BBSPINKちゃんねる内で発表されたチャングムの誓いのSS(二次小説)を収集した保管庫です

   チャングム×ハン尚宮×チェ尚宮 (7)  −思望−       壱参弐様


 更にチェ尚宮はにじり迫り、私を抱き締めようと、中腰になり手を伸ばしてくる。

 馴れ馴れしくしないで!
 身をかわし、後ろから左手で思いきり押した。思わぬ反撃に前のめりに倒れた両肩を、
強く床に押し付ける。
 これ以上、顔を見るのも嫌。

 お前は何だ? いったいお前は。
 ただいつもいる友達だった。ミョンイの隣に私がいた。あなたはその側にいただけじゃ
ないの。そのままで良かったのに。私はずっと、ミョンイに包まれていたかったのに。
なのになぜ、あの子を引き剥がし、私の心にずかずか踏み込もうとするの?
 今まで堪えていたけれど、もう我慢できない。

 背越し両肘を絡め取って、ありったけの力で捻る。少し上体が浮き上がった。
「痛い!」
 顔をしかめている。
「お前! お前のせいで、私はこんな目に合ったのよ。許してもらえるなんて思わないで」
「私……」
「それだけじゃない。気を失っては冷水をかけられ、また足やらを拉がれて」
「ううっ」
「お前は……私が解き放たれてしばらくの間……この身体を見ずに済んだけれど。痣だらけ
だった。立つ度に骨が軋んだ」
「……私はどうなってもいいから……お願い…」
「チャングムもよ。あの子もあちこち叩かれて」
「……お願い……家は」
 喘ぎも途切れ途切れ。
「いつまでも馬鹿正直なままだと思ったんでしょう? お前に二度と歯向かうことは
ないと侮っていたようね」
「……せめてクミョンだけは」
 勝手なことを言わないで! お前はもう、何も言えないのよ。ましてやお前の願い
なんて、これっぽっちも聞くものですか!

 更に強く顔を押し付ける。いっそ踏み付けたいぐらいだ。
「激しい尋問の繰り返しに……ひととき魂が離れた。私を呼ぶ声が聞こえなければ、
きっとあのまま……この世に引き戻された時、私は……変わっていた。そしてそれから後、
お前にも変えられてしまった!」
 無理やり肌を合わせてきたあの日。痛みを堪えさせられたあの夜。そして私から
この者を求めてしまったあの時。全てが苛立たしい。
「よくも今まで好きなようにしてくれたわね」

 しかし、ちょっと力を込め過ぎた。顔が紅潮し、額に冷や汗が浮かんでいる。手を緩め
ると、やっと息をつく。顔をこちらに曲げて見上げる瞳から、驚きの色は消えていない。
 別にお前を拉ぐつもりはない。身体ではね。その代わり、お前の全てを何もかも……
お前がそうしたように。

 座り直させようと襟首を掴んだ時、また柔らかな後れ毛が目に入る。
 握り締めた手の……力が抜けていく。

 二度と抱くつもりなどなかったのに。

 雨は弱まったようだ。けれど軒先、雫の滴る音が絶えず響いている。

 指先でお前の髪を数本、摘まんでみる。
 こんな夜はいつも。

 いつも。

 指を後れ毛の中に差し入れ、掻き揚げる。合間からのぞく色白のうなじ。
 お前を……。
 うつ伏せたままの背中から手を回し、着ているものの上半分を脱がした。

 剥きだされた背中に手のひらを当てると、指が沈んでいきそうなくらい柔らかい。
指先、爪のあたりで何度か撫でた。その軌跡、肌がこわばる。
 小さく震える肩に齧り付き、甘い触感を歯で味わう。うっすらと歯型。

 どれだけ抱けば気が済むのだろう。なぜ際限が無いのだろう。
 ……気など済まない。
 抱けば抱くほど、指の先までが快感を覚えていく。

 違う。これからはどちらが従うべき者なのか、身をもって判らせてやらねば……。
判らせてやるためなのよ。
 両手を、横たわる身体の胸元に差し入れて、強くつねる。ふくらみは形を変え、お前に
緊張が走る。
 捩る素肌に、じんわり汗が浮かび始めた。

 身体をひっくり返し仰向けに変え、胸に顔を押し付けた。谷間に溜まった汗を舌で舐め
取り、柔らかな頂きを口で転がす。
 お前は柳眉をひそめながら、けれど吐息は熱くなっていく。
 途切れる息の中、言う。
「一人では何もできなかったくせに」
 思わず手が止まった。
「これからだって、そうなんでしょ」
「余計なことを言わないで」

 これから降りかかるであろう、この者にとっては苦難……に震えながら、精一杯強がっ
ているのか。
「ペギョン…」
 それなのにひりひりと身を……疼かせている。
 いじましい。
 けれども。

 これは、以前の私と同じではないか?

