IF27・百花クリスマス
607 :Classical名無しさん:06/12/30 23:14 ID:ajbrdOSI
ごめん。花井で時期外れのクリスマスもの。しかもSS初挑戦。
クリスマスを間近に控えた12月の夜。
その日、夜も更けた花井道場に一組の男女がいた。
「どうしたんだ、神妙な顔して?」
心配そうに男を見る彼女は幼馴染の周防美琴。
そして、決意を固めた男の名は花井春樹。
「周防、決めたぞ。今度のクリスマスに、僕は告白する!」
『百花クリスマス』
「おー、いよいよか。ただやめといた方がいいと思うがなぁ」
「何故だ?」
「いや、脈がないだろって話。まあ止めはしないけど」
「恋愛も試合も勝負はやってみなければ分からん。僕はまだ彼女に想いを何も伝えていないからな!」
「こりゃだめだ」
「そんなことより、お前も今年は麻生と過ごすのだろう。
こんな所にいつまでもいないで準備でもしてきたらどうだ」
僕はとっくの昔にしているぞ、という花井の言葉に
余計なお世話だ、と美琴が返して2人は別れ、その日は終わった。
608 :百花クリスマス(2/9):06/12/30 23:15 ID:ajbrdOSI
彼女に心を奪われたのはいつからだっただろう?
入学してくる一年生の中に、彼女を見つけた時だろうか?
詳しくは覚えていない。気がついたら彼女を追いかけていた。
けれど、この想いは彼女に近づいても、一向に伝わることはなかった。
――いや、過ぎたことはもういい。
今日、この聖なる日に。腕いっぱいの花束を持って愛を告白しよう。
――塚本八雲君に。
そして迎えたクリスマスの朝。
人気投票でも着た、愛用のタキシード姿の花井。
花束もすでに取り寄せてある。用意は万全、ぬかりはなかった。
美琴から得た情報では八雲は今日、サラの手伝いで教会にいるらしい。
ちょうどいい。神の前で愛を確かめ合えるとは。
全ては神の思し召しなのだろう。もはや、これは運命なのだ。
だが、花井はすぐにその考えを捨てることになる。花井道場を訪ねてきた存在によって。
「き、貴様は…!?」
それは何の因果か今や彼の宿敵。
巨大レッサーパンダ・空太君だった。
609 :百花クリスマス(3/9):06/12/30 23:17 ID:ajbrdOSI
このクリスマスの日を決着の日と定め、はるばるやってきたのだろう。
花井を見るその獣の眼は明らかに血走っていた。
「僕にはやらなければならないことがあるのだ! そこをどきたまえ!」
「ぐぉがぁぁぁぁ!!!」
問答無用の野獣は花井に襲い掛かった。花井は闘った。雄雄しく、猛々しく、闘った。
巨大な猛獣は、もはや人間の手に負えるものとは思えないほどだった。
それでも。
「今こそ、貴様に見せてやる! 人間の愛が持つ、残り70%の力を!!」
愛、全ては愛のために。
ついに、花井は勝利を収めた。
「はあ、はあ…ぜえ……手当てもしてやれんことを悪く思わないでくれ。
僕は今日という日に全てを賭けているんだ」
これも愛の障害の一つ。そして…それは今、終わった。待っててくれ、八雲君。
――だが、まだ彼の戦いは終わってはいなかった。
「てめー。ナニ、動物いじめてんだ?」
――そう、もう一方の宿敵が残っていたのだから。
「は、播磨拳児…!?」
610 :百花クリスマス(4/9):06/12/30 23:20 ID:ajbrdOSI
「なるほど、障害といえば貴様を忘れるべきではなかったか…」
この時、花井はすでに正気ではなかったかもしれない。
八雲のため、立ちはだかる者は全て倒す。それだけだった。
「今日の俺はムシャクシャしてんだ。どうなっても知らないぜ?」
「よかろう、もはや相手も数も関係ない。かかってこい!」
「ちっ、バカが。どうにもテメーとは決着をつけにゃあならんようだな。行くぜ!!」
花井は闘った。気高く、逞しく、闘った。播磨は空太君以上にとてもとても強かった。
それでも、花井は負けない。花井には決して折れない愛があるのだ。
「神よ!愛を司る神よ!女神よ! 今一度、この僕に力を貸してくれぇぇ!!」
「きょ、今日のメガネは…いつもと違うぜ…!」
長時間の死闘を制し、花井はなんとか勝利を収めた。
「じ、時間が無い…いざ、八雲君のもとへ…!」
だが残酷にも、度重なる戦いですでに限界を迎えていた体は花井にそれを許さなかった。
「や…くも……ん…」
611 :百花クリスマス(5/9):06/12/30 23:22 ID:ajbrdOSI
花井は限界にぶつかり、意識を失った。しかし、それはあくまで肉体の敗北を指すものである。
その精神は己の内面で未だ戦い続けていたのだ!
