IF13・「…描いてくれませんか、播磨さん?」


57 名前:Classical名無しさん :04/08/31 09:34 ID:UbiccumA
「あ…あの…」
「ん?何だい妹さん」
「はい…漫画にするのに良さそうな話一つ思いついたんですけど…」
「へぇー、そうか…で、原稿は?」
「???」
「描いてきたんだろ?見てほしいんじゃないのか?」
「あ…いえ、そういうわけじゃ…」
「じゃあまだ構想の段階か…まぁいいや、それでどんな話なんだい?」
「あ、はい…それじゃ…えーと、あるところに仲のよい姉妹がいました」
「…ふんふん、それで?」
「姉は…ちょっと抜けたところがありますが、とても明るく、いつも元気な…芯のしっかりした優しい人で
誰からも好かれていました。そんな姉を…引っ込み思案な妹は…とても尊敬し頼りにしていました」
「…なるほど」
「その妹には…ちょっと変わった力があるんです…自分に向けられた…男の人の、その、好意が、読めるという…」
「ほぉ」
「それでその…嫌だとかそういうんじゃないですけど…なんていうか元々引っ込み思案で人付き合いも苦手で、
男の人にそんな慣れてるわけじゃないのに、いきなりそういう…赤裸々な男の人の内面に触れてしまって…
その…何て言ったらいいかつまり…戸惑って…あの…」
「…要するに男が苦手になるのかい?」
「あ、はい…別に嫌いってわけじゃないんですけど、ちょっとこう…距離を置いてしまうみたいな…
でも本人はそれじゃダメって頑張ってみたりもするけど、やっぱりなかなかうまくいかなかったりとか…」
「なるほどな…それで?」


58 名前:Classical名無しさん :04/08/31 09:35 ID:UbiccumA
「はい、それで…動物が好きな彼女は、なぜかよく動物に懐かれる男の人と出会って…
その男の人は、心が見えない人だったので…安心して話ができるから、自然と仲良くなりました」
「ふむ、そうきたか…」
「妹思いの姉は…あの引っ込み思案だった妹が、男の人と仲良くできるようになったのを見てそれはもう大変喜びました…
ただ二人を恋人同士だと思いこんだらしく、その男の人に『妹をよろしく』みたいなことを言うんです…」
「…でも心が見えねぇってことは、少なくとも男のほうにはその気はねぇんだろ?」
「はい…妹はそれがわかってるので、彼とはそういう関係ではないと…否定するんですが、
姉は『内気な妹のことだから照れ隠しで言ってるだけだろう』と、全然まともに取り合ってくれません…」
「ん?…っつーことはあれか?その好意が読める能力とやらはお姉さんにも話してねぇってことか?」
「あ、はい…言っても信じてくれないだろうって感じで…そしてその姉妹のやりとりの後から、
その男の人が、なぜか急に落ち込んでしまうんです…妹は彼が『自分なんかと恋人だと思われるのは嫌で
落ち込んでるんだ』と思い、彼にそのことを謝りました…すると彼は笑って、そうじゃないんだと否定します」
「…おぉ、なんか盛り上がってきたな」
「彼は意を決したように言います…『ただ、俺は…君のお姉さんが好きなんだ』と…」
「!!!」


59 名前:Classical名無しさん :04/08/31 09:40 ID:UbiccumA
「…ここまでです」
「へ?」
「ここから先どうしたらいいかがわからないんです…この妹の彼に対する気持ち…姉に対する気持ち…
そしてこれからどうするべきなのか…私にはわからないんです…」
「あー…」
「…描いてくれませんか、播磨さん?」
「えっ? オ、俺が?」
「私…播磨さんのお手伝いしてるだけで、自分で漫画描いたことないですし…最初からそのつもりだったんですけど…」
「う〜ん…いや、俺は妹さんが自分で描くべきだと思うぜ?」
「…そうですか?」
「手伝ってもらった感じじゃ妹さん手先器用だし俺より絵うまそうだし、話も作れるんならそりゃ描くしかねぇだろジッサイ」
「い、いえ、私はそんな…」
「心配すんな。なんならコイツが片付いてからなら俺が手伝ってやってもいいし」
「え、あ、はい…じゃあ描いてみます」
「あぁ、それがいい…それに正直な話、俺バカだからそんなややこしい話は手におえねぇと思うしな」
「あ、いや、そんなこと…むしろ播磨さんだからこそ聞いてみたかったくらいですから…あ」
「???」
「い、いえ…何でもないです…」
「…そうか」

Fin。
2007年03月01日(木) 23:47:38 Modified by aile_irise




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