IF6・Secret past

762 名前:Secret past :04/04/18 22:40 ID:0zYTXPTU
      • ・・さ・・・・・・

      • 起・・・な・・・い・・

      • ・・起・・き・・さ・・い・・・


―――――起きなさい!

奇妙な呼び声で目を覚ます。
起き上がると一人の少女が見つめていた。
容姿は10〜12歳の小学生ぐらいで自分の好きな女性に似てなくもない。
ただ、その女性の持つ雰囲気は自分よりも年上のように感じられた。
神秘的と言い表せばいいのか、その少女には今までに感じたことのない幻想的な印象を覚えた。

「起こしたのは、お前か?」
「・・・そうよ」
「何か用か?」
「・・・そうよ」

本当に奇妙な少女だった。
話している感じがしない。
ただ与えられた仕事を坦々と終わらせていく機械を相手にしているようだ。
ふと、疑問に思う。
ここはどこなんだ?、と。
周りを見ると、何もない真っ白な世界が永遠と続いていた。


763 名前:Secret past :04/04/18 22:41 ID:0zYTXPTU
「ここは・・・・」

急に少女が語りだす。
やはり感情と呼べるものが篭っていなかった。

「・・・夢と呼べる物に近い世界」
「・・・・・これは夢なのか?」
「夢に限りなく近似しているけど、夢ではないわ。夢というのはその人の中の世界。ここは現実よ。」
「え〜と、つまり夢っぽい現実?」
「・・・もう、それでいいわ。」

初めて感情らしきものが感じられた。
といっても、それは落胆であったが。

「あなたは・・・あの子の事をどう思ってるの?」
「あの子?」
「塚本八雲よ」
「なんで、お前が知ってんだ?・・・妹さんがどうって言われても・・・・・。ん〜〜〜〜・・・・いい子だぜ。相談とかに乗ってくれるし」
「・・・やっぱりその程度なのね」
「・・・話が見えないんだが」
「あの子は・・・・とても特殊な環境で育っているわ。」
「特殊?」
「人の心が視えるの」
「心が?・・・んなわけねぇだろ」
「心が視える条件があるわ。安心して・・・・。あなたはその条件に入ってないわ」
「安心も何も、んなの信じてねぇよ」


764 名前:Secret past :04/04/18 22:42 ID:0zYTXPTU
「信じなくてもいいわ。ただ、頭の片隅には置いて。心が視えるということはとても危険なの」
「そりゃ、ウソとか丸分かりだしな」
「そうじゃないわ。他人の心を視るのは、人間に大きな負担がかかるわ。あの子の魂は、本来繋がらない場所に繋がってしまっているの」
「だんだん、わけ分からなくなってきたぞ」
「アカシックレコードって知ってる?」
「ア・・・アカ?」
「アカシックレコード。これはあなたの世界でつけられた名前。地球から全宇宙までがこれまで経験し、そして、これから経験する行為、思考、出来事、個人的経験・想念・情動

の記録がすべて歴史的に超物質的方法で記され保存されている、云わばデータバンクよ。そこにあの子の魂が繋がっているの。」
「それが、なんで負担がかかるんだ?」
「それは、人間には備われていない能力だからよ。あなたが100mを5秒で強制的に走らされたらどうなると思う?」
「疲れるだろうな」
「それで済めばいい方だわ。筋肉が千切れ、骨は砕け、血管が破裂する。」
「うげっ!」
「あの子はそんな世界を過ごしているの。現に良く睡眠状態になってしまうわ。これは、危険信号なの。このままだと、あの子の身体が耐えれなくなって死んでしまうわ。」
「心を視るのを止めればいいんじゃねぇか?」
「無理だわ。情報が一方的に流れ込んできて遮断する事ができないの。嫌でも相手の心が視えてしまう。」
「じゃあ、どうすれば妹さんを助けれるんだ!?」
「もともと、この能力は罪滅ぼしの為に神様が備え付けたモノ。」
「罪滅ぼし?」
「ええ・・・・前世でね。内容は言えないわ。言えば掟を破った事になり、私が消されてしまうわ。もちろん、知ったあなたもね。」
「それで・・・」


