ユリフィナ_19 ◆/GKRtxSDWQ ３スレ目外伝
832 ：ユリフィナ_19 ◆/GKRtxSDWQ ：2006/04/24(月) 21:11:13.91 ID:sfPr1lKE
モーグリの里を出てからすでに4年。彼は遊びにも恋にも程ほどに、
ただひたすら一流のモーグリを目指して勉学に打ち込んでいた。
そんな彼は当然のように学校で常にトップクラスの成績を叩きだし続け、
当たり前のように冒険者の身の回りの世話をするモーグリとなるための資格試験を一発で合格。
その後の研修でも常に周りから頭ひとつ抜きん出た存在であった。
そして無事に研修を終えた彼は二年ぶりの実家で担当冒険者についての資料が来るのをのんびりと待っていた。
彼は自室でお気に入りの本を眺めているとドアがノックされる。彼はその音を聞くとものすごいスピードで
持っていた本を地面すれすれの高さに投げる。本は全年齢対象のこの板では表現しかねるページをぱらぱらと
高速でめくりながら静かにベッドの下の奥底へと消えていった。その本のタイトルは「たるたるにゃんにゃん」。
いろんな意味で禁書である。
「どうぞクポ〜。」
彼がのんびりとした声でノックに答えるとドアががちゃりと開き、大きな封筒を持ったモーグリがあらわれる。
833 ：ユリフィナ_19 ◆/GKRtxSDWQ ：2006/04/24(月) 21:11:30.41 ID:sfPr1lKE
「おにいちゃん、封筒着たみたいクポ。」
彼の妹、モルルが嬉しそうに回転しながら彼にそう言った。
「きたクポ！メイン書類きたクポ！もうきたクポ！早いクポ！」
彼も嬉しそうに回転を始める。30秒ほど回転した後、彼はぴたりと止まりモルルへと向き直るとまじめな
表情になりこう言った。
「それじゃあ、封筒の中身は個人情報の固まりクポ。家族といえでも見せるわけにはいかないから、
しばらくは一人にしてクポ。」
「わかったクポ。お兄ちゃん初仕事がんばってねクポ〜！」
彼は手を振ってから扉を閉じる妹を見送った後、さっそく書類に目を通し始めた。
その書類には所属国、種族、年齢、ジョブ等のほかにも身長、体重、スリーサイズをはじめとした
仔細なデーターがぎっしりと書いてあった。これらはモーグリが私服を買う際に必要とするデーターであるからだ。
「クププププ。・・・計算どおりクポ。」
彼は突然邪悪な笑みを浮かべながら資料に載っている写真や名前を何度も何度も舐めまわすように眺めた。
写真の中にはニコリと微笑む栗色の髪の毛をポニーテールにした子供のような顔をした女性がいた。
『名前:Yurifina 種族:タルタル Age:18 性別:女 所属国:ウィンダス連邦』
834 ：ユリフィナ_19 ◆/GKRtxSDWQ ：2006/04/24(月) 21:11:57.68 ID:sfPr1lKE
本来、問題が起こらないために男性の冒険者にはオスのモーグリが、
女性の冒険者にはメスのモーグリがあてられるものである。しかし、何故彼に女性の冒険者が割り当てられたのか？
それは彼が学生時代に勉強の他にもあることを学んでいたからである。書類の偽造とデータベースの書き換え。
彼は様々な手段を使いいくつものセキュリティーをくぐりぬけ、数日前に自分の担当がタルタルの女性になるように
モーグリ達のデータベースをいじっていたのだった。
「クプププ・・・今からこれからの生活が楽しみで楽しみでしかたがないクポ〜〜〜〜♪」
彼はそれから何分もの間ずーーーーっと回転し続けていた。
冒険者が入る前のモグハウスは本当に寂しいものである。冒険者が入ってからもレンタルハウス以上に質素なことも多いが。
彼は空っぽのモグハウスをせっせと掃除をしていた。
ずいぶん長い間人が住んでいなかった家にはホコリがたまり放題だったからだ。ほうきがけした後にモップをかけ、
壁を雑巾で丁寧に拭く。薄汚れたモグハウスがどんどんピカピカになっていくところを見るとさすがとしか言いようがなかった。
掃除が終わり、彼が一息ついているとポストに何かが投げ込まれた。彼がポストの様子を見ると大小さまざまな箱が
無理矢理八つ詰め込まれていた。これからここに住む冒険者の荷物だ。
彼はそれらを全て引きずり出すと中身の確認を始めた。食器類、衣服、本、毛布、
他にもこまごまとした身の回りのものがいい加減に詰め込まれていた。どうやらYurifinaさんはあまり几帳面な性格ではないらしい。
とりあえず、最初から備え付けられいてる棚に荷物を全て丁寧に並べた後、手間賃として数枚の服類をいただいておく。
(正当な報酬クポ)
835 ：ユリフィナ_19 ◆/GKRtxSDWQ ：2006/04/24(月) 21:12:17.18 ID:sfPr1lKE
彼が腰のポーチにそれらをしまっている時に突然扉が開いた。彼は慌ててポーチにそれらを押し込んだ後にこやかに
この家の主となる人物へと微笑んだ。
「はじめましてクポ。ご主人様。」
(そしてはじめましてモグの獲物。)
「はじめましてモーグリさん。これからお世話になる駆け出しシーフのユリフィナです。」
新品の緑色のタルタルの民族衣装に身を包み、腰には小さな銅製のナイフを差しているポニーテールの彼女は
彼に微笑み返しながら軽く一礼した。
タルタルの中でも小柄な彼女は彼のストライクゾーンど真ん中であった。
思わずにやけそうになる顔の筋肉を何とかコントロールして彼はモグハウスの説明を始めた。
彼女は彼の説明を熱心に聞いている。もうその姿すら彼にはツボでたまらなかった。
「・・・あと、身の回りの世話も全部モグがやるクポ。掃除洗濯料理、それに着替えなんかも任せるクポ。」
「え？」
彼女の顔が引きつる。この反応は十分予想していた事だ。彼はうろたえずにこう続けた。
「これも規則クポ。他の冒険者もみんなそうクポ。それにモグの仕事でもあるクポ。」
「・・・本当ですか？」
「本当クポ。」
大嘘だ。でも、新米冒険者にはその真偽を確かめる術などない。
彼の予想の通り彼女はその事を信じて着替えも彼に任せるようになっていった。
836 ：ユリフィナ_19 ◆/GKRtxSDWQ ：2006/04/24(月) 21:13:11.95 ID:sfPr1lKE
「ほんと、昔は良かったクポ〜・・・。」
今、彼は左頬に赤い手の後をつけたまま洗濯をしていた。主人の着替えを覗いた正当な報酬として強烈なビンタをもらったためだ。
まだヒリヒリする。
「ま、別にいいクポ。今日の晩御飯にネムリタケを混ぜて、ぐっすり眠っている間にたっぷりとお礼を・・・クププ。」
「あら、モグタン。今晩のご飯は私が作るからゆっくりしていていいわよ？外で。」
彼の背後から聞きなれた声がしてくる。振り向くとご主人様が眉を限界まで吊り上げて腕を組みながら立っていた。
「ご、ご主人様出かけたんじゃなかったクポ！？」
「ま・だ・だ・よ！」
そう言いながらご主人様は右腕をおもいっきり振り上げる。
「この変っ態モーグリ！！！！」
今日もウィンダス居住区に乾いた音が響き渡った。
2006年06月11日(日) 18:28:18 Modified by bumotogobu103