IF6・Necrophobia

121 名前:Necrophobia 1/9 :04/03/18 06:18 ID:1vSQ3rkY
「ふぅ。まさか、隣りのクラスと最優秀クラス賞を争う事になるとは」
「ああ、そうだな。苦戦するなら上級生相手だってあたしも思ってた」
 体育祭の華である騎馬戦を前に、2−Cと2−Dの獲得ポイントはほぼ同等。
総合では彼らのクラス、2−Cが所属する赤団が一歩抜きん出ているのだが、
この武闘派ふたりは超人揃いのこのクラスが接戦止まりなのが我慢できないらしい。

「じれったいわね…… 何か秘策でもないの? 晶」
「秘策? あるよ。でも放っておいても花井君がどうにかしそうだから教えない」
「また目の敵にしてるし…… そこまで嫌うほどイヤな奴には見えないけど?」
 沢近絵理にはクラスの勝利を真剣に願っているようにしか思えない。ウザくはあるが。
「それより次の騎馬戦、愛理は上でしょ。ハチマキはきつく締めた?」
「ぬかりはないわ。2回戦のD組との直接対決で一気にかたをつけてあげる」
 騎馬戦を得意と公言した理由が「乗馬には慣れている」というあたりが不安材料だが、
沢近の陸上での運動センスには定評がある。コツさえつかんでいれば活躍は間違いない。
次の騎馬戦でも美琴と並んでクラス内のポイントゲッターとして期待されている。
しかしまた、このクラスには運動センスの無さが超人的な生徒もいたわけで……。

「いいかい塚本さん、僕たちは最初から最後まで逃げ回る。
バックアタックの囮になれれば上出来、さらに生き残り人数に加われば完璧らしいから、
相手のハチマキを取ろうなんて考えずにとにかく自分のを死守。いいね?」
「うん、りょーかい。進む方向もだいたい冬木くんに任せるよ」
 塚本天満。クラス対抗騎馬戦唯一の逃げキャラ。
ほぼ全員参加、かつ男子2人・女子2人で組むというルールの都合上、
手が滑って騎馬を崩したり何もないところで転んだりする天満に騎馬は組ませたくない。
ならばいっそ軽いのだから上に乗せて逃げ回っていれば役に立つかもという発想である。
 ちなみに発案は花井。意外と冷血なのかもしれない。


122 名前:Necrophobia 2/9 :04/03/18 06:19 ID:1vSQ3rkY
 そして二年生全員が入場門の前に集合して直前の点呼。決戦は間近だ。
「おや? 今鳥がいないが、トイレか?」
「彼、物騒な競技はパスとか言ってどっか行っちゃったらしいの」
「なんだと! それでは騎馬を再編成しないといけないではないか」
「今鳥さんが? わ、私、探してきます!」
「おい、一条くん! 今から探しに行っては君まで参加できなくなってしま」
 ―――呼び止める間もなく消えてゆく小さな人影。これで2名脱落。
「……で、他にいない奴はいるか?」
「播磨がいないな」


「よし、人数が足りなくなっているチームは再編成するからこっちに来てくれ」
「あ、あいつ、播磨の事スルーしやがった。いったい何があったんだ?」
 美琴の疑問に答えられる者はいない。
そして数分後。4の倍数に合わせた再編成の結果、女子2名の不出場が決まった。

「いいなー。私も応援席で見てるだけのほうが良かったのに」
 と言う天満の視線の先には、軽そうだからという理由で騎馬の上に乗る事になった烏丸。
「お祭り好きの塚本さんなのに珍しいね。やっぱり運動は嫌いなの?」
「好きだよ? ただ運動音痴だから、あんまり集団競技には向いてないのかも」
 冬木の気遣いも脳内で烏丸が大活躍する妄想に勤しむ天満にはあまり届かない。
 
「ところで晶、あの2−Dにいる外人。名前からして気に入らないから最初に狙っていい?」
「指揮力も個人の力量もただごとじゃないから最初に潰しておきたいんだけれど、
練習を見た限り誘いに乗ったら囲まれて各個撃破されるわ。愛理だけ突出しないで」
 ハリー・マッケンジー。下馬評が並だった2−Dを最優秀クラス争いに導いた留学生。
そのカリスマ性と清濁併せ持つ性格から『乱世の奸雄』と呼ばれている。
「そうなの? それにしても練習まで偵察してたなんて…… ほんと晶って謎ね」
「ありがと。もちろん誉め言葉だよね?」


