IF1・A LOVE may develop into all kinds
670 名前:369で411で519、たまに579 :03/12/23 21:06 ID:dacLqGqP
それは偶然、眼に入った。
(播磨…さん…?)
窓の外をふらふらと播磨が歩いていた。
その様子は某ボクサーのようで見ていて危ない。
今すぐへへ、と笑って燃え尽きてしまいそうだった。
それでも、なんとか校舎の外へと向かっているらしい。
(………………)
不安ながら、じっと見ていると、播磨は倒れそうだ。
あっ、と声を上げる。
「ドウシマシタカ? ミス・ヤク〜モ?」
「え、あ、いえ………」
なんだなんだ、とクイス中の視線がそそがれた。
ついでに、大量の心の中が見えてしまった。
これは正味ツライ。
「あの…」
その時、ついに窓の外の播磨は倒れた。
「あ………!」
どうしようか、と数瞬迷った結果、なんと八雲は
「あの、私、トイレに…!」
などとのたまうた。
671 名前:A LOVE may develop into all kinds of illness. :03/12/23 21:07 ID:dacLqGqP
…。
……。
………は?
クラス中が静まった。
え、あれ? と思いながらも八雲は
「先生、それで……」
「………………………あ、はい、ドウゾ」
クラスを後にしつつ、自分の何が悪かったのか分からずに八雲は駆けていく。
残された生徒と先生は、ぼけーっとその様子を眺めていた。
ただ一人、八雲の友人であるサラのみが、笑いをこらえるのに必死で、体を震わせていた。
672 名前:A LOVE may develop into all kinds of illness. :03/12/23 21:08 ID:dacLqGqP
校舎の外の播磨はぶっ倒れている。
朝から腹が痛くて、熱っぽかったのだ。
そして、ついに体が
「もう無理ですばってんヨロシクゥ」
と、謎の言葉を残して機能停止したのだ。
思い当たる節はたくさある。
昨日食った色が変わったアンパン、昨日飲んだ臭い牛乳、風呂上りで素っ裸でスチャート大佐ごっこを
したこと、どれもありえた。
「く、やべー…そろそろお花畑と川が見えそうだゼ…」
結構、余裕というか、へらず口は叩けるようだが、実は強がりだったりする。
まさに、もう一歩も動けましぇーん、といった感じで倒れ中なのだ。
もしかして、俺はこのままなのか!? などという悪い予感がする。
673 名前:A LOVE may develop into all kinds of illness. :03/12/23 21:10 ID:dacLqGqP
「あの…大丈夫ですか?」
その優しい言葉…まさか俺の女神サマ天満ちゃんの登場?
さすが俺…ピンチをチャンスに変えるとは…!
などと都合よく解釈した播磨の眼に映ったのは
「お、惜しい…」
「…………?」
妹の八雲であった。
「あの、惜しいって…?」
「いや、なんでもねえよ…妹さん」
「あの…大丈夫ですか…?」
「み、見てのとおり、だだだ大丈夫ですぜ…」
「………」
見てのとおりなら、大丈夫そうではない。
八雲は無言で播磨に肩を貸した。
「い、妹さん…?」
「あの、保健室まで送ります…」
「いや、そんなワケには…」
「…でも」
「……う!」
見上げられた顔は泣きそうだった。
そういう顔に播磨は致命的に弱い。
674 名前:A LOVE may develop into all kinds of illness. :03/12/23 21:10 ID:dacLqGqP
「いや、その保健室にはもう行ったんだよ…それでまあ、帰ろうかと」
…そうですか、分かりました、その八雲の言葉を聴いて、播磨はほっとする。
愛する天満の妹に手を煩わせるワケにはいかなかったのだ。
「じゃあ…家まで送ります…」
…その時の播磨の顔を、皆さんにお見せできなかったのが残念で仕方がない。
675 名前:A LOVE may develop into all kinds of illness. :03/12/23 21:11 ID:dacLqGqP
「ここ…ですか?」
「…お、おう」
結局、女の子に肩を預ける形で、播磨は自宅についた。
道中、何度も説得も試みるも、八雲の
「―――――……」
という無言の叫びと、きっと結ばれた口、そして強さそうな意思と裏腹の泣き出しそうな瞳に、
強く言うことができなかった。
「ありがとうよ…もう、十分だからよ」
「あ、はい」
玄関で離れて、礼を言う。
授業中だから、早く帰んな、と言って播磨は扉を閉じた。
扉が閉まったあと、八雲が帰ろうとした瞬間――
ドンッガラガッ!!
