様々な出会い用語の説明。

──ネット経由で家出少女に生活の場を与える“神様”と呼ばれる男性がいる。
ただ、その神様は、交換条件として10代女子の体を求めている。
夏休み。携帯の世界で待ち受ける二重の危険。──

 泊め男。神待ち少女。
 ネット上に「家出」というキーワードを打ちこむと、そんな言葉が溢れ出てくる。
 家出少女に住まいや食事を提供する泊め男と、男性(神様)の助けを待つ神待ち少女。
 システムエンジニアのマサキさん(34)は、1LDKマンションで一人暮らし。寝るまでの時間、ネットサーフィンなどをして過ごす。出会い系サイトを転々とするなか、冒頭の言葉に出会った。
「マンガ喫茶にいます。何でもするから泊めてください」
 若い女性の写真とともに、そんな書き込みが並んでいた。
「神待ち少女があなたの助けを待っています」
 そんな言葉が躍る。
 いわゆる「家出サイト」だ。以前からあったが、その数が急増している。
 昨年12月、運営者の警察への届け出が義務付けられるなど、犯罪の温床とされた出会い系サイトへの規制が強まった。今年2月には、未成年者の利用を防ぐため、身分証などによる利用者の年齢確認も義務付けられた。
 しかし、一部の業者が「インターネット異性紹介事業」ではない家出サイトに鞍替え。前出のように、家出少女たちに宿泊先を紹介したり、相談を受けたりするという建前で、成人男性と接触できる状況を作った。援助交際目的でも使われている。
 マサキさんに下心がなかった、といえば、嘘になる。家出掲示板で数人とやり取りをし、リサと名乗る18歳の女性と会った。地味な格好で、化粧も薄い。年齢より幼い印象を受けた。
「何も食べてないんでしょ?」
 二人でファミレスに入った。
 週末は父親が酒を飲んで暴れ、暴力を振るわれる──。リサの話を、相槌を打ちながら聞いた。
 食事中、頻繁に鳴った携帯を、リサは取ろうとしなかった。
 二人でマサキさんの家に帰った。
「充電させて下さい」
 