動け、体よ。今、動かずにいつ動くというのだ?
僕はこの日のために心身を鍛えたのではなかったのか?
立て、花井春樹! お前は強くなったはずのだろう!?
思い出すのは美琴に守られていた、弱かった頃の自分。
そして、ヒーローになりたいと思った、あの時の誓い。
あれから己を鍛え、学び、自分の心に恥じないよう、常に正しいと思うことをしてきた。
ここで終わるわけにはいかない。
何故だかは分からない。だがその時、父・弥三郎の声が聞こえた気がした。
――そして、花井は限界を超えた。
612 :百花クリスマス(6/9):06/12/30 23:24 ID:ajbrdOSI
「ハッ!!」
「何だ、起きたのか?」
「播磨!?」
声の主は播磨だった。どうやら、彼は意識は失わなかったものの、動けはしないようだ。
「播磨、今は何時だ!?」
「あ? 外を見りゃ、分かるだろ。夕方だよ」
「なっ、なんだとぉ!?」
すでに時間に余裕はない。この体で教会に辿り着くにはかなりの時間がかかるだろう。
他に障害がないという保証も無い。焦燥が冷静な判断力を奪う。
どうする? このままで間に合うのか?
「乗っていけ、用事があるんだろ?」
播磨はおもむろにバイクのキーを投げる。
「これは…お前の…?」
「多くは聞かねえ。しばらく体が動きそうにねえからよ。それまでの間だけ貸してやる」
拳を交えた友だからこそ分かり合える絆。確かに、それが今の2人にはあった。
「すまない。恩に着るぞ!!」
親友の想いを無駄にはするまいと、風とともに駆け抜けていく花井。
それを見て、播磨はふと疑問に思った。
「あいつ…免許は持ってたっけ?」
614 :百花クリスマス(7/9):06/12/30 23:27 ID:ajbrdOSI
日の沈むゆく矢神の町をまるで遡るかの如く、駆け抜ける花井のバイク(播磨の)。
「僕には免許はない! だが、教会までの間だけはこの暴れ馬を乗りこなしてみせる!