という激しい音が聞こえた。
急いで八雲が扉を開けると、播磨は玄関で倒れていた。
676 名前:A LOVE may develop into all kinds of illness. :03/12/23 21:12 ID:dacLqGqP
急いで八雲は駆け寄り、状態を見る。
意識はなく、呼吸が荒い、体も熱い、汗も大量に出ている。
「風邪…」
すばやく状況判断すると、八雲は播磨の重い体を一生懸命持ち上げた。
「………よいしょ」
播磨を――恐らく彼の部屋であろう――少し汚い部屋のベットに下ろした。
意識はまだ戻ってない。
さて、どうするか。
時計を見れば、まだ三時間目の授業の時間。
自分は、このまま帰るべきか否か。
常識的に考えれば、帰るべきである。
いちおう、授業には出なければいけないし、そもそもここに残って看病するのは八雲の役目かどうかは、
疑問である。
でも――と八雲は思う。
播磨の容態は、あまり良くない。下手をすると脱水症状を起こすかもしれない。
ここで彼をおいていって、何かあったら自分の責任ではないか?
それに、病人を置いていくのは人道的見地からいって、間違ってるのではないか。
しばらく思案の末、八雲は台所へと向かった。
677 名前:A LOVE may develop into all kinds of illness. :03/12/23 21:13 ID:dacLqGqP
播磨はまどろみの中で気づいた。
…布団の中?
なぜか自分は布団の中にいた。
あいまいな記憶を辿る。
たしか、校庭で倒れた、妹さんがやって来た、かついでもらって家についた。
そして、妹さんと別れてから…
………あれ?
そこからの記憶はない。
無意識に自力でベッドにたどり着いたのだろうか?
すると、なぜか軽快な調理の音と、いい匂いがただよってきた。
(一体、なにが起きてんだ?)
ワケが分からない。
もしかしたら、イトコが帰ってきて、料理しているとか?
(いや、それはありえねえ)
何気に失礼千万なこと考える播磨。
それをもし、本人の前で言ったら恐ろしいことが起きるだろう。
ともかく、謎で不思議な現象が自分を取り巻いている。
しかし、そこは我らが播磨拳児。スバラシク自分本位な予想をくみ上げた!
678 名前:A LOVE may develop into all kinds of illness. :03/12/23 21:14 ID:dacLqGqP
妹さんは俺が風邪だと知っている。
それを姉である天満ちゃんに話す。
「…そんな、待ってて播磨君、今行くから!」
現在、俺のためにおかゆでも作っている
天満ちゃんが持ってくる。
「すごい汗だね…拭いて…あげよっか?」
マイボデーを拭いてもらう。
「わあ、すごい体…男の人ってスゴイね…こんな腕で抱きしめられたら…」
「天満ちゃん…」
「だ、ダメだよ播磨くん…まだ体調が…ああ…」
はらりと落ちる 恋の花――
こ、これかっ!? こんな状況なのか!?
……来た。
来たぜこんちくしょう。
神は居た。そしえマイ、スウィート女神が今ここに!
ガチャ
そして、いま運命の扉が開かれたっ!
