉が、また頭のなかでぐるぐると回った。

 私にできるのは、一晩中寄り添ってこの子の側で過ごすことだけ。


 ちょうど今こうしているように。
 隣で眠るチャングムの唇。どこか幼さも残している唇を指先で軽くなぞった。甘美な
記憶が駆け抜け、身に疼きが蘇る。私を無限の陶酔に陥れたとはとても思えぬほど、
無邪気に柔らかい。


 それから?
 襟首から漂う、さっぱりとした香り。懐かしいこの子の匂いが喉にまで満ちてくる。
 二度と、と決めていたのに。拒まなければならないと固く。
 けれどそれを嗅ぐ内に……。このまま強引に押し倒して欲しいという甘えにも似た
感情が沸き起こった。
 ああ、節度のないことを。ようやく思い切り、私を抱く手を振り解き背中を向けた。
「じゃあ休みましょうか。あなたも着替えなさい」
 突然背中越し、強く抱き締められた。そして脱ごうとして襟元に置かれたままの両方の
手は、上からやはり強く握り締められている。
「そんなつもりで来たの? この前、もうよすって言ったのを忘れたの? お前が寝付く
まで側にいるからって」
「判っています、判っているのです」
「守れないのだったら出て行って」
「私もおとなしくお側にいるつもりでした。けれど。
 ずっと待っていたのです。尚宮様から引き離されてから、そして尚宮様がこちらに
来られてからもずっと」
「話したはずよ。あなたは遠くないうちに宮に戻る。でも私は最高尚宮にはならないし、
あなたと前のように関わるつもりもないって」
「それは判っています。だけど抱き締めていただいて。
 尚宮様のことを何度も夢に見ました。夢の中で何度も抱き締めていただきました」
「じゃあこれからも夢の中だけにしておきなさい」
「それだけじゃありません。私も尚宮様を抱きしめて……もっと深く身体も心も一つに」
「ちょっと手を離して」
 その力は緩むどころか徐々に強くなった。
「嫌です。もう二度とこの手を離したくないのです」
 チャングムの唇が首筋に触れるのを感じ、動悸が強まる。
 雨音も鳥の夜鳴きも、獣の遠吠えも何も、何の音も聞こえない。
 ただチャングムの鼓動が背中越し伝わってくる……。

 もともと人気(ひとけ)のない太平館。主要な出入り門こそ不寝の警備はされているものの、
広大な敷地に点在する宿泊所にそれぞれの部署の者が寝泊りしているだけだ。その中に
チェ尚宮の息のかかった者がいなければ、夜中にわざわざ様子を伺いにくることはない。
 そして明日は各部署が交代で取る公休日で、つまり一日のんびりしていてもいい日
だった。
 それは太平館に長く留めさせられていたチャングムも知っている……。

「私とお前は、こういうことなしでいられないの? 身体なくして志を共にすることは
できないの?」
「でも今は欲しいのです。尚宮様の全てを。全部を私の身体が求めているのです」
 泣きそうな声で続ける。
「この想いが静められなければ……心だけ……なんて……できません」
「でも静めなさい」
「尚宮様は私がどれほど……お別れも告げられぬままここに留め置かれ、誰もご苦労
されているご様子を知らせてもくれず。やっと聞けたのは、チェ尚宮様にむごいあしらいを
受けていると。
 それも……噂とはいえ聞きたくないような辱めまで……」
 私の手を握り締める拳にさらに力が入った。
 痛い。けれどこれはこの子の心の痛みなのだ。
「どれほど……どれほど。思い浮かべてはいけないと自分を戒めても、あのチェ尚宮様が
この手に触れこの肌を……思うだけで苦しくて仕方なくて」

 その言葉が胸を刺す。
 同時に徐々にあの者と心を通わせ、あの者に哀れみを覚え、そしてその内に僅かな
合間であったにしても、心地よさに痺れてしまい、そうしてひと時この子のことを頭から
追いやってしまった己の愚かしさも、自分の心を引き裂いていく。
「この前お部屋にお招きいただいた時は、なんとか抑えることができました。でも、もう
無理です。尚宮様」
「チャングム! それは無理やりされるようなものでも、乞われてするようなものでも
ないわ。だから」
「もしかして忘れられないのですか? チェ尚宮様のことを。
 愛おしいと一度でも思われた人のことを!」
 一瞬動揺が兆し、己が手を握り締めてしまったのを隠すことができない。
「そのお気持ちをお聞きして、どれほど辛かったか」
 チャングムの顔が背中に押し付けられた。泣いているのだろう、背中が湿っぽくなる。

