BBSPINKちゃんねる内で発表されたチャングムの誓いのSS(二次小説)を収集した保管庫です

   チェ尚宮×クミョン   教え?       第一部075様


おばであり師でもあるチェ尚宮は、常に堂々とした立ち居振舞いで若い女官達を
導き、同期の女官達には「次期最高尚宮は彼女しかいない」と一目置かれている。
名門チェ一族に生まれ、最高の環境と素質に恵まれ、彼女自身も相応の努力を
重ねた当然の結果と言っても過言ではない。
いずれ自分もあのように、周囲から尊敬と羨望を集める女官になり、ゆくゆくは
水刺間の最高尚宮になる、そう信じていた。
だから昇級試験を主席で及第したのも当然だと思っていた――――――

チェ・パンスル邸ではクミョンの及第祝いが開かれていた。
とは言え内輪だけの慎ましやかなものであったが、並べられた料理は山海の
珍味が取り揃えられ、王の御膳もかくあるやといった感であった。
チェ・パンスルがそれぞれの食材の薀蓄と入手経路について語り、妹のチェ・ソングムが
水刺間での調理方法について語る。二人のめいであるチェ・グミョンは目を輝かせて
話を聞いていた。
「いやいや、クミョンも大したものだ。皇太后様からお褒めの言葉をいただき…
一日も早く王様の御膳を任されるようになるのだぞ」
「兄上、さあ、もう一献」
妹に酒をすすめられ、パンスルは杯を受けた。
「今回及第した水刺間の女官達は皆、クミョンの足元にも及びませぬ……ふふふふ」
「そうかそうか……ああ、本当に今日はめでたいのう」
おじの目がとろりとしていた。クミョンは黙ってただ微笑む。
「さあクミョン、お前もいただきなさい」
おばが彼女に杯を渡した。
「はい……それでは………」
宴席なので杯は受けたが正直クミョンは酒の味が分からない。料理人としてこれでは
良くないとは思うが、今まで酒に酔った者の目に余る行いを見てきたこともあり
すすんで酒の味を覚えようとは思えなかった。

酒のせいで口の中と喉が熱くなった。クミョンは酒を飲み干すとまた黙って微笑む。
自分が何かを話すより、二人の話を聞いている方がこの場に相応しいと思ったからだ。
「おお、それはそうとあれはどうなったのか」
突然おじが言った。おそらく宮中に収める食材の事を聞きたいのだろう。
「はい、手抜かりなく……早速今夜執り行います」
おばは静かに答えた。何を今夜行うのか知らないが、二人は時々このような会話を
人前でしているのでクミョンは気にもとめず料理を見ていた。
「ははははは…一族のため精進いたせよ……これ、あの酒を持って参れ」
おじが声をかけると、瓶をもった下女が二人部屋へ入った。
「この酒が尚宮、その酒がクミョンへのわしからの贈り物だ…ささやかであるが
是非受けてくれ」
おじが下女に命じ、それぞれの杯に酒を注がせた。二人は杯を受ける。
「ああ…この味は…………梨や桃の味が……」
クミョンが微笑みながら言う。おじは得意気に、果物から造らせた珍しい酒であると
強調し、梨の花の故事や桃の木の故事を一通り話した。
「とても飲みやすいお酒ですね……どんな料理に使えるかしら…」
下女がすすめるまま杯を重ねると、おばが「私がいただいた方も飲んでごらん」と
瓶を差し出した。
断る理由もなく、クミョンは杯を受ける。鼻につんとくるきつい酒だが、ほのかに
甘味がある。思わず顔をしかめて「これは何のお酒でしょうか…」と尋ねた。
おじは身を乗り出して、この酒が遠い南の国にしかない木の実と草で造られたとても
貴重な物だと講釈をはじめた。おじが言うには、遠い南の国には季節が夏しかなく
人々の肌は鉄のように黒い事、人々は不死鳥を神と信じている事、黄砂ではなく
一年中嵐がやってくる事…。

