BBSPINKちゃんねる内で発表されたチャングムの誓いのSS(二次小説)を収集した保管庫です

   チャングム×ハン尚宮×チェ尚宮 (13) −星望−3/3       壱参弐様


「嫌い?」
「え?」
 訳が判らないという顔だけど、それはそうよね。何の説明もしていないのだから。
「こんな私のこと……嫌に……ならない? はしたなく求めて、乱れて」
 今の私は、あなたのことをミョンイとしてしか見れないの、なんて言えない。

 チャングムはしばらく見つめていたが、答える代わりに肩を持つ手に力を込め私の
身体を裏返えし圧し掛かってくる。
「とろけて溶けて。私に身の全部を委ねてくださって」
 抱き締められ撫で回され舐められ、むしゃぶりつかれた。
「ああ、こうやって尚宮様をこの手に。あの泣いてばかりいた日はなんだったのかしら」
 つぶやきながらうつ伏せの身体の下にこじ入れた手は乳房を探っている。
 背中の上にいるこの子の剥き出された……想いに焦げ臭さすら感じてしまう。その
微かな嫌悪の兆しを見て取ったのか、また腕が束ねられ手指を口で吸い上げられる。
「嫌いになんてなりません。いくら変わられても」
 チャングムの息が荒くなる。
「いいのです、それで」
 汗がぽたりと流れた。それを手で伸ばすように私にこすり付けてくる。
「身体中に私の匂いを染みこませたい」
 いくら自分を過剰に上に置くように振る舞っても、私を支配するように制しても、
お前の望みは満たされないだろうに……。

 だけど身体中にまぶされたこの子の汗……ああそうだ、この懐かしい香りが鼻奥から
記憶を呼び覚ましている。どうして今まで気が付かなかったのか。
 それはきっと……ソングムの……熟れやや饐えかけた体臭を浴び……それまで
この子の若さだと当たり前のように思っていた匂いに……深く交わって初めて醸し出
される馥郁(ふくいく)たる香りの中に。昔のままのミョンイがいることを……沈めたはずの
記憶の底から浮かび上がってきたのだろう。
 こんな気持ち……自分が嫌になる。この子にも……申し訳ない。
 だけど今は。

 そんなことを思う間にも肩は齧られ、耳を舐められ、手は休むことなく体中を撫で
回している。
 判っている、判っているのよ。そうするのはお前の欲望からではなくって。心を求める
術として、いや、自分で自分を確かに感じられる手段としてそうせざるを得ないのだって。
そしてまた、私を離したくない想いと、より深く接したい気持ちだってことは。
「そしてもっと私のものにしたい。私だけを見て欲しい。お心も何もかも全部を」
 もちろん私も同じで。お前を離したくはないし、もっと強く結ばれたい。
 ―――あの時、よく自分はおかしくならなかったものだと思う。けれど今この子を
    いやこのミョンイの心が私から離れたら、私は跡形もなく崩れてしまうだろう。

 だけども。
 これだけ互いに深く想い合っても……この子がミョンイ……そしてソングムを越えられ
ないのは……そして私も最後の心を解き放てないのは。
 愛し合う相手をその時でも敬しなければならず、私は師匠として振る舞わなければなら
ないってこと。このような関わりの最中であったとしても、つまらない敷居があって。
 ―――本当は思いっきり甘えたいの。
     ねえ、今だけ、ミョンイと思っていいかしら。

「チャングム……」
「尚宮様?」
 続けられる愛撫に、言葉が続かない。
 私を仰向けに変え、髪を手で梳きながら囁かれた。
「なんでもおっしゃるように」
 でも、私を尚宮様と呼ぶな、なんて言えない……嫌われたくないから……今はこの子に
されるままに……ただ溺れよう。

 けれど知らない間に、腕に力が入っていたようだ。
 また両手を上にされ、脇の下を責められる。
  もっと ああ いぃ
「ここですか? こんな感じですか?」
  うううぅ
 喘ぎ混じりの自分の声。顔がかっと熱くなる。
「お顔がつやつやして」
 頬を両手でつつみこんで言う。
 先ほどのように上気した顔を見られているのだろう。想像するだに恥ずかしい。
「そろそろですね?」
 交差した脚の間を軽く擦り付けながら、上は乳房同士が触れ合う程度の距離にある。
私の手はチャングムの肩を持ち、脚ももたげられて腰に深く絡めさせられた。そして唇を
重ねながら、漏れる喘ぎを深く吸い込まれながら、この子の重みを感じ、けれどその重み
すら跳ね返すほどに背中を仰け反らせて……また……。

 そう、こうしてミョンイは私の力の抜けた手足を自分に巻きつけて……私のその時も、
ずっと見つめてくれて……あったかい。そしてとてもかわいいって言ってくれて、その
後はぎゅーっと抱きしめて、そして優しく撫でてくれて……かわいいかわいいって囁き
続けてくれた。あなたが大好きよ、とも。