123 名前:Necrophobia 3/9 :04/03/18 06:19 ID:1vSQ3rkY
 一方そのころ、播磨は屋上入り口の屋根でひなたぼっこをしていた。
「けっ。天満ちゃんの騎馬にもなれねえし、上に立って活躍できる可能性もねえ。
しかも乗せるのが奈良だと!? やってられるかそんなもん」
 体格が良すぎるが故に女子2・男子2というルールでは支える側にしかなれない宿命。
同じ境遇の花井と違って美琴のような信頼できる相方もいないためサボるつもりらしい。

 と、そこへ扉の開く音。とりあえず気配を殺して上から覗いてみる。
「俺、舞ちゃんに嫌われてたっけ? あれが嫉妬なら見込みのあるCだから嬉しいけど、
あんな燃えも萌えもしない女子連中と組まされてもやる気出ねーや。……寝よ」
 上からなので髪型しか見えないが、おそらく今鳥。
委員長が決めたチーム編成が気に入らなかったのか、出場する気をなくし昼寝に来たらしい。
そのまま床に横向けに寝転んで目を閉じ、すぐイビキ。やけに寝相がいい。

 と、そこへもう一度扉の開く…… いや、外れる音。
「今鳥さん、ここだったんですね。探したんですよ」
「う、うわぁっ! とりあえずドアは置いとけ、いや置いておきましょう一条サン」
 生命の危機を感じて飛び起きる今鳥。
「あ、そうですね。あとで直しておかないと」
 外れた鉄製の扉を片手で柵に立てかける一条。1000万パワーは伊達じゃない。
「それでですね今鳥さん」
「みなまで言うな。俺が悪かった。次の種目からはちゃんと出るから」
 会話終了。
「……えっと。ありがとうございます」
「で、これからどーすんだ? もう今からじゃイチさんも間に合わねーだろ、騎馬戦」
「あ……」
 
 はるか下方では1回戦が始まろうとしている。
播磨は懐から双眼鏡を取り出した。目的はただひとつ、天満の晴れ姿を鑑賞するため。


124 名前:Necrophobia 4/9 :04/03/18 06:21 ID:1vSQ3rkY
 騎馬戦1回戦は2−Eとの対決。―――2−Cの圧勝。
「大活躍だったね愛理ちゃん! それに美琴ちゃんも。すっごく目立ってたよ!」
 ピコピコ飛び跳ねて喜びを表現する天満。
「ありがとう。あなたも目立ってたわよ? いい標的なのに何故かとどめが刺せないって」
「いや〜、照れちゃうな〜」
「塚本。沢近のやつはたぶん誉める意味で言ったんじゃないと思うんだが……」

 なんて勝利を喜び合っていると、直後の試合で全校生徒の大きなどよめき。
「なんなのさ、あれ!?」
 2−D、留学生ハリーを中心とした独特の隊形で時間内に2−Bを殲滅し、完全勝利。
「……くやしいけど、チームワークは彼らのほうが上みたいだね。どうするの?」
「どうするもなにも、僕達に作戦など不要! 個々の能力を活かして全力で戦うのみ!」
 言い換えれば策はないらしい。晶も花井の発言を予想していたのかつっこまない。

 そうした動揺の中、話題の主である留学生がこちらに歩いてきた。
「2−Cのみんな、こんにちは。次は私のクラスとの対戦だね。おてやわらかに頼むよ」
 完勝したあとでそんな事を言っても普通はイヤミにしか聞こえないわけだが、
美形なためかそこそこ好印象を持った女子もいる。見た目って重要だ。
「それにしてもこのクラスは美人が多いね。思わず見とれてしまいそうだ」
 そう言ってハリーがつかつかと近寄った先にいた女生徒は、塚本天満。
「美しい……。艶のある長い髪、古い日本の言葉では『緑の黒髪』と言うんだったかな。
君のような女性がこの高校にいただなんて、私は本当に運がいい」
「緑? 黒髪なら緑じゃないような……」
 留学生に国語力で負けるな、天満。