 捉われて、いつ果てるとも知れぬ屈辱の日々に。手紙を取り戻してからは、お前を
追いやることや、この忌まわしい関係をチャングムに打ち明けることを考えた時に。
もう何も、頭から全部を追い出してしまいたくなった。

「だったら素直になって、チャングムに抱かれればいいじゃない。」
「私を怒らせたいの!」

 少なくとも肌を合わせている間だけは、おののく心が宥められた。風邪の辛さが、抱き
締められて、すうっと和らいだように。

「そしてあの子の気の済むようにすれば」
「黙りなさい」

 そしてまた、別れなければならないと思えば思うほど逆に、狂うしくお前を求め、ただ
ひたすら溺れていった。
 お前だって……いずれは離れなくてはならないって、判っていたんじゃないの? 
だから互いに求め合い、解きほぐせないぐらいに、もつれあい。
 もうこれ以上は、駄目。お前に触れてはいけない。

「どうせ……終わり。私を放り出すなり、なんとでも……」
 諦めたようにつぶやく細い肩に、身震いした。
 いじらしい。そして、艶かしい。

 思わず、腕を回して抱き締めてしまう。
 私だってお前を追いやるなんて、本当はしたくない。
 けれど今、断ち切らなければ……いつまでたっても……。

「何もかも終わる。<……そして私も解放される……>」
 何かつぶやいていたようだが、よく聞き取れなかった。

 覚悟は、あるのだろう。
 けれど最後にもう一度だけ……と願うのか。
 ……そうね、これからは否応なしに、罪に向き合わなければならないのだから。
 ならば今だけは。

 何も考えられないくらいに、感じさせてやりたい。
 何も考えられないくらいに、感じたい。
 今宵、お前と共に。


 結局、こういうことになるのか。
 ふっ
 自嘲の溜息が漏れる。お前といると、いろいろな感情を抑えることができない……。

 それなら、いつまでも床の上に押し付けておくわけにもいかないわね。
 そして最後くらい、普通にしたい。
 上半分はだけた身体を、脱がした服で覆ってやり、横で布団を整える。
「髪を全部解きなさい。服も」
 声を掛けて、自分も髪を下ろし、服の結び目を解いていく。

 こんなことを思うようになるなんて、ほんの最近まで考えてもみなかった。
 けれど、もうこれで。こうして抱くことはもちろん、お前に会うことも無いだろう。
思い残すことが何も無いように。

 いいや思い出すものですか。ここから離れれば、きれいさっぱり忘れてしまうはずよ。

 横目でちらりと見ると、お前もゆっくりと服を脱いでいる。
 長く伸ばした髪の間から、背中や腰が見え隠れする。
「ねえソングム、誰かいたんでしょ?」
「誰かって?」
 初めてまともに抱く、そう思うと少しばかり気恥ずかしい。
「相手よ。ミョンイ…とのことは……でも他に」
「いいえ」
 背中越し、何か話しをしないと間が持たない。
「何人かはいたはずよ」
「いないわよ」
 互いに背を向け、着ているものをひとつひとつ離して、丁寧に畳んでいく。
「うそおっしゃい。あなたはいろいろと、あんなものやこんなものを仕入れてるって、
聞いたことがあるのよ」
「それはただ、頼まれたものを譲っていただけ。王族の方々に納めていたから、それを
知った何人かに、こっそりと。それだけよ」

 先に布団に入り、手枕をして後姿のお前に目をやる。粟立つ肌は寒さのせいか、
これからの昂りの予感からか。
「見ないでよ。恥ずかしい」
 なによ……さんざん私を、裸にしたくせに。可笑しくて言い返す。
「何を今さら」
「でもやっぱり」
「さあ、お入りなさい」
 持ち上げた衾に潜り込んできた。お前は遠慮がちに、少し間を空けて横たわった。