他に手段がないというのなら…! この花井春樹、法を犯すことにも躊躇はしないぞ!!」
弾丸のように町を飛び出して、教会が別の町ではないことを思い出して引き返したり、
夕焼けの海岸線を走り抜ける最中、刹那のその美しさに一時、心を奪われたりもした。
初日の出を八雲君と2人で見にいくというのも悪くないな。
そうだ、バイクの後ろに乗せて走ろうじゃないか。
どんどん加速する妄想にも、スピードにも決してブレーキは踏まない。
事態は一刻を争うのだ。もはや愛は止められないのだ。
――当然の結果として、バイクは砕け散り、花井は吹き飛んだ。
辺りが夜の闇に包まれ、ちらほらと雪も降り出した、そんなホワイトクリスマス。
ぼろ雑巾のようになった体を重たい足で引きずり、花井はまだ、教会へ向かっていた。
彼をここまでさせるものは何か。その答えはただ一つ。
全てはこの一年の間、己の内にずっと溜め込んでいた想いのために。
目の前にはいつかの教会が見えてきた。あの時は邪魔が入ったが、すでに元凶は地に伏している。
もはや己を阻むものは何もない。
「八雲君!」
615 :百花クリスマス(8/9):06/12/30 23:29 ID:ajbrdOSI
――扉の向こうに、彼女はいた。
「花井…先輩…?」
憂いをおびた、彼を見つめるどこか寂しげな瞳。
初めて彼女を見た時、きっとあの瞳に心を奪われたのだろう。
驚きを隠せない顔の彼女を前にしても、今の花井に迷いはなかった。
今こそ、今こそ胸に秘めていた想いを伝える時。
「これを受け取ってほしい。僕の愛とともに!」
投げた花束は――
「私に?」
――ものすごい軌道を描いて、高野晶の手元に渡った。
「そ、それは君ではなく、ヤ…!」
「…ありがとう。まさか貴方がこんなものを用意してたなんて思わなかった」
その時見せた晶の顔は、親友である美琴も見たことの無いような笑顔で――
「いや、その…本当は八雲君に…」
花井が真相を話すことに抵抗を感じるほどに綺麗で――
「ごめんなさい」
――でも全部、芝居でした。
616 :百花クリスマス(9/9):06/12/30 23:31 ID:ajbrdOSI
八雲のために用意した花も愛も持って、晶は教会から立ち去っていく。
手痛い仕打ちとともに、とにかく花井春樹の聖夜は砕け散った。
「あ、あの…先輩。高野先輩とのことはよく分からないけど、頑張って下さい」
「そうですよ、再チャレンジです!」
愛しい彼女の優しさも慰めの言葉も今は辛いだけで。花井は泣きながらとぼとぼと家に帰った。
そして、その日の夜の花井道場。
「まあ、何だ。気を落とすなよ」
「まだだ、周防! まだ僕は気持ちは伝えてはいない! 大晦日こそ、大晦日こそぉ!」
「おい、メガネ…俺のバイクはどうした?」
「うおぉぉぉ! ヤクモーーーン!!」
「花井、俺のバイクは!?」
ちなみに、この日の八雲は花井の心が読めなかったという。それはただ、能力が落ちる日だったからなのだが。
つまり、花井の愛は本当の意味で全く伝わっていなかったのだ。
ごめん。花井で時期外れのクリスマスもの。しかもSS初挑戦。
クリスマスを間近に控えた12月の夜。
その日、夜も更けた花井道場に一組の男女がいた。
「どうしたんだ、神妙な顔して?」
心配そうに男を見る彼女は幼馴染の周防美琴。
そして、決意を固めた男の名は花井春樹。
「周防、決めたぞ。今度のクリスマスに、僕は告白する!」
『百花クリスマス』
「おー、いよいよか。ただやめといた方がいいと思うがなぁ」
「何故だ?」
「いや、脈がないだろって話。まあ止めはしないけど」
「恋愛も試合も勝負はやってみなければ分からん。僕はまだ彼女に想いを何も伝えていないからな!」
「こりゃだめだ」
「そんなことより、お前も今年は麻生と過ごすのだろう。
こんな所にいつまでもいないで準備でもしてきたらどうだ」
僕はとっくの昔にしているぞ、という花井の言葉に
余計なお世話だ、と美琴が返して2人は別れ、その日は終わった。
608 :百花クリスマス(2/9):06/12/30 23:15 ID:ajbrdOSI
彼女に心を奪われたのはいつからだっただろう?
入学してくる一年生の中に、彼女を見つけた時だろうか?
