IF1・A LOVE may develop into all kinds〜 (後編)
687 名前:A LOVE may develop into all kinds of illness. :03/12/23 21:22 ID:dacLqGqP
自爆後、復帰に1時間行動不能だった八雲も、どうにか回復した。
深呼吸をして、八雲は播磨のへの前に立つ。
落ち着いて、落ち着いて、と自分に言い聞かせる。
…よし。
「あの…播磨さん…入ります」
ガチャリ、と扉を開けると
ぐーぐーぐー
寝てた。
ずっこける八雲。
なんとも機先を制された。
まあ、一時間もほっとかれれば風邪引き人間は眠るものである。
どうしようか、と考えていると、足に何か当たった。
よく見れば、この部屋はそこらじゅう散らかっていた。
688 名前:A LOVE may develop into all kinds of illness. :03/12/23 21:23 ID:dacLqGqP
「……ふう」
掃除も一段落して、部屋も大分きれいになった。
最初は地面の可視床率は50%以下だったが、今ではチリ一つない。
散らばっていた雑誌は一つのところにまとめておいた。
ゴミは可燃、不燃、再生ときちんと分けた。
誰がなんと言おうと、文句のつけようがない状況である。
片付けをしているときから、八雲にとって気になることが一つあった。
播磨の机の上においてある写真立てである。
机を整理しているときに気づいたのだが、見るのは失礼に当たると思い、裏返したまま片付けた。
駄菓子菓子!
…失礼、だがしかし!
妙に気になる。
なぜか気になってしまう。
非常に気になってしまった。
ともかく気になってしょうがない。
689 名前:A LOVE may develop into all kinds of illness. :03/12/23 21:24 ID:dacLqGqP
そして、ついに八雲は己に負けてしまった。
悪いことだと思いながらも、横目で播磨を見つつ、そっと机に向かう。
目標へたどり着いたとき、もう一度播磨を見る。
規則正しい寝息を立てて眠っている…っぽい。
そっと、手を伸ばす。
額に触れる。
ゴソリ
「…!!!!!」
心臓が跳ね上がった。
そのままの姿勢で動けない。
…どうやら、播磨が寝返りを打っただけらしい。
ほっ、と息をつく、危ない危ない、大声を出してしまうところだった。
…しばらくして動きがないの確認して、もう一度ひっくり返そうとする。
心臓が早鐘のように鳴っている。
視界がせばまる。
そして、ひっくり返そうとした瞬間
「んん…」
「――!?☆♪!∵!?」
今度は心臓が止まるかと思った。
しばらく動くことが出来ない。
…どうやら、ただの寝言のようだ。
ほ、と息をつく。そして、視界を机に向けると――
690 名前:A LOVE may develop into all kinds of illness. :03/12/23 21:25 ID:dacLqGqP
「………………?」
そこには、誰かに頭をなでられている修治の写真が…
いや、それにしては妙に古い。
もしかしたら、幼いころの播磨だろうか。
だとすると、ビックリするほどそっくりである。
それでは、この女性はお母さん?
残念ながら途中で切れていて、顔までは見えないので正確には分からない。
ただ、なんとなく八雲は母親だろうと確信した。
写真の播磨は、気持ちのいいぐらいに笑っていた。
幸せそうな写真だ。
やはり、悪いことをした。
これは、播磨さんにとって一番大切なものだったのだろう。
少し、八雲は後悔した。
あとで、播磨さんに謝ろう、そう思った。
691 名前:A LOVE may develop into all kinds of illness. :03/12/23 21:25 ID:dacLqGqP
その後、ちょっと恥ずかしいのだが、八雲は眠っている播磨の服を脱がした。
かなりドキドキしたのだが、汗をぐっしょりかいているので、タオルで拭いてあげなければ、と思ったらしい。
そのとき、ちょっとしたハプニングもあったのだが、八雲と播磨のためにここでは語らない。というか、
こんなところで語れない。
まあ、端的言えば
「…お、大き…」
と、言うことらしい。
692 名前:A LOVE may develop into all kinds of illness. :03/12/23 21:26 ID:dacLqGqP
しばらく静かに椅子に座っていた八雲だが、播磨の顔色を見ようと覗き込んだ。
汗も引いて、大分顔色が良くなってきている、これなら明日には全快だろう。
ほっと、一息つく八雲。
…そこで、播磨が寝るときまでサングラスをつけっぱなしのことに気づいた。
そういえば、素顔を見たことが無かったな…
八雲は、これぐらいなら…と、播磨のサングラスを取った。
その顔は、意外と、といっては失礼だが、なかなか整った造形をしている。
ヒゲとサングラスで気づかなかったが、けっこう童顔だ。
寝顔を見ると、子供のように見えてきた。
先ほどの写真を思い出した。
播磨の頭を撫でる女性…
八雲は無意識に、播磨の頭を撫でだした。
(私…なにしてるんだろう…?)
