IF19・伝説の茶葉

プロローグ
春らしい柔らかな日差しが降り注いでいる。ここは矢神学院高校旧校舎にある茶道部。といってもただお茶を思い思いのスタイルで飲むだけであるが。そしてこんな平和から物語は始った。
「部長、このカップはいりますか?」
「・・・。いらないだろうね」
「そうですか、じゃあ八雲願いね」
八雲はうなづき自分の横にカップを積み上げていく。
現在茶道部は春の大掃除中、新学期に向けて入らなくなった物を捨てている。
“ガサッ”
「あれ? 何かなこれ」
食器棚の奥から出てきたのはクシャクシャに丸められた紙、湿気に長く当たっていたのかカビが生えている。
「どうしたの?サラ」
「棚からプリントが出てきたの、まあいらないと思うから捨てといてね」
「けど何か書いてあるよ、それ」
よく見ないと分からないが紙には薄い字が書かれている。サラも気づいたのか紙をゆっくりと広げていく。



95 :伯白いや猫○。です :05/01/23 18:20 ID:Lb11BmMs

「えーと、これは?の地図、下の×の地点に伝説の、伝説の?」
「どうしたの?」
「読めないの、何か書いてはあるんだけどね」
そこには線が途切れ途切れにあるようにしか見えない。地図全体は完全に読めるのにその部分だけ人為的に消そうとした跡が残っている。
「八雲、読める?」
「・・・、無理。読めますか? 先輩」
先輩と言われて晶は振り返った。ショートボブの髪が柔らかく揺れる。
「ここなんですけど」
八雲の指の先をじっと見つめ、その後少しうつむき加減で考える。
しばらく後出した答えは
「『茶葉あり』だね」
「あ〜そっか」
言われてみればといった表情で八雲とサラは頷く。
「ほ〜『伝説の茶葉あり』か。面白そうじゃないか、行ってみたらどうだ? 部長」
「せ、先生」
「どうした? 塚本君。化け物を見たみたいな顔をして」
「いつから居たんですか?刑部先生」
刑部と呼ばれている人は茶道部創設者であり顧問でもある刑部絃子である。後にすべてを語る人である。



96 :伯白いや猫○。です :05/01/23 18:21 ID:Lb11BmMs

「ずっと前からいたさ。顧問が大掃除に来ないわけにはいかないだろ」
そう言って小さく笑う。
「ところで部長、行ってみる気はないかね?」
「・・・・」
少しの沈黙の後
「行きます」
「部長、行くんですか? こんな物信じて」
首を縦に振る晶、その真意の見えない瞳は僅かに笑っているように見える。
「では諸君いってらっしゃい、これは荷物だ。あと親御さんには連絡しといてやるから安心して行って来るといい」
そこには普通のリュックが3つ、中身はパンパンに詰め込まれている。
「あの・・・私もですか?」
「例外はなしだ、塚本君」
そんな無茶な、と言いたげな表情の八雲。そして行く気満々の晶は
「先生、行ってきます」
「おう、頑張ってきてくれ」
「先生、姉さんに冷蔵庫にカレー入ってると伝えてくださいあとハンコは・・・」
八雲は晶に口を押さえられ引きずられるように出て行くのであった。姉思いが感じられる。
そして教室で一人に絃子は
「あの事件の再来か・・・。人は今も昔も変わらんのだろうな」
2010年11月16日(火) 23:23:12 Modified by ID:/AHkjZedow




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