「おお、おお…飲み過ぎた……今日はもうお開きとしよう…。では頼んだぞ…」
おじは体を揺らしながら部屋から出た。クミョンの頬が酒のせいで桃色になっていた。
「クミョン、私達も下がろう」
おばが立ち上がり、下女に何かを告げると灯りを持った従者がやってきた。
「クミョン、これから寄る所があるからついてきなさい」
クミョンは黙って立ち上がり、おばの後ろに付き従った。おばは従者に指示を出して
歩いていく。
屋敷の外に出ると数人の従者がいた。灯りを持った従者を先頭に、おばとクミョンが
従者に囲まれて進んで行く。
「あの……何があるのでしょうか」

おばはお前も酔っているだろうから足元に注意しなさいとだけ言い、
クミョンの質問には答えなかった。
おばには押しの強い所があり、かつ常に正論ばかりを説くので誰も反論
できぬまま押しきられる事が多々ある。
もしやおばも酔っているのではないかと思ったが足どりを見る限りでは
そうでないようだ。クミョンは黙っておばの後をついていった。
あまり歩かないうちに小さな小屋が見えた。
「この中にお前に見せたい物があるのだ」
おばはそう声をかけ、従者に扉を開けさせると中に入った。クミョンも
続けて入ると、小屋の中には円卓と椅子、大きな箱と寝台があった。
小屋ではなくて使用人の住む家にも見えるが、そのような身分のものが
寝台を使うはずもない。
「ここは……?」
おばは灯りを持った従者以外を下がらせた。クミョンに椅子に座るよう
すすめ、従者に何かを命じると自分も座った。
「ここはな、チェ一族の女が宮中にあがる事を許された時に必ず来る
場所なのだ……無論私も来た事がある。
お前をここに案内できてとても誇らしく思うぞ」
「まぁ……」
クミョンは自分の頬が熱くなるのを感じた。
「これからここで、女官として最も大切な事を教えよう」
「はい、尚宮様……力至らぬ事もあるやもしれませぬが……どうぞ
私をお導き下さい」
クミョンはおばに礼をした。おばは笑いながら「そのような堅苦しい礼
などいらぬ」とクミョンを座らせた。
おばが一人残った従者に指示を出すと、従者は部屋から出ていった。
しばらくすると従者が四つの瓶を抱えて入ってきた。おばが瓶を受け取り、
従者を下がらせる。おばは円卓の上に瓶を並べると椅子に腰掛けた。
クミョンは瓶に貼ってある紙を見た。どうも中身は酒のようで、まだ宴席が
続くのかと不安になった。
「尚宮様、女二人で酒を酌み交わすのでしょうか……?それよりも女官として
大切な――――」
「クミョン、物事には順序がある。慌てなくともよい。私がきちんと
教えてやろう―――」
そう言ったにも関わらず、何故かおばは扉を開けて人を呼んだ。
さっきから微妙に言動が一致していないのは遠い南の国の酒のせいなのか。
クミョンはおばの態度が信用しきれなかった。本当に女官として最も大切な事を
教えてくれるのだろうか。クミョンはおばを見やった。
おばは薄く笑いながら瓶を眺めている。クミョンの視線に気がつくと、お前も
ご覧と瓶を差し出した。

瓶自体はよくあるものでとりたてて珍しいものでもなかった。
その時きぃぃと音がし、扉が開かれた。
扉の向こうには老人が居て、二人に礼をして部屋に入った。
一体どれだけおじの家には使用人がいるのかとクミョンは思った。
これだけ人が居れば給金もそれなりにかかるだろうし、その金を生み出すにも
元手がとてつもなくかかるであろう。
「此度は…………クミョンお嬢様おめでとうございます」
老人がクミョンに向かって礼をする。この老人は女の自分の背丈よりも小さく、
髭が薄かった。
「ありがとうございます…」
クミョンも老人に礼をした。今夜は様々な人から祝福を受けた。
クミョンは彼らを知らないが、彼らはクミョンを知っている。