 背中にあった手の動きがぴたりと止まった。
 ぼんやり眺めると、チャングムも私を見ている。
「全部が欲しいって思って。そのお心……チェ尚宮様に対するものも……そして……」
 重ねられた胸から、この子の鼓動が激しく伝わってきた。
「だけど尚宮様を独占したいっていくら思っても。どれだけ愛しんでも、どれだけお喘ぎ
になっても乗り越えられない。尚宮様を変えることはできない」
 鼓動は更に強くなった。
「さっき……お辛そうな顔をなさってました。でも時々……遠い目をされて。それから
幸せそうに微笑んでられました」
 胸を頬擦りされて、私は吐息を漏らした。
「この温かい身体の中で、どなたのことを想われて……いらっしゃったのか。
 それは……決してチェ尚宮様じゃない。肉体の欲望からじゃない」
 しばらくして意を決したように言う。
「尚宮様に一途に思い続けていただけるなんて」
 チャングムはまた背中を撫でてくれる。
「そして。さきほどは身震いまでされていましたよ。見たことのないような、かわいくて、
穏やかなお姿で。深く満足されているご様子でした。
 母に抱かれて……昂られたのですね。その時の尚宮様は本当に美しいなって」
 チャングムの頭を撫でた。
「お前にこうして見つめられ、温もりや汗の匂いを感じ……ごめんなさい、本当に何も
かも頭の中から消えていって、そして……幸せだった昔を……さっきはどうしても……
抑えられなかったの」
「お心の全部を受け止めようとしても、それでもちょっぴり妬ましくなってしまう。そう
感じる自分が嫌になってしまう」
「お前が悪いのじゃないのよ。いつまでも忘れられない私がいけないの。これだけ愛され
ているのに。お前といるのに、ふっと、あの人といるように思って」
「……いつまでたっても羨ましくて。だけど……誇らしくも感じます。こんなに尚宮様に
愛していただいて」
「……そうよ。とっても素敵な人だったわ」
 チャングムは私をじっと見ている。
「本当にごめんなさいね」
「いいえ私はいいんです。そして嬉しいです。尚宮様のお心の奥底までお見せいただいた
のですから。
 でも、なんだか不思議な気もします」
 私の脇腹を触りながら言う。
「尚宮様は私に母をお感じになって。私は尚宮様の中に母を……」
「私はミョンイがいなければお前とも出会っていなかっただろうし。あなたももちろん
ミョンイがいなければ……だからこうやって私たちが結ばれたのも」
「そうですね。ある意味、自然なことなのかもしれません……だけど母の……女の部分を
感じてしまったのは、ちょっと複雑です。頭では判っていたつもりなんですけどね」
 小さくため息をつく。
「そうねえ。お母様の……そうねえ。でも……そうやって、少しずつ大人になっていくの
かもしれないわね」
「おかしいですよね。私は尚宮様のこのようなお姿を見ていたというのに」
「でもそれも自然な気持ちじゃないかしら。自分の親だけは違うって」
「尚宮様」
「なにかしら?」
「私は尚宮様と……こうしてお身体にも触れていたのに。ずっと、そのお気持ちを秘めて
いらっしゃったんですね」
「いや、隠していたつもりもなかったの。もうすっかり落ち着いたと思っていたのよ……
今夜お前に抱かれて……ふっとね」
「心の奥の奥では、きっとお辛かったでしょうね」
「あの人とは別れを告げることもできなかった。その残念さはあるけれど。
 でも私の未練を伝えてお前を悲しませる方がもっと辛い」
「私は本当に大丈夫です。そのお気持ちも含めて、全部が尚宮様なんですもの。
 尚宮様の愛が私にないというわけじゃありませんから」
「ずいぶんと大人びたことを言うようになったわね」
 そんなこの子は食べてしまいたいくらいに愛おしい。
 手を伸ばし胸や首筋、腰。頬擦りをし唇で味わっていく。
「無理やり離されて……どれだけ大切だと……一緒に過ごしていたら判らなかったことが
たくさんありました」
「私もよ。あのまま宮で変わらず過ごしていたら気が付かなかったことも多いと思う。
 まあだから……私たちに起こった辛いことも……その意味ではありがたく感じても
いいのかもしれないわね」
 チャングムは私のおとがいに両手のひらを当てて言う。
「尚宮様、私を…………母と思って……くださっても……いいです……」
 チャングムの胸に左手を置いて言った。
「でも、悪いわ。この身体はお前のものであって、ミョンイの代わりじゃないんだから」
 私はチャングムにぎゅっと引き寄せられた。
「本当にいいのです。だって……とっても気持ちよさそうにされていたのですよ。そんな
尚宮様をもっと感じたいのです」
 下から抱きしめる手に力が入る。
「ね、いいでしょ? お望みのようにしてください」
 首筋に唇が這った。
「いいって言ってくださるまで」
 そう言うと、この子の身体の横に添えていた私の脚はチャングムの脚によって器用に
裂かれ、その間にチャングムの腿が割って入った。
「離しません……こんなことしたりして、ね」
 膝を立て気味にして左右にくいくいと揺さぶる。
「後ろから……失礼します」
 腰を撫でまわされ、その腰ごと腿に強く押し付けてくる。
「いいお顔を見せてくださいよ」
 お尻をまさぐる手が、徐々に押し付けられている部分に近付いてきた。
「もうこんなに!」
 潤んだそこは、たどり着いた指を苦もなく飲み込んだ。その間にも、チャングムの唇は
私の乳房を捉え、舌を長く伸ばして転がしたり甘く噛まれたり。
「いっぱい気持ちよくなってくださいね」
 私はこの子の肩を噛むのが精一杯。身体の上でいいように振り回されている。
「楽しかった時を思い出されて……」


 子供の頃から触れ合っていたし互いの家にお泊りもしたから、同じ部屋になっても別に
何の遠慮も感じなかった。当たり前のように手をつないで眠り、夜中に目を覚ますと、
いつの間にかこちらの布団に潜り込んでいたことが何度もあった。
 だったら最初っから一緒に寝ようと言い始めて、寝息を真隣に感じながら眠りについて。
 すると今度は肩を撫でてくれたり、足が軽く絡んだり。私もそんなミョンイをそっと
抱き返したりもした。
 撫でられる場所は、お腹や腰や……胸もたまに。服の上からだったけれど、心地よくて、
日中の辛いことも忘れ安心して眠ることができた。
 その頃既に男女のことは聞き知っていたけれど、ミョンイとそうなるとは思っても
みなかった。
 それぐらい、自然な形で始まったわね。

 それが、いつの頃からか膨らんだ胸をなぞるように触られ、私の手を肩に回して触れ
合う部分が大きくなったり。絡んだ足は時々寝巻きが跳ね上がり素足の部分がくっつい
たり。そしてまたいつの頃からか、太腿が脚の間に押し付けられるような格好になったり。

 そんなある日。ほっぺ同士を合わせるのはしょっちゅうだったけど、耳元に生暖かな
風とぞわぞわした音を聞いたときはびっくりして、思わず跳ね返した。
『動かないでよ〜』
『な、何をしているのよ』
『何って。かわいいから』
 いつもとは違って私の身体は強く押さえ込まれ、しばらく首筋やら頬を唇で触れられた。
 そして私の真上から見つめる顔が徐々に近くなり……唇同士が。でもただ唇をなぞる
唇は、妙にあったかいものだなと感じただけだった。
『あははー。ペギョンの唇って』
 そういうとミョンイはいきなり布団をかぶってしまった。
『私の唇って、何なの?』
 布団に手をかけて聞いても答えてくれなくて、ただ笑いを堪えているようだった。
 私も仕方なく、そのまま眠りに付いた。