「で、2−Dの司令塔が何のご用? 命乞いなら受け付けてあげるわよ(※以下英語)」
「ははは、これは頼もしい。君も留学生かい?」
「おあいにくさま。私は沢近愛理、日本人よ。ハーフではあるけれど」
「ところで、このクラスには私と似た名前の生徒がいると聞いていたんだが、どこかな?」
「さあ? ガセネタでしょ? 次の試合だからもう戻ったほうがいいんじゃない?」



125 名前:Necrophobia 5/9 :04/03/18 06:22 ID:1vSQ3rkY
 ふたたび舞台は屋上。
 騎馬戦 ――というより天満を見続けていた播磨は怒りに震えていた。
「あの外人! 天満ちゃんに言い寄ろうなんざ未来永劫早い! 即潰す!」
 もちろんそのあと沢近と会話していたあたりまでは見ていない。それがお約束。
すぐさま屋根から降り、ぼんやりしていた今鳥と一条に喝を入れる。
「そこの二人! 騎馬戦に出るぞ。付いて来い!」
「はぁ?」
「え? 播磨さん、いつからそこにい」
 反応が鈍いのにしびれを切らして、今鳥と一条を抱えて運動場まで階段を疾走する播磨。
愛ゆえに人はどこまでも強くなれる ……のか?

 そして運動場では、直接対決寸前。
「あの優勝旗、君たちには渡さんぞ! 
この四騎の協力によって、無敵の陣形を手に入れたのだから。……倒せるかな?」
 先程と同じ、ハリーの四方を囲む布陣を組んだ2−D。
周りの4人+ハリーの騎馬に精鋭を固めているのか、残りは適当な戦力のようだ。
しかしだからこそ、それで2−Bを殲滅したあの隊列を恐れるべきなのかもしれない。

 そんな皆が騎馬別に待機している運動場へようやく到着した播磨たちはというと。
「しまった! よく考えたら騎馬戦に出るには女子があと一人必要じゃねーか!」
「おいおい、何も考えずに俺たちを連れてきたわけかよ」
 正解。深く考えずに何事も行動から入るのが播磨の長所であり短所です。
「しょうがねぇ。誰かうまい具合に余ってくれてりゃいいんだが……」
クラスの待機場所を見回すと、都合のいいことにクラスメイトらしき女子がふたり。
(瓶底メガネのひ弱そうな女と、なにか見慣れた感じのする女か。よし、こっちだ!)
見慣れたほうの女子の腕をいきなりしっかと掴んで真剣な表情で嘆願する。
「頼む! 一緒に騎馬戦に出てくれ! お前しかいねえんだ!」
「!?」
 で、返事も聞かずに拉致。今の播磨にはもうあの外人を倒す事しか頭にない。


126 名前:Necrophobia 6/9 :04/03/18 06:23 ID:1vSQ3rkY
 だが、少し遅かったのか号砲が鳴る。2−Dとの騎馬戦がついに開始された。
「これ以上もたついてるわけにはいかねえな。今鳥! やっぱりお前が騎馬の上だ。
俺の体重を支えて速く動くのはお前等3人じゃ少々不安が残る!」
「お、おう。ここまできたら何だってやってやるよ。あとでアイスくらいおごれよ?」
「で、俺が先頭。女子ふたりは後ろだ。行くぞ!」

「おや? うしろで今鳥や播磨の声が聞こえたような」
「花井っ、試合中は前に集中しろ! そうでなくても狙われてんだからな!」
 上から美琴の激が飛ぶ。なるほど、確かに包囲されそうだ。
「ふん。性能の差が戦力の絶対的な差であることを、教えてやる!」
 
「こっちはあの固まってる連中は無視して、先に雑魚を一掃するわよ!」
「了解。時間切れ判定でも勝ちは勝ちだものね。愛理には似合わない勝ち方だけど」
「何言ってるのよ。メインの獲物は最後に取っておくのが狩猟の醍醐味でしょ?」
 相手の主力に突っ込んだ美琴たちと、迂回して撃墜数を稼ぎにいった沢近たち。
どちらもやる気充分ではあるが、個人の能力にも限界というものがある。
たちまち隊列の一部に挟まれて凌ぎきるのが精一杯という状況に陥ってしまった。

「くっ、大丈夫か周防!」
 伸び寄る複数の手を払うのが精一杯の美琴と、下で懸命にバランスを保とうとする花井。
「まだ大丈夫だ! 塚本でさえまだ脱落してないのに、先に私がやられてたまるか!」
 顔にときどき振ってくる汗の雫が厳しい状況を如実に示しているが、
花井がいまさら作戦ミスを悔やんでもどうにもならない。美琴を信じて支えるだけだ。
 そんなとき、後ろから騒々しい足音が聞こえてきた。播磨たちである。