「このお方は、私がお前と同じ年の頃に宮中で女官のお世話をされていた方なのだ。
今夜はこのお方からも大切なお話を伺うのだぞ、クミョン」
老人は無表情でおばの少し後ろに控えた。
「はい…………」
クミョンは椅子に腰掛ける。おばが瓶の栓を開け、杯に酒を注いだ。
「やはり宴席の続きですか……」
「何を言うか、料理人たるもの酒の味を知らぬようでは宴席の料理も任されまい…。
宮中ではそう酒を飲む機会もないだろうに……さぁ」
おばが杯をすすめた。ささやかな抵抗としてクミョンはこのままでは酔ってしまうので
水が飲みたいと言った。
老人が部屋から出ていき、水を持って来た。器の中の水を飲み干すと、クミョンは
黙って杯を受ける。
おばはクミョンに酒の味について感想を求めた。クミョンが答えると、おばは酒や
料理に関する薀蓄を訥々と語り始め、控えている老人からもその薀蓄を補うような
話を聞かされる。
おじもそうであるが、おばも酔うと己の知識を語りたがるようだ。
もしやこれはチェ一族の酒癖で、自分もこの傾向があるのかもしれない。
やがて老人がおばに杯をすすめ、おばが自分に…という流れができていた。
老人が詩を口ずさんでいた。酒に酔い、湖にうつった月を手に入れようとして
湖に沈んだ詩人の詩と老人が教えてくれた。

「どうしてその詩人は月が欲しくなったのでしょう……」
「得難いものを求めるのが、我々人間の性」
「そうでしょうか―――――――それよりも、女官としての………」
このままでは酔いがまわり、何も得られぬまま時間が過ぎていく。クミョンは
催促した。したつもりだった。
「クミョン、少し酒をすすめ過ぎた様だね。あの寝台に横になって酔いを
醒ましなさい……水を持ってきてあげよう」
おばがクミョンの手を引き寝台に横たわらせた。クミョンは赤い顔で尚宮様、
尚宮様とつぶやいていた。

「――――クミョン、女官として最も大切な事、それは…」
おばの声が遠くから聞こえた。


クミョンは夢の中で猫になっていた。
にゃああ、にゃああと鳴いていた。
気がつくと何故か湖のほとりで、湖に浮かぶ小さな舟を見ていた。
舟には男が一人乗っており、男はいきなり身を投げた。
クミョンは男を助けようと湖に飛び込むが猫の身で叶うはずもなく、自らも
沈んでいく。

湖の底には街があった。水底の街のはずれに小さな庵があり、先ほどの男がいた。
クミョンは庵に向かって走ると、軒先でにゃああ、にゃああと鳴いた。
男は猫のクミョンを抱き寄せて膝の上に乗せる。
男はクミョンの頭を撫でていた。クミョンは身を丸め、男の手と膝の温もりを
得ていた。
猫のクミョンは男の顔を見ようとして膝からおりた。男は離れたクミョンを
また抱きよせる。するとクミョンの体が元の人間となった。
一糸纏わぬクミョンが男を見た。―――――男は、誰あろう、己が思いを寄せる
男であった。
クミョンは男に抱きつくと、にゃああ、にゃああと鳴いた。
男の手がクミョンの背中にまわる。人の形を持つ二人が雪のように溶け、水滴になる。
水滴になったクミョンはにゃああ、にゃああと鳴いた。
鳴声が体をふるわせ小さな波紋を生み出す。
思いを寄せる男と溶け合った自分と、猫の自分と、元の人間である自分。
このどれかを選べという声がした。クミョンは選ぼうとした。どれかを選ばねば
己が消えるとも言われた。なのに体が動かなかった。体を選ぶために体が必要なのは
夢だからだと思った。
これは夢で、本当の自分はただの人間。そう分かっているのに夢の世界から
逃れられない。早く現実に戻りたい。たとえ思いを寄せる男と溶け合ったとしても、
所詮夢。湖にうつった月……。