 その次の日から。ミョンイとの触れ合いは、だんだんとそういう意味へと変わって
行ったと思う。
 首筋だけでなくて胸元も大きく広げられては頬擦りされた。足先を絡められ、太腿を
繰り返し押し付けられて。そのうちお腹の下あたりが、ほわっと気持ちよく感じたりして。
さらにミョンイの背中に腕を回させられたりとか。
 でも唇は何度も重ねたが、触れ合うのは唇だけだったし、身体も半身を添わせる程度
だった。だけど、そうされた後は私の身体もほくほくし、それは身体をひっつけたから
とはどこか違い、なんだか心も楽しく、そして……身体の奥がしっとりし始めるのを
感じていた。

 男女のことは聞いていたものの、それはある意味絵空事。自分の身体に起こることとは
結び付かなかった。布団の中で身体を寄せ合い、挙句変な気持ちになり下穿きを汚す。
それがなんとなく恥ずかしいことに思えて尚宮様に相談もできない。
 それに宮ではそういった話を気さくにできる友達はいない。女官同士というのも聞いて
いたが、他に親しくなりたい相手がいない私には他人事。何をどうしているのかなんて
興味もない。
 何より何でも頼りになるはずのミョンイが当の相手では――そんな時も普通の顔でいて
私ひとりが舞い上がっているようで――やはり聞くのは憚られた。

 それで里帰りした時に母に相談すると、母は驚きもせずに話しを聞いてくれた。そして、
宮ではあたかも男女の契りのようなことが、女官同士で交わされることは珍しくない。
お前がミョンイちゃんとそうなるのが嫌なら、今のうちに断りなさい。でも安らぎを
感じるなら……いつかはね、お前とあの子が生まれたままの姿で……深い時を過ごす
ことになるんだろう。添い遂げる相手が……ミョンイちゃんだったのね……。
 そしてね、そんな最中に身体がそうなるのはごく自然なこと。
 これからも時々驚くようなことが……相手にも自分にも起こるかもしれないけれど。
誰しもその時は、人が変わったようになるの。だから心配せず、あの子に任せたらいい
から、いっぱいかわいがってもらいなさい。お前も自分の気持ちを相手に伝えなさい。
それがお前の幸せになるだろう、と。

 宮に戻り、夜が来る。
 生まれたまま……か。その時の私は、不安よりも好奇心が勝っていた。寝支度を
しながら、時々ミョンイの顔をチラチラと眺めたりして。
 そしてミョンイが隣に入ってきて、いつものように手足を絡めてくると、私もその
身体をきゅっと抱きしめた。それから唇の接触を受けながら聞いてみた。
『ねえ、私の唇って、何なの?』
『え? ああ、柔らかいなって』
『それだけ?』
『うーんと、ね。でも言えないわ』
『言ってよ』
『嫌がられたら悲しいし』
『そんなことないって』
『だってペギョンはおぼこいから……何にも判ってないし』
『知ってるわ』
『強がらなくていいのよ』
『強がりじゃないもの。ねえ、私、覚悟してきたよの』
『覚悟? なにそれ』
『あのね、母に……母はああいうお店をやってるからそういうのに詳しいと思って』
『お母様に話したの』
『うん』
『どうおっしゃってたの?』
『うん、大丈夫。ミョンイちゃんならいいって……だから』
『そう。そうなの。いいわね、相談できるお母様がいらして』
『でもミョンイは尚宮様がいらっしゃるじゃない』
『あはは、そうね。ペギョンだって同じなのに。あ、恥ずかしかったのね。やっぱり
おぼこいんだ』
『おぼこくないって』
 思わず抱きついてミョンイの上に半分乗った。ミョンイは真顔になって、私の肩から
垂れた髪の毛を掻き上げた。
『あなたの唇……かわいくて』
 そうして引き寄せられるまま、私の方から唇に触れていく。
『もっと深く合わせたいって、ずっと思っていたの。前々から。だから……』
 唇越しの言葉の後、ミョンイの舌が私の唇をなぞり始めた。口の辺りが濡れ、緩んだ
隙間からその舌が私の口の中に入ろうと……思わず顔を離した。
『やっぱり怖い?』
 うん、と軽く頷いた私の頭を撫でながらミョンイは言った。
『まだ早かったのかなあ。いける子は最初っから受け入れてくれるんだけど』
 好奇心もあった。嫌われたくはなかった。それで思い切ってまたミョンイの唇に自分の
唇を重ねた。そして軽く唇を開いてみたものの、ミョンイはついばむだけでさっきの
ようにはしてくれなかった。
『ねえ』
 促すと少しだけ舌先を唇に沿わせてくれたが、どこか遠慮がちだった。
『いいのよ。あなたとはこうやって抱き合うだけにしましょうね』
 背中を撫でる手が優しかった。

 それから半刻ほどミョンイの肩に頭をもたせかけていたものの、しかし眠りに付けず、
時折目を開け寝顔を眺めた。
 この人なら……怖がることは何もないのに。どうして私は。
    幼い頃、突然男が私を抱きかかえ、尻までチマを捲り上げようとした時のあの
   ごつごつした指。私の腕を掴んだ毛むくじゃらな穢らわしい手。逃げることも
   声を上げることもできずに震えていたあの時。その恐怖にしばらく吐き気が収まら
   なかった。
 この身体のどこにも、そんないやらしさはない。いや、あの時男に立ち向かった毅然と、
そして美しい眼差しや、ぐいと私を引っ張ってくれた白い手。こんな高貴な人に何の
不安を感じよう。それが、互いに生まれたままの姿になったとしても。
 本当は私ももっと触れ合いたい。
 この子の抱擁は気持ちいいし、そうすることでミョンイが喜んでくれるなら私だって
嬉しい。どんなことになるのか判らないけれど……。
『ミョンイ、私……』
 唇を軽く合わせて……さっきしてくれたみたいに舌を滑り込ませてみたのだけれど……
うーん、ここからどうしたらいいの? きれいな歯の上でつるつるするばかりだ。唇の
周りもぐちょぐちょして……いったい何がよくてこんなことを。
 別に何にもしないで、ミョンイの柔らかい身体に触れている方が好きかも。

