IF8・One day

161 名前:One day :04/05/16 12:51 ID:TShaintE
「いやー、塚本くんの淹れてくれたお茶は旨いなー」
「そのお茶を淹れたのは、実は私」
「なっ!?」
「先輩、嘘ですよ。今日のは私が淹れたんです」
「サラ君までっ!!」

この部室ではよく見られる光景
花井に対し嫌がらせをする部長、
そして花井をを庇ったり追い打ちをかけたりするサラ
それをみてオロオロしたりポカーンとする八雲

しかし今回の話の主人公がこの中にいるかと言われるとそうではない



162 名前:One day :04/05/16 12:51 ID:TShaintE

「僕は塚本くんの淹れてくれたお茶が飲みたいっ!」
花井は八雲の腕を掴もうとする、が
突然、何者かに腕を捻り上げられる
「色ボケの回収に来ました」
「な、なに? 周防、回収だと?」
あきれ顔で花井を見る少女、周防美琴
「私が呼んだのよ」
高野はさも当然の事のように言い放つ
「ほら、行くぞ!」
花井はズルズルと引きずられて行く
「あぁー塚本くんー」
「えと……」
「先輩、また来てください」

――バタンッ


163 名前:One day :04/05/16 12:52 ID:TShaintE

「ったく、どうしてお前は……」
「周防に迷惑かけてる訳じゃないだろう」
「かかってるだろ、たった今」
ホコリを払いつつも、周防の一歩後ろを追うように歩く花井
「塚本の妹も迷惑してんだ、馬鹿な事はもう止めろ」
「……」
「だいたいお前は安直すぎるんだよ、もっと後先をかんが……」
「何が…わかる」
「なんだって?」
「お前に何が分かる」
「な、なにぃ!?」
「僕のすることにいちいち文句を言うなと言ってるんだ。
それにまだ八雲君に拒絶されていない。挑戦権はあるはずだ!」
「べ、別に私は……そういう意味で言ったんじゃ」
「僕の気持ちが色恋のイの字も出ない奴に分かるはずがない」
「な、に……? 」
「僕だってわきまえている。もう余計な事はしないでくれ」
「ふ、ふざけんな! この色ボケヤロー!!!」
手元にあった手提げカバンを投げ付け全力疾走する
後ろの方ではカバンが角に当たったらしく、鈍い音と声が聞こえた
花井の痛みが治まる頃には周防の姿は無くなっていた




164 名前:One day :04/05/16 12:53 ID:TShaintE

「あ、雨か……」
「空にはドス黒い雲が出来ている
天気予報でも確かに雨と言っていた
しかし、半ば逃げるように学校を後にしたため傘を忘れてしまった
学校に戻るのも気が乗らないので、雨宿りしようと思っていると、
雨が本格的に降りだしたので、適当なところに駆け込んだ


「ここって……」
静かで、薄暗い
雰囲気の良いバーという所だ
完璧な選店ミスだ

「すみません、開店はまだなんですよ」
カウンターの裏には本当にグラスを拭いてる人がいる
「あ、すみません、雨宿りがしたくて……」
「そうですか、ではその辺にかけてください」
「す、すみません」


165 名前:One day :04/05/16 12:53 ID:TShaintE
不思議な感じのする店内、なぜか落ち着く
高校生にこういう場所に来る機会など無いので、新鮮に感じる部分が自分の中に在る
外の景色が見えにくい構造になっているせいか、世界から遮断された気分になる
「はい、タオルです」
「あ、ありがとうごさす」
今、無意識のうちに自分が濡れた髪を服で拭っていたことに気付いた
受け取ったタオルはふわふわして気持ち良い
「……何かあったのですか?」
「え?」
当然、そんなことを聞かれた
「長いことマスターと呼ばれていると分かってくるんですよ、悩みを抱えてる人ってのが……」
「あの、その……」
視線を下の方に落とす
「では、こうしましょう」
「……?」
「貴女の悩みを解決する。それが雨宿りの条件です」
「……いじわるですね」
マスターはにこりと微笑む



166 名前:One day :04/05/16 12:53 ID:TShaintE
どれ位の時間が経っただろう
自分のなかにあるモヤを吐き出すように話し続けた

幼なじみの事

そいつが女を追い掛けてる事

そのときの彼はとても生き生きしていて楽しそうな事

それをみて苛立っている自分の事

辛く当たることも少なくない事

マスターは全て聞いてくれた
アドバイスもしなかった
ただ聞いていてくれた



167 名前:One day :04/05/16 13:03 ID:TShaintE

「そうですか……」
「私は、なんなんでしょう……」
日は暮れていた、夕日が燃えつきようとしていた
美琴の表情はは微かに入る赤い陽で隠されていた
「私はグラスを拭いています」
「……はい」
「お酒を飲む為のグラスは、本当は時間をかけた自然乾燥が好ましいのです、ですが私にはそれをするだけの時間もグラスもありません」
「……」
「そのグラスに入れたワインはとてもおいしいものです」
「……あ」
「大切にするべきです」
マスターはにこりと微笑んだ
「話し疲れたでしょう、コレは私からのおごりです」
そういってあったかいホットミルクが差し出された
「ありがとう……それと」
「どうしました?」
「あの、ずっと言った方がいいか言わないほうがいいか迷ってたんだけど……」
「どうぞ、遠慮なく言ってください」
「それじゃあ……言います」
「はい」



168 名前:One day :04/05/16 13:04 ID:TShaintE


「……何やってんだ、ハリマ?」


「何を言うんです、私は小さな店のただのマスターで、こたびは……」
「いや、バイトだろ」
美琴はバイト播磨と書かれた名札を指差す
彼女は笑っている
「お前はいつもこういうことしてんのか? 趣味なのか?」
「趣味って訳じゃねーよ」
「なんかノリで相談までしちゃったじゃねーか」
「そんなん知るかよ」
「医者だったり神様だったりバーのマスターだったり、忙しい奴だな」
「全部成り行きだ」
美琴はホットミルクをほとんど一気に飲み干すと立ち上がった
「でも、ま、……ありがとうマスター」
「あ、おうよ」
口調はどうであれ、こうやって礼をきちんとするのが彼女のいいところなのだろう
すこし歩いて入口の前で振り向く
「ちゃんと勉強もしなよーっ」
「そりゃお前だろ、大学行くんだろ?」
「う、覚えてたのか……」



169 名前:One day :04/05/16 13:05 ID:TShaintE

「だから、ここにの部分を仮にAとして……」
「花井〜こっちも頼む!」
「分かった、少し待ってろ」

「忙しそうだね、花井君」
「まあ、コレしか能のない奴だからな」
「聞こえてるぞ、周防、失敬な!」
「だってそうじゃじゃねーか」
「何をっ!!?」
「まあまあ夫婦喧嘩はその辺にして」
 「「なんだとっ!?」」

この教室ではよく見られる光景
勉強を教える花井
教えられる男子生徒(モブ)
よこからチャチャを入れたりする周防美琴
そしてからかわれる二人

この中に日常が在る

ケンカして、仲直りも出来る

そう遠くない未来、この日常は音を立てて変わる

だから、それまでの間は……

誰もが願う日常を




170 名前:One day :04/05/16 13:08 ID:TShaintE
連続投稿規制受けるし
間違えて萌えスレにやってしまった_| ̄|○
今回ボロボロ
2007年02月03日(土) 16:44:55 Modified by ID:BeCH9J8Tiw




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