「…………どうであろうか」
チェ・ソングムは寝台の上のめいを見た。
めいは酒で眠りについているが、手首を寝台に固定され、膝を立てて
寝かされていた。
老人がめいの膝を押し割り、秘部に顔を寄せる。指で秘部をくじり、尻を
持ち上げて一しきり撫でまわした後こう言った。
「子を成すのに問題はないと見受けられました……ただ、産道が狭いようで」
「そういえばクミョンが産まれる時は難産だったと……まぁよい、男の陽物を
受け入れられれば」
「津液は多いようでございます…………味は、酸味が強く……苦味が出てきた時に
精を受ければ子を授かりやすいかと」
老人は淡々と告げた。
「寝ているとはいえ……クミョンはまるで子鹿のように鳴いていたのう………。
ふふふふふ」
めいの頭を撫でてやる。クミョンは口を少し動かしたが目覚める気配はなかった。
「貴方様の教えで、私は閨の睦事を知った……この子も今夜―――――」
老人は表情を変えず、部屋に置いてある大きな箱から何かを取り出す。
「クミョンお嬢様は生娘でございます故、これで殿方を受け入れる準備を
された方が―――――――御召しの際に無様な真似はできますまい」
「ありがとう……この子は大変反応が良いが、それだけでは男の方が満足できなかろう。
こう……男が我を忘れるような、何か……」
眠るクミョンを舐めるように見る。寝息と共に動く唇と喉、肌蹴られた襟元から見える
乳房、乱れた裾から白い内腿が見えた。
「生娘のうちから男を惑わすとは…………じっくりと教えられた方が、クミョンお嬢様も
歓ばれるのではないかと」
老人は箱から取り出した物を手渡した。それを見て、ソングムは口を歪めて笑う。
「これを使うのか。まぁ、そのうちこれでは物足りなくなるだろうに」

老人は部屋から出ていった。ソングムは懐に手渡された物をしまい、寝台に腰掛ける。
「クミョン…女官として最も大切な事を教えてやろう。
―――――それはな、王様の子をなす事だ。
水刺間の最高尚宮などできる事はたかが知れている……。子ができれば、その子が
我が一族を王様に近づける―――――母であるお前が国の母となる事もある―――――
なれば、この国は我が一族が……」
クミョンの髪を撫でながら聞かせてやった。何も知らずクミョンは眠る。
「ふふふふふ……今の王様は聡明で気丈な女子を好むそうだよ…………。お前の
才気と容貌、そして………があれば―――――」
ソングムは眼を輝かせていた。その輝きは燃える炭のようにとろとろと己の
理性を溶かしていった。
円卓の上に残っていた酒を口に含み、めいに口移しで飲ませる。
めいは少し抵抗したようだが嚥下していった。口の端より酒が零れ落ち、めいの
喉を伝い鎖骨のくぼみに溜まった。
舌を少し入れてやると、応えるかのようにめいが口を動かした。舌先でつついて
やると向こうの舌も伸びてくる。
「うふぁ…むぅ……」
めいが寝息にしては大きな声を出した。頭を撫でてやる。
(本当に何も知らぬのか………)
めいが酒で眠っている間、老人と自分の二人がかりで体を隈なく調べ上げた。
老人が閨の事に精通しているのは確かだが、それを差し引いてもめいは声を
あげて歓んでいた。津液も敷布に染み入るほどであった。

―――――心がほぐれていれば、体もほぐれていくのです。

老人がこう教えていたような記憶がある。ならば酒で心がほぐれたのだろうか。
「まあよい。これからだな……」

―――――クミョンは人間の自分を選んだ。夢から醒めるために。
人間の体を得ても夢から醒めなかった。誰かが自分の腕を掴んで振り向かせようと
していた。
それを振りほどこうと思いっきり身をよじる。だが逆にその腕に掴まれたままだった。
その腕はクミョンを抱きすくめた。
クミョンは腕の主を知ろうと眼をこらす。腕の主は思いを寄せる男だった。
嬉しくて、クミョンは腕を伸ばす。抱き合った二人は溶けなかった。クミョンは
男に頬ずりをして体を押しつけた。
男はクミョンの頭を撫で、まぶたに口づけた。男は耳もとで「貴方に会いたかった
のですよ」と囁いた。
その言葉を聞いた瞬間、クミョンの足元がずぶずぶと沈んでいく。猫の身で湖に
飛びこんだ時のように。
自分が沈み、男が離れていく。クミョンは手を伸ばしたが男に届かない。
「チョンホ様、私は……!」