自分でも、恥ずかしいし、おかしいと思っていても、手の動きは止まらなかった。
まるで、考え事をしている自分と、体を動かしている自分が別人のような感覚に陥ったような、不思議な感覚だ。
数分がたつころには、純粋に播磨の頭を撫でることに楽しみを覚えている自分が居た。
播磨さんの髪、意外と柔らかい…
そんなこを考えながら。
しかし、その時だった。
693 名前:A LOVE may develop into all kinds of illness. :03/12/23 21:27 ID:dacLqGqP
播磨 イン ドリーム☆
ついに帝王カラスマを打ち倒した播磨。
傷つきながらも扉をあけると、そこには天満がいた。
「て…天満ちゃん…!」
「は、播磨君…」
彼女が、だっと駆け出した。
自分も走りだしたかったが、ケガで思うように動かない。
ついには膝の力が抜け、その場に倒れてしまう。
その時、駆け寄る天満がスソを踏んで転びそうになる。
「あ、危ない!!」
播磨は起き上がり、上半身と手を伸ばし、彼女をしっかりと抱きかかえるも、その場に倒れてしまった…。
694 名前:A LOVE may develop into all kinds of illness. :03/12/23 21:27 ID:dacLqGqP
んで、現実。
いきなりの出来事だった。
播磨が起き上がった、そして、何を思ったか自分に抱きつき、そして抱きついたままベットに倒れたのだ。
「――!?☆♪!∵!?」
あまりのことに、八雲は声も出ない。
何事か、ふざけているのか、それともまさか押し倒されたのか?
たくさんの考えが飛ぶが、何も考えていないと同じだった。
色々な言葉が出ては消え、また飛び出してくる。
「えと……離してください…!」
真っ赤になって訴えるも、播磨は答えない。
「播磨さん…その……だめです…!」
それでも離さない。
「ダメ…まだ…!」←(まだ?)
それでも以下略。
695 名前:A LOVE may develop into all kinds of illness. :03/12/23 21:28 ID:dacLqGqP
その間、八雲は一瞬が何秒にも感じた。
……というか、本当に何秒か経っている。
それも、かなり。
そして、それ以降なにも起こらない。
「……え?」
さすがにこれ以上なにもおきないので、八雲も落ち着いてきた。
いや、男性に抱きつかれているのだから、普通は落ち着かないはずなのだが、拍子抜けというか、
なんというか、ともかく、妙に冷静になってしまった。
とりあえず、播磨さんは動かない。
というより、グーグーと寝息が聞こえる。
どうやら、ぐっすり眠っているようだ。
つまり、寝ぼけていた…?
