2−2行政行為

行政行為

「行政行為」は伝統的3段階モデルの中核となる概念です。

行政行為とは


「行政行為」という言葉

 「行政行為」というのは、行政の行為のことをいうのではない。「行政行為」というのはいわゆるテクニカルタームであって、特別の意味を持った学術用語である。「行政行為」という言葉を聞いて普通頭に思い浮かぶこと、それは通常「行政活動」のことであろう。これからやる「行政行為」というものは特殊用語であることをまず念頭に置かなければならない。

「行政行為」とは

 それでは「行政行為」とはなんであろうか。六法を見ても、どこにもそんな言葉は載っていない。最初にいきなり定義を述べてしまおう。行政行為とは、法令によって、行政機関に授権された活動のうち、法行為であり、権力性を有し、具体性を有する行為である。もちろんいきなりこれを読んで分かるわけがない。順を追って説明していく。

なぜ「行政行為」という言葉が生まれたか

 一言で述べてしまうと、便利だからである。
 先にも述べたとおり、行政法というのはモデル論である。そこで、行政法についての議論というのは主にモデル論を論じあうわけだが、その時にいちいち「法令によって、行政機関に授権された活動のうち、法行為であり、権力性を有し、具体性を有する行為に関しては、この救済方法があてはまるが一方で...」というように、定義を話すのはめんどうである。そこで特徴的なモデルについては「行政行為」というように名前を付けたのである。
 これは、後でやっていく「行政契約」とか「行政指導」とかいう言葉についても同様である。つまり「行政行為」とは、行政活動の中で、ある一定の特徴を持った活動の分類(モデル)なのである。

「行政行為」のイメージ 

 したがって(行政法はモデル論であるから)「行政行為」といわれたら、すぐに頭の中でそのモデルをイメージしなければならない。簡単にそのイメージを作ってもらって良い。そのイメージとは、「行政機関が上から下にいる私人に向かって一方的に強い権力を行使する」というものである。このイメージが大変重要である。
 ちなみに後でやる「行政指導」「行政契約」などはすべてこの「行政行為」との違いを学んでいく。つまり「行政行為」を理解しなければ先に進まないのである。この理解は、第1章の冒頭で述べた「伝統的モデル>修正」という流れにも合致するものである。

再び「行政行為」とは

 ずいぶん前置きが長くなってしまったが、再び定義に戻る。上述のイメージを頭に置いて、「行政行為とは、法令によって、行政機関に授権された活動のうち、法行為であり、権力性を有し、具体性を有する行為のことである。」という定義を読み返してみる。少しはイメージがわくであろうか。前半の「法令によって〜活動のうち」は当然のことである。「法律による行政の原理」をイメージすればよい。問題は後半であるが、その特徴は「法行為」「権力性」「具体性」の3つ。以下に解説する。

法行為とは

 行政の活動は、法効果(国民の権利義務に直接影響を与えるもの)を生じるものとそうでないものとに分類することができる。それぞれ「法行為(法律行為)」「事実行為」と呼ばれる。
 たとえば「ビル建設の申請を棄却します。(行政行為)」というのは「法行為」である。しかし「住民からビル建設について苦情が来ているので、ちょっと話し合いをもうけてみて下さい。(行政指導)」というのはなんの法的効果を持たない(やらなくても罰せられない)ものであり「事実行為」である。
 「行政行為」と呼ばれるためには「法行為」である必要がある。

権力性(公権力を有する)とは

 行政と私人は原則的に対等である。しかし有る一定の場合にのみ(法律の授権により法が認めた場合にのみ)行政は私人よりも高い位置に押し上げられる。したがって、権力性を有する場合というのは例外的な場合であり、それを「行政行為」という分類で捉えるのである。
 かつては行政は私人に当然に優位するとされてきた時代があったが、国民主権を掲げる現憲法下においてこれは妥当しない。行政は原則対等、例外的に(国民が認めた場合にのみ)権力性を有するのみである。

具体性とは

 不特定多数の私人の権利・義務に影響を抽象的に変動させるのでは「行政行為」と呼ばない。ある特定の私人の権利義務に影響を与える活動をいう。
 なぜか?といわれても「そう分類したのだから」というだけで明確な答えはない。
 ただ、考えるヒントとしては、裁判で争うときのことを考えると、不特定多数のものでは争えない。ある特定のものがなにかしら具体的な問題を抱えたことが必要である。
 他にもいろいろな理由はあるであろうが、論じる上でそういう分類が重要であった程度のことしか明確な根拠(形式的だが)はない。

「行政主体」「行政機関」「行政庁」

 以上、行政行為(以下「」はもうつけない)の特徴を述べてきたが、行政行為の要件に「行政庁の行為である」というのがつくことがある。ここでその言葉の解説をしておく。
 法律関係において権利義務の主体となりうるのは、自然人あるいは法人である。したがって、行政行為についても法人格を認められた国や公共団体などのみがなしうる。これらのことを指す言葉が「行政主体」である。
 行政主体の中で、具体的に何らかの活動をするのが「行政機関」である。ちょうど法人の「理事」のようなものである。たとえば郵便配達のおじさんも「行政機関」だし、お巡りさんや市役所の窓口のお姉さんや省庁の高官なども「行政機関」である。
 行政行為を法的にコントロールするため、法律によって行政内部においていかなる行政機関が行政行為をなしうるかを明示して授権することが重要である。そこで特に行政行為をなしうる権限を与えられた「行政機関」を「行政庁」と呼ぶ。
 したがって「行政庁の行為」が行政行為なのではなく、正確には「行政行為をできるのが行政庁」なのである。
 細かい言葉ではあるが、意味を持っているので注意されたい。

行政行為の効力


行政行為の成立と効力の発生

 行政行為を段階を追ってみていく。行政行為はいつ成立していつ効力を発生させるかという問題である。
 まず行政庁が意思を決定し、それが行政外部に表示されることによって行政行為が成立する。したがって、内部意思を決定したのみでは行政行為は成立しない。しかし、成立がすなわち効力の発生ではない。効力発生のためには、当該行政行為の相手方に告知されることを必要とする。この告知によって、相手方に行政行為を認識される状態に置かれたとき、はじめて行政行為はその効力を発することとなる。

行政行為の(特殊な)効力

 行政行為には、特徴的な効力が認められるとされている。まず始めに列挙してしまうと、「公定力」「不可争力」「(自力)執行力」「不可変更力」の4つである。以下、順を追って説明する。

公定力と不可争力

 この2つはセットで考える。まず、「行政行為は、違法であっても、当然無効の場合を除いて、正当な権限を有する機関によって取り消されるまでは、適法性の推定を受、有効に通用する。」というのが公定力である。
2005年09月27日(火) 00:03:04 Modified by kasumi1998




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