「チョンホ……?」
おばが怪訝な顔をした。

クミョンが寝返りをうとうとして体をよじった。しかし手首を固定されているため
がたんと寝台が音を立てただけだった。
(・・・・・・・・・・・・・・・・・・仕方ない)
おばは寝台から離れ、大きな箱の方へ行った。中から革でできた輪のような物を
取り出し、寝台へ戻るとクミョンの片方の足首に巻きつけ寝台に固定した。
自由になっているクミョンの片脚を広げ、秘部が露わになるようにするとその
入り口辺りを指で弄る。
「うふぅ・・・」
クミョンの声と湿り気のある音が聞こえた。
おばは懐から先ほど渡された物を取り出した。それは珊瑚で作られた棒状の物で、
それを咥えて唾液を塗し始める。割と小柄なおばの手に収まる大きさの棒は先の方が
丸みを帯びており、その部分には丹念に唾液を塗した。
口から棒が糸を引きながら離れ、握られた棒はクミョンの入り口へと向かった。
おばの目が一点に集中する。
ちゅ・・・と小さな音がした。
「・・・・・・ふ・・・・・・・・・・・・」
おばの口から声が漏れた。珊瑚の棒はクミョンの中に少しずつ沈んでいく。
クミョンは小さなうめき声をあげただけで、ただされるがままであった。
おばが棒をゆっくりと沈め、棒の中ほどまで沈んだところで静かに引き抜く。
「ぬ・・・・・・」
眉をしかめつつもそろりそろりと手を動かし、クミョンを伺う。
(まるで医者のようだの・・・・・・・・・)
鍼を打つ医者や医女ならば見立てを間違う事もあろうが、閨で見立てを間違う事も
あるまい―――――。おばはゆっくりと手を動かした。
棒の先端がするりとクミョンの入り口から出ようとした。
「あ・・・はぁ・・・」
クミョンが声を出した。


(ここか・・・・・・)
おばがまた口を歪めて嗤った。


沈んでいく足元は水ではなかった。春まだ浅く、溶けきらぬ雪に足元をすくわれるようだった。
嫌です、離れたくない、夢でもいい、だから離れないで―――――――――――――――
男はただ微笑んで立っていた。自分だけが沈んでいく。
嫌だ嫌だとあがいても体が動かなかった。足元に溶けきらぬ雪がまとわりつき、それが体全体を
被いはじめるとさらにクミョンを動けなくした。
溶けきらぬ雪が何故か体の中を侵してゆく。その感触は冷たいだけでなく、蜜のようにぬめりがあった。

「嫌です!嫌です!」
雪が溶けていった。それなのに体が動かなかった。目の前には男でなくおばが自分を
見下ろしていた。
「う・・・・・・あ・・・?」
「クミョン―――――――――」
おばの顔が影になってよく見えなかった。
「おばさま・・・・・・?」
おばが自分の上でゆらりと動いた。その表情は眉間にしわをよせ、いつもの大きな目が睨むように
自分を見ていた。
やっと、自分が酒に酔い寝台に寝かされた事が分かった。
「申し訳ございません!今」
身を起こそうとすると手が動かなかった。頭の中が回りはじめてまだ酒が抜けてないのかと
思った。
何故か自分の襟がはだけていた。乳房も見えていた。酔った自分が何か粗相をやらかした―――――
「おばさま・・・!」
「クミョン、もう一度教えてやろう・・・・・・女官として最も大切な事―――――――――――――――
それはな、王様の子をなす事だ」