『ペギョン?』
 そんなことを考えていたら、ミョンイが目を開いた。
『顔を真っ赤にして』
 私はどきまぎするばかり。
『別に……あの……さっきの続き……を。どんな感じなのかなって』
『あらあら。こっそり練習してたんだ!』
 そう言って頬を両手で挟みこみ、ふっと微笑んだ。
『ひとりでなんてずるいわよ、ね』
 そして私の耳元で囁いた。
『私の言うようにしてくれる?』
 もちろん私は喜んで頷く。
『ペギョン、唇を重ねたら、少し舌を出してみて』
 言われるまま、合わせた口先から舌を伸ばす。
『うーん、もうちょっとべろっと』
 また言われるままにぺろっ。
 出した舌がミョンイの唇に吸い込まれ、舌先同士が軽く触れ合った。もうそれだけで
頭がくらくらとしてしまい、ミョンイの動きに合わせて頼りなくもぞもぞと動くほか
なかった。
  ふぅっー
 一旦離れ、ミョンイがため息をつく。私はミョンイの表情を伺った。つまらない子だと
思われたらどうしよう。
『ああ、あったかくて気持ちいい』
 よかった、喜んでくれたんだ。だったらもう一度と唇を合わせようとすると、
ミョンイは私の肩を押して私の上に乗っかった。
『あなたも気持ちよくしてあげる』
 そうして首筋に唇を添わせる。それは鎖骨を往復し、そして耳をなぞっていった。
『ねえペギョン。舌でするけど……気分が悪くなったら言ってね』
 舌? 意味がわからないが、とにかく言われるままに。
 私の頷きを頬で受け取ったミョンイは、耳たぶを唇で挟み込み耳の外や内側に舌を
這わせていく。気持ち悪い……か。確かに相手がミョンイでなければそう感じたかも
しれない。身体の内部への侵入なのだから。
 けれどその動きは繊細で、流し込まれる吐息は甘ったるく、触れられている部分が
どんどん熱を帯びていくのが自分でも判った。
 唇が首筋へと移り、それにまた酔いしれていると、なんだか胸やお腹や腿のあたり
からも、どきどきする感覚が芽生えてきた。知らない間に絡められた脚、そして手で
いろいろなところを触られていたのだ。
 そうこうするうちに着物の前がはだけられた。ミョンイも帯紐を解き胸をあらわにし、
そしてまた身を重ねられる。人肌に触れる感触の……ねとっとした甘美さ。だけど少し
戸惑ってしまい、思わず身を縮ませた。
『怖がらないで』
 そして唇を重ねられ、今度はミョンイの舌が私の唇を割り込むのを必死に受け止める。
正直言って、最初うえっとしてしまった。なにせ、自分の意思以外のものが口の中を
動いているんですもの。けれど緊張していた私の舌も、身体全体を撫でられているうちに、
いつしかミョンイのと同じように柔らかく溶けていった。そうして時折私の舌が
ミョンイの中に吸い込まれ、ミョンイの口の中を味わったり、またミョンイの舌が私の
中に入ったり。
 どきどきは消え、柔らかくて温かいこの感触が、純粋に心地よさへとつながっていった。
『うっとりしちゃって』
 ミョンイはまたふっと微笑み私の頬を指先で撫でると、私のと、そして自分の上着も
全部取り去った。背中に私の手を回し胸をこすり付けてくる。乳房同士が触れ合い、
互いの乳首に引っ掛かったりしてはぷるんぷるんと揺れる。
『今度はここを』
 片手が先端を捉え、もう片方は唇で刺激される。
『痛くない?』
 しばらくして聞かれた。
『痛くはないけど……こそばゆいような』
 それを聞くと安心したのか、また胸や首筋、そして脇の下を撫でられ舐められていった。
『ペギョン、気持ちいい?』
『なんだか……よく判らない。温かいけれど』
『そう。じゃあ、続きはまた今度にしましょうね。もう寝ないと明日も早いから』
 そう言いながら上の寝巻きを着せてくれる。
 私も寝床に入ったが、身体がほかほかしてきて……やはり下の部分が、じめじめと
するのを感じた。何か物足りない気もするけど……ちょっと疲れてしまったので、素直に
眠りについた。

 翌日は、唇といわず胸といわず、身体中がはれぼったいような妙な気分だった。

 そんなことをひと月繰り返し。
 とまあ、何事にも時間と日数がかかり、でもミョンイは根気よく私を馴染ませていった。
 脱がせるのはいつも上だけだったけれど、下の方は服の上から、腿で小気味よく
揺さぶられたり、時には裾を捲くり上げて腿同士を触れ合わせたり、下穿きの上から手で
なぞられたしていた。それがなんとも気持ちよいと思えるときがあって……自分の吐息を
感じたり。
『こうするといいの?』
『じんじんとしてきて』
『そう。じゃあ』
 私の寝巻きを全部脱がせ始めた。それから手で腿やお尻や腰を何度もさすっていく。
『きれいな脚』
『ミョンイは着たままなの?』
『だって刺激が強すぎたら、また……びっくりするでしょ』
『もうこんなになったんですもの、いまさら』
 私もミョンイの下を脱がせた。
『また強がりを言って。そういうところがかわいいんだけど』
 笑いながら腰を浮かせ、脱がせやすくしてくれる。その笑顔が素敵で、私はミョンイに
覆いかぶさって、もうすっかり慣れた口付けを繰り返した。
 以前はぬめって、ちょっとなあ、と思えた時もあったけれど。今はたまらなく好き。
だってお互いの温もりを、じかに感じられるのだから。
 上下とも取り去って、下穿き一つの格好で脚を絡めながら、何度も口付けをする。
素肌の触れ合いは想像以上に気持ちがよく……生まれたまま……って案外いい。
ミョンイもにこにこしながら、私の身体中を撫でてくれて、全身がぬくぬくになった。
 それから耳元で囁かれるゾクゾクも、ミョンイの息吹が吹き込まれるような感じが
してとっても好き。だから私もミョンイの耳元で話しかけてみた。
『ねえミョンイ。せっかくだからもう全部脱がない?』
『え?』
『だってあなたって……他の人と……もっと……』
『うーん。まあそれはそう……だけど。知ってるの?』
『有名よ。私の耳にまで入ってくるくらいだから』
『ごめんなさい。でも今はあなただけ。信じて』
『ふふっ、その言葉を本当に信じていいのかしら?』
『でも他の人とあなたは違うし』
『そう言ってくれるのは嬉しいけれど。奥手相手じゃ、つまらないでしょ』
『ペギョンを大事にしたいの』
『私はミョンイに喜んでもらいたい。それが私の喜びなの。だから』
『私はペギョンが楽しんでくれるのが一番よ。あなたがいいのなら』
 そう言って手を伸ばし、全てを取り去った。同じように私もミョンイのを。
 二人を隔てるものがなくなり、初めて全部の部分を触れ合わせる。互いに胸を
まさぐり肩を噛み、脚を絡め……ほわほわとした毛がちょっとくすぐったかった。