「ええい、まどろっこしいぜ! いっそ一気に最後までイこうぜ天…」
「あ、大丈夫ですか…播磨さん」
679 名前:A LOVE may develop into all kinds of illness. :03/12/23 21:15 ID:dacLqGqP
…その天満ちゃんは
髪型が違って
体型が違って
ついでに顔も似てるけど違って
そういえば、妹さんに良く似ていマシタ。
…。
……。
………
あれぇ? おかしいなぁ?
目の前に居るのは天満ちゃんではなく、なぜか妹の八雲サン。
なんとなく、いろんな物が萎えた播磨であった。
680 名前:A LOVE may develop into all kinds of illness. :03/12/23 21:16 ID:dacLqGqP
「あの…おかゆ作ったんですけど…」
「…」
「あ、えっと…帰ろうとしたら音がして、見たら播磨さんが倒れてて…」
「…」
「それで、家に勝手にあげちゃったんですけど、良かったですか?」
「…」
「……? あのう、播磨さん?」
「あ、いやなんでもねえ。えーとすまなかったな」
「…いいんです、その、勝手にしたことでしたから…」
「…」
「…」
二人の会話が途切れてしまった。
そのなぜか気まずい雰囲気、思い出したように八雲が手の上の茶碗を思い出した。
「それで…これ、おかゆ」
「あ、おう、すまねえ、いたたぐわ」
「はい、じゃあ…」
播磨は自然に両手を出して、八雲が茶碗を渡すのを待った。
だがしかし、八雲はレンゲでおかゆをすくうと、自分の口の前にもっていき、フーフーと息をかける。
マヌケヅラでぼけっとそれを眺める播磨。
自分で味見でもすんのか? という阿呆な考えをしていた。
しかし、八雲は、そのレンゲ播磨の口元へもって行き。
「はい、どうぞ…」
と、おっしゃった。
681 名前:A LOVE may develop into all kinds of illness. :03/12/23 21:17 ID:dacLqGqP
「………」
これには播磨くんはドッキドッキ?
てーか超大混乱。
エート、これはアレか、いわゆる一つの「はい、アーン」という奴か?
…なんでだよ。
などと考えるていると
「あの…食べないんですか?」
とさらにお続けになる八雲サン。
こころもち、表情が悲しそう。
「え、あ、では…」
ぱくり、とおかゆを食べた播磨。
…………なんだこりゃ、超恥ズイゾ。
682 名前:A LOVE may develop into all kinds of illness. :03/12/23 21:18 ID:dacLqGqP
「あの、味はどうですか? …その、美味しくないとか」
「イエ…ソンナコトハ…」
「あ、それじゃあもう一口…」
と言って、再び同じ行動
→ 口でフーフー
→ 目の前に持ってくる
→ 「…どうぞ」
いや、えと、あのー
「播磨さん…?」
「…俺、自力で食えんだけど…」
「……………………………………………」
その言葉に、八雲サン、活動停止。
683 名前:A LOVE may develop into all kinds of illness. :03/12/23 21:18 ID:dacLqGqP
「………………………………あ」
コトを認識してから、八雲が無表情になる。
ついで、表情が崩れる。
ボッ! と八雲の顔が赤くなる。
本当に、火が吹いたのではないかと思うほど。
もう、耳から首元まで真っ赤っ赤。
そして、下を向いたままこっちを向かない。
風邪の〜播磨さん〜困ってしまってワンワンワワン♪
って、なんだそりゃ。
「…えーと、もらうぞ? このおかゆ」
コクコク、と頷く八雲
微妙な空気の中。もぐもぐと食べる播磨。
うーむ、美味いのだが、なぜか味が分からない。
風邪のせいだろうか?(多分、違います)
684 名前:A LOVE may develop into all kinds of illness. :03/12/23 21:19 ID:dacLqGqP
「いやーうめえ、こんなおかゆ食ったの生まれて初めてだぜ!」
八雲、反応無し、いまだ回復せず。
「いやーすぐに元気になれるぜ!」
八雲、反応無し、いまだ回復せず。
(ええい、なんだこの雰囲気は!?)