なんじゃそりゃ。
と八雲が思ったかどうかは知らないが、ともかくそういうことらしい。
少し安心したような、残念だったような、まあ、とりあえず起きよう、とした
だが
「…………ん?」
だが
「……………え?」
だが
「……………動け…ない?」
…ともかく、そういうことらしい。
696 名前:A LOVE may develop into all kinds of illness. :03/12/23 21:30 ID:dacLqGqP
数分ほど、必死になって動いたが、一向に動けない。
播磨がかなりの力で抱きついているようだった。
いいかげん、あきらめよう。
八雲はそう思い、出ようとするのを止めた。
今のところ、自分の顔が播磨の胸に当てられている、腕は…
考えたら恥ずかしくなった。
播磨は、先ほど汗を拭いたばかりだからか、そんなに汗臭くは無かった。
それでも、多少におうが、それは男の人の匂い、といったものだ。
不思議と、不愉快さは感じなかった。
誰かの胸に預ける感覚。
久しぶりのその感覚に、八雲は心地よさをかんじた。
誰かに抱きとめてもらう感覚。
初めてのその感覚に、八雲はドキドキした。
普通なら、恥ずかしい。
いや、いまも恥ずかしいのだが、それよりもこのくすぐったい感覚を長く感じたいと思う自分が、間違いなくいた。
(あ…いけない…だめ…こんなところで)
ナ、ナニをするの? なんて世の男性は思うかも知れない事を考え出す八雲
駄菓子菓子、期待するような(謎)ことではなかった。
八雲のまぶたが閉じそうになったのだ。
こんなところで眠ってはいけない。
いけない、よ思っても、かなりの心地よさから眠気が襲ってくる。
「ん…………」
健闘むなしく、八雲は56秒の激戦の末、睡魔に敗れてしまった。
697 名前:A LOVE may develop into all kinds of illness. :03/12/23 21:31 ID:dacLqGqP
ふたたびまどろみから覚める播磨。
ふと、違和感を覚えた。
ナニかいる。
自分のすぐ横になにかいる。
というか、なにかを抱きかかえている。
そして、人の頭みたいなのが、目の前にある。
…つーか、人の頭だった。
「なんだ、人の頭か…おどかすなよ」
もう一度眠ろうとする播磨(おいおい)
「…ん? 人の、頭?」
そう、人の頭である。
「どぅぇぇぇぇぇ!!??」
ようやく正しいレアクションをしてくれた播磨。
眠気もマッハで吹っ飛んだ。
がばりよ起きて、おそるおそる確認をする。
誰が、一体誰が?
「………ううん」
寝返り打ったその人は
「い、妹さん…?」
698 名前:A LOVE may develop into all kinds of illness. :03/12/23 21:32 ID:dacLqGqP
またしても、播磨脳細胞が創造の翼を広げた。
妹さんと寝た(?)
「ひどい…播磨さん…!」
お姉さんの天満ちゃんに、そのことを言う
「私というものがありながら(え?)…播磨君、最低だよ!」
別れる(え?)。
…死のう。
つーか、もともと付き合ってないじゃん。という言葉は播磨には聞こえない。
このまま、高飛びするしかない、いや、やはり首を吊るか。
真剣に悩んでいたりする。
とその時、なかなか事態は最悪の方向に跳んだ。
「……………ん」
塚本八雲、起床。
「……………………!!」
播磨拳児、声が出ない
699 名前:A LOVE may develop into all kinds of illness. :03/12/23 21:33 ID:dacLqGqP
播磨はとにかく、まくしたてた。
「これは違う! いや、実はよく分からんが、多分違う!」
「……」
八雲、まだ寝ぼけている。
「いやまて、落ち着け。そう、アレだアレ!」
「……」
八雲、眼が覚めだした。
じっと播磨を見て、自分を見る。
「…………」
「…………」
播磨拳児、あきらめた。
塚本八雲、覚醒&状況認識&記憶再生
結局、塚本八雲は今日何度目かの顔真っ赤現象を起こし、播磨に
「す、すいません!!」
と大声で叫んでから、部屋と家を飛び出した。
一人残された播磨は、最初はボンヤリしていたが
その後、本気でどうしようか悩みだした。
700 名前:A LOVE may develop into all kinds of illness. :03/12/23 21:34 ID:dacLqGqP