「播磨! それに今鳥も!」
「む、お前はいつぞやのサムライ?」
「間に合った! あのままサボってちゃ、カッコ悪ぃまま歴史に残っちまうからな!」 
「フッ…… 何をごちゃごちゃと…… お前もこの隊列の餌食になるがいい!」
「上等だぜ! この播磨拳児様が、倒せると思うなよ!?」


127 名前:Necrophobia 7/9 :04/03/18 06:24 ID:1vSQ3rkY
「発音が違 ……いや、君がそうだったのか、実に楽しませてくれるじゃないか。
気が変わった。先に他の生徒達から排除させてもらおう」
 そう言って自分を取り囲む陣形に向かって何かを指示。一団になって下がってゆく。
「くそ、逃げんなこの野郎!」
「沼淵! 生き残りを各個撃破していく。まずはあのおかっぱを挟み打ちだ!」

「済まんなー烏丸。おいの足じゃ逃げ切れんしよ、ここで諦めるか」
 下で支えている西本の言葉が届かなかったのか、標的になった烏丸は微動だにしない。
そしてそのまま沼淵と呼ばれた2−Dの生徒にハチマキを奪われてしまう。
それでも変化のない烏丸の表情。しかし、その手には沼淵のハチマキが握られていた。
「なっ!? 一体いつの間に?」

「まだ一人やられただけだ! 次は少々心苦しいがあの大和撫子に退場願おう!」
「ほへ? ひょっとしてそれって私のこと? 逃げなくちゃ冬木くん!」
「ちょっと塚本さん、そんな急に上で暴れないで! バランスが崩れ…… あぁぁぁ!」
 崩れた拍子に背後からハチマキを狙っていた騎馬一つを巻き込んで、結果的には相討ち。
「いたたた…… ごめんねー、2−Dのひと」

「ねえ船橋くん、ここで私にハチマキを取らせてくれたらデートしてあげても……」
「え、デート! 愛理ちゃんとかい? うーん、どうしようかな……」
 こちらは試合中に怪しげな交渉を行う沢近。が、その最中に沢近の右手が疾る。
「なーん嘘よ! 私は変わったの。もう軽い女だなんて誰にも言わせないわ!」
 騙し技一本。沢近の手首に3本目のハチマキが飾られる。
が、その直後金色の疾風が沢近の頭にあったハチマキを奪っていた。
「試合中に巧言令色に乗るバカがいるか! 主力が私ともう一騎だけじゃないか!」
「よし、今ならあの金髪本人も狙える! 行くぞ周防!」
「その前に、さっきまでさんざ苦労させられたこいつも倒す!」
 手をめいっぱい伸ばして、ハリーの四方を固めていた最後の一騎からハチマキを奪い取る。
が、その美琴の「外側へめいっぱい手を伸ばす行為」が良くなかったらしい。
超人ではない後列の2人が負荷に耐え切れず、クラス内最強の騎馬は、あっさり潰れた。


128 名前:Necrophobia 8/9 :04/03/18 06:25 ID:1vSQ3rkY
 結果的に残ったのはハリーの騎馬と今鳥(播磨)の騎馬のみ。全校生徒の視線が集まる。
「無、無敵の陣形が…… 仕方あるまい! 私の力、思う存分味わうがいい!」  
「おい播磨、さすがにあんな完璧超人とタイマン勝負じゃ勝てる気しねーよ」
「安心しな今鳥。負けそうになったらお前をあいつらに投げ飛ばして相討ちにしてやる」
「うわ…… 俺に助かる選択肢はないってわけかよ……」
「が、頑張って下さいね、今鳥さん。私も応援してますから」