「はっはっはー妹さんの旦那サンになる人は幸せだなァー」
その発言を聞いた八雲がビックリした顔でこちらを向いた、そしてやはり顔を真っ赤にしながら
あの、その、それは…と続ける。
が、突然、クラリとして
「………ぁぅ」
という声と共に、プシューと謎の汽笛を鳴らして布団に倒れこんだ。
「お、おーい? 妹サン? 妹サン!?」
結果、播磨のみが一人取り残された。
685 名前:A LOVE may develop into all kinds of illness. :03/12/23 21:20 ID:dacLqGqP
「すいません…その」
「ああ、いいっていいって」
何に対して謝っているのか分からないが、とりあえずそう言うしかない播磨。
「えーとよ、とりあえずおかゆは美味しくいただいたからよ、アンガトな」
「いいえ、どうしたしまして」
未だに顔を向けれない八雲。
先ほどから、下を向きながら話している。
うーん、どすりゃいいんだ? と考えていた播磨に、八雲が声をかけた。
「あの…あれは…いつも姉さんが風邪を引いたときに…していて」
「は、はあ」
「それで…姉さんも私にしてくれて…」
「マ、マジかっ!? うらやましいぜ…」
「え?」
「あ、いや、姉妹の仲が良くて、ってことな」
「はぁ…。ともかく、スイマセンでした…」
そう言うと、八雲はすぐさまパタパタと部屋を出て行った。
686 名前:A LOVE may develop into all kinds of illness. :03/12/23 21:21 ID:dacLqGqP
我ながら、なんと恥ずかしいことをしたのか…
八雲は思い出すたびに顔を赤くして、しゃがみこんでしまう。
あんなことを男性にするなんて
あんな、まるで恋人同士みたいなこと…
………。
恋人同士?
…恋人?
…播磨さんと…私が?
………ボフッ!
「……………………………ぁぅ」
塚本八雲、本日二回目の自爆。
それは偶然、眼に入った。
(播磨…さん…?)
窓の外をふらふらと播磨が歩いていた。
その様子は某ボクサーのようで見ていて危ない。
今すぐへへ、と笑って燃え尽きてしまいそうだった。
それでも、なんとか校舎の外へと向かっているらしい。
(………………)
不安ながら、じっと見ていると、播磨は倒れそうだ。
あっ、と声を上げる。
「ドウシマシタカ? ミス・ヤク〜モ?」
「え、あ、いえ………」
なんだなんだ、とクイス中の視線がそそがれた。
ついでに、大量の心の中が見えてしまった。
これは正味ツライ。
「あの…」
その時、ついに窓の外の播磨は倒れた。
「あ………!」
どうしようか、と数瞬迷った結果、なんと八雲は
「あの、私、トイレに…!」
などとのたまうた。
671 名前:A LOVE may develop into all kinds of illness. :03/12/23 21:07 ID:dacLqGqP
…。
……。
………は?
クラス中が静まった。
え、あれ? と思いながらも八雲は
「先生、それで……」
「………………………あ、はい、ドウゾ」
クラスを後にしつつ、自分の何が悪かったのか分からずに八雲は駆けていく。
残された生徒と先生は、ぼけーっとその様子を眺めていた。
ただ一人、八雲の友人であるサラのみが、笑いをこらえるのに必死で、体を震わせていた。
672 名前:A LOVE may develop into all kinds of illness. :03/12/23 21:08 ID:dacLqGqP
校舎の外の播磨はぶっ倒れている。
朝から腹が痛くて、熱っぽかったのだ。
そして、ついに体が
「もう無理ですばってんヨロシクゥ」
と、謎の言葉を残して機能停止したのだ。
思い当たる節はたくさある。
昨日食った色が変わったアンパン、昨日飲んだ臭い牛乳、風呂上りで素っ裸でスチャート大佐ごっこを
したこと、どれもありえた。
「く、やべー…そろそろお花畑と川が見えそうだゼ…」
結構、余裕というか、へらず口は叩けるようだが、実は強がりだったりする。
まさに、もう一歩も動けましぇーん、といった感じで倒れ中なのだ。
もしかして、俺はこのままなのか!? などという悪い予感がする。
673 名前:A LOVE may develop into all kinds of illness. :03/12/23 21:10 ID:dacLqGqP
「あの…大丈夫ですか?」
その優しい言葉…まさか俺の女神サマ天満ちゃんの登場?