播磨さんに…播磨さんが…播磨さんの…播磨さんと…播磨さんを…
帰り道、熱いからだを夜風に涼ませながら、家路に着く。
よくよく考えれば、今日一日でなにをしたか。
思い出すたびに、恥ずかしさで死にそうになる。
明日……顔が見れない……
どうしよう…。
心の底からそう思った。
気づけば、すでに家についていた。
玄関に、姉がいた。
「あ、八雲、心配したんだよ? 授業中、突然いなくなったって聞いて」
あ、そうか、すっかり忘れていたが、今日は授業を休んだのだ。
姉にいらない心配をかけたことに心が重かった。
「ごめん、姉さん…」
「うん、ちゃんと帰って来たから許してあげる。で、どこに行ってたの?」
「え…えと、伊織と遊んでて」
「あ、そっか。ならしょうがないね」
一応、納得してくれたようだ。
まさか、播磨さんの看病をして、それから………なんて言えなかった。
また色々と思い出してしまい、顔が赤くなる。
701 名前:A LOVE may develop into all kinds of illness. :03/12/23 21:35 ID:dacLqGqP
「うわ、八雲、顔が真っ赤だよ!? 風邪ひいたの?」
「え、ちが…」
「はやく布団に入って、ほらほら」
家に押されるように入れられ、
姉は問答無用で八雲を布団に押し込んだ。
「ともかく、ちゃんと治さなきゃダメだよ?」
(違うの…姉さん…これは風邪じゃなくて、これは播磨さんのせいで…)
「ん、八雲、なんか言った?」
「…………え、う、ううん、なんでもない」
「そう、じゃあおやすみ」
「オヤスミナサイ」
布団の中で、八雲は考える。
明日、どんな顔をして会えばいいのか。
もしかしたら、会ってくれないかもしれない。
播磨さんが、どんなふうな顔で来るのか。
でも…とも思う。
今日のことがあったからこそ、会いたいとも思う。
もしかしたら、私を意識してくれるかもしれない。
塚本天満の妹でなく、一人の女の子、塚本八雲として…。
そんなことを考えていると、いつの間にか八雲は眠ってしまった。
702 名前:A LOVE may develop into all kinds of illness. :03/12/23 21:35 ID:dacLqGqP
翌日、結局八雲は播磨に会えなかった。
どうやら、本当に風邪を引いてしまったらしい。
一日中家で眠ってい過ごした。
しかし、よかったような、残念なような…。
お昼を過ぎたころ、姉が帰ってきた。
「八雲〜お見舞いの人が来たよ〜」
「八雲、大丈夫?」
「あ、サラ…」
サラが手土産、おそらく果物を持ってやってきた。
そして、意味深な顔で八雲を見る。
「…?」
「それからねーふふふ…」
「そうそう、八雲がビックリする人が来てるんだよ?」
誰だろう、そう思った八雲の視界にその男性(ひと)が写った。
背は高く、ヒゲを生やし、サングラスをかけた男性(ひと)が―――。
八雲の機能が、再び停止した。
fin
自爆後、復帰に1時間行動不能だった八雲も、どうにか回復した。
深呼吸をして、八雲は播磨のへの前に立つ。
落ち着いて、落ち着いて、と自分に言い聞かせる。
…よし。
「あの…播磨さん…入ります」
ガチャリ、と扉を開けると
ぐーぐーぐー
寝てた。
ずっこける八雲。
なんとも機先を制された。
まあ、一時間もほっとかれれば風邪引き人間は眠るものである。
どうしようか、と考えていると、足に何か当たった。
よく見れば、この部屋はそこらじゅう散らかっていた。
688 名前:A LOVE may develop into all kinds of illness. :03/12/23 21:23 ID:dacLqGqP
「……ふう」
掃除も一段落して、部屋も大分きれいになった。
最初は地面の可視床率は50%以下だったが、今ではチリ一つない。
散らばっていた雑誌は一つのところにまとめておいた。
ゴミは可燃、不燃、再生ときちんと分けた。
誰がなんと言おうと、文句のつけようがない状況である。
片付けをしているときから、八雲にとって気になることが一つあった。
播磨の机の上においてある写真立てである。
机を整理しているときに気づいたのだが、見るのは失礼に当たると思い、裏返したまま片付けた。
駄菓子菓子!
…失礼、だがしかし!
