ユリフィナ_19 ◆/GKRtxSDWQ ６スレ目本編��
596 名前： ユリフィナ_19 ◆/GKRtxSDWQ [sage] 投稿日： 2006/05/22(月) 09:37:00.67 ID:uDg3zKXe
カーディガンを羽織ったまま、ベッドに横向きに丸まって眠っているのに気づいたのは朝だった。
冒険者証明書の裏面の時計を見ると朝７時半だ。集合の１０時まではまだまだ時間がある。
あの後、私は左ほほに鮮やかな赤色の手のあとをつけたモグタンと、
またいろいろなとりとめのない話を何時間も続けていた。
途中で少しうつらうつらとしてきたことは覚えているけれど、
そこからの記憶は青紫のアンコウがブーメランを使って私が乗っているマグロ漁船『熱情の律動号』を
『パッション！パッション！』と叫びながら襲っているという
ものすごくシュールなものになっている。間違いなくここら辺から夢だ。ていうか現実だったら困る。
私の体にはちゃんと毛布がかけられていた。きっとモグタンが気を利かせてくれたのだろう。
そのモグタンはというと、毛布が上下しているところを見ると中で猫みたいに丸まって眠っているのだろう。
私は彼を起こさないようにそっと毛布から出て、顔を洗って白AFに着替え、髪の毛に櫛を通してからをポニーテールにして
リラコサージュをつけた。あ、あと朝ごはん作らなくちゃいけないからエプロンもつけなくちゃ。
彼が起きるまでにすっかり上達した調理スキルを使ってきれいな形のオムレツに
ソーセージ、あとサラダを作り上げる。・・・考えてみるとオムレツの形以外調理スキルほとんど関係ないし。
オレンジジュースを二つのコップに注いだ後、まだぐっすり眠っている・・・
っていうよりも多分私がずーーーーーっと話につき合わせたから寝ているのだろうけど、
モグタンをやさしくゆすって起こした。
597 名前： ユリフィナ_19 ◆/GKRtxSDWQ [sage] 投稿日： 2006/05/22(月) 09:37:22.75 ID:uDg3zKXe
「モグタン、ご飯だよ〜。おきて〜〜。」
「グモ・・・もう朝クポ〜？」
「うん、顔あらってきな。」
眠そうに右に左にふらふらしながら顔を洗いに飛んでゆくモグタンを見送りながら私はエプロンを脱いで
ちょこんと椅子に座って彼が帰ってくるのを待っていた。
・・・これがヴァナディールで食べる最後の食事になるのかもしれないのか。
そう考えた瞬間、ものすごく寂しくなった。
「ユリ〜、食べるクポ〜。」
顔を洗ってすっきりとしたモグタンがパタパタとこちらに飛んできたのでハッとわれに帰った。
「え、あ、うん。いただきます。」
「いただきますクポ。」
私はフォークをソーセージに突き刺した。
「そうそうユリ、サンドリアには名物のドラギーユクッキーってものがあるらしいクポ〜。」
「えー、なにそれ。じゃあウィンダスにはシャントットチョコとか天の塔ケーキとかもあるの？」
いつものようなくだらない会話、いつものような笑顔。すっかりいつもの朝食風景となったこれも、
ついに最後になるかもしれないんだ。
ちょっとだけ、ダテレポが失敗すればいいのにと思っちゃう私はまだまだ弱い子供なんでしょうね。
598 名前： ユリフィナ_19 ◆/GKRtxSDWQ [sage] 投稿日： 2006/05/22(月) 09:38:01.23 ID:uDg3zKXe
９時４５分。そろそろ出発の準備を始めたほうがいい頃だ。私が持ってゆく必要があるものは
護身用のダークモールに防具、他には特にない。実は準備なんてする必要はないんだ。
必要なものは全部アリアちゃんがもっている。
私は玄関でしっかりとブーツの紐を結び、何度か地面をつま先でつついた後、彼に向き直った。
もう既に、私の目にはこれでもかというくらい涙がたまっていた。
「モグタン・・・行ってきます。」
「行ってらっしゃいクポ。」
彼のその一言で限界が訪れた。私はその場にうずくまり、大声で泣き始めた。
いやだ。ずっとモグタンと一緒にいたい。帰りたくない。
そんな子供じみたわがままが心を一気に支配する。
私の気持ちを知ってか、モグタンが何度もしてくれたように私の頭をぎゅっと抱きしめる。
「行くクポ。帰ってくるなクポ。ユリは帰らなくちゃいけないクポ。」