 ようやくあの者の手から逃れ、チャングムの待つ太平館に来た時。
 もし受け入れたとするならば、あの夜だっただろう。再会できた嬉しさに、思い悩みも
忘れてこの子を抱いただろう。
 それを阻んだのは背中に付けられた傷跡――が示したあの者の記憶――で。それが
すっかり見えなくなるまで時を置いている内に、私は冷静さを取り戻すことができた、
忘れるには、あの者のことを消し去るには、私には既に十分な時間が与えられていた、
はずだった。
 けれど。
 もちろんこの子への想いが冷めたのではない。ただ、その間この子の将来をもう一度
じっくり考えたかった。
 そして自分のことも。
 チェ尚宮のこと、あの者から受けた愛情、そして自分が感じた気持ち。

 それら全てを自問自答し、ミョンイにも相談した。
 この子にも話したつもりでも。判ってもらえなかった……判りようは無いのかも知れ
ないけれども。
 幼少期から共に過ごしてきた私とミョンイと、そしてソングム。いくら
ミョンイの娘とは言え、また聡明な子であるとは言っても思い及ばない部分がある。
 その後のソングムとの関わりについても。
 やはり立ち入れない世界なのだ。
「待って。私がここを発つのはもう少し先よ。お前とそうなるなら、もう少し……」
 少なくとも今は心の準備ができていない。
「……もう。私はこの手を離したくないのです、離すことはできないのです」
 私の左手を掴んでいた左の手を持ち直して両手が押えられ、そして右手は上着の紐を
解こうとしているが、細かく震え結び目に指が入らないでいた。

 口にはしないものの、この子の思うだろうことは判っていた。
 私とあの者が身体で感じ合ったこと。その思い出が消えても、哀れみや愛しさ微かな
共感があり続けることを。それは宮と太平館のように遠く離れても、年月を置いても、
消しきれないことも。

 けれどもし私が、忘れられないと言ったなら……落胆させるだけ。
 あるいは忘れたと偽っても、触れ合う内にチェ尚宮の影を感じたなら。それでも私を
愛してくれるだろうか?
 私の奥底の感情を確かめたい気持ちと、けれどこの子の知らない私の側面を知りたく
ない気持ちが交錯しているのだろう。強引に身体を求めるのは、この子にしてみれば、
他に成す術がないから……。
 私の全てを知らなければ、この子だって自分の心を定めることはできない……。だけど。
「お前を受け止めることはできないのよ」
 やっとの思いでそう言った。

 そしてこの子は実感として知らない。今は女官同士も比較的純粋な関わりが主流の
ようだが、私がこの子の年代だった頃はそうではなかったことを。
 私はミョンイ一筋だったけれども、ミョンイに他の者を感じることはしょっちゅう
だったし、それでずいぶん口惜しい思いもした。
 けれどある意味、相手の中に他の者の存在を感じることは当たり前だった……それも
含めて相手を受け入れるのが愛すること……であると。そんな気持ちを私たちの年代は
共有してきたように思う。
 だけどお前は、私だけに気持ちを向けようとしている。その想いを裏切りたくなかった。

 ミョンイに嫉妬し執着した私が、ミョンイの娘に嫉妬され執着されるなんて。因果な
ものね。面白いというか……そう考える内、少し落ち着くことができたようだ。


 やめて、と再び言えば、さすがにやめるだろう。チャングムの方に身体を向けて座り
直した。
「待てません」
 私よりも先に、チャングムが言った。
「どうお思いであっても、どうお感じになっても。例えチェ尚宮様のことを思い出されて
も……それでもいいのです」
 その言葉に心が溶けていった。

 私だって。私だってどれほど待ち遠しかったことか。いやむしろ私の制止を全て無視し、
激しく求めてくれるのをどこかで期待していた。

 気持ちの変化を感じ取ったのだろうか。見つめる瞳が奥できらりと輝き、その瞳に
吸い込まれるように――いや本当に――吸い込まれていった。
 最後までわずかな抵抗を伝え続けた手が、いとも簡単に払いのけられた。引き寄せ
られるままに……チャングムのうなじに頬を寄せる。
 ……またこの子の肌の匂いが鼻腔をくすぐる。健康で若々しく、かすかに埃っぽい。
 思わずうなじを口に含む。唇から感じる肌が温かい。軽く滑らせ喉の前を味わうと、
この子も身を捩り応える。

