IF2・monologue

340 名前:monologue :04/01/04 21:09 ID:OjLQObFY
 あの日から私は彼女を見つめている。
 ツカモトヤクモ。
 枷をはめられた少女。
 彼女は知っている。この世には純然たる好意など、稀にしか存在しないことを。
 それ故に、彼女は他者と距離を置く。
 好意とその向こう側にあるものを視てしまうがために。
 親しかった者たちと別れて始まる、新しい環境。
 その中で戸惑う姿を見て、私は幾年かぶりに人の前に現れることを決めた。
 為すことはただ一つの問。
 好きか、嫌いか。
 問はずっと変わらない。
 答もずっと変わらない。
 そのはずだった。
 けれど。
 彼女は初めて私にとって予想外の答を返した。
 それが私を揺さぶり、永劫の時をさまよい続ける心を捕らえた。
 己の枷に囚われることなく、否定でも肯定でもなく、ただ在るものとして歩んでいく。
 模範解答ではおそらくない。
 保留に過ぎないと言う者もいるだろう。
 ただ、私は興味を持った。
 それ故に、彼女を見つめている。
 その視線の向こうで彼女は変わっていく。
 新しい友と出会い。
 好意ではなく、親意とでも呼ぶべきものを持つ人と出会い。
 私が出来ないと言った表情を、それと知らず見いだしていく。
 枷を抱えたままで。
 だから最近、ふと思い浮かべてしまうのだ。
 いつか私もこの無限に続く枷を解き放つ日が来るのではないか、と。
 目の前で透き通るように微笑む、この少女のように。
 いつの日か、自分の手で。
2007年11月24日(土) 05:16:14 Modified by ID:aljxXPLtNA




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