「うん・・・わかってる。わかってるのに！！」
また一気に感情が爆発する。ボロボロと大粒の涙がこぼれる。
私はペタンと床に座り込んで、思いっきり彼を抱きしめて恥じも外聞もなく思いっきり声を張り上げて泣いた。
「ユリ・・・。」
モグタンが赤ん坊をあやすような優しい優しい声で私に話しかけた。
私はまだしゃくりあげながら、そっと頭を上げて泣きはらした目で彼を見つめる。
599 名前： ユリフィナ_19 ◆/GKRtxSDWQ [sage] 投稿日： 2006/05/22(月) 09:38:18.81 ID:uDg3zKXe
モグタンはかばんからキラリと光るものを取り出していた。
それは細い銀の線で大小の二つの星が形作られている飾りがついたきれいなネックレスだった。
彼は、私の首を抱きしめるように腕を回すとそれを私の首につけてくれた。
「モグの宝物クポ。これをモグだと思ってほしいクポ。」
それはとてもしゃれていて、綺麗でどこか神秘的な輝きがあった。
モグタンの気持ちは素直に嬉しいけれど、宝物だなんて・・・そんな大切なものは受け取れない。
でも、モグタンがくれた物だもの。受け取りたい。・・・あ、そうだ。
「じゃあ、私も宝物をあげる。」
そう言って私は頭の上にちょこんと乗っかっていたユカピピの、妹のキャラの銘が入ったリラコサージュを
外してモグタンの頭につけてあげた。彼ははっとして慌てて私にまくし立てた。
「ユリ！それは受け取れないクポ！それはユリの妹さんが作ってくれたものだって言ってたクポ！」
そんなモグタンに私は首を振る。
「やだ。モグタンが宝物くれたんだもん、私の宝物も受け取ってくれなくちゃイヤ。」
「で、でもクポ・・・。」
私は彼を上目遣いで見つめ子供っぽく頬を膨らませてみる。
「モグタン、女の子からのプレゼントを受け取るときに嫌な顔するとモテないよ？」
そしてちょっといたずらっぽく笑った。つられてモグタンも少し笑う。
「それは困るクポ。」
そういいながら彼は左手で頭に乗っかったリラコサージュをニ、三度なでた。
リラコサージュはまるで最初から彼の為に作られたかのように、モグタンに似合っていた。
600 名前： ユリフィナ_19 ◆/GKRtxSDWQ [sage] 投稿日： 2006/05/22(月) 09:38:48.42 ID:uDg3zKXe
「モグは・・・モグはこれがあれば寂しくないクポ。」
「・・・私も。ありがとう・・・モグタン。」
もう大丈夫、モグタンは私の首からぶら下がって一緒にいてくれるから。たっぷり泣いて気持ちの整理もついた。絶対帰る！
寂しくなったらまた泣けばいい。みんなの事思い出して元気にしてるかなって思えばいい。
ふと、怪しい黒マントのサンタ達が私にくれたパールを思い出した。
手放すのもなんだか怖くて鞄の底に入れていた真っ赤なパールだ。それを私は取り出した。
「それは何クポ？」
「リンクパール。サンタさんがくれたの。」
「・・・クポ？」
何が何だか分からないといった顔で呆然としている彼の目の前で、
私は思いっきりソレを石の床にたたきつけた。もちろんモグタンはそれを見てさらにびっくりする。
ガシャンッと派手な音を立てて割れたそれは、
破片からルビーのような赤い光を撒き散らしながら空気に溶けるように消えていった。
私は絶対に帰るんだもん。こんな帰れなかったときの保険なんていらない。
ダテレポで帰れなかったら、別の帰る方法を探すだけ。最初からこんな物、いらなかったんだ。
601 名前： ユリフィナ_19 ◆/GKRtxSDWQ [sage] 投稿日： 2006/05/22(月) 09:39:20.07 ID:uDg3zKXe
「・・・ユ、ユリ、今の割っちゃって良かったクポ？」
「全然オッケーだよ。」
私はまだ真っ赤であろう目のままニコッと彼に笑いかけ、ぎゅっと胸に彼の顔を押し付けた。
ムギュッとよく分からない声をあげるモグタンをしばらく名残惜しくて抱きしめていたが、
そろそろ集合時間だ。もう、本当に行かないと・・・。
「さよなら、モグタン。」
腕の力を緩めモグタンを解放する。二人の距離が少しだけ開いたところで、私は彼のおでこに軽くキスをした。
そして、思いっきり微笑んだ。