「でも、どうして? こんなにきれいなのに……」
 身体を寄せ頭を撫でて、小声で聞いた。
「どうしてって?」
「誘えば誰でも、ついてきたでしょうに」
「あなた以外なんて……」
「どうして私なんか。誰も私に、声なんて掛けてくれなかったわ」
「私だけじゃないわよ……どれだけ多くの者たちが……憧れていたか」
 毛穴の縮こまった肩口に、唇を寄せていく。
「あなたはそういうことに、あんまり気付かないから。それに……」
 柔らかい。
「もう少し、にこやかにしていれば、皆も声を掛けたでしょうに」
「私はそんなのいいわ」
「そうね、あなたにはあの子しかいないものね」
 胸もおなかも。
「あの子だって悪いのよ……ミョンイはあなたを独り占めしていたから」
「でも、いなくなった後だって」
「何人にも聞かれたわ。……あなたのこと。だけどあなたは絶対に振り向かないって、
そう言って追い払ったわ……。心の中に、大切な人がいるって」
 滑らか。なのに、手が張り付きそう。
「でもただ一人、あの子だけは……遠ざけることができなかった」
 身体中に舌を滑らしていく。
「そしてミョンイ…と同じようにその娘だけを、あなたは」
 言葉に、熱い喘ぎが入り混じる。
「……愛し続けた」
 口を上へとせり上げ、首筋も頬もねっとりと舐めまわす。
「けれど一度で…いいから私…を見て…欲しかったの」
 でも今は、こうして見ているじゃないの。

 手を繁みに潜らせ、やわやわとお前の敏感な場所を探りながら、
「ひとつ聞くけど」
 いいや、止めておこう。これ以上この者を知る必要はない。今夜は何も考えないで……
初めて抱かれた時のように、何も思わず、肌を合わせよう……。
 手を更に深く入れ……まだ充分には馴染んでいないようで、時折小さな呻き声の混じる
声を楽しむ。

 身体をくねらせ、肌を紅潮させ、私を掴み、絶え間ない息遣い。
 これから熱く変わっていくお前の姿が目に浮かび、それだけで身体の奥がざわめき、
私まで声が出てしまう。もう何も考えられなく……。
 いけない、まだ始まったばっかりよ。もう少し冷静に。

 手をお前の身体の深くで動かしながら唇を舐め回し、口の中に舌を送る。一瞬息が
詰まったようだ。
 いじめてやりたい。そんな気持ちがふつふつと沸き起こり、舌を追い詰め、強く絡め、
そしてきつくきつく……千切れるぐらいに吸い上げた。
 辛い? ふふ。今日は優しくはしないわよ。

 上唇だけを吸上げつつ胸を摘み、揉みしだく。格好のいい胸を……さすがに
ここに齧り付くのは止めてあげる。とっても痛いから。

 温まってきた両脚を裂いて、その間から圧し掛かった。
 今度はゆっくりと、浅い口付けを与える。唇同士が微かに触れるだけで、鼻奥から
くぐもった声が聞こえてくる。
 可愛くて、鼻の頭にも軽く口付けた。ふんぅ と甘い声でソングムは応える。

 あれだけ、傲然としていた女が、泣き顔のようになって私にすがり付いている。
小憎らしさと愛おしさが、ぞくりとする悦びに変わっていく。

 鼻から上唇、目へ。顔中で私の唇、舌を受け入れさせる、
 上顎に、舌を貼り付けて小刻みに動かすと、溜息とも唸りともつかぬ声で鳴く。
 こんなに素敵な表情を見せてくれたご褒美……一度昇らせてあげる。

 優しくうなじを舐め、柔らかい双丘の先端を両手で優しくまさぐりながら、
「ソングム……きれいよ」
 ぴくっと反応した。みるみる表情が和らぎ、また一層美しく変わる。

 ふくらみの片方を揉み、片方の頂を舐め軽く歯を当てる。それは徐々にこわばり、
敏感さも増しているようだ。左右、手と口で交互に愛撫していると、身体を揺らして
息を吐き出した。
 軽くいったようね。

「ちょっと痛かった? ごめんなさいね。つい夢中になってしまって」
「いいえ、でもあなたがこんなに激しいことを」
 黙って、お前の上に乗せていた身体を横に下ろす。
 息が整うまで、肩を撫でながら待った。
「ねえペギョン……さっき何をいいか」
 また口付けをし、身体中をぴったり合わせた。
 ソングム、今は無駄なおしゃべりはいらないのよ。私は味わいたいように味わうだけ。
それ以外はいらない。黙って私の思うようにされていればいいの。
 一度果てた肌は一段と艶よく、粘るような触り心地になっている。腰や腿や肩、お前の
全てに触れたい。
 私のまさぐる手と、私を求めるお前の手がぶつかった
 その手を取り、私の胸に触れさせた。

 外はまた荒れ始めたようだ。横に並んでしばらく互いを撫で合いながら、雨風が戸板に
弾ける音を、心地良く聞く。

 お前を軽く抱えて私の体の上に誘い、唇を私の胸へ導く。流れる髪の毛に指を走らせる
と、少し蒸れたような髪の匂い。そしてお前の香り。それが入り混じり、鼻奥を芳しく、
くすぐった。
 その香りを利きながら、上に重なるお前の脚、その間にある部分を優しく撫でる。
 時折指を沈めたり、擦り上げたり。
 息が上がってきた。
 もっと苦しくなるのを承知で、首を引き寄せていつまでも口に吸い付き離さない。
上気した頬、思うように息の吸えない苦しさで、首筋が強張っている。そして身体中が
汗ばんできた。

