IF2・WITH HONORS 〜きっと忘れない〜
327 名前:WITH HONORS 〜きっと忘れない〜 :04/01/04 02:46 ID:A+XimOBG
放課後にも関わらず、教室には佇む男が一人。
窓際の席に座る彼の意識は、窓の向こう、青空の彼方にあった。
流れる雲、傾いていく太陽―――なんて世界は途方も無い
この壮大な景色に比べれば、自分の悩みなどちっぽけに思えた。
そう、彼―――――播磨拳児は悩んでいた。
328 名前:WITH HONORS 〜きっと忘れない〜 :04/01/04 02:47 ID:A+XimOBG
高校二年になってからの事を回顧してみる―――――
失恋したと思い込み、グレてお姉さんのヒモとなった事、
天満と間違えて沢近(下の名は知らない)に告白してしまった事、
再度告白しようとしてラブレターを渡すはずが、退学届けを渡してしまった事―――――
…思い出せば出すほど、自分が滑稽に思えてくる。
天満と一緒に旅行に行くも、生粋の鈍感さを発揮した天満には想い通じ無かった事、
よく分からんうちに天満に「サイテー!」と言われた事、
さらに天満と一緒に旅行に(ついて)行くも、後(自分的には)一歩で沢近に邪魔をされた事―――
―――――こういったことが日常となりつつある事
329 名前:WITH HONORS 〜きっと忘れない〜 :04/01/04 02:48 ID:A+XimOBG
…このままルーチンワークのごとく日常を過ごして良いのだろうか。
否。 それは断じて否だ。 日常は安らぎをくれるが、現状を変えてはくれない。
「…播磨君? もう放課後だよ?」
このまま日常を享受するのはさぞかし楽だろう。 だがしかし、それは止まっているのと同義だ。
俺は進まなくてはいけない。 そう、あの人(お姉さん)と約束した―――――
「お〜い、もしもし。 やっほ〜」
故に俺は―――――
「―――グダグダ考えても仕方無え、 明日、告白するぞ!!」
「へ? ……えぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
隣の女の子(天満に非ず)の叫び声を完璧に無視して、播磨拳児は―――――決意した。
よく晴れた、曇り一つ無い青空の日の事だった―――――
330 名前:WITH HONORS 〜きっと忘れない〜 :04/01/04 02:50 ID:A+XimOBG
翌朝―――――
髭を剃り、サングラスを外し、髪を下ろす。
髭を生やし、サングラスをして、髪を上げて―――別人を装ってきたが、そんなのはもう止めだ。
在りのままの自分を見てもらう。それが相手に対する誠意でもあると思うから。
思えば随分と女々しい奴だと思った。
相手が話を聞いてくれそうに無いのなら、聞いてくれるまで話し続ければ良いだけのことだというのに―――
「―――と、天満ちゃんの友達に伝えてもらう、って手もあったんじゃねぇか…?」
今更ながら気付いた、自分の鈍感さと不器用さに播磨は自嘲の笑みを浮かべた。
その鈍さと不器用さは致命的ではあったが、彼の魅力でもあったのは皮肉だろうか。
331 名前:WITH HONORS 〜きっと忘れない〜 :04/01/04 02:51 ID:A+XimOBG
いざ、ゆ(行/逝)かん―――――
着飾らぬ程度に小奇麗な格好をして、播磨は決意を胸に、みち(道/途)をゆく。
(今日こそ告る…!)