 ミョンイの手は次第に、解き放たれた下腹部に伸びてくる。覚悟はしていたものの、
指先が触れた時、短い痺れが走り、私は目をぎゅっとつぶった。
『ああ、すごい!』
 そう、私のそこは。
『前からこんなになっていたの?』
 ぬめりも手伝い、触れる指は私を滑らかにとろけさせていった。
 薄目を開けると、ミョンイはじっと見つめている。
『じゃあ、ここで感じていたんだ』
 突然その一点がびくっと脈打ち、もどかしいような官能が下腹部に染み渡り、どうして
いいのか判らなくなった。ただ必死でミョンイの腕にしがみつき、その動きを止めさせ
ようとした。
 けれどミョンイは逆に私の腕を手や身体で押さえつけ、軽やかに撫で続ける。
『不思議な気持ちになるかもしれないけれど』
 そう言いながら指先を押し付けられているのかなと思ったら、さっきよりも一段と鋭い
情熱が脈動を繰り返した。
『こうすると……もっと感じない?』
 感じる? いや痛みのような気もするし、そうではないような気もするし。ミョンイは
戸惑う私に構わず律動を繰り返す。
 されるうちに体の力が入らなくなり、なんだかお小水を堪えているような、とっても
変な気分。
  ミョンイ あ あの 私
『どうしたの?』
『あの……変なの……恥ずかしいけど……お漏らししてしまいそうなの』
『構わないから……しばらくこのまま……』
 ミョンイはふふっと笑うと、深く口付けをしてくる。
『今やめたら、かえって辛くなるから』
 勝手にがくがくと揺れ始めた脚はミョンイの脚で絡み取られてより大きく開かされて
……ぎゅっと力が入り、歯を食いしばり、身体が浮き上がった。
 気持ちいい。こんなに素晴らしい世界があったなんて。
『ペギョンの初めての味』
 ミョンイにその部分をぺろっと舐められ、また飛び上がるような痛み? なのか何なの
かが身体を走った。

 気が付くと、ミョンイは私を包みこんで安らかな顔で眠っていた。私もその胸に手を
あてて、寝息を心地よく聞きながら目を閉じた。

 私にとってそこに至るまでは長い道のりだったけれど、その後のことからすれば、
ほんの序章に過ぎなかった。

 ミョンイに抱かれれば抱かれるほど私の身体は丸みを帯びていった。
 私たちの仲は次第に皆にも覚られるようになった。それは私自身の変化と、そして
自分の夜這い――まったくなんて言い様だろう!――が無くなったからだと、ミョンイ
自身が笑って教えてくれたが。時々他の女官の視線が私を捉えるのを感じたりもした。
 あの時は、ミョンイへの嫉妬だとばかり思っていたのだけれど。人気者のミョンイが、
私のような者を相手にしているなんてと。
 そんなことにはお構いなく、ミョンイの行為もまたその幅を広げていった。けれど
ミョンイは先行きを教えてはくれない。いくら尋ねても、いいから任せて、と言うばかり。
不安じゃないけど、私の驚く様子ばかり眺められるのは、やっぱり不満……けれどそう
やって私を支配していくのがミョンイには楽しいみたいで。だったら諦めるしかない。

 指の動きは回を追うごとに執拗さを増し、数度達しても許してくれず、ねちねちと
こねくり回されるようになった。
 時々自分の指も当てさせられ、大きくなったそれを確かめさせられたり、ミョンイの
したように包み込んでいる皮の部分を剥き出しにさせて、鋭敏な感覚を実感させられたり。
肉の喜びを知って変わる私を見ては耳元を舐めながら、いやらしい子って囁きかけたり。
一層恥じ入る私を今度はぎゅっと抱きしめてくれて、きれい、かわいい、大好きとも。
 確かに……女官たちの噂話の通り。人誑(ひとたら)しって、こういう人のことなんだって
思うようになったっけ。

 でも、もう十分と思っていたのだけれど。まだまだ私は甘かった。
『しんどくない?』
 指が中に沈められた時は少し驚いた。さすがにちょっと下腹が張るようで辛いというか
……だけど……まあなんとか。
 また長い時間をかけて少しずつ埋め、ゆっくりほぐされていく。それがまた何日か
繰り返されて。
 遂には。大きく股を広げられ、両手でその部分を広げられて何やら観察している。
『おもしろいわね。ここからぴゅっぴゅっって』
『ええ?』
『感じているのが判るのよ。ちゅって吹き出してきて、ぬるぬるになって、ペギョンも
どんどんとろけていくから』
『そんなに見ないでよ。今までいろんな人のを見たんでしょ』
『それは人によって違うから。あなたにもっとよくなって欲しいの。だから確かめてるの』
 それから舌が差し入れられ、私の身体に熱い命を吹き込むかのように蠢いた。
ミョンイと身体の一部がぴったりと合わさった満足感。自然と口から吐息がこぼれはじめ、
それがいつからか自分でも喘ぎと判るほどになまめかしいものとなっていった。

 この声……夜半、手水に向かう時に他の部屋から漏れ聞いたこともあった。その時は
何てばかげた人たちって思っていたのだけれど。いざ自分がそうなってみると、ちっとも
恥ずかしいことではない。身体中で愛を受け止め、その歓喜を相手に伝えること
だったんだ。
 私の相手、ミョンイもそれを聞いて本当に嬉しそうにしてくれて、私はまた喜びに満ち
溢れる。
 そんなことを考えていたら、いつの間にか私の中には数本の指があった。それが
ひとまとまりになったり、別々の動きをしたりしている。
 中を探られる感覚は、外の、主に脚を痺れさせたものとはまた違って……全身を痺れ
させ揺さぶった。汗が皮膚を潤し、触れ合う肌の感触がまた堪らない快楽をもたらす。
私もミョンイのしっとりした肌を求め、手で胸で、そして脚で味わった。
 その間にもミョンイの手が中や外を器用に往復し、身体が小刻みに震え始め、けれど
もう戸惑いはなかった。私はされるままの愛撫に耽溺し、よがり声を上げてミョンイに
応えた。

『深く感じたのね?』
 軽く頷いた。
『あなたの中がきゅーっと締め付けて。ビクビクってなったのよ』
 心の底から身体の全部から愛しいと思えて。
『また欲しい?』
 身を絡ませたのが私の答え。
『かわいい子。私もあなたが欲しい……ペギョン、大好き』
 見つめられ、抱きしめられ。そしてまた淫靡、いいえ素晴らしい喜びが部屋を満たして
いく。