765 名前:Secret past :04/04/18 22:41 ID:0zYTXPTU
「あの子を助ける為に神様は条件を出したわ。この条件をクリアすればあの子の能力が消え去り、あの子を助けることができる。」
「条件はなんだ!?言えっ!」
「残念ながら・・・言えないわ。言ってしまえば、条件をクリア出来なくなってしまうの。ただ・・・ヒントは教えれる。」
「ヒント?」
「ええ・・・その為にあなたがここにいるのだから・・・。ヒントは・・・・・あなたよ。」
「え?・・・俺?」
「これからの播磨拳児の行動によって、塚本八雲の罪が消えるわ。正確には、現在あなたが一番あの子を助けれる位置にいるの。」
「おい!それだけじゃわかんねぇだろ!」
「本当にこれ以上言えないわ。これでも、教えれる限界のヒントなの。」
「・・・・そうか。」
「私が伝えたいのはこれだけよ。じきに元の世界に戻れるわ。あの子を・・・よろしく。あなたならきっとあの子を救えるわ。」
「妹さんの為だ。やれる事やってやるさ」
「・・・ねぇ・・・あなた・・・・あの子の事、名前で呼ばないの?」
「ん?なんでだ?」
「あの子にだって名前がある。そっちの方が嬉しいはずよ。例えば・・・・・あなたがグラサンって呼ばれるより拳児って呼ばれる方がいいでしょ?」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「八雲ちゃん・・・って呼ぶのは変じゃねぇか?」
「いいえ。あの子はきっと喜ぶわ。」
「そうか。」
「もうそろそろ時間だわ。」



766 名前:Secret past :04/04/18 22:43 ID:0zYTXPTU
「・・・お前の名前は、何ていうんだ?」
「え?」
「名前だ。名前。自分で名前で呼んだ方がいいって言ったろ。」
「私には・・・・・名前がないわ・・・。自由に呼んでいいわ。」
「なら、・・・・ん〜〜〜〜。・・・・・・伊織な。」
「・・・・・・・・なんで伊織なの?」
「なんとなくだ」
「あなたって変な人ね・・・。」
「よけいなお世話だ!」
「本当に時間だわ・・・。また会えたらいいわね。・・・・さようなら。」
「じゃあな。」
徐々に視界がぼやけていく。
眼に映る全てが真っ白になるまで不思議な少女をずっと見つめていた。
(なんだよ・・・ちゃんと笑えるじゃねぇか・・・・)






767 名前:Secret past :04/04/18 22:45 ID:0zYTXPTU



「播磨さん・・・・」
「ん・・・・」
「起きて下さい・・・・」
「ん〜・・・・ふぁぁぁぁぁ〜〜〜。あ、八雲ちゃん。」
「この原稿ですけど・・・・・え?」
「ん?・・・いつの間にか寝ちまってたか!スマン!」
(なんか重要な夢見てた気がしたんだが・・・思い出せん)
「あ・・・・いえ・・・別にいいんですけど・・・・。えと・・・私の事・・何て呼びました?」
「あぁ、原稿の相談に乗ってくれてるのに、妹さんじゃあ他人行儀だしな。八雲ちゃんって呼ばせてもらうぜ。」
「あ・・・・はい!・・・・その・・・・ありがと・・・・ございます・・・・」
「にゃ〜」
「あ・・・伊織・・・」
「コラ!俺の膝に座るな!」
「にゃ〜〜」
「動く気0だな・・・・」
「ごめんなさい・・・播磨さん・・・」
「ま、たまにはいいか・・・・・」
そう言って、伊織を撫でる。
日光もちょうど良い暖かさで、その二つが非常に至福感を伊織に与えてくれた。
ほのぼのとした、時間が過ぎて行き、急に肩の重みが増す。
「八雲ちゃん?」
「すぅ・・・・・すぅ・・・・」
「まいったな・・・・・・」

END
2007年02月02日(金) 00:21:55 Modified by ID:BeCH9J8Tiw




スマートフォン版で見る