さすが俺…ピンチをチャンスに変えるとは…!
などと都合よく解釈した播磨の眼に映ったのは
「お、惜しい…」
「…………?」
妹の八雲であった。
「あの、惜しいって…?」
「いや、なんでもねえよ…妹さん」
「あの…大丈夫ですか…?」
「み、見てのとおり、だだだ大丈夫ですぜ…」
「………」
見てのとおりなら、大丈夫そうではない。
八雲は無言で播磨に肩を貸した。
「い、妹さん…?」
「あの、保健室まで送ります…」
「いや、そんなワケには…」
「…でも」
「……う!」
見上げられた顔は泣きそうだった。
そういう顔に播磨は致命的に弱い。
674 名前:A LOVE may develop into all kinds of illness. :03/12/23 21:10 ID:dacLqGqP
「いや、その保健室にはもう行ったんだよ…それでまあ、帰ろうかと」
…そうですか、分かりました、その八雲の言葉を聴いて、播磨はほっとする。
愛する天満の妹に手を煩わせるワケにはいかなかったのだ。
「じゃあ…家まで送ります…」
…その時の播磨の顔を、皆さんにお見せできなかったのが残念で仕方がない。
675 名前:A LOVE may develop into all kinds of illness. :03/12/23 21:11 ID:dacLqGqP
「ここ…ですか?」
「…お、おう」
結局、女の子に肩を預ける形で、播磨は自宅についた。
道中、何度も説得も試みるも、八雲の
「―――――……」
という無言の叫びと、きっと結ばれた口、そして強さそうな意思と裏腹の泣き出しそうな瞳に、
強く言うことができなかった。
「ありがとうよ…もう、十分だからよ」
「あ、はい」
玄関で離れて、礼を言う。
授業中だから、早く帰んな、と言って播磨は扉を閉じた。
扉が閉まったあと、八雲が帰ろうとした瞬間――
ドンッガラガッ!!
という激しい音が聞こえた。
急いで八雲が扉を開けると、播磨は玄関で倒れていた。
676 名前:A LOVE may develop into all kinds of illness. :03/12/23 21:12 ID:dacLqGqP
急いで八雲は駆け寄り、状態を見る。
意識はなく、呼吸が荒い、体も熱い、汗も大量に出ている。
「風邪…」
すばやく状況判断すると、八雲は播磨の重い体を一生懸命持ち上げた。
「………よいしょ」
播磨を――恐らく彼の部屋であろう――少し汚い部屋のベットに下ろした。
意識はまだ戻ってない。
さて、どうするか。
時計を見れば、まだ三時間目の授業の時間。
自分は、このまま帰るべきか否か。
常識的に考えれば、帰るべきである。
いちおう、授業には出なければいけないし、そもそもここに残って看病するのは八雲の役目かどうかは、
疑問である。
でも――と八雲は思う。
播磨の容態は、あまり良くない。下手をすると脱水症状を起こすかもしれない。
ここで彼をおいていって、何かあったら自分の責任ではないか?
それに、病人を置いていくのは人道的見地からいって、間違ってるのではないか。
しばらく思案の末、八雲は台所へと向かった。
677 名前:A LOVE may develop into all kinds of illness. :03/12/23 21:13 ID:dacLqGqP
播磨はまどろみの中で気づいた。
…布団の中?