妙に気になる。
なぜか気になってしまう。
非常に気になってしまった。
ともかく気になってしょうがない。
689 名前:A LOVE may develop into all kinds of illness. :03/12/23 21:24 ID:dacLqGqP
そして、ついに八雲は己に負けてしまった。
悪いことだと思いながらも、横目で播磨を見つつ、そっと机に向かう。
目標へたどり着いたとき、もう一度播磨を見る。
規則正しい寝息を立てて眠っている…っぽい。
そっと、手を伸ばす。
額に触れる。
ゴソリ
「…!!!!!」
心臓が跳ね上がった。
そのままの姿勢で動けない。
…どうやら、播磨が寝返りを打っただけらしい。
ほっ、と息をつく、危ない危ない、大声を出してしまうところだった。
…しばらくして動きがないの確認して、もう一度ひっくり返そうとする。
心臓が早鐘のように鳴っている。
視界がせばまる。
そして、ひっくり返そうとした瞬間
「んん…」
「――!?☆♪!∵!?」
今度は心臓が止まるかと思った。
しばらく動くことが出来ない。
…どうやら、ただの寝言のようだ。
ほ、と息をつく。そして、視界を机に向けると――
690 名前:A LOVE may develop into all kinds of illness. :03/12/23 21:25 ID:dacLqGqP
「………………?」
そこには、誰かに頭をなでられている修治の写真が…
いや、それにしては妙に古い。
もしかしたら、幼いころの播磨だろうか。
だとすると、ビックリするほどそっくりである。
それでは、この女性はお母さん?
残念ながら途中で切れていて、顔までは見えないので正確には分からない。
ただ、なんとなく八雲は母親だろうと確信した。
写真の播磨は、気持ちのいいぐらいに笑っていた。
幸せそうな写真だ。
やはり、悪いことをした。
これは、播磨さんにとって一番大切なものだったのだろう。
少し、八雲は後悔した。
あとで、播磨さんに謝ろう、そう思った。
691 名前:A LOVE may develop into all kinds of illness. :03/12/23 21:25 ID:dacLqGqP
その後、ちょっと恥ずかしいのだが、八雲は眠っている播磨の服を脱がした。
かなりドキドキしたのだが、汗をぐっしょりかいているので、タオルで拭いてあげなければ、と思ったらしい。
そのとき、ちょっとしたハプニングもあったのだが、八雲と播磨のためにここでは語らない。というか、
こんなところで語れない。
まあ、端的言えば
「…お、大き…」
と、言うことらしい。
692 名前:A LOVE may develop into all kinds of illness. :03/12/23 21:26 ID:dacLqGqP
しばらく静かに椅子に座っていた八雲だが、播磨の顔色を見ようと覗き込んだ。
汗も引いて、大分顔色が良くなってきている、これなら明日には全快だろう。
ほっと、一息つく八雲。
…そこで、播磨が寝るときまでサングラスをつけっぱなしのことに気づいた。
そういえば、素顔を見たことが無かったな…
八雲は、これぐらいなら…と、播磨のサングラスを取った。
その顔は、意外と、といっては失礼だが、なかなか整った造形をしている。
ヒゲとサングラスで気づかなかったが、けっこう童顔だ。
寝顔を見ると、子供のように見えてきた。
先ほどの写真を思い出した。
播磨の頭を撫でる女性…
八雲は無意識に、播磨の頭を撫でだした。
(私…なにしてるんだろう…?)
自分でも、恥ずかしいし、おかしいと思っていても、手の動きは止まらなかった。
まるで、考え事をしている自分と、体を動かしている自分が別人のような感覚に陥ったような、不思議な感覚だ。
数分がたつころには、純粋に播磨の頭を撫でることに楽しみを覚えている自分が居た。
播磨さんの髪、意外と柔らかい…
そんなこを考えながら。
しかし、その時だった。
693 名前:A LOVE may develop into all kinds of illness. :03/12/23 21:27 ID:dacLqGqP
播磨 イン ドリーム☆
ついに帝王カラスマを打ち倒した播磨。
傷つきながらも扉をあけると、そこには天満がいた。
「て…天満ちゃん…!」
「は、播磨君…」
彼女が、だっと駆け出した。
自分も走りだしたかったが、ケガで思うように動かない。
ついには膝の力が抜け、その場に倒れてしまう。
その時、駆け寄る天満がスソを踏んで転びそうになる。
「あ、危ない!!」
播磨は起き上がり、上半身と手を伸ばし、彼女をしっかりと抱きかかえるも、その場に倒れてしまった…。
694 名前:A LOVE may develop into all kinds of illness. :03/12/23 21:27 ID:dacLqGqP
んで、現実。
いきなりの出来事だった。
播磨が起き上がった、そして、何を思ったか自分に抱きつき、そして抱きついたままベットに倒れたのだ。
「――!?☆♪!∵!?」
あまりのことに、八雲は声も出ない。
何事か、ふざけているのか、それともまさか押し倒されたのか?