 ちょっと、お前にも味あわせてあげようかしら。乗せた身体を離し、お前の手を口に含み
湿り気を与える。そしてその手を私の熱い泉へ近づける。
 お前は私の感じる場所を的確に捉え、巧みに私を愛しみ、そして私はきっと旨そうに
その指に絡みついているのだろう。私も少しずつ気持ち良くなってきた……。
 あぅ、そこ……もっと。

 頭を軽く押しおなかへ。そしてもっと下へ。
 舌でなぞられている部分が、ほかほか温かくなっていく。
 そしてまた手を差し入れられながら、表の部分を舐められ、吸われ、甘く噛まれた。

 これ以上されると、負けてしまう……。今日は私だけがするのよ……。
 と思う間もなく、お前の舌先が私の口に襲い掛かり、あっと逃れようとしたけれど、
まとわりつき絡められ、そのまま深いうねりに引きずり込まれ、あれよあれよという
間に、心地良さに沈められてしまった……。


 そろそろ一休み……。中に入れられた手を離し、身体を起こす。
 お前も座らせて、その肩を抱き、口付けをする。何度も舌を……。

 全然、一息入れたことになっていない!
 もうずっと、どちらか、いやどちらともが相手を味わい続けている。途中でやめること
なんてできないのね……。

 お前はまた私の胸に手を置き、時々音を立てながら、身体中を舐めてくれる。妖しく
蠢く温もりとぬめりに、接する場所、全てが痺れてくる。
 愛撫を受けながら、頭を撫でてやる。
 求められる熱い喜び。
 これからもいい子にしていれば、こうして可愛がってもいいのだけれど。

 その蠢きが首筋にまで這い上がり耳元近くに達した時、怖気を覚えた。
 この部屋に連れて来られ、無理やり舐められ……くっ……憤りが、蘇る。
 下種め! こんな奴に愛しさなど。
 ただ目の前のこの身体を弄り、辱めたいだけ。この者を貪り、食い散らかしたい。
ここにあるのは、怒り狂うような欲望、それだけ。
 そう感じる自分自身が恐ろしい。

 恨みと欲望がない交ぜになっている。
 醜い快楽に溺れる、自分の浅ましさに吐き気がする。

 ちょっと嫌になって身を離そうとすると、ぎゅっと抱き締められた。涙ぐみながら、
「あなたから離れたくない」
 お願いだから……もう何も言わないで。そしてその顔を、見ていられないの。

 ……理性など取り戻してはいけない……何も考えてはいけない。

 お前の身体を向こうに向けて座らせ、背中越しに胸を揉みしだいた。
 腰の後ろから自分の身体を密着させ、お前の投げ出した脚に私の脚を上から絡めて
開かせ、内腿を擦っていく。同時にうなじや耳に舌を沿わせると、強く仰け反った。
私はその度、もたれかかる重みを受け止める。
 指の動きに操られ、声は途切れがちになり、喘ぎへ変わり、それがもっと短い悲鳴に
なり、それも聞こえなくなった。そしてぐったり。
 力が抜けた身体を、布団の上にうつむけた。

 目の前に、白い背が広がっている。
 それは、軽く指先で触れるだけで……興奮を取り戻し、ひくひくとしなる。でも……
後ろから確かめると、まだあの部分、中までは充分に満たされていないようだ。柔らかな
襞が指にまとわりついて、もっと受け入れようと待ち構えている。

 肘で身体を支えさせ、腰を突き上げさせて、と。
 望み通り、深く差し入れてあげる。

 目の前に広がる大きな盛り上がり――胸よりも弾力がある――に口付けながら、再び
始まる喘ぎ声を楽しむ。そうやって背中やらお尻やらをまさぐっていると、その手を
掴まれ胸に添わさせられた。しばらく擦ってやるけれど……暴れ馬のように身を大きく
くねらすので、思うように捉えられない。困った子ね……じゃあ……。

 身体を仰向けにしてやり、改めて眺める。
 胸はぴんと尖っていて、まだ何もしていないのに、口を寄せただけで私の息を感じ、
さらに固く縮こまる。

 また始めた愛撫に、双丘の揺れは大きくなる。そして時折耐えられなくなるのか、私の
腕を痛いほど掴む。
 邪魔だ。
 お前の片手に自らの身体を預けて、もう一方の手も、首の下から腕を回して手首を拘束し、
これでよし。脚の間に手を入れながら、胸の頂を舌先で丁寧に転がす。
 愛しみを与えられ、為す術も無く身体中揺らしている。
 お前が、また愛しく思えてくる……。