詳しくは覚えていない。気がついたら彼女を追いかけていた。
けれど、この想いは彼女に近づいても、一向に伝わることはなかった。
――いや、過ぎたことはもういい。
今日、この聖なる日に。腕いっぱいの花束を持って愛を告白しよう。
――塚本八雲君に。
そして迎えたクリスマスの朝。
人気投票でも着た、愛用のタキシード姿の花井。
花束もすでに取り寄せてある。用意は万全、ぬかりはなかった。
美琴から得た情報では八雲は今日、サラの手伝いで教会にいるらしい。
ちょうどいい。神の前で愛を確かめ合えるとは。
全ては神の思し召しなのだろう。もはや、これは運命なのだ。
だが、花井はすぐにその考えを捨てることになる。花井道場を訪ねてきた存在によって。
「き、貴様は…!?」
それは何の因果か今や彼の宿敵。
巨大レッサーパンダ・空太君だった。
609 :百花クリスマス(3/9):06/12/30 23:17 ID:ajbrdOSI
このクリスマスの日を決着の日と定め、はるばるやってきたのだろう。
花井を見るその獣の眼は明らかに血走っていた。
「僕にはやらなければならないことがあるのだ! そこをどきたまえ!」
「ぐぉがぁぁぁぁ!!!」
問答無用の野獣は花井に襲い掛かった。花井は闘った。雄雄しく、猛々しく、闘った。
巨大な猛獣は、もはや人間の手に負えるものとは思えないほどだった。
それでも。
「今こそ、貴様に見せてやる! 人間の愛が持つ、残り70%の力を!!」
愛、全ては愛のために。
ついに、花井は勝利を収めた。
「はあ、はあ…ぜえ……手当てもしてやれんことを悪く思わないでくれ。
僕は今日という日に全てを賭けているんだ」
これも愛の障害の一つ。そして…それは今、終わった。待っててくれ、八雲君。
――だが、まだ彼の戦いは終わってはいなかった。
「てめー。ナニ、動物いじめてんだ?」
――そう、もう一方の宿敵が残っていたのだから。
「は、播磨拳児…!?」
610 :百花クリスマス(4/9):06/12/30 23:20 ID:ajbrdOSI
「なるほど、障害といえば貴様を忘れるべきではなかったか…」
この時、花井はすでに正気ではなかったかもしれない。
八雲のため、立ちはだかる者は全て倒す。それだけだった。
「今日の俺はムシャクシャしてんだ。どうなっても知らないぜ?」
「よかろう、もはや相手も数も関係ない。かかってこい!」
「ちっ、バカが。どうにもテメーとは決着をつけにゃあならんようだな。行くぜ!!」
花井は闘った。気高く、逞しく、闘った。播磨は空太君以上にとてもとても強かった。
それでも、花井は負けない。花井には決して折れない愛があるのだ。
「神よ!愛を司る神よ!女神よ! 今一度、この僕に力を貸してくれぇぇ!!」
「きょ、今日のメガネは…いつもと違うぜ…!」
長時間の死闘を制し、花井はなんとか勝利を収めた。
「じ、時間が無い…いざ、八雲君のもとへ…!」
だが残酷にも、度重なる戦いですでに限界を迎えていた体は花井にそれを許さなかった。
「や…くも……ん…」
611 :百花クリスマス(5/9):06/12/30 23:22 ID:ajbrdOSI
花井は限界にぶつかり、意識を失った。しかし、それはあくまで肉体の敗北を指すものである。
その精神は己の内面で未だ戦い続けていたのだ!
動け、体よ。今、動かずにいつ動くというのだ?
僕はこの日のために心身を鍛えたのではなかったのか?
立て、花井春樹! お前は強くなったはずのだろう!?
思い出すのは美琴に守られていた、弱かった頃の自分。
そして、ヒーローになりたいと思った、あの時の誓い。
あれから己を鍛え、学び、自分の心に恥じないよう、常に正しいと思うことをしてきた。
ここで終わるわけにはいかない。
何故だかは分からない。だがその時、父・弥三郎の声が聞こえた気がした。
――そして、花井は限界を超えた。
612 :百花クリスマス(6/9):06/12/30 23:24 ID:ajbrdOSI
「ハッ!!」
「何だ、起きたのか?」
「播磨!?」
声の主は播磨だった。どうやら、彼は意識は失わなかったものの、動けはしないようだ。
「播磨、今は何時だ!?」
「あ? 外を見りゃ、分かるだろ。夕方だよ」
「なっ、なんだとぉ!?」
すでに時間に余裕はない。この体で教会に辿り着くにはかなりの時間がかかるだろう。
他に障害がないという保証も無い。焦燥が冷静な判断力を奪う。
どうする? このままで間に合うのか?