 営みが終わっても、朝まで余韻に浸った。

 私は変わった。
 一度達した身体は次の日も、そしてその次の日も、ずっとずっと愛されたいと願い、
母の言った深い時を過ごすという意味を実感し、身を交わらせる幸せを噛み締めた。

 でもあの交わり。心はもちろん、身体も十分に愛し合っていたと……私はそう思って
いたけれど。独りよがりだったのじゃないかしらって、今になると考えることがある。
 私は、どれだけあの人を満たすことができたのか。
 なかなかミョンイのそこには触らせてはくれず、あの人と同じように布団に潜り込もう
とした私を、子猫をつまみ上げるようにひょっと抱き上げ、お腹に乗っけて言ったっけ。
されるのとするのは違うし見るのはもっと違う。あなたはまだいいからって。
 時々、私の高潮に合わせて、私の腿に脚の間を激しく擦り付け強く身をこわばらせたり、
ごくたまに私の手をミョンイに宛がわされ、導く指共々撫でさせて、そして力が抜けた
ような顔を見せてくれた。その後で私は自分の指をそっと含み、ああこれがミョンイの
味と香りなのだと知るぐらいだった。
 まあ確かに……あまり……見てくれのいいものじゃない。びっくりしたかもしれないし、
それを受け入れ相手を気持ちよくするのは情熱も体力もなければ結構難しいと、この頃は
――チャングムとソングムを抱いて――判ってきたけれど。
 それとも……ミョンイは満足していたのだろうか。
 あの時の私は、愛撫を受け止めるので精一杯……そんな私が真似たところで……
でもでも私は愛していたのに。あの時、説明してくれれば納得したのに。

 うーん。結局は、ミョンイに直接聞いてみないと判らないのかもね。だからもっと
時間があれば、いつか尋ねたはずよ。
 二人で枕元で話し合うの。私はこう感じるんだけど、あなたはどうするのがいいのって。
それでね、私はあなたの望むとおりにしてあげるから。

 ……いや……頼ってばかり、甘える一方の私は、あのまま共に過ごしてもいつまで
たっても思い至れなかったかもしれない。
 ミョンイはいっぱい包み込んでくれた。何も知らなかった私の全部を受け止め、愛する
ことを教えてくれた。そんなミョンイの心を、より深く感じることができたのが……
引き離された後だったというのは、なんとも皮肉に思えてしまう。

 だからこそ共に過ごせる時間の限り、この子のよさを見つけ、教え、そして伸ばして
いかなければ。
 お前に甘えるわけには……いか…な…あっ
 ―――私って本当に……いやらしい。
 また昂り始めるこの身体。入り込んだ指が内襞をコリコリと捉え、直接的ではない
じんわりと深い心地よさを体内に響かせる。
 ―――頭とは裏腹に身体はすっかり甘えてしまっているじゃないの。
 かと思うと指の腹で敏感な部分をなぞられる。
『感じて。もっとしてあげるから』
  あぅっ
 叫ぶ唇は柔らかく塞がれ、押し入った柔らかな異物に舌が絡め取られ唾液がまぶされて
いく。
 ―――呻いても手で避けるようにしても、止めないで…………ずっと。
『いい子。正直なあなたが大好き』
 脚が掲げられ、舌は先ほどまで指で溶かされていた場所に侵入し。
『あなたが気持ちいいなら私も嬉しい』
 またそれは喘ぎを大きくした口の中へ、私から噴き出た情欲の味をも携えて。
 ―――もう……だめ……。
 身体全体が痺れてしまう。
『ペギョン!』
「ああ、ミョンイ」


「尚宮様のお心を奪うのは……できないみたいですね……至らない私には」
 昂りの波が消えると共に手の動きが緩やかになった。
「私が抱きしめるよりずっと……」
 頭を撫でられ、もたせかけた肩の上から静かな声がした。
「でもいつか、もっと愛されるようになります。尚宮様に求めていただけるような
人間になります」
 何も言えない。私は申し訳なさで一杯だ。
「だけど……今は……尚宮様のお思いのようにいたします……ですから」
 まだ少し余韻の残る背中が撫でられている。
「失礼をお許しください……しばらくの間」
 見つめて、そして首筋に舌を這わせながら言う。
「母に成り代わって……母のように……尚宮様を……抱きます」
 手がそこを確かめるように触れている。
「こんなに溢れさせて。母を想えば気持ちいいのですね」
「馬鹿なことを言わないで」
「それと……尚宮様じゃなくって……お名前を……もっとよくなっていただくために」
 心の中に募る興奮。
「ペギョン……って呼ばれれば、燃えるのでしょ?」
 それだけで、実は胸がきゅんとしてしまった。
「けれど……」
 取り繕うとしても、とろっと流れたのが自分でも……。
「ご自分で確かめてください」
 私の手を携え……指が当たるそこは……熱い。
「身体は嘘をつけないみたい」
 粘液に塗れた二人の指を絡ませたままでねぶっている。
「だから今だけ、そうします」
「お前は……いいの?」
 途切れがちな息を整えつつ言った。
「とろけるお顔が見たいのです。私もいっぱい愛したい」
「でも……やっぱり…………」
 私の方の覚悟が……できていなくて、大きく呼吸を繰り返してみたが……それは愛撫の
渦の前では無駄な抵抗に過ぎなかった。
「あの……ね…ミョンイはね……」
「お話しいただかなくても結構です。私にお任せください」

 深い息遣いは吐息に消え、いつしか。
 重ねられた温もりの下で、あの頃に戻って陶酔している私がいる。

「好き、本当に大好き」
 包みこむ身体に私の腕はぴったりと添い、口の中に浸された舌を吸っている。
「こっちを見て」
 目を開くと互いの視線が絡み合う。向けられるのは私の反応をねばっこく探り出す
ミョンイの目そのもので。そうなると私の目もきっと、もの欲しげにせがむ目になって
……いるに違いない……。
「ああ、潤んだ瞳がたまらない」
 私の喘ぎが増し乱れると、向けられた目の輝きも嬉々として増していく。
 だけど私だってあなたが乱れるのを見てみたい。
 負けじと、覆いかぶさっている脚の間に自分の腿を押し当ててみた。
「あなたも気持ちよくなってよ」
 上から降りかかる吐息に、そう伝えたけれども。
「ううん。こんなに素敵な身体、一瞬だって目を離したくない。もっと味わいたい。
だからいくのがもったいなくて」
 脇の下を、毛穴の向きとは逆に舐め上げる舌に、やすやすと屈服させられてしまった。