 首筋もまた、強張りだして……。


 あの子……チャングムは……私がもうすぐ最後の絶頂を迎える際に――私の喉元が反り
気味になると――決まって首筋、喉の中心から少し横に口を寄せ、大きく口を開けて
噛む、というより食らい付いた。
 最初は痛かったし、何より驚き、逃れようとした。けれど、今私がソングムにしている
ように両腕をがっちりと押さえられ、脚も挟み込まれて身動きもままならず、そうして
私をずっと責め、首筋を離そうとはしない。続けられる内に、痛みが気持ち良く感じ、
酔ったようふわふわと身体が浮き始め、そしてぶるっと、寒気のようなものが皮膚を走り
…………そこから先はいつも判らなくなる。

 気が付くと私は布団の中にいて、あの子は微笑みながら見つめていた。

 何度かそんなことがあって、何故そんなことをするのか、ある時尋ねてみた。あの子は
『あの場所は、脈打つのがはっきり判るし、息遣いもよく聞こえます。それを感じるのが
たまらないのです』と言った。
 それである時、私も同じようにあの子の首筋に舌を置いてみた。
 なるほど。
 あの子が高揚していくにつれ、脈はどんどん強くなり、心なしか血の管も膨らむような
気がする。そして息遣いが、唇にも伝わってくる。
 いよいよ果てる前には、締め付けるような――耳ではほとんど聞こえない――
息の根が漏れてくる。

 顔を間近に見、唇を合わせて吐息を味わうのも、もちろん楽しい。けれど、脈動に触れ
ながら昇りつめさせるのは、陶酔が実感できるような、自分の身体にまで快感が流れ
込んでくるような、そんな時めきが感じられて。

 しかし良いことばかりでもない。跡が残ってしまうから。
 次の日から数日は、人目に付かないよう襟元の合わせ目を寄せたり、人の前に立つ
角度を気にしたりしなくてはならない。幸い水剌間では、互いを構う暇もないくらい
忙しいし、尚宮はほとんど立ちっぱなしだから、まだ目に付きにくいようなものの。

 だから何度も、止すように言い付けた。しかし夢中になると、あの子はまた同じように
強く吸い付いてくる。私が拒もうとすると、首筋を舐め上げられて、つい力が抜けて、
そのまま……。
 あの……身体中を食べられてしまうような感覚。そして一抹の屈服感……。


 お前の肌を味わいながらそんなことを思い出していた。

 私の動きに、時折苦しげな表情を浮べ、だらしなく半開きになった口元から、濃い息を
吐く。
 昂る波は身体を反らし、身震いを起こす。
 左手は私の身体の下に挟まれ、唯一自由になるもう片方の手のひらを、何かに触れて
安心したいのでしょうね。でも掴みどころなく、空をひらひらと握り締めている。

 口の中に溢れかえる液体を、喉をコクッと鳴らして飲み込もうとしている……けれど
少し口の端から……。
 呆けている……。

 押さえていた腕を放してやり上から身を重ねると、安堵したように首に腕を絡めてくる。
 自分の身体を、肘と膝で支えて少し浮かせ、またゆっくりお前のそこに手を宛がい、
柔らかい中にひときわ熱く膨らんだ部分を押す。
 高みへ昇る顔を横目で見ながら、そっと首筋に唇を寄せる。

 喉を通り過ぎる息……唇に感じる血の流れ……温かい一筋の道。
 かぷっ
 思いっきり吸い付いてやった……。
 首筋から敏感な場所まで、身体を一直線に貫くような、太い痺れを感じなさい。

 お前はがくがくと仰け反り、背中に爪が食い込むくらい力を入れ、声を嗄らして喘いだ。
 そして……溢れさせ……沈めていない指まで、ぐっしょりと濡れている……。


 ぴくりとも動かない……。


 腕も身体も、疲れてしまった。私も。そしてお前も。気だるくて、寝巻きを着るのも
億劫に思う。
 今晩はこのまま……。そう思う内に私も眠くなり、ソングムの身体に寄り添ったまま、
いつの間にか眠りに落ちていた。                 ―――終――― 


  * (1)−宿望− (2)−渇望− (3)−企望− (4)−想望− (5)−非望− (6)−観望− (8)−翹望− (9)−顧望− (10)−闕望− (11)−属望− (12)−競望− (13) −星望− 1/3 2/3 3/3


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