「何をおっしゃっているのですか?私が粗相を」
クミョンは起き上がろうとしたができなかった。がたんと寝台が音を立てた。
「そのままで聞け・・・・・・女官は全て王様の女・・・・・・・・・・・・どういう意味か分かるであろう・・・・・・。
皆、等しく、国の母になれるのだ」
おばが肩をつかんだ。ゆっくりと顔を近づけてくる。
クミョンは体が動かないことを酒が抜けていないからだと思っていた。だが違った。
自分の手首には革の輪がつけられていた。腕をあげようとすれば寝台ががたがたと音を立てる
だけだった。
「おばさまお放し下さい!この輪は!」
叫ぶと頭の中が回り、首の後ろから痛みが広がった。
「王様のご寵愛を受ければ・・・・・・・・・そして子を成せば・・・・・・ 水刺間の最高尚宮以上の
名誉があるではないか――――――――のう、クミョン」
おばが炭火のような視線でクミョンを見ている。
「私は・・・・・・私は・・・自分の力で・・・・・・最高尚宮になります!なれます!ご寵愛などいりません!」
首の後ろの痛みは頭の中に入り込んだ。痛みが回りはじめてもクミョンは叫んだ。
「なぜ子を成さねばならぬのですか?!私は自分の力で手に入れるんです!」
「ほう・・・・・・お前が寝ている時に教えたではないか。“ 水刺間の最高尚宮などできる事はたかが
知れている”と・・・・・・」
素質と努力、そして最高の環境にいる自分が勝ち得るべきものをおばが否定した。
頭の痛みが強くなった。寝台の上にいる自分は現実なのに、寝台が溶けきらぬ雪のようだった。
「それよりも、お前の体・・・・・・」
おばが珊瑚の棒に指を添え、そのまま静かに引き抜こうとした。
「あは・・・っ!」
クミョンは股間に違和感を感じた。おばが股間に手を当てているのが見えた。
「私もしや本当に粗相を」
クミョンの頬が熱くなる。小さな子供でもあるまい、どうしてこんな年になって・・・・・・と
己が情けない上に恥ずかしかった。
「おばさま・・・・・・早くこの輪を外して・・・いただきとうございます・・・・・・」
小さな、自分にしか聞こえないかもしれない声で懇願する。

「それはできぬ」
おばの言葉に一瞬頭の痛みが消えた。だが言葉の意味を理解するとまた痛みが襲ってきた。
「この部屋はな、チェ一族の女が女官として宮中にあがる前に、閨の事を教えるための部屋なのだ。
――――――――無論私もここで教えを受けた」
おばは諭すように言葉を重ね、指を動かして珊瑚の棒でクミョンを刺激する。
「あ・・・・・・うっ」
クミョンの股間の違和感が強くなった。口の中に無理やり匙を入れられ、苦い薬を飲まされている
感覚があった。
おばはなおも語る。
「眠るお前は・・・・・・私とあのお方の手習いで、たいそう可愛い声をあげていたよ・・・・・・」
「――――――――――――――――――――――――嫌!嫌っ!」
クミョンの頭の中に夢の風景が浮かんだ。夢の中で男に抱きついていた自分は、現実でおばとあの老人に
辱められていただけだった。


頭の痛み、違和感、酒と戒めで自由にならない体をどうにかしたかった。
とにかくこの状況をどうにかしたかった。
おばとあの老人が自分を辱めていた事、それに自分が呼応したらしい事、おばが言った事、
全てが何かの間違いであって欲しい。寝台からおりて落ち着きたい。
「やめて下さい!・・・・・・・・・・・・もう、やめて・・・・・・」
クミョンは寝台をガタガタとゆすって起きようとした。
「お前は閨では強情になるのか・・・・・・・・・・・・こういうのを好む男もいるだろうが、昼間のお前とは
随分違うの・・・・・・」
おばがクミョンの眉間を指先で押した。押された所から痛みが走る。
「あう・・・・・・」
クミョンの目から涙が出てきた。頭の痛みで体を動かす気が殺がれていく。
「私を困らせるのはやめておくれ。それに、閨の事を知るのは何もお前だけではない。
今日及第した女官たちはすべてこのような事を尚宮達から教えられるのだ……」
おばがため息をつきながら言った。
「だから、お前だけが特別なのではない」
「うっ…ですが―――――――」
「お前は言って聞くような子ではあるまい。ここまで強情だとは思わなんだ―――――――」
「だ、だから私にお酒を―――――――!」
「……ふぅ、兄上はお前が主席で合格したのを本当に喜んでいたよ……」
おばが眉間から手を離して頭をなでた。クミョンの目が赤くなっている。
「クミョン、もう静かにしなさい……」
「嫌です……私は、私の力で……」
かすれた声でクミョンが言った。