なぜか自分は布団の中にいた。
あいまいな記憶を辿る。
たしか、校庭で倒れた、妹さんがやって来た、かついでもらって家についた。
そして、妹さんと別れてから…
………あれ?
そこからの記憶はない。
無意識に自力でベッドにたどり着いたのだろうか?
すると、なぜか軽快な調理の音と、いい匂いがただよってきた。
(一体、なにが起きてんだ?)
ワケが分からない。
もしかしたら、イトコが帰ってきて、料理しているとか?
(いや、それはありえねえ)
何気に失礼千万なこと考える播磨。
それをもし、本人の前で言ったら恐ろしいことが起きるだろう。
ともかく、謎で不思議な現象が自分を取り巻いている。
しかし、そこは我らが播磨拳児。スバラシク自分本位な予想をくみ上げた!
678 名前:A LOVE may develop into all kinds of illness. :03/12/23 21:14 ID:dacLqGqP
妹さんは俺が風邪だと知っている。
それを姉である天満ちゃんに話す。
「…そんな、待ってて播磨君、今行くから!」
現在、俺のためにおかゆでも作っている
天満ちゃんが持ってくる。
「すごい汗だね…拭いて…あげよっか?」
マイボデーを拭いてもらう。
「わあ、すごい体…男の人ってスゴイね…こんな腕で抱きしめられたら…」
「天満ちゃん…」
「だ、ダメだよ播磨くん…まだ体調が…ああ…」
はらりと落ちる 恋の花――
こ、これかっ!? こんな状況なのか!?
……来た。
来たぜこんちくしょう。
神は居た。そしえマイ、スウィート女神が今ここに!
ガチャ
そして、いま運命の扉が開かれたっ!
「ええい、まどろっこしいぜ! いっそ一気に最後までイこうぜ天…」
「あ、大丈夫ですか…播磨さん」
679 名前:A LOVE may develop into all kinds of illness. :03/12/23 21:15 ID:dacLqGqP
…その天満ちゃんは
髪型が違って
体型が違って
ついでに顔も似てるけど違って
そういえば、妹さんに良く似ていマシタ。
…。
……。
………
あれぇ? おかしいなぁ?
目の前に居るのは天満ちゃんではなく、なぜか妹の八雲サン。
なんとなく、いろんな物が萎えた播磨であった。
680 名前:A LOVE may develop into all kinds of illness. :03/12/23 21:16 ID:dacLqGqP
「あの…おかゆ作ったんですけど…」
「…」
「あ、えっと…帰ろうとしたら音がして、見たら播磨さんが倒れてて…」
「…」
「それで、家に勝手にあげちゃったんですけど、良かったですか?」
「…」
「……? あのう、播磨さん?」
「あ、いやなんでもねえ。えーとすまなかったな」
「…いいんです、その、勝手にしたことでしたから…」
「…」
「…」
二人の会話が途切れてしまった。
そのなぜか気まずい雰囲気、思い出したように八雲が手の上の茶碗を思い出した。
「それで…これ、おかゆ」
「あ、おう、すまねえ、いたたぐわ」
「はい、じゃあ…」
播磨は自然に両手を出して、八雲が茶碗を渡すのを待った。
だがしかし、八雲はレンゲでおかゆをすくうと、自分の口の前にもっていき、フーフーと息をかける。
マヌケヅラでぼけっとそれを眺める播磨。
自分で味見でもすんのか? という阿呆な考えをしていた。
しかし、八雲は、そのレンゲ播磨の口元へもって行き。
「はい、どうぞ…」
と、おっしゃった。
681 名前:A LOVE may develop into all kinds of illness. :03/12/23 21:17 ID:dacLqGqP
「………」
これには播磨くんはドッキドッキ?
てーか超大混乱。
エート、これはアレか、いわゆる一つの「はい、アーン」という奴か?