 唇を合わせると、そのまま抱え込まれるように布団に横たえられた。互いに脱ぎも
脱がされもせず、服の上から身体中をまさぐりあう。
 もう何も考えられなかった。宮のことも、自分の立場も、そしてチェ尚宮のことも。

 誘われるまま、うなじの下の骨の形を探るように、この子の顎に舌を這わせていった。
 顎から頬へ、触れる頬の柔らかさに導かれた私の唇は、さらなる柔らかさを探し求めた。
 けれど、誘ってきた――のよね、この子が。その割には、唇がいつになく力がない
ように思えた。
 あまりに久しぶり。私がずっと拒み続けていたから。私がこの子の元に戻ってくるのか、
よほど心配だったのだろう。だからこうして抱き締められていることが、まだ信じられ
ないのだろうか。やっと許した今この時、この子自身どうしていいのか判らなくなっている
のだろう。そう思うとますます愛らしくなる。
 戸惑いすら感じさせる、頼りないその感触に……心が痺れてしまう。


 再び、眠るチャングムの顔を眺め、肩からずれた布団をかけ直した。

 いっぱい苦労してきたのに、今は何の心配もないというように、穏やかに目を閉じて
いる。もっとよく見たくて、蝋燭を手元に引き寄せ灯りを着けた。
 昔ミョンイに、あなたの寝顔を見ていると寛ぐと言われたっけ。時々夜中に目を覚ま
しては、私の顔を眺めていたことがあったって。
 それが判ったのは、何だか蝋燭が減るのが早くて何度も貰いにいかなくてはならない
ものだから、いつも寝るのは一緒のはずなのに不思議に思い、起きて勉強しているのって
訊ねたらミョンイは笑って答えてくれなかった。それで私がちょっと怒ったら、また笑い
ながらあなたの顔を見ているのよ、ですって。聞いて呆れてしまったけれど。
 でも本当にそうね。
 今は私が、この子の幸せそうな寝顔を見ている。そして心から安らいでいる。


 それから……。
 しばらくあの子のうなじや額を楽しんでいたけれど、あの子が私の耳たぶを指でなぞり
始めて。
 痺れが走り力が抜けた。
「尚宮様?」
 チャングムは私を訝しげに見上げている。
「何でもないわ」
「急にどうなさったんですか?」
「ううん。別に」
 チャングムの手が再び私の耳の後ろを撫でる。
「うっ」

 チャングムがまた見上げた。まじまじと見つめる目が次第にいたずらっぽく変わった。
 身を起こし半身を私の肩にもたせかけ、動けなくした耳元に囁き声がした。
「ここ、お感じになるのですか?」
 押し付けられた唇から逃れられない。
「前はそうじゃなかった……」
 何も言えずしばらくの間、片耳は指先でもう片方は唇でついばまれた。
 身体が熱くなる。

  ふふっ
 聞こえてきたのはため息ではなかった。
「感じるようになられたのですね。つまり……そういうことをなさってたってことです
よね」
 恥ずかしさに今度は顔中が熱くなる。
「ミン尚宮様に教えてもらったことがありました……女の人の身体はいろんな場所が
感じるけれど、それは人によっていろいろで……だからそれを見つけてって。
 それで……だけど無理は駄目なの。お互いに寛がないと気持ちよくならないからって。
 でも一度覚えたらそれからは」
「本当にミン尚宮は余計なことばかり言うわね」
「ということはですね……尚宮様」
 また唇が押し当てられ、身体が痺れ始める。
「チェ尚宮様に……ここを……。
 こんなこともされたのですか?」
 舌先が耳孔で蠢く。
「よかったのですね……」
 答えたくても小さく首を動かすのがやっとだった。
「そして……今されているようなお顔で……昇り詰められた」
 チェ尚宮と過ごした夜がちらりと頭を過ぎったが、うなじあたりから流れ迸る快楽が
押し流していった。
「……きっとこんな風にお声まで上げられたんでしょうね」
 自分でも呼吸が荒くなり、喘ぎ声まで入り混じり……