この子は本当は何になりたかったのだろう。何をしたかったのだろう。
もしかしたら商才があり、家業を支えていたかもしれない。それともチェ家の才媛と噂され、
意にそまぬ相手と結婚していただろうか。
けれどもどの道、この子が自分だけの力でどれだけの事を成し得るのかそれは分からない。
いかに優れた資質があったとしても、この世界からは「女」というだけで否定される。
自分もそうだった。様々な経験をするたびに抗う気力もなくした。「女」である自分が悪いのか、
「女」である事が悪いのか、「女」を否定する世界が悪いのかいつまでたっても分からなかった。
ならば「女」を捨てるか、「女」を逆手に取るか―――――この二つに行き着いた。
「クミョン、お前は本当に自分の力だけで何かできると思っているのか……」
ソングムの大きな目から光が消えていく。

おばは珊瑚の棒を動かすと同時に、クミョンの入り口の上の方にも指を添えた。
指の腹でゆっくり撫ぜるとクミョンがびくりと体を震わせた。
「クミョン……お願いだから……」
違和感と同時に痺れがクミョンの体に起こった。それでも頭の痛みは消えない。
おばが指を動かすと体の痺れがひどくなっていく。
「う……やめてくだ、さい……」
おばが特殊な技法で自分を動けなくしているのだと認識する。
「人は自分の力だけでは何もできぬ……だから集い、寄り添う―――――」
そう言うと、おばはクミョンの胸元に顔を埋めた。
「ひぅ!」
おばが赤子のように自分の乳房に吸い付いている。乳房からも痺れが起こる。
違和感と頭痛と痺れがクミョンの中を侵していく。
「嫌―――――です―――――」
ぺちゃ、ぺちゃと音が聞こえてきた。何かを食べる時のような音だった。
「う、う…」
「お前は家のために宮中へ行った。私とてそうだ。はっ……無力な者同士
寄り添ったつもりが、結局家のために利用されていたとは……。
お前が俸禄を両親に送っているのは知っているが―――――」
またおばはクミョンの乳房に顔を伏せた。


私には好きな人がいる。
その人と一緒にいたい。だけどできない。
その人が私をどう思ってるか分からない。それに私とは身分が違う。
その人は王宮に仕える貴族。私は商家の娘。
それに私は女官にならなければならない。お父さんとお母さんのため。それに
私の面倒を見てくれたおじさんのため。
だから一生懸命頑張った。私の事をひいきされてるとか、いい所の娘だからとか
言う人もいた。そういう事を言う人ほど何もしてない、頑張らない。
私が頑張ったのはお父さんとお母さんのため、おじさんのため。
でも本当は違う。
好きな人と一緒にいられないから。どんどん苦しくなるから。
頑張れば皆がほめてくれて、そうすれば苦しいのが少しだけなくなるから。
だから私は頑張る。これまでだって、自分の力でいろんな事をしてほめられた。
いろんな人が私をほめてくれたけど、おばさまにほめられるのが一番うれしかった。
おばさまは私と同じで家族のために女官になったとおっしゃっていた。
それにいろんな事を知っていて、他の尚宮様やおねえさん達から尊敬されていた。
おばさまは普段は怖いけど本当は優しい人。私の気持ちもきっと分かって下さる……。

