IF13・八雲独白


513 名前:八雲独白 :04/09/11 23:31 ID:VQFYucLA
───綺麗だ……と、良く言われます。
私に好意を持つ人の「心の声」を待つまでもなく、それは、小さい頃から……
でも、「綺麗」な事のどこがそんなにいいのでしょう……?
越の西施、前漢の王昭君、後漢の貂蝉、唐の楊貴妃、満州国皇后の婉容、英国国王ヘンリー8世妃アン=ブーリン、スコットランド女王メアリ=ステュアート……
本を読んだだけでも、「綺麗」な人の多くは、不幸な人ばかりなのに……
一時的に、ちやほやされたからって、それが何になるというのでしょう。

ただ、あの人だけは、違いました。
「妹さん、頼む、助けてくれ!」と頼み込むあの人は、ただ純粋に、私の能力だけを頼りにしてくれます。
それだけでなく、あの人におにぎりを差し入れた時も、あの人の動物たちを救うために奔走した時も……
あの人の心は「純粋そのもの」です。
私には、分かります。
だって、「声」が聞こえてきませんから……
だから、あの人の漫画を一生懸命助ける事が出来る。あの人の成功を心から祈る事が出来る。
あの人にだけは、思いっきり心の窓を開くことが出来る───。

ただ、何度となく、あの人の家に泊まり込み、二人で無言の作業をしている時、
───「声」が聞こえてこないかな……
などと、変な願望を抱いている私が居たりします。
開け放たれた窓から、一瞬の内にさらわれる、私の心───
それを考えただけで、胸が……

「───妹さん、どうした?」
「───い、いえ……(汗」

───やっぱり、私もまだまだですね。播磨先輩。

Fin
2007年03月05日(月) 21:40:35 Modified by aile_irise




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