 その後のことは覚えていない。


 ようやく息が整うと、隣で見つめているチャングムと目が合った。
 先ほどの囁きが耳に蘇り、また恥ずかしくなる。
「お顔が真っ赤です」
「お前があんなことを言うから」
 それを聞くとチャングムは仰向けになり、天井に目をやっている。

「その時私のことを思い出していただけましたか?」
 ごめんなさい、と言いかけて、けれど真剣な顔付きに不安になった。
「……怒ってる?」
「ええ。
 私しか見たことのないお姿を……チェ尚宮様にお見せになったのですから……」

 いやあれは……そうしたくてしたわけじゃなくって……本当は私も嫌だったのよ、でも、
でも……どう言い訳をしようとも。
 いや話せば話すほど、私の覚えた生々しい強い感情……劣情と愛情と……が伝わって
しまうだろう。

 しばらくしてチャングムの目から笑みがこぼれた。
「いいえ、ちっとも。恥らう尚宮様がとてもかわいいなって、少しいじめたくなった
のです」
「この子ったら……」
 二人して笑う。

「尚宮様」
「何かしら?」

「私思ったんです。
 ずっと甘えっぱなしだったなって。部屋子だった頃から内人になっても。尚宮様が最高
尚宮になられた後も、独り占めのようなことをしてきたって。
 ずっと……私を大切に思ってくださったことを感謝してもしきれないのに、そしてまた
母の一番の友達だったって知って。私は孤独だと思っていましたから、ただ嬉しくて。
 尚宮様の全てが自分のものなんだと有頂天になって、そして尚宮様がいらっしゃれば、
もう母のいない独り身ではないんだと、いい気でいたんだと思います」

「でも私も内人になってかなり経ちます。これからは自分で考えたり自分の行いに責任を
取ったりしていかなくてはならないのです」

「私が宮に入ってから内人になるまでの十年も、あっという間でした。
 そしてたぶん、あと十年くらいすれば私たちの中から尚宮になる者も出てくるでしょう」

「そうなれば後輩を教えたり、後輩のしたことに責任を取ったりもしなくてはならなく
なるでしょうね」

「今までみたいに、自分の思うとおりにして、そして尚宮様にご迷惑をかけてばかりは
いられないのです」

「もっと精進して、真の料理人になろうと思います。母が目指したように、実力で最高
尚宮になろうと思います」

「それが、母の夢を、母自身の夢であり母が私に託した夢を叶えることだと。母の無念を
晴らすことができるかどうか、それはまずその一番の願いを実現してから考えます」

「そして……尚宮様も宮にお戻りになったら。最高尚宮ではなくても、やはり重責に
あられることは間違いないですし」

「私のような者にだけ、目を向けていただくわけにはいかないでしょう。
 ましてや私が尚宮様ご自身のことに口を差し挟むとか、それはしてはいけないのです」

「ですから……」

 その先は言わずとも。もうこのような関わりは終わりにしなくてはいけない。

「そう、これからはね」

「だけどこれまでのことは必要だったって思っているのよ」

「本当はね、時々お前といるのが辛いこともあったの」

「あんなことさえなければ、私はずっとミョンイといられたでしょうし、こうやって
尚宮になり、尚宮になってもあの子はいろいろ研究して、そして私に教えてくれた
でしょう。
 私も出来る限りの技を磨いて、あの子に伝えもし。
 真の料理人になるという一つの夢を二人で追って、そしてたぶんミョンイが最高尚宮に
なるのを見届けるのだなって」

「だけど私は突然、共に歩む相手を失った」

「現実の繋がりはそこで断ち切られたのに。私はそれを受け入れることができなくて」

「あの頃と変わらない姿を思い浮かべては、あの人だったらどう考えるだろう、どうする
だろうってそればっかりで」

「周りの皆は私が誰とも話さないって言っていたけれど、私はいつもずっと、あの人と
話していたわ」

「そんなある日また突然お前を授かった。
 お前はとても手のかかる子で、ミョンイを忘れそうになったことも度々だったって
ことは、さっきも話したわね。それは私の心を癒してくれる反面……」