「大好きだよ・・・。」
最後にもう一度だけ、彼を力いっぱい抱きしめた。
カーディガンを羽織ったまま、ベッドに横向きに丸まって眠っているのに気づいたのは朝だった。
冒険者証明書の裏面の時計を見ると朝７時半だ。集合の１０時まではまだまだ時間がある。
あの後、私は左ほほに鮮やかな赤色の手のあとをつけたモグタンと、
またいろいろなとりとめのない話を何時間も続けていた。
途中で少しうつらうつらとしてきたことは覚えているけれど、
そこからの記憶は青紫のアンコウがブーメランを使って私が乗っているマグロ漁船『熱情の律動号』を
『パッション！パッション！』と叫びながら襲っているという
ものすごくシュールなものになっている。間違いなくここら辺から夢だ。ていうか現実だったら困る。
私の体にはちゃんと毛布がかけられていた。きっとモグタンが気を利かせてくれたのだろう。
そのモグタンはというと、毛布が上下しているところを見ると中で猫みたいに丸まって眠っているのだろう。
私は彼を起こさないようにそっと毛布から出て、顔を洗って白AFに着替え、髪の毛に櫛を通してからをポニーテールにして
リラコサージュをつけた。あ、あと朝ごはん作らなくちゃいけないからエプロンもつけなくちゃ。
彼が起きるまでにすっかり上達した調理スキルを使ってきれいな形のオムレツに
ソーセージ、あとサラダを作り上げる。・・・考えてみるとオムレツの形以外調理スキルほとんど関係ないし。
オレンジジュースを二つのコップに注いだ後、まだぐっすり眠っている・・・
っていうよりも多分私がずーーーーーっと話につき合わせたから寝ているのだろうけど、
モグタンをやさしくゆすって起こした。
597 名前： ユリフィナ_19 ◆/GKRtxSDWQ [sage] 投稿日： 2006/05/22(月) 09:37:22.75 ID:uDg3zKXe
「モグタン、ご飯だよ〜。おきて〜〜。」
「グモ・・・もう朝クポ〜？」
「うん、顔あらってきな。」
眠そうに右に左にふらふらしながら顔を洗いに飛んでゆくモグタンを見送りながら私はエプロンを脱いで
ちょこんと椅子に座って彼が帰ってくるのを待っていた。
・・・これがヴァナディールで食べる最後の食事になるのかもしれないのか。
そう考えた瞬間、ものすごく寂しくなった。
「ユリ〜、食べるクポ〜。」
顔を洗ってすっきりとしたモグタンがパタパタとこちらに飛んできたのでハッとわれに帰った。
「え、あ、うん。いただきます。」
「いただきますクポ。」
私はフォークをソーセージに突き刺した。
「そうそうユリ、サンドリアには名物のドラギーユクッキーってものがあるらしいクポ〜。」
「えー、なにそれ。じゃあウィンダスにはシャントットチョコとか天の塔ケーキとかもあるの？」
いつものようなくだらない会話、いつものような笑顔。すっかりいつもの朝食風景となったこれも、
ついに最後になるかもしれないんだ。
ちょっとだけ、ダテレポが失敗すればいいのにと思っちゃう私はまだまだ弱い子供なんでしょうね。
598 名前： ユリフィナ_19 ◆/GKRtxSDWQ [sage] 投稿日： 2006/05/22(月) 09:38:01.23 ID:uDg3zKXe
９時４５分。そろそろ出発の準備を始めたほうがいい頃だ。私が持ってゆく必要があるものは
護身用のダークモールに防具、他には特にない。実は準備なんてする必要はないんだ。
必要なものは全部アリアちゃんがもっている。
私は玄関でしっかりとブーツの紐を結び、何度か地面をつま先でつついた後、彼に向き直った。
もう既に、私の目にはこれでもかというくらい涙がたまっていた。
「モグタン・・・行ってきます。」
「行ってらっしゃいクポ。」
彼のその一言で限界が訪れた。私はその場にうずくまり、大声で泣き始めた。
いやだ。ずっとモグタンと一緒にいたい。帰りたくない。
そんな子供じみたわがままが心を一気に支配する。
私の気持ちを知ってか、モグタンが何度もしてくれたように私の頭をぎゅっと抱きしめる。
「行くクポ。帰ってくるなクポ。ユリは帰らなくちゃいけないクポ。」
「うん・・・わかってる。わかってるのに！！」
また一気に感情が爆発する。ボロボロと大粒の涙がこぼれる。