「この格好は好き?」
 背後から両手を押さえつけてうなじを襲われ、快楽の波に反らせた顔をぐいと横に向けて
口付けを与えられる。
 私は嗚咽を漏らして応えた。
「こんなみだらな姿がいいの? じゃあこれは?」
 身体を横向きに寝かされ、脇から回された手が胸を揉みしだく。更に上側の脚は下から
支えられながら開かされた。無防備になった場所に唾液をまぶした手が絡みついている。
「私の手、とっても滑らかに動いて」
 支えていた脚が、私の腰をぐんと前に押した。
「見えるでしょ」
 頭を後ろから前に押し傾けて見せ付け、更に羞恥を煽る。
「この中にも入ったりして、指が何本も」
 身を捩り逃れようとしたが、うなじに張り付いた唇が耳をじゅっと吸い上げた。
「いやいやってしても、ここの口はいいって話してくれる。ああ私もたまらない」
 荒ぶる息に上下する背中を齧られた後は、艶と張りのある内股を腿に張り付かせ、
そして背後からぎゅっと抱きしめられた。
 柔らかな肌に包まれ、絶え間ない心地よさに燃え上がり。
「いつまでもいつまでもこうしていたい」
 甘美な囁きに我を忘れ。
「そこ……ああいぃ……思いっきり……」
 何度もおねだりを繰り返した。
「ペギョン……大好き」
「私もあなたが大好き」
 愛情を求めたいという欲望と、己の喜びを与えたいという欲望が渦巻いて。また体位を
変えては全身を愛されていく。

  パシッ!!
 と、突然お尻を叩かれた。
「浮気して!」
「そんなつもりじゃなかったのよ」
「責められて、このお尻もよがらせてたんでしょ」
「それは……ソングムが無理やり」
 後ろ手で身体にすがりついた。
「でも感じたんでしょ?」
 手で撫で回しながら言う。
「今だって濡らしてるじゃない。そんなによくって?」
 また数回ぺちぺちと。
「悪い子はお仕置きしないと」
「ごめんなさい」
 一転、優しく抱きしめて背中をさすってくれる。
「あんな目に合わされたのに。守ってあげられなかった」
 叩かれたところが軽く撫でられている。
「自分が腑甲斐なくて悔しくて仕方なくて。もう、この身体を離さない。絶対誰にも
触らせない」
 身を任せる心地よさと心を委ねる安心感に、とろとろと溶けてしまった。

 それからまた二人で抱きしめあった。
 もう直接的な快楽はあってもなくてもよくて。
 何度も触れ囁き合い続けるだけで。
 背中に汗が流れ、汗の上から置く手に背中の温もりを感じ合う。
「いくとき……ああ、きれいで。そしてこの身体。柔らかくていい匂いがして」
「私もたまらない。とっても気持ちよくしてくれて」
「本当にかわいい。ペギョン、とってもきれい」

 不意に涙が溢れてきた。
 なぜ……? 理由なんて浮かばない。気持ちが昂りそして安らいで。肌をぴったり
合わせていたら、ひとりでにそうなって。

 目尻から横に伝い続ける涙は舌にすくい取られ、私が泣き終わるまで黙って頭を撫でて
くれた。

「落ち着いた?」
 優しい問いかけと共に温かい手で私の手を取り、指を絡めてくる。
「まだこうしていたい」
 そう答えて顔を寄せた。
「あらあら、甘えんぼさん」
 笑顔がまぶしい。その顔はあの大好きな……ここに戻ってきてくれたのね……嬉しくて
でも見つめられると気恥ずかしくて、また顔を胸に埋めた。
「だってとってもきれいで。あったかい」
 撫でながら、ちゅっちゅと吸ったのは……ミョンイの……乳房。
「くすぐったい」
 笑い転げている。その笑顔を楽しみながら舌先で転がし甘く噛む。笑い声は私の肩に、
熱い吐息となって零れかかった。
「もっと感じて」
 やっぱり私、あなたが楽しむのを見てみたい。あなたをよくしてあげたい。
「気持ちいいけど、おかしくなりそう」
「おかしくなってもいい。私にもあなたの声を聞かせて……」
 上下する胸に頬を預けて、徐々に熱を帯び始める肌を堪能していく。
 紅潮する顔。私の背中を掻き毟る爪。私はあなたほどいろんなことはできない。でも
私の拙い愛撫に、身体で応えてくれるのが嬉しい。

 そして何度その時を迎えただろう。

「ペギョン」
 何度この名を呼ばれただろう。

「いいわね、ここ」
 頭をやや右向きに押し付けられ、うなじにかかる髪を掻き上げて言う。
 あの恍惚の時が……でも。
「怯えた目をしないの」
 私の頬を両手で挟みこんで言う。
「だって……あなたに食べられてしまいそうで。全てをあなたに」
 吐息がこそばゆい。けれど見つめる目は怖いぐらいに燃え盛っていた。
「そうできるなら。いやそうしたい。ペギョンの全部を」
 起こした半身を私の上に預け、愛撫を再開させていく。心地よさが染み渡った身体は
僅かに触られるだけですぐにまた沸騰し始める。
「いただくから」
「嫌、ちょっと」
 抵抗する手は束ねられ押え付けられ、有無を言わさず体重がかけられていく。
 それでも首筋に唇が触れた時、本能的に身を捩った。
「力を抜いて」
 力が入っていては辛いばかり……と経験から判っていても、思わず強く抗って
しまったが、胸の頂が唇に捉えられ、茂みには手が這い、そしてまた指を深めに入れて
奥の壁を刺激し始める。
「何度触っても温かくて気持ちいい」
 腕が背中に回されたが、もうとろけて、すぐに下に転げてしまう。
 仕方ないわね、とつぶやきながら後ろ手で私の指同士を組ませると、言った。
「離さないで」
 そして唇で首筋を探っていく横顔は、鼻腔をぷくっと膨らませている。
「ああ、こんなに激しい脈が」
 脈打つのは唇越しか、それとも体内をまさぐり続ける指から生まれたものなのか。
 敏感な部分にあてがわれた指の動きが一層深まり、私の背中が反り始めると、肩を
押さえた指が痛く食い込んだ。
「身体が震えて……きゅって締まってる」
 一度口付けを与えられ喘ぎを強く吸い込まれると、その舌はべろべろとうなじに向かい、
そして大きく開けた唇が私の首筋を覆い……。
 手が脚が、触れる全ては柔らかでとりとめない。愛でられている、それは判るがどこを
どうとは……。
 次の瞬間、きつく吸い上げられ……いや歯を立てられて……ぐぐーっと飲み込まれる。
  ひ…!ぁああ!!
 頭の中がじんじん鳴りまぶたの内側をキラキラいくつもの流れ星。目をぐるっと回しても、
同じ場所に煌めき降り続けている。
 ―――この景色を……手をつないで一緒にあなたと。
 どくどく響く鼓動と共に暗闇に途切れる意識を怖いと思い、けれど首に与えられる唇の
温もりは、そんな自分をこの世に繋ぐたった一つのよすがのよう……。