…なんでだよ。
などと考えるていると
「あの…食べないんですか?」
とさらにお続けになる八雲サン。
こころもち、表情が悲しそう。
「え、あ、では…」
ぱくり、とおかゆを食べた播磨。
…………なんだこりゃ、超恥ズイゾ。
682 名前:A LOVE may develop into all kinds of illness. :03/12/23 21:18 ID:dacLqGqP
「あの、味はどうですか? …その、美味しくないとか」
「イエ…ソンナコトハ…」
「あ、それじゃあもう一口…」
と言って、再び同じ行動
→ 口でフーフー
→ 目の前に持ってくる
→ 「…どうぞ」
いや、えと、あのー
「播磨さん…?」
「…俺、自力で食えんだけど…」
「……………………………………………」
その言葉に、八雲サン、活動停止。
683 名前:A LOVE may develop into all kinds of illness. :03/12/23 21:18 ID:dacLqGqP
「………………………………あ」
コトを認識してから、八雲が無表情になる。
ついで、表情が崩れる。
ボッ! と八雲の顔が赤くなる。
本当に、火が吹いたのではないかと思うほど。
もう、耳から首元まで真っ赤っ赤。
そして、下を向いたままこっちを向かない。
風邪の〜播磨さん〜困ってしまってワンワンワワン♪
って、なんだそりゃ。
「…えーと、もらうぞ? このおかゆ」
コクコク、と頷く八雲
微妙な空気の中。もぐもぐと食べる播磨。
うーむ、美味いのだが、なぜか味が分からない。
風邪のせいだろうか?(多分、違います)
684 名前:A LOVE may develop into all kinds of illness. :03/12/23 21:19 ID:dacLqGqP
「いやーうめえ、こんなおかゆ食ったの生まれて初めてだぜ!」
八雲、反応無し、いまだ回復せず。
「いやーすぐに元気になれるぜ!」
八雲、反応無し、いまだ回復せず。
(ええい、なんだこの雰囲気は!?)
「はっはっはー妹さんの旦那サンになる人は幸せだなァー」
その発言を聞いた八雲がビックリした顔でこちらを向いた、そしてやはり顔を真っ赤にしながら
あの、その、それは…と続ける。
が、突然、クラリとして
「………ぁぅ」
という声と共に、プシューと謎の汽笛を鳴らして布団に倒れこんだ。
「お、おーい? 妹サン? 妹サン!?」
結果、播磨のみが一人取り残された。
685 名前:A LOVE may develop into all kinds of illness. :03/12/23 21:20 ID:dacLqGqP
「すいません…その」
「ああ、いいっていいって」
何に対して謝っているのか分からないが、とりあえずそう言うしかない播磨。
「えーとよ、とりあえずおかゆは美味しくいただいたからよ、アンガトな」
「いいえ、どうしたしまして」
未だに顔を向けれない八雲。
先ほどから、下を向きながら話している。
うーん、どすりゃいいんだ? と考えていた播磨に、八雲が声をかけた。
「あの…あれは…いつも姉さんが風邪を引いたときに…していて」
「は、はあ」
「それで…姉さんも私にしてくれて…」
「マ、マジかっ!? うらやましいぜ…」
「え?」
「あ、いや、姉妹の仲が良くて、ってことな」
「はぁ…。ともかく、スイマセンでした…」
そう言うと、八雲はすぐさまパタパタと部屋を出て行った。
686 名前:A LOVE may develop into all kinds of illness. :03/12/23 21:21 ID:dacLqGqP
我ながら、なんと恥ずかしいことをしたのか…
八雲は思い出すたびに顔を赤くして、しゃがみこんでしまう。
あんなことを男性にするなんて
あんな、まるで恋人同士みたいなこと…
………。
恋人同士?
…恋人?
…播磨さんと…私が?
………ボフッ!
「……………………………ぁぅ」
塚本八雲、本日二回目の自爆。
2007年11月02日(金) 08:54:36 Modified by ID:aljxXPLtNA