Lead_161 ◆zmxSLEadCU 外伝アルド編02
きゅるるる〜
僕のおなかが鳴った。
ううぅ･･･。
「ぷっふ、はっはっはっは！」
クマヒゲ船長が笑う。
「そうか、ハラへったか。うちのカミさんのタブナジア・タコス、食うか？」
言いながら、船長は自分の鞄を開けた。
出てきたのは、けっこう大きめのタコス。
おいしそうな匂いがする。
「本場モンだぞ？ これ食っちまったら、合成モンなんてマズくて食えやしねぇ」
船長さんが、タコスを二つに分けてくれた。
僕はクリスタルでお湯を沸かして、お茶を淹れなおした。
リードさんは、今ごろどの辺りだろう。
ちゃんとゴハン、たべてるのかな。
「船長さん。お話の続き･･･」
「あぁ、そうだな」
クマヒゲ船長は片手に舵輪、もう片手でタコスをつまんで食べている。
器用だなぁ。
もう外は真っ暗で、何も見えない。
航海コンパスと海図だけで、セルビナまで行くみたい。
それって、すごいよね。
「サンドリアとバストゥークの、両方から徴兵令状が来たんだっけな？」
うん、と頷く僕。
「両方の国から、セルビナは自分たちの町だって思われてたんだね」
「なんだ、賢いな」
むーっ、と口を尖らせて抗議する。
「で、だ。今の町長は、まぁ昔も町長だったんだけどな」
じらすように、船長さんはまたズズッ、とお茶を啜った。
はやく！ はやく！
「アベラードさんは、昔っから肝が据わった人でな。銃士と騎士が詰め寄っても、ちっともビビりゃしねぇ」
クマヒゲ船長の話は続く。
「サンドリアの騎士とバストゥークの銃士が、互いに自国に派兵するよう、町長に詰め寄った」
世界中が戦火に飲まれ、激化の一方を辿っていた。
サンドリアとバストゥーク、どちらに町民を徴兵されても、無事に帰って来る可能性は低い。
そして、派兵しなかった側の国から、どんな報復を受けることか･･･。
「ついには、あわやその場で騎士と銃士が果し合いするか、ッてとこまで」
まったく馬鹿につける薬はねぇ、人間同士で争ってる場合かよ。
と、船長さんは肩をすくめた。
「町長は、町のみんなを集めたんだ。タブナジアから逃げてきてた俺も聞いた」
「それで、どうしたの？ 騎士も銃士も強いんだよね？」
「あぁ、鬼よりつえぇ。その頃の俺は、ひょろひょろの若造でなぁ」
「話がズレてるー！！！！」
「町長はみんなの前で、はっきりと宣言した。騎士と銃士の前でな」
“我々は、サンドリア人でも、バストゥーク人でもない！”
“どちらの国にも与しない！ 我々が戦うのは、この町の為！”
“我々は、セルビナ人だ！！”
「俺たちは拍手喝采したね。騎士と銃士に、出てけコールだ」
うっわ。
むかしのひと、熱すぎ。
でも、そんなこと言ったら、両方怒るんじゃ･･･。
「ああ。イキり立つ騎士と銃士に、おめぇのじいちゃんがトドメの一言よ」
“文句があるなら、俺が相手になってやる。二人まとめてかかって来い！”
今のお姿からは想像つかないです、お爺様･･･。
「俺は痺れたね。やっぱ俺の命の恩人は違うぜ、ッてな」
「それで･･･、どうなったの？」
「言うまでもねぇやな。今でもセルビナにゃ、どこの国旗も立ってねぇ」
それが答えだ、と。
クマヒゲ船長がニヤッと笑った顔が霞んで見えた。
う･･･ん。
眠くなってきた･･･かも。
「今度じいちゃんに“ブラビューラ見せて”って言ってみな。まだ、どっかにしまいこんでるハズだ」
船長さんの声が遠いかも･･･。
「クマヒゲせんちょ･･･」
僕、眠いです･･･。
「おっといけねぇ。もう、おねむの時間か」
こっくり、こっくり･･･。
頭がゆれるよ･･･。
「クマヒゲ･･･」
「俺の本当の名前はな、秘密だけどな」
船長は鼻の頭をかいて、一瞬迷うように目をそらした。
「“ユウスケ・サカザキ”ってんだわ」
「ユ･･･？」
「言いにくいだろ？ やっぱクマヒゲでいいや」
「う･･･ん･･･」
「今日はいろいろあったからな。安心して寝な･･･」
くぅ･･･すぅ･･･すぅ･･･。
眠ってしまった少年に、クマヒゲ船長はそっと上着をかけてやった。
水平線の向こうまで、一筋の光もない真っ黒な世界が広がっている。
「いつか家に帰るのが夢だったのに･･･。人生ってのは、うまくいかねぇな･･･」
Lead_161 ◆zmxSLEadCU まとめ