たくさんの考えが飛ぶが、何も考えていないと同じだった。
色々な言葉が出ては消え、また飛び出してくる。
「えと……離してください…!」
真っ赤になって訴えるも、播磨は答えない。
「播磨さん…その……だめです…!」
それでも離さない。
「ダメ…まだ…!」←(まだ?)
それでも以下略。
695 名前:A LOVE may develop into all kinds of illness. :03/12/23 21:28 ID:dacLqGqP
その間、八雲は一瞬が何秒にも感じた。
……というか、本当に何秒か経っている。
それも、かなり。
そして、それ以降なにも起こらない。
「……え?」
さすがにこれ以上なにもおきないので、八雲も落ち着いてきた。
いや、男性に抱きつかれているのだから、普通は落ち着かないはずなのだが、拍子抜けというか、
なんというか、ともかく、妙に冷静になってしまった。
とりあえず、播磨さんは動かない。
というより、グーグーと寝息が聞こえる。
どうやら、ぐっすり眠っているようだ。
つまり、寝ぼけていた…?
なんじゃそりゃ。
と八雲が思ったかどうかは知らないが、ともかくそういうことらしい。
少し安心したような、残念だったような、まあ、とりあえず起きよう、とした
だが
「…………ん?」
だが
「……………え?」
だが
「……………動け…ない?」
…ともかく、そういうことらしい。
696 名前:A LOVE may develop into all kinds of illness. :03/12/23 21:30 ID:dacLqGqP
数分ほど、必死になって動いたが、一向に動けない。
播磨がかなりの力で抱きついているようだった。
いいかげん、あきらめよう。
八雲はそう思い、出ようとするのを止めた。
今のところ、自分の顔が播磨の胸に当てられている、腕は…
考えたら恥ずかしくなった。
播磨は、先ほど汗を拭いたばかりだからか、そんなに汗臭くは無かった。
それでも、多少におうが、それは男の人の匂い、といったものだ。
不思議と、不愉快さは感じなかった。
誰かの胸に預ける感覚。
久しぶりのその感覚に、八雲は心地よさをかんじた。
誰かに抱きとめてもらう感覚。
初めてのその感覚に、八雲はドキドキした。
普通なら、恥ずかしい。
いや、いまも恥ずかしいのだが、それよりもこのくすぐったい感覚を長く感じたいと思う自分が、間違いなくいた。
(あ…いけない…だめ…こんなところで)
ナ、ナニをするの? なんて世の男性は思うかも知れない事を考え出す八雲
駄菓子菓子、期待するような(謎)ことではなかった。
八雲のまぶたが閉じそうになったのだ。
こんなところで眠ってはいけない。
いけない、よ思っても、かなりの心地よさから眠気が襲ってくる。
「ん…………」
健闘むなしく、八雲は56秒の激戦の末、睡魔に敗れてしまった。
697 名前:A LOVE may develop into all kinds of illness. :03/12/23 21:31 ID:dacLqGqP
ふたたびまどろみから覚める播磨。
ふと、違和感を覚えた。
ナニかいる。
自分のすぐ横になにかいる。
というか、なにかを抱きかかえている。
そして、人の頭みたいなのが、目の前にある。
…つーか、人の頭だった。
「なんだ、人の頭か…おどかすなよ」
もう一度眠ろうとする播磨(おいおい)
「…ん? 人の、頭?」
そう、人の頭である。
「どぅぇぇぇぇぇ!!??」
ようやく正しいレアクションをしてくれた播磨。
眠気もマッハで吹っ飛んだ。
がばりよ起きて、おそるおそる確認をする。
誰が、一体誰が?
「………ううん」
寝返り打ったその人は
「い、妹さん…?」
698 名前:A LOVE may develop into all kinds of illness. :03/12/23 21:32 ID:dacLqGqP
またしても、播磨脳細胞が創造の翼を広げた。
妹さんと寝た(?)