「私の心からあの人を奪い去っていくことが妬ましくもあった」

「あの人にしてあげられなかったことができる喜び。ミョンイにしてもらいたかった
ことをしてもらえる喜びを感じ」

「その裏にある、羨ましさ」

「ここにいるのがミョンイだったらと」

「何度もそういう思いが蘇り、お前に心を預けきれない自分に嫌気がした」

「でもお前があの人の娘だと、ミョンイの希望と夢だと判り」

「私だって独りではないのだって思ってはしゃいで」

「ミョンイとの時間を取り戻そうとして、そして」

「こんな……深い関わりを交わすようにまでなった」

「だけど……お前の言うように」

「内人ともなれば女官としては既に一人前。これから先はお前自身が自分の道を探して
いかなくてはならない」

「その結果も自分で受け止めなければならない」

「それは、私の覚えているミョンイの生き方とは違うだろうし、そしてまた私がこう
なって欲しいと願う道とも必ずしも同じではないのでしょうね」

「それをお前が成長していく姿、これまで過ごしてきた時間と関わりで私は学んだ。
そして我が身にも知らしめることができたと思うの」

「ミョンイを追い続け、お前をミョンイの代わりにしてはいけないんだと」

「それにたとえミョンイがあのまま宮にいたとしても、いつかは私たちは別々の道を
歩んだのだろうと」

「私自身も、私に与えられた役割を果たしていかなくてはならないんだと」

「寂しい気もするけど、お前もそう思うんじゃない?」

 チャングムは軽く頷いた。
 私だけを見て、私の後を歩いていたあの小さな女の子が、いつの間にか大人になって
いる。
 私はあの子にとって絶対の存在ではなくなり、ひとりの人間として――もちろん師と
弟子の分を弁えつつ――私そのものを、時には弱いところ、秘めねばならない部分も
含めて受け入れてくれたということだ。私の中にチェ尚宮の痕を見て……強く葛藤して
いるであろうにそれでも私を。
 無条件に注がれる愛情に……やっと、ミョンイを失って以来やっと、私にも心を許し
合える人が出来たのかもしれない……と思う。

 愛おしさがこみ上げ、寝巻きが未だ肩に残る上から撫でる。チャングムの手も私の肩を
軽く抱き、引き寄せ合い唇を合わせる。触れる柔らかな唇は、既に何度も重ねているはず
なのに、あたかも初めて合わせる時のように軽く閉じられたままだった。
 それは、今までの関係の終わりと、そして新たな関わりの始まりを予感させた。


「でも尚宮様。今夜は私が独り占めしますから。いいですよね」
 茶目っ気が表情の中に浮かびだした。
「尚宮様の感じる所を見つけて、もっとよくして差し上げます」
 人が真面目に話しているのに、判っていないのかそれとも聞いていないのか。ちょっと
むっとする。
 何もかもこの子の好きにさせるものか。
「もう身体は落ち着いたでしょ。じゃあそろそろ休みましょう」
 そんな、とでも言いたげな目をしていたが、仕方ないのかとちょっとしょんぼりした
様子で寝巻きの襟元を合わせ直し、布団をかぶった。

「ねえ、聞きたいことがあるんだけれど」
 布団をそっと持ち上げ、チャングムの瞳を見つめた。
「あなたの夢の中で、私はどんなだった?」
 今度はチャングムがはにかむ。
「どうって……ただお美しくて…………そして激しくて…………」
 チャングムのおとがいを傾け唇を重ねた。
 そして下唇を滑らせて、チャングムの上唇を左右にたどっていく。柔らかで、けれど
にゅるにゅるとした触感に、痺れが頭の芯からこみ上げてくるはず……。
 舌先で小さく探りを入れると熱い息が漏れた。
「夢とどっちがいい?」
「夢で見た……私の覚えていた尚宮様とは別の……お姿だったから……今の方が夢を見て
いるみたいです」
「じゃ、あなたはどんな風にしてくれたの?」