僕のおなかが鳴った。
ううぅ･･･。
「ぷっふ、はっはっはっは！」
クマヒゲ船長が笑う。
「そうか、ハラへったか。うちのカミさんのタブナジア・タコス、食うか？」
言いながら、船長は自分の鞄を開けた。
出てきたのは、けっこう大きめのタコス。
おいしそうな匂いがする。
「本場モンだぞ？ これ食っちまったら、合成モンなんてマズくて食えやしねぇ」
船長さんが、タコスを二つに分けてくれた。
僕はクリスタルでお湯を沸かして、お茶を淹れなおした。
リードさんは、今ごろどの辺りだろう。
ちゃんとゴハン、たべてるのかな。
「船長さん。お話の続き･･･」
「あぁ、そうだな」
クマヒゲ船長は片手に舵輪、もう片手でタコスをつまんで食べている。
器用だなぁ。
もう外は真っ暗で、何も見えない。
航海コンパスと海図だけで、セルビナまで行くみたい。
それって、すごいよね。
「サンドリアとバストゥークの、両方から徴兵令状が来たんだっけな？」
うん、と頷く僕。
「両方の国から、セルビナは自分たちの町だって思われてたんだね」
「なんだ、賢いな」
むーっ、と口を尖らせて抗議する。
「で、だ。今の町長は、まぁ昔も町長だったんだけどな」
じらすように、船長さんはまたズズッ、とお茶を啜った。
はやく！ はやく！
「アベラードさんは、昔っから肝が据わった人でな。銃士と騎士が詰め寄っても、ちっともビビりゃしねぇ」
クマヒゲ船長の話は続く。
「サンドリアの騎士とバストゥークの銃士が、互いに自国に派兵するよう、町長に詰め寄った」
世界中が戦火に飲まれ、激化の一方を辿っていた。
サンドリアとバストゥーク、どちらに町民を徴兵されても、無事に帰って来る可能性は低い。
そして、派兵しなかった側の国から、どんな報復を受けることか･･･。
「ついには、あわやその場で騎士と銃士が果し合いするか、ッてとこまで」
まったく馬鹿につける薬はねぇ、人間同士で争ってる場合かよ。
と、船長さんは肩をすくめた。
「町長は、町のみんなを集めたんだ。タブナジアから逃げてきてた俺も聞いた」
「それで、どうしたの？ 騎士も銃士も強いんだよね？」
「あぁ、鬼よりつえぇ。その頃の俺は、ひょろひょろの若造でなぁ」
「話がズレてるー！！！！」
「町長はみんなの前で、はっきりと宣言した。騎士と銃士の前でな」
“我々は、サンドリア人でも、バストゥーク人でもない！”
“どちらの国にも与しない！ 我々が戦うのは、この町の為！”
“我々は、セルビナ人だ！！”
「俺たちは拍手喝采したね。騎士と銃士に、出てけコールだ」
うっわ。
むかしのひと、熱すぎ。
でも、そんなこと言ったら、両方怒るんじゃ･･･。
「ああ。イキり立つ騎士と銃士に、おめぇのじいちゃんがトドメの一言よ」
“文句があるなら、俺が相手になってやる。二人まとめてかかって来い！”
今のお姿からは想像つかないです、お爺様･･･。
「俺は痺れたね。やっぱ俺の命の恩人は違うぜ、ッてな」
「それで･･･、どうなったの？」
「言うまでもねぇやな。今でもセルビナにゃ、どこの国旗も立ってねぇ」
それが答えだ、と。
クマヒゲ船長がニヤッと笑った顔が霞んで見えた。
う･･･ん。
眠くなってきた･･･かも。
「今度じいちゃんに“ブラビューラ見せて”って言ってみな。まだ、どっかにしまいこんでるハズだ」
船長さんの声が遠いかも･･･。
「クマヒゲせんちょ･･･」
僕、眠いです･･･。
「おっといけねぇ。もう、おねむの時間か」
こっくり、こっくり･･･。
頭がゆれるよ･･･。
「クマヒゲ･･･」
「俺の本当の名前はな、秘密だけどな」
船長は鼻の頭をかいて、一瞬迷うように目をそらした。
「“ユウスケ・サカザキ”ってんだわ」
「ユ･･･？」
「言いにくいだろ？ やっぱクマヒゲでいいや」
「う･･･ん･･･」
「今日はいろいろあったからな。安心して寝な･･･」
くぅ･･･すぅ･･･すぅ･･･。
眠ってしまった少年に、クマヒゲ船長はそっと上着をかけてやった。
水平線の向こうまで、一筋の光もない真っ黒な世界が広がっている。
「いつか家に帰るのが夢だったのに･･･。人生ってのは、うまくいかねぇな･･･」
Lead_161 ◆zmxSLEadCU まとめ
2007年03月21日(水) 23:33:12 Modified by zmxsleadcu