「乗っていけ、用事があるんだろ?」
播磨はおもむろにバイクのキーを投げる。
「これは…お前の…?」
「多くは聞かねえ。しばらく体が動きそうにねえからよ。それまでの間だけ貸してやる」
拳を交えた友だからこそ分かり合える絆。確かに、それが今の2人にはあった。
「すまない。恩に着るぞ!!」
親友の想いを無駄にはするまいと、風とともに駆け抜けていく花井。
それを見て、播磨はふと疑問に思った。
「あいつ…免許は持ってたっけ?」
614 :百花クリスマス(7/9):06/12/30 23:27 ID:ajbrdOSI
日の沈むゆく矢神の町をまるで遡るかの如く、駆け抜ける花井のバイク(播磨の)。
「僕には免許はない! だが、教会までの間だけはこの暴れ馬を乗りこなしてみせる!
他に手段がないというのなら…! この花井春樹、法を犯すことにも躊躇はしないぞ!!」
弾丸のように町を飛び出して、教会が別の町ではないことを思い出して引き返したり、
夕焼けの海岸線を走り抜ける最中、刹那のその美しさに一時、心を奪われたりもした。
初日の出を八雲君と2人で見にいくというのも悪くないな。
そうだ、バイクの後ろに乗せて走ろうじゃないか。
どんどん加速する妄想にも、スピードにも決してブレーキは踏まない。
事態は一刻を争うのだ。もはや愛は止められないのだ。
――当然の結果として、バイクは砕け散り、花井は吹き飛んだ。
辺りが夜の闇に包まれ、ちらほらと雪も降り出した、そんなホワイトクリスマス。
ぼろ雑巾のようになった体を重たい足で引きずり、花井はまだ、教会へ向かっていた。
彼をここまでさせるものは何か。その答えはただ一つ。
全てはこの一年の間、己の内にずっと溜め込んでいた想いのために。
目の前にはいつかの教会が見えてきた。あの時は邪魔が入ったが、すでに元凶は地に伏している。
もはや己を阻むものは何もない。
「八雲君!」
615 :百花クリスマス(8/9):06/12/30 23:29 ID:ajbrdOSI
――扉の向こうに、彼女はいた。
「花井…先輩…?」
憂いをおびた、彼を見つめるどこか寂しげな瞳。
初めて彼女を見た時、きっとあの瞳に心を奪われたのだろう。
驚きを隠せない顔の彼女を前にしても、今の花井に迷いはなかった。
今こそ、今こそ胸に秘めていた想いを伝える時。
「これを受け取ってほしい。僕の愛とともに!」
投げた花束は――
「私に?」
――ものすごい軌道を描いて、高野晶の手元に渡った。
「そ、それは君ではなく、ヤ…!」
「…ありがとう。まさか貴方がこんなものを用意してたなんて思わなかった」
その時見せた晶の顔は、親友である美琴も見たことの無いような笑顔で――
「いや、その…本当は八雲君に…」
花井が真相を話すことに抵抗を感じるほどに綺麗で――
「ごめんなさい」
――でも全部、芝居でした。
616 :百花クリスマス(9/9):06/12/30 23:31 ID:ajbrdOSI
八雲のために用意した花も愛も持って、晶は教会から立ち去っていく。
手痛い仕打ちとともに、とにかく花井春樹の聖夜は砕け散った。
「あ、あの…先輩。高野先輩とのことはよく分からないけど、頑張って下さい」
「そうですよ、再チャレンジです!」
愛しい彼女の優しさも慰めの言葉も今は辛いだけで。花井は泣きながらとぼとぼと家に帰った。
そして、その日の夜の花井道場。
「まあ、何だ。気を落とすなよ」
「まだだ、周防! まだ僕は気持ちは伝えてはいない! 大晦日こそ、大晦日こそぉ!」
「おい、メガネ…俺のバイクはどうした?」
「うおぉぉぉ! ヤクモーーーン!!」
「花井、俺のバイクは!?」
ちなみに、この日の八雲は花井の心が読めなかったという。それはただ、能力が落ちる日だったからなのだが。
つまり、花井の愛は本当の意味で全く伝わっていなかったのだ。
2008年04月18日(金) 15:52:42 Modified by ID:EBvjy16zhA