 しばらく返事が無かったが、思い切ったように言う。
「だったら私が夢でしたことを全部させてください」
 答えを聞く前に私の上着の紐をスルスル解いていく。

 そして衣服を少しずつ、まず私の上着から。
 身を寄せ合うと温もりが一層深まった。かつてこの感触に……身体中を愛され何度
我を忘れただろう。まだ始まったばかりなのにもうこんなに夢中になって、はしたない
……理性が自分を叱責する。
 あの者に抱かれていた時に、抱き合うときにも冷めた目で見られるようになれたと
思っていたのに。また再び、この子に我を失ってしまうのだろうか。
 己が欲望に軽い嫌悪を覚え唇を離そうとすると、その隙間からチャングムの吐息が
小さく漏れた。
 ふと見ると、チャングムがじっと覗き込んでいる。
「我慢されなくてもいいんですよ」
私が冷静でいられたのも、そこまで。
 今宵は、この子に委ねようと、この子の気の済むまでただ身を任せようと思っていたのに。
 そんな思いが脳裏をよぎったのもつかの間、強く抱き寄せ唇を貪っていく。

 昂る……気持ちが
 もう
 抑えられない

 理性はかけらと砕けた。
  あぁっ
 吐息と共に漏れた切ない声を合図に、口を開いて重ね合わせた。この子のそれが
私の中に潜り込んでくるよりも先に、私から舌を忍ばせ火照る舌を絡め、裏側を中心に
こねくりまわす。
 今はただ、あの子の唇も舌も歯も……そこにある、触れているもの全てが私を支配する。
いや頭の中からは、もっともっと、という甘美な誘惑が次々押し寄せた。
 まるで目が眩んだかのように。
 二枚の舌は、今やそれ自体が意図と意志を持ち、何度も絡み合う。時折口の端から
溢れる愛しみの名残は、互いの指で拭いとった。

 唇を合わせたままあの子の肌着に手を掛ける。あの子も口元を離さないようにしながら
袖から腕を抜く。張りのある乳房が現れ、それを下に眺めながら、また抱き締めた。
 素肌が直接触れ合う心地よさ。

 唇を開き加減にして、招き入れるように導くと、この子の舌が私の中に滑り込み、
それをまた……存分に味わう。

 私の腰に添えられたチャングムの手が、次はチマだと伝えた。二人を隔てていたものが
徐々になくなっていく。

 布団の上に寝かされ、ゆっくりと覆いかぶさってくるが、けれど両方の肘で脇を支えて
いる。その身体を引き寄せた。
「重くはないですか?」
 遠慮がちに聞いてくる。
「どうして?」
「山に行ったとき、お辛そうでしたから。まだ尋問で打たれた傷が痛むのかと」

 むしろ重みも何もかもを感じたかった。ぎゅっと身体全体で受け止める。チャングムも
安心したのか、両手を背中一杯に回し遠慮なく抱きついてきた。本当は、ちょっと重た
かったけれども、押し潰される感触がたまらなく心地よい。
 そして内股を密着させる。

 チャングムの胸に耳を当てると、トクントクンと鼓動が伝わってきた。
 生きているこの子、そして私。その実感をもっとと、胸をからうなじを唇で。この子は
私の体の上でされるまま。
 身体の上半分をひとしきり味えば次は……。
 太腿に触れるとすべすべとした肌の弾力が、私の手を心地良く弾き返した。ああ
もどかしい。もっと柔らかな食感が欲しい。この子も何度も腰をくねらせ、合間合間に
口付けをし舌を絡ませ、次を促すような仕草を見せた。

 しばらくしてチャングムは、両方の腿の裏に足を絡めてきて、私の足は少し開くような
形になった。そしてチャングムの指が下穿きの上から往復し始めた。
 私もチャングムの足の間にある……腿と布きれの隙間を潜り、温かい泉の中へ指を
忍ばせた。もう充分に潤い、そして待ちきれないとでも言うように指先に巻きつこうとする。
 でもチャングムの方はなかなか私のその部分に触れてくれないで、相変わらず布地の
上を辿っているだけだ。
 ひりひりする欲望。
 そしてこの子が動くたびに長く伸ばされた髪が私の頬を撫で胸を行き来し、身を
捩ってもまだ緩慢な刺激しか与えようとしない。たまらなくなり、私もチャングムの
胸の頂を指でさすったり、時々顔を寄せて口付けをしたり。
 次の愛撫をねだる。