「いったのね……私もいきそう……」
 触れ合う胸の頂がコリっとした感触に変わったと思ったら、ぎぃっと背中に力が入って。
「あぁ 私だけのものになって!」
 そんな絶叫が遠くに聞こえた。
  離したくない
 力を込め抱きしめようとしたものの。
 手がずるりと――こわばった肩や腕の筋肉をなぞりながら――滑り落ちるのを感じた。


 いつの間にか寝巻きを着せられ、新しい敷布に整えられた布団に寝かされていた。
 それから語り合ったのは、夢うつつ。
「ねえ、あなたが夢見たことの全部をしてくれた?」
「はい、それ以上させていただきました」
「そう。だったら嬉しい。私も夢の中にいるようだった」
「私もとっても嬉しいです」
「ねえチャングム。身体の結びつきはなくても、私の心がお前から離れることはない。
ずっと見守っていくから」
「私もです」
 その横顔に何度も触れ、指先で楽しむ。

 空が白み始めている。これならもう寝ない方がいいのかも知れない。けれどさすがに
身体が動かない。
「少しの間、休みましょう」
「いいえ、まだお話ししていたいです」
「また今夜も明日も、話しはできるでしょ」
「もっと……触れていたい……」
「もうおやすみ」
「ずっとこうして…………」

 無防備な寝顔になった。
 唇の表面をそっと指先でなぞる。残る指で軽く顎を支え唇を合わせても、もう寝息しか
聞こえてこなかった。
 それから何度か頬をつついてみたが、本当に深く寝入ったようだ。


 何度も交わり抱き合い、身体中に互いの痕跡を残し、そして気だるい。けれどその
全てが心地良く、爽やかな疲労感に包まれていた。
 大好きなこの子と疲れ果てるまで愛し合えて、こんなに幸せな事は無い。

 下ろしたての蝋燭も、燃え尽きかけている。
 そうね、私が宮に帰るまでの毎晩でもこうして、この子の寝顔を見守っていましょう。

 眠る愛し子。
 いきなり私たちは引き離されてしまったから、お前が私を……こんなに激しく求めて
しまう気持ちは判るし、私だってあなたが欲しかったけれども。でもね。
 触れ合うのが悪いわけじゃないのよ。だけどお前はまだまだ伸びていけるし、そうして
いかなければならない。二人だけの……甘美な歓喜の世界に閉じこもっては、お前に
与えられた力をも私だけに閉じ込めてしまうのだから。
 それではお母様の願いもお前の誓いも成就できないでしょ?
 明日からは。

 もう私たちは二度とこんなことはしないでしょう。
 けれどそれでいい。
 私はこの子の美しく、そしてあの恐ろしいまでの顔を忘れることは無い。お前が精一杯
愛してくれた心も。

 ありがとう。ミョンイに会わせてくれて。
 私の全部を受け止めようとしてくれて。

 もしも……再びこの子に抱かれる時があるとするならば……。
 時々はこの子がまた、ミョンイに見えるときもあるかもしれないけれど。いつかきっと、
この子自身の顔を、私は見ることができるだろう。


 鳥のさえずりが聞こえる。表の戸を開けて、障子越し明け始めた朝の光を入れた。
 私も眠くなった。起きるべき時刻が来るまで、もう一度短い夢に浸ることにしよう。

 ミョンイに抱かれ、ソングムに抱かれ、そしてチャングムに抱かれた。
 していることの表面的には皆同じ――互いの愛しみが互いを燃え立たせ、感じて
いる方も感じさせている方も共に喜びを分かち合おうとする――だけれど。
 無限の愛に包まれていたあの頃。
 苦みばしった想いがあるのを知ったあの時。
 そして……捨て切れない葛藤を抱えながら、それでも互いを求めてやまない心を
抱きしめた今。
 それぞれは違い、それぞれに対する想いも違う。でも今はそのどれをも愛おしく思える。
 そしてそれぞれは……私を変えた。


 まどろんでいるうちに朝日が強く部屋に差し込んでいた。時を告げる太鼓が鳴り、
さすがにもう支度をしなければならない時間だった。
 目を開けると、チャングムも目を開けて微笑む。
「もっと寝ていてもいいのよ」
「はい。でも尚宮様のお姿を、なるべく見ていたいのです」
「かわいいことを言うわね」
「だって、こうして尚宮様を独占できるのはこの太平館だけですから」
 思わず頭を撫でた。

 布団を畳み、自室に抱えて帰ろうとするのを手で制した。
「お前さえよければ、これからもここで寝ていいわよ」
「え、ほんとですか?」
「ただし、もうこういうことは」
「判ってます、お言い付けは守ります」
「そう。だったらこれからはこうして、一緒にいられる時は隣で寝ましょうね」
 爽やかに微笑むこの子は昨夜の痴情はどこへやら、もうすっかりいつものチャングムに
戻っていた。

 別れ際、人差し指でチャングムの唇をすっとひと撫でした。
「いつだって私はお前が、お前自身が必要なの。それはこれからもずっと変わらないわ」

 チャングムはにっこりと微笑みながら、一礼すると部屋を後にした。

                                ―――終―――


  注:TVドラマ「誘惑」の脚本や台本、またその原作である「飾り火」からヒントを得た部分があります。

  * (1)−宿望− (2)−渇望− (3)−企望− (4)−想望− (5)−非望− (6)−観望− (7)−思望− (8)−翹望− (9)−顧望− (10)−闕望− (11)−属望− (12)−競望− (13) −星望− 1/3 2/3


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