IF20・レースと罰ゲーム

931 :Classical名無しさん :05/03/18 10:14 ID:d7kSH7Lg
「じゃ、次の信号まで競争ね?」
葉子は笑顔で拳児に話し掛ける。
「おう! 俺が勝ったら本当に追試免除なんだろうな?」
漫画でテストの成績が散々だった拳児は、この話に飛びついた。
(車とゼロヨン…馬力は向こうが勝ち。でも、車重はこっちが勝ち。いける!)
無理だとは判っていた。でも、愛する人と別のクラスにはなりたくなかった。
車重の軽さでスタートダッシュかまして、逃げ切る。
拳児の考えはそれしかなかった。
「じゃ、次の信号が青になったらスタートね」
葉子は助手席の絃子にスイッチを押させた。途端に後輪から立ち上る白煙。
「バーンアウトしてまで勝ちたいかね、葉子?」絃子が呆れながら訊ねる。
葉子は、全力を尽くさないと失礼ですからとにっこり笑った。
 
やがて信号が青に変わり、2台は猛然とダッシュする。
軽さで引き離したい拳児だったが、すぐに追いつかれた。
「じゃ、抜くわよ拳児君」
遠慮無しにシフトアップして抜き去る葉子。
「ま、待ちやがれぇ!」
拳児は必死の形相で追いかける。しかし、双方の差は広がるばかりだった。
そして、葉子がゴール。数秒後、拳児もゴールした。
「くそっ、負けちまった…情けねえ…」
落ち込む拳児に葉子が追い討ちを掛ける一言を言った。
「じゃ、負けた拳児君にはヌードモデルやって貰うからね」
「なっ? い、絃子助けてくれ!」
「あきらめろ、拳児君」そう言い残して従姉は去って行った。
呆然とする拳児は、葉子の車に乗せられて、アトリエへ直行。
数ヵ月後の展覧会。拳児の絵がとても好評だったのは本人には内緒の話。
2010年11月21日(日) 12:38:40 Modified by ID:/AHkjZedow




スマートフォン版で見る