 やっと……私のしているのと同じように……じかに触れてきたのと吐息が漏れるのは
同時だった。

「欲しかったのですね?」
 その言葉に――自分の欲望が見透かされているようで――ぎょっとして、目を見開いて
しまった。けれどこの子は私の目蓋に軽く口付けしながら、
「ずっと可愛がってあげますね」
と淡々と言い、熱い息が首筋に浴びせかけられる。この子の、髪から漂う甘い汗の匂いに
身震いし、また吐息、いや自分でも喘ぎと判るほどの声が出てしまう。
 首筋から唇が離れた。
 うなじや胸を味わった顔が上気している。
「尚宮様の息がくすぐったくて……とっても熱い」

 また身を重ねると、残る物を脱ぐのももどかしくなり、下穿きは足で押しやった。
 何も防ぐものが無くなったそこは、手のひらで押しつぶされ指先で摘まれ、指の侵入に
蹂躙されていく。
 長く長く口付けを交わされ、息苦しさに肩を押しても、却って強く抱きかかえられ、
舌を差し入れられる。
 だから唇を離すたびに喘ぎ、熱く湿った吐息を浴びせかけながら肩を齧られ、私も肩を
噛んで応えた。

「本当にきれい」
 小さい……けれど敏感な部分の小さな動きが私の全身を大きく揺さぶり始めた。
「もっとよく見たい……」
 つぶやくお前の顔もいきいきと燃えている。
 チャングムは身体が横にずらし、下から回した腕で私の肩を抱き、片足は絡めるように
残して、再び動きを始めた。
  あ あ
 重みから解き快楽の波を純粋に味あわせようというのだ。私の乱れる様の全てを眺め
ようというのだ。
  あっ うふっぅ
 痺れと共に、足腕が細かく震えた。
「つかまってください」
 崩れそうな身体から手を取り自分につかまらせる。
 この子の肩に指を食い込ませて耐えたけれど……愛撫と吐息に包まれて……
昇り詰めていった。


 夢心地の中で、私はかつての抱擁を思い出していた。

 幼馴染だったミョンイが、いつしか私とそうなって……私はそれを嫌ともなんとも
思わなかったし……されるまま……取り立てて好みもしなかった。最初の内は。
 けれど肌が馴染むにつれ、私の方からさりげなくねだるようになっていたようにも思う。
 そんな私にミョンイが時折、行為の合間に私を……囁き声で……翻弄した。
 それはちょうど、今チャングムが言ったように。
 私の身体や心の底まで支配し……全部をさらけ出す私を愛してくれた。
 思い出しても全然恥ずかしくない。ただ幸せだったあの頃。


 陶酔の果てに、髪の毛を撫でられる感触に目を覚ました。
 目を開けた私を見て、しばらくぎゅっと抱き締めてくる。温もりが肌から胸の中へ
伝わった。
「何度も……感じておいででした」
 そうだった。苦しいほど……激しく。

「でもこれで終わりじゃありませんから」
「疲れてない?」
「全然です。まだちっとも。だってチェ尚宮様以上にして差し上げたいし、そして感じて
いただかなくては」
「もうそんなことはいいのよ」
「それは頭では判っているのです。でも尚宮様の火照ったお顔を見ると、どうしても思い
浮かんで、お腹の中からもやもやした気持ちが湧き上がってしまいます」
 うつむくチャングムの頭を撫でる。
「ねえ、ちょっと一息入れない?」
「そうですね、まだ夜は始まったばかりですから。私お茶を入れてきます」
 そう言うと寝巻きを簡単に着直して小走りに出て行った。
「相変わらず元気ね……」

 二三度台所と障子の向こうを往復する足音が聞こえて、しばらくすると湯気を漂わせた
土瓶と共に戻った。

 盆の上に湯飲みを並べ白湯を注ぎ入れると、芳しい香りが立ち上った。覗き込むと
淡紅色の花びらが八重に咲こうとしている。
 私も寝巻きを羽織り、湯飲みを手にした。

「きれいだったので、木に登って摘んで漬けておいたのです」
「ここの庭のは、私が来た時には葉桜になっていたわね」
「ええ山桜で、まだ咲き誇っているのがありましたので」
「いい香り。ほんのり甘味も感じる」
「これは塩で軽く押しただけなので、渋みが残っているように思います。もう少し時間を
置いたら熟(な)れると思うんですけど」
「宮に戻ったら、いろんな花を漬けてみましょう。酢を少し入れたらもっと色鮮やかに
なるかもしれないし」
 あれやこれやと話しながら、桜茶をすする。