私はペタンと床に座り込んで、思いっきり彼を抱きしめて恥じも外聞もなく思いっきり声を張り上げて泣いた。
「ユリ・・・。」
モグタンが赤ん坊をあやすような優しい優しい声で私に話しかけた。
私はまだしゃくりあげながら、そっと頭を上げて泣きはらした目で彼を見つめる。
599 名前： ユリフィナ_19 ◆/GKRtxSDWQ [sage] 投稿日： 2006/05/22(月) 09:38:18.81 ID:uDg3zKXe
モグタンはかばんからキラリと光るものを取り出していた。
それは細い銀の線で大小の二つの星が形作られている飾りがついたきれいなネックレスだった。
彼は、私の首を抱きしめるように腕を回すとそれを私の首につけてくれた。
「モグの宝物クポ。これをモグだと思ってほしいクポ。」
それはとてもしゃれていて、綺麗でどこか神秘的な輝きがあった。
モグタンの気持ちは素直に嬉しいけれど、宝物だなんて・・・そんな大切なものは受け取れない。
でも、モグタンがくれた物だもの。受け取りたい。・・・あ、そうだ。
「じゃあ、私も宝物をあげる。」
そう言って私は頭の上にちょこんと乗っかっていたユカピピの、妹のキャラの銘が入ったリラコサージュを
外してモグタンの頭につけてあげた。彼ははっとして慌てて私にまくし立てた。
「ユリ！それは受け取れないクポ！それはユリの妹さんが作ってくれたものだって言ってたクポ！」
そんなモグタンに私は首を振る。
「やだ。モグタンが宝物くれたんだもん、私の宝物も受け取ってくれなくちゃイヤ。」
「で、でもクポ・・・。」
私は彼を上目遣いで見つめ子供っぽく頬を膨らませてみる。
「モグタン、女の子からのプレゼントを受け取るときに嫌な顔するとモテないよ？」
そしてちょっといたずらっぽく笑った。つられてモグタンも少し笑う。
「それは困るクポ。」
そういいながら彼は左手で頭に乗っかったリラコサージュをニ、三度なでた。
リラコサージュはまるで最初から彼の為に作られたかのように、モグタンに似合っていた。
600 名前： ユリフィナ_19 ◆/GKRtxSDWQ [sage] 投稿日： 2006/05/22(月) 09:38:48.42 ID:uDg3zKXe
「モグは・・・モグはこれがあれば寂しくないクポ。」
「・・・私も。ありがとう・・・モグタン。」
もう大丈夫、モグタンは私の首からぶら下がって一緒にいてくれるから。たっぷり泣いて気持ちの整理もついた。絶対帰る！
寂しくなったらまた泣けばいい。みんなの事思い出して元気にしてるかなって思えばいい。
ふと、怪しい黒マントのサンタ達が私にくれたパールを思い出した。
手放すのもなんだか怖くて鞄の底に入れていた真っ赤なパールだ。それを私は取り出した。
「それは何クポ？」
「リンクパール。サンタさんがくれたの。」
「・・・クポ？」
何が何だか分からないといった顔で呆然としている彼の目の前で、
私は思いっきりソレを石の床にたたきつけた。もちろんモグタンはそれを見てさらにびっくりする。
ガシャンッと派手な音を立てて割れたそれは、
破片からルビーのような赤い光を撒き散らしながら空気に溶けるように消えていった。
私は絶対に帰るんだもん。こんな帰れなかったときの保険なんていらない。
ダテレポで帰れなかったら、別の帰る方法を探すだけ。最初からこんな物、いらなかったんだ。
601 名前： ユリフィナ_19 ◆/GKRtxSDWQ [sage] 投稿日： 2006/05/22(月) 09:39:20.07 ID:uDg3zKXe
「・・・ユ、ユリ、今の割っちゃって良かったクポ？」
「全然オッケーだよ。」
私はまだ真っ赤であろう目のままニコッと彼に笑いかけ、ぎゅっと胸に彼の顔を押し付けた。
ムギュッとよく分からない声をあげるモグタンをしばらく名残惜しくて抱きしめていたが、
そろそろ集合時間だ。もう、本当に行かないと・・・。
「さよなら、モグタン。」
腕の力を緩めモグタンを解放する。二人の距離が少しだけ開いたところで、私は彼のおでこに軽くキスをした。
そして、思いっきり微笑んだ。
「大好きだよ・・・。」
最後にもう一度だけ、彼を力いっぱい抱きしめた。
2006年06月10日(土) 02:23:48 Modified by meku924