やがてクミョンは自分の体から違和感が消え、頭の痛みと痺れが強くなってきているのを
感じ取った。
「もう…こんな事、やめて下さい…………」
ただ懇願するだけで、抵抗する気力も消えていった。
「私は……ただ頑張っただけ、なんです・・・・・・・・・・・・頑張らなきゃ―――――あふっ!」
おばの動かす珊瑚の棒がクミョンの入り口をひっかくように刺激を与える。
また痺れが強くなってくる。
「―――――頑張らなきゃ、苦しい…………だって、だって」
痺れと痛みでおかしくなる前に伝えなくてはならない。きっとおばさまは分かって下さるから。
クミョンの目から涙が溢れる。
「だって、私は」
「チョンホとかいう者が諦められないのか?だから苦しいのか?」
胸をどんと押されたように思えた。自分のいるこの場所が溶けきらぬ雪のように思えた。
「う……あ……ああ」
「お前は寝言でその者の名を呼んでいた…嫌だ嫌だと言っていた―――――今ここでその者を忘れろ。
忘れてくれ!」
刹那、クミョンの口がおばの口でふさがれた。
ぺちゃ、ぺちゃとまた音が聞こえてくる。おばの口がクミョンの口を割り、舌をのめりこませる。
クミョンはただされるがままだった。おばの手が何故か震えていて、自分の肩を握っている。
――――――――――おばさま、分かって下さらないのかな…
クミョンは目を閉じた。口の中をこね回されていたが、痺れは消えて頭の痛みだけが残った。
クミョンが息苦しさを感じた時、おばも同時に口を離した。
「頼む……忘れてくれ…………何故自ら進んで苦しもうとするのだ!その者がお前に何か
してやれるのか!?―――――何もしてやれないだろう!何もしないだろう!
私の方がお前に――――――――――!私は女官だ、必要ならお前に何でも教えてやろう。
金子も用立ててやる……私が宮中にいる限りお前をいつも見守る事もできる…………私が
宮中を下がっても…お前の後ろ盾ぐらいにはなれる――――――――――!」
肩をゆすぶっておばが叫ぶ。頭の痛みと共におばの言葉が響いた。
おばの息が荒い。
「お願いです……離して下さい……」
「―――――許さぬ。お前が忘れるまで…………離さぬ」


おばはただクミョンの体を荒らしていった。クミョンはそれをただ受け入れた。
おばが手と口でクミョンの体を貶めながら言う。

我が一族の女で、女官になれない者達は誰かが決めた相手に嫁いでいく。
その者達はそれが当たり前だと思っている。
何の感情もない男と子を成し、家族を守り、死んでいく。それが当然だと思っている。
私はそんな生き方はしたくなかった。できなかった。
だから宮中で生きる事を選んだ。誰もがうらやむ世界で栄誉を得るために。
私がいるからこそ、一族が成り立つのだと他の者達に認めさせるために。
他人に頼るだけの、あの者達とは違うのだと証明するために。
お前もそうであろう。
自らの力で道を作らない、作れないあの者達とは違うと言いたいのだろう。
ならば、お前のその思いはただの足枷にしか過ぎない。

その思いがお前自身を焼き尽くす前に忘れろ―――――――――――――――
今ならば、まだ間に合うから………。


どうしておばが自分の気持ちを分かってくれないのか不思議だった。
どうして、忘れろ、忘れろと言うのだろう。
そして体から全ての感覚が消えた。

あらわになった乳房、半開きの口、涙で汚れた顔。
めいが白い顔で寝台に横たわっている。ソングムは縛めを解いてやると寝台に腰掛ける。
己の手でこの子を無明の淵に落としてやった。
目的は果たした。
これ以上この子にする事はないはずだ。
この部屋に入ってからどれだけ時間が経ったのか見当がつかないまま、ソングムは
俯いていた。
(…………そういえばあの時も、私は。)
頭の中に一人の女が浮かびあがる。死の淵に落とした女が、見開いた目で自分を見続けていた。
(そうやってずっと私を見てる…………もうやめてちょうだい……)
女の視線に耐えられず襟元を握り締めると別の女が浮かび上がる。毎日顔を合わせるあの女だ。
表向きは伏目がちに俯いているだけの女。しかし伎楽の面のような顔の下に何を隠しているか分からない。
ふと気がつくとあの女がいつも自分を見ていた。私はお前がやった事を知っているのだ、と言いたげな
嫌な視線だった。
(お前に何ができるのだ。金も力もない卑しい生まれのお前が。お前などミョンイがいなければ
何もできないではないか!)
思わず寝台を叩いた。
(お前はいつも、いつもいつも…………ミョンイと二人で居たね。どうしてミョンイはお前と……)
握り締めていた手から力が抜けていった。そして自分の後ろにいるめいを介抱するために寝台から
おりた。
涙を拭いてやり、チマの胸元を直す。立膝の脚を伸ばしてやり、めいの体には何事もなかったかのように取り繕った。
「……おばさま、どうして…………」
かすれた声が聞こえてくる。
反射的に体をこわばらせた。この子も私を二人のような目で見るのか。
「どうして…………泣いて、いらっしゃるのですか……?」


終わり



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