「それでね尚宮様。さっき台所の明り取りの窓から、星がとってもきれいに見えましたよ」
「そうなの。じゃあ一度二人で夜空を眺めて過ごさない? 今はこんな格好だから、
さすがに無理だけど」
 また二人して笑う。

「今ね、昔のことを思い出していたのよ」
「え?」
「見習いの頃ね。
 宮にいると春先は宴が多いでしょ。秋もそうだけど、そんな時期の女官、特に見習い
なんて宮の中のお使いに出ることもほとんどなくって、昼日中厨房とかで作業をし続ける
じゃない。だから季節の移り変わりを感じるのは、目の前に次々運び込まれる食材から
だけだった。
 ミョンイは宮に来るまではあちこち出かけていたらしくって、今頃梅が香る頃かなあ
とか言って」

 また湯を口に含む。一服のお茶が行為の後のけだるさを癒していく。

「ある時桜を見に行こうって、私とソングムに声をかけて。真夜中にね。
 最初は宮を出て山手に行こうとしたんだけど、さすがに夜の山は怖いし。まあ今考え
たら抜け出すなんてとてもできなかっただろうけれど。
 それで、じゃあ庭の向こうの方の宴会場として使っている広場にある桜だったらって、
ソングムが言って。
 いつも遠目にしか見られない場所だったし、なんだか楽しそうで、普段だったら止し
ましょうって言い出す私もあそこならいいかもって、いそいそと上着を羽織って手を
つないで出かけた。
 今は埋めてしまったけど前はそこに池があり、舞台とかの飾り付けが設えてあって
船も浮かべてあったり。まだ宴の余韻が残っているような気がした。
 その池の畔に三人腰掛けて。あたりは真っ暗で、だけど月明かりに桜の花がぼうっと
霞み、それはそれは美しい幻想的な絵のようだった」

「夜桜はちょうど満開で、風が吹くと花びらが舞い、星と共に煌いた。
 だけど時々花ごと、くるくる回りながら落ちてくる。なんでだろうって不思議に思って
いたらソングムが木に留まって花をついばんでいるスズメほどの鳥を見つけて。
 蜜のある花びらには見向きもしないで、軸を齧っては下に落としているの」

「みんなで、きっと私たちにきれいな花のままでくれようとしているのねって言って、
落ちてくる花を集めたり、しばらく小鳥を眺めていたりした。
 後で内人様に聞いたら、四十雀(シジュウカラ)じゃないかって教えてくれたわ」

「尚宮様も、お若い頃はいろいろやんちゃをされていたのですね」

「まあ、ミョンイがどこかへ行く時は私たちの手を引っ張っていったから。連れられる
ままにあちこち」

「それに特にあの頃は忙しすぎた。年中休みらしい休みもなく、自分たちの部屋と厨房
との往復の毎日だった。
 それは内人様も尚宮様もおんなじで。だから皆こっそり気晴らしをしていたみたいね」

「私たちのように出歩く者もいれば、囲碁とか麻雀とか……お小遣いを賭けてしたり。
部屋で飲み過ぎたり、見つからないかどきどきしながらいけない本を眺めたり……今
思えば風紀が乱れていたわねえ。
 お前のトックおじさんも、お酒や遊び道具を持ってきてはこっそり売っていたっけ」

「あはは、そうだったんですか」

「だからってことはないけど……お前たちが多少の悪さをしても、全部お見通しなのよ。
私たちにしてみればね」

「今ここに来て改めて思うんだけど、やはり自然の趣は多くを教えてくれる。
 お前もミョンイもそういう経験をしてきたから、他の人にない料理を描き出すことが
出来るのかもしれない」

「だからね、これからは太平館にも順番に尚宮や内人を来させて、ゆっくり本を読んだり
山川を見て歩いたりしてもらったらって思っているのよ」

「でもまずは私たちがここで学ばなくては。
 今なら何でしょうね……藤とか、もうすぐ紫陽花が見ごろね。紫陽花は太平館にしか
ないから、よく見ておきましょう。きれいだけど、その葉を馬が食べて暴れだすことが
あるから、牛や馬が絶えず出入りする宮には植えないんですって」

 そんな話しをする内に、湯飲みも八重桜を残すばかりとなった。飲み終えれば、また
……それが。
 二人に久しぶりに訪れた、そして恐らく最後の夜なのだから。


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