IF15・ありがとう

740 名前:恒例絃子埋め :04/10/29 21:45 ID:7PNlQFGo
「あの、私が言うのもなんなんですけど」
「うん? にゃんだ、よおこ」
「ほどほどにしておいた方がいいと思いますよ」
「なーにいってるんだ、まだまだいけるさ。ああそうだ、まだまだゃ!」
「思いっきり駄目そうじゃないですか……」

 ――で。

「ぅ……ん……」
「やっぱり……でも珍しいですね、絃子さんがここまで潰れちゃうなんて」
「……」
「えーと、絃子さん? 絃子さーん? ……はぁ、仕方ないですね。でもこの時間にタクシー呼ぶのも――あ。
 こういうときは、と」

 ぴぽぱ。

「もしもし……よかった、まだ起きてたんだ。うん、それでね、ちょっと頼みたいことがあるんだけど――」


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「……うっす」
「あ、ごめんねこんな時間に。それでなんだけど」
「連れて帰ればいいんだろ。ったく……」


741 名前:恒例絃子埋め :04/10/29 21:45 ID:7PNlQFGo
「うん。拳児君に頼むのが一番だと思ってね。いろいろ」
「いろいろ?」
「ん、こっちの話」
「……ま、いいけどよ。んで、イトコのヤツは?」
「あそこ。さっきからぐっすりで全然起きないの」
「だったら泊まってった方がいいんじゃねぇのか?」
「でも着替えとかも考えると、ね。明日が休みだったらよかったんだけど」
「それじゃしゃあねぇか。でもよ、これどうやって連れて帰りゃいいんだ?」
「――おぶってく、とか」
「なっ!? いや無理だろそれどう考えても!」
「あー酷いな拳児君。絃子さんそんなに重くないよ?」
「そういう意味じゃねぇっ! 普通こういう場合タクシーでも呼んでだな」
「でも私が電話したとき言わなかったよね、それ」
「っ……」
「『すぐ行くから待っててくれ』とか」
「ぐ……分かった、分かったよ。でもな、背負うっつーのはちょっと……」
「じゃあお姫様だっこ」


742 名前:恒例絃子埋め :04/10/29 21:46 ID:7PNlQFGo
「せっかくだから俺は背負う方を選ぶぜ!? なあ!?」
「……残念」
「あのよ、もしかしてなんだが……酔ってるだろ」
「ううん、全然」
「……」
「さ、そうと決まったら明日もあるんだから、ほらほら」
「なんか納得いかねぇ……」


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「ったく、いつもならどんだけ飲んでもけろっとしてるヤツがよ……」
「ん――?」
「なんだ、起きたのか。……寝てていいぞ」
「けんじ、くん……? っ!?」
「っと、んだよ、んな驚かなくてもいいだろうが」


743 名前:恒例絃子埋め。おしまい。 :04/10/29 21:47 ID:7PNlQFGo
「そんな、だって私は、葉子の、家、で……」
「だからそこでぶっ倒れてたのを引き取ってきたんだよ。寝ぼけてんじゃねぇぞ?」
「……そうか。だがもう大丈夫だ、自分で歩ける。それにこんな恰好誰かに……」
「だぁっ! 無理すんなって……うおっ!?」
「つ、あ……」
「バカヤロ、だから言っただろうが」
「……すまん」
「――ほら、乗れよ」
「何を……」
「ごちゃごちゃ言うな、俺だって好きでやってんじゃねぇ。でもな、今のイトコじゃ歩いて帰るなんて無理だろ」
「それは……そうだ、タクシーは」
「金がねぇ」
「……分かったよ。まったく、葉子のさしがねか……?」
「ん? なんか言ったか?」
「何でもない」
「よっ、と。じゃ、無理しないで寝てろ」
「……ああ」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……なあ、拳児君」
「寝てろっつっただろ……なんだよ」
「その……」
「だからなんだよ」
「……なんでもない。すまん、忘れてくれ」
「あん? ワケ分かんねぇぞ……まあいいや、行くぞ」
「――――がとう」
「ん?」
「なんでも、ない」
「……」
2007年04月13日(金) 22:08:59 Modified by aile_irise




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