 あとは真っ向から一対一の勝負をするだけなので、先に功労者に声をかけてゆく播磨。
「お嬢! お前のパパさん、何度動物たちに占ってもらってもやっぱり好物はカレーだ!
少しくらい下手でもいいじゃねえか。愛情込めて自分で作ってやんな!」
「……あいつ、そこまで真面目に占ってくれてたの?」
「それから周防! 花井の野郎を尻に敷くのはもうちょい先のことにしといてやれ!
早くどいてやらねーと、そろそろ息ができてるかどうかも怪しいぞ!」
「さ、先のことってあのなぁ…… って、どく? ……あ゛」
 崩れてからそのまま、地面だと思って座っていた場所に花井がいた。急いで飛び退く。 
「でもって天… 塚本! 敵だったクラスも心配してやるその優しさ、感動したぜ!
いつまでもそんな優しさを持った女性でいてくれ!」
「もー、播磨くんったらおせじが上手いんだから…… はっ! お猿さん再び?」
「ついでに烏丸! お前とも一度勝負をつけなくちゃいけねえが、それは後だ!  
すぐにでも同じ舞台に上りつめてみせるから、それまで待ってやがれ!」
「…………」

【ぬすむ】 ―――けんじのよろいをぬすんだ

「あれ? 烏丸くん、今何かしなかった?」
「愛理にはわからなくて当然ね。『お約束』だから気にしなくていいわ」
「はぁ? 晶ってときどきワケわかんないこと言うわね」

「もう済んだかね? 似た名前は目障りだ! 消えろ! 播磨拳児」
「それは、こっちの台詞だぜ!」


129 名前:Necrophobia 9/9 :04/03/18 06:25 ID:1vSQ3rkY
「で、カッコつけといてこのざまね。あんたにちょっとでも期待した私が馬鹿だったわ」
「るせぇ! 俺だってそんなルールがあるなんて知らなかったんだよ!」

 直接対決の結果は多くの観衆が予想しえなかったものであった。
【どうぶつ】―――むささび に一瞬気を取られて隙ができたハリーを相手に、
子供の頃スカートめくりで鍛えたといわれる今鳥の閃光の右腕がハチマキを奪取。
値千金の勝利かと思われたものの、一分後のアナウンスが非情な結論を述べた。
『ただいまの勝負、2−C側の騎馬が開始時に騎馬を組めていなかったため失格です』

「試合には負けちゃったけど、勝負には勝ってるんだからそうカッカしなくても……」
「そうだよな。塚本の言う通り! 今鳥も播磨もよくやってくれたじゃねーか。
そりゃ、ポイントで逆転されちまったのは痛いけどさ。午後から取り戻せば済む話だろ?」
「あ、ミコちん俺のこと誉めてくれるの? だったらその大きな」
「調子に乗るな」
 最後まで言い終わらないうちに拳骨を浴びる今鳥。

「さて、もうお昼休みだしみんなもおなかすいてるよね! お弁当にしよっか!」
「そうは言っても塚本。あたしには手ぶらにしか見えねーぞ?」
「ふふーん。今日は八雲がお重箱に詰めて持ってきてるんだもんね。みんなで食べよ?」
「うちもシェフが張り切っちゃって。こんなに沢山女の子だけで食べきれるかしら」
「じゃあ、クラスの男子でも呼ぼうか。播磨くん、ちょっと」
「ん、何だ?」
「ちょっと晶! なんでよりにもよってこんな奴を呼んでるのよ!」
「たくさん食べそうだったから、残飯処理としては完璧だと思っんだけど」
「なにげに失礼な奴だな、てめえ。でもすげえ美味そうなんだよなー」
「ふーん。ちょっとだけなら分けてあげてもいいけど?」
「いや、お嬢のなんてどうでもいい。妹さんが今持ってきて開けた重箱の中身がな」
「ちょっとそこに座りなさい。……ほら、あーんして。これでもどうでもいいとか言える?」 
 いたくプライドを傷つけられた沢近の、周囲が全く見えていないとしか思えない反応。
せっかく天満と一緒のお昼に誘われたのに、今日も播磨は天満に近づけないらしい。
《おわり》


130 名前:120 :04/03/18 06:26 ID:1vSQ3rkY
実は行数制限未確認。最大30行だと仮定して削った部分もちらほら。

「けんじのこて」というどうしようもないダジャレを思い付いたのが最初で、
そこから播磨のギルガメッシュ化・敵役としてハリーを構想という流れ。
タイトルも当該ゲームの中ボスの名前なので物騒極まりない意味だったり。
ネタに至る過程が長くなりすぎたのと、花井がいいとこなしだった事が反省点です。

なお、このSSに隣子が登場した証拠はありません(笑)
2007年02月01日(木) 23:44:32 Modified by ID:BeCH9J8Tiw




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