IF23・プルトップ


702 :Classical名無しさん:05/05/28 18:33 ID:VZ3tCm02
「一緒に帰ろーぜ」
俗に云う幼馴染み。
これは結構、めんどうな存在だったりする。
「すまない、文化祭の予算委員会があってな」
あたしは脇の鞄を抱え直した。
こいつは学級委員だ、そう言う時だってある。
「そっか、まあがんばれよ!!」
あいつが手を振る、あたしも軽く振り返す。
「付き合ってるの?」
長いこと幼馴染みをしていればこう聞かれる事も多い。
「そりゃないな」
あたしは返事をいつもそう返す。
冷たい?
そりゃあ結構だ。
優しくしてやる必要もない。
「で?ホントのトコはどうなの?」
「おい、しつこいぞ」
「どう思ってるわけ?」
それにしてもなんでこいつはこんなにからんでくるんだ?
あたしがアイツをどう思っているかなんて関係ないだろ?
「別に何とも」
「あーあ、カレ、可哀想に……」
可哀想?
意味が解らない。
あたしにとって奴はプルトップみたいな存在だ。


703 :Classical名無しさん:05/05/28 18:34 ID:VZ3tCm02
「プルトップって………缶の?」
そう、缶のプルトップ。
「あると邪魔だけど、無かったら不自然」
飲むとき微妙に邪魔なんだよな、あれ。
「でもさぁ」
ニヤニヤと嫌な笑いを浮かべながら続ける、
「プルトップを欲しがる人だっているでしょ?」
車椅子が作れるんだっけ?
ボランティア活動の基本。
――正確には換金後、購入――
「恵んでやるさ、ボランティアだからな」
「それはカレとプルトップ、どっちを言ってるの?」
もちろん、
「どっちもだね」
溜め息をひとつ、
美しい金の髪を揺らしながら、
少々の皮肉を込めて、
「プルトップ…か、まぁ……あんたらしいわ」
気づいてるのかしら?
プルトップがなければ缶は開かないのよ。

―了―
2007年09月14日(金) 21:52:45 Modified by ID:LOVLpNCrSQ




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