「ひどい…播磨さん…!」
お姉さんの天満ちゃんに、そのことを言う
「私というものがありながら(え?)…播磨君、最低だよ!」
別れる(え?)。
…死のう。
つーか、もともと付き合ってないじゃん。という言葉は播磨には聞こえない。
このまま、高飛びするしかない、いや、やはり首を吊るか。
真剣に悩んでいたりする。
とその時、なかなか事態は最悪の方向に跳んだ。
「……………ん」
塚本八雲、起床。
「……………………!!」
播磨拳児、声が出ない
699 名前:A LOVE may develop into all kinds of illness. :03/12/23 21:33 ID:dacLqGqP
播磨はとにかく、まくしたてた。
「これは違う! いや、実はよく分からんが、多分違う!」
「……」
八雲、まだ寝ぼけている。
「いやまて、落ち着け。そう、アレだアレ!」
「……」
八雲、眼が覚めだした。
じっと播磨を見て、自分を見る。
「…………」
「…………」
播磨拳児、あきらめた。
塚本八雲、覚醒&状況認識&記憶再生
結局、塚本八雲は今日何度目かの顔真っ赤現象を起こし、播磨に
「す、すいません!!」
と大声で叫んでから、部屋と家を飛び出した。
一人残された播磨は、最初はボンヤリしていたが
その後、本気でどうしようか悩みだした。
700 名前:A LOVE may develop into all kinds of illness. :03/12/23 21:34 ID:dacLqGqP
播磨さんに…播磨さんが…播磨さんの…播磨さんと…播磨さんを…
帰り道、熱いからだを夜風に涼ませながら、家路に着く。
よくよく考えれば、今日一日でなにをしたか。
思い出すたびに、恥ずかしさで死にそうになる。
明日……顔が見れない……
どうしよう…。
心の底からそう思った。
気づけば、すでに家についていた。
玄関に、姉がいた。
「あ、八雲、心配したんだよ? 授業中、突然いなくなったって聞いて」
あ、そうか、すっかり忘れていたが、今日は授業を休んだのだ。
姉にいらない心配をかけたことに心が重かった。
「ごめん、姉さん…」
「うん、ちゃんと帰って来たから許してあげる。で、どこに行ってたの?」
「え…えと、伊織と遊んでて」
「あ、そっか。ならしょうがないね」
一応、納得してくれたようだ。
まさか、播磨さんの看病をして、それから………なんて言えなかった。
また色々と思い出してしまい、顔が赤くなる。
701 名前:A LOVE may develop into all kinds of illness. :03/12/23 21:35 ID:dacLqGqP
「うわ、八雲、顔が真っ赤だよ!? 風邪ひいたの?」
「え、ちが…」
「はやく布団に入って、ほらほら」
家に押されるように入れられ、
姉は問答無用で八雲を布団に押し込んだ。
「ともかく、ちゃんと治さなきゃダメだよ?」
(違うの…姉さん…これは風邪じゃなくて、これは播磨さんのせいで…)
「ん、八雲、なんか言った?」
「…………え、う、ううん、なんでもない」
「そう、じゃあおやすみ」
「オヤスミナサイ」
布団の中で、八雲は考える。
明日、どんな顔をして会えばいいのか。
もしかしたら、会ってくれないかもしれない。
播磨さんが、どんなふうな顔で来るのか。
でも…とも思う。
今日のことがあったからこそ、会いたいとも思う。
もしかしたら、私を意識してくれるかもしれない。
塚本天満の妹でなく、一人の女の子、塚本八雲として…。
そんなことを考えていると、いつの間にか八雲は眠ってしまった。
702 名前:A LOVE may develop into all kinds of illness. :03/12/23 21:35 ID:dacLqGqP
翌日、結局八雲は播磨に会えなかった。
どうやら、本当に風邪を引いてしまったらしい。
一日中家で眠ってい過ごした。
しかし、よかったような、残念なような…。
お昼を過ぎたころ、姉が帰ってきた。
「八雲〜お見舞いの人が来たよ〜」
「八雲、大丈夫?」
「あ、サラ…」
サラが手土産、おそらく果物を持ってやってきた。
そして、意味深な顔で八雲を見る。
「…?」
「それからねーふふふ…」
「そうそう、八雲がビックリする人が来てるんだよ?」
誰だろう、そう思った八雲の視界にその男性(ひと)が写った。
背は高く、ヒゲを生やし、サングラスをかけた男性(ひと)が―――。
八雲の機能が、再び停止した。
fin
2007年11月02日(金) 08:59:26 Modified by ID:aljxXPLtNA