道行く幾人かの女性が播磨を見、振り返る。
ハッキリとした目、閉じられた口元、それでいて笑みを浮かべているかのような穏やかな表情。
凛とした中に穏やかさが共存した、そんな雰囲気を醸している。
強い意志を持つ人間は非常に魅力的である。何と言っても、雰囲気が違うのだ。
332 名前:WITH HONORS 〜きっと忘れない〜 :04/01/04 02:55 ID:A+XimOBG
前方に自分の想い人を見付ける。
心臓は破裂しそうなほどに鳴り、頭は沸騰する―――――かと思っていたが、そうはならなかった。
自分でも驚くほど冷静に、前方の彼女に声を掛けた。
「―――待ってくれ」
「え…?」
俺の本心を知って、君はなんと答えるだろう
君はどう想うだろう 俺はどうなるのだろう
「聞いて欲しい、事があるんだ」
伝えてしまったら、戻れない けれど―――――
「貴女が、好きだ―――」
―――伝えなければ、進めない
振り返った少女は―――――
fin
放課後にも関わらず、教室には佇む男が一人。
窓際の席に座る彼の意識は、窓の向こう、青空の彼方にあった。
流れる雲、傾いていく太陽―――なんて世界は途方も無い
この壮大な景色に比べれば、自分の悩みなどちっぽけに思えた。
そう、彼―――――播磨拳児は悩んでいた。
328 名前:WITH HONORS 〜きっと忘れない〜 :04/01/04 02:47 ID:A+XimOBG
高校二年になってからの事を回顧してみる―――――
失恋したと思い込み、グレてお姉さんのヒモとなった事、
天満と間違えて沢近(下の名は知らない)に告白してしまった事、
再度告白しようとしてラブレターを渡すはずが、退学届けを渡してしまった事―――――
…思い出せば出すほど、自分が滑稽に思えてくる。
天満と一緒に旅行に行くも、生粋の鈍感さを発揮した天満には想い通じ無かった事、
よく分からんうちに天満に「サイテー!」と言われた事、
さらに天満と一緒に旅行に(ついて)行くも、後(自分的には)一歩で沢近に邪魔をされた事―――
―――――こういったことが日常となりつつある事
329 名前:WITH HONORS 〜きっと忘れない〜 :04/01/04 02:48 ID:A+XimOBG
…このままルーチンワークのごとく日常を過ごして良いのだろうか。
否。 それは断じて否だ。 日常は安らぎをくれるが、現状を変えてはくれない。
「…播磨君? もう放課後だよ?」
このまま日常を享受するのはさぞかし楽だろう。 だがしかし、それは止まっているのと同義だ。
俺は進まなくてはいけない。 そう、あの人(お姉さん)と約束した―――――
「お〜い、もしもし。 やっほ〜」
故に俺は―――――
「―――グダグダ考えても仕方無え、 明日、告白するぞ!!」
「へ? ……えぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
隣の女の子(天満に非ず)の叫び声を完璧に無視して、播磨拳児は―――――決意した。
よく晴れた、曇り一つ無い青空の日の事だった―――――
330 名前:WITH HONORS 〜きっと忘れない〜 :04/01/04 02:50 ID:A+XimOBG
翌朝―――――
髭を剃り、サングラスを外し、髪を下ろす。
髭を生やし、サングラスをして、髪を上げて―――別人を装ってきたが、そんなのはもう止めだ。
在りのままの自分を見てもらう。それが相手に対する誠意でもあると思うから。
思えば随分と女々しい奴だと思った。
相手が話を聞いてくれそうに無いのなら、聞いてくれるまで話し続ければ良いだけのことだというのに―――
「―――と、天満ちゃんの友達に伝えてもらう、って手もあったんじゃねぇか…?」
今更ながら気付いた、自分の鈍感さと不器用さに播磨は自嘲の笑みを浮かべた。
その鈍さと不器用さは致命的ではあったが、彼の魅力でもあったのは皮肉だろうか。
331 名前:WITH HONORS 〜きっと忘れない〜 :04/01/04 02:51 ID:A+XimOBG
いざ、ゆ(行/逝)かん―――――
着飾らぬ程度に小奇麗な格好をして、播磨は決意を胸に、みち(道/途)をゆく。
(今日こそ告る…!)
道行く幾人かの女性が播磨を見、振り返る。
ハッキリとした目、閉じられた口元、それでいて笑みを浮かべているかのような穏やかな表情。
凛とした中に穏やかさが共存した、そんな雰囲気を醸している。
強い意志を持つ人間は非常に魅力的である。何と言っても、雰囲気が違うのだ。
332 名前:WITH HONORS 〜きっと忘れない〜 :04/01/04 02:55 ID:A+XimOBG
前方に自分の想い人を見付ける。
心臓は破裂しそうなほどに鳴り、頭は沸騰する―――――かと思っていたが、そうはならなかった。
自分でも驚くほど冷静に、前方の彼女に声を掛けた。
「―――待ってくれ」
「え…?」
俺の本心を知って、君はなんと答えるだろう
君はどう想うだろう 俺はどうなるのだろう
「聞いて欲しい、事があるんだ」
伝えてしまったら、戻れない けれど―――――
「貴女が、好きだ―――」
―――伝えなければ、進めない
振り返った少女は―――――
fin
2007年11月24日(土) 05:10:16 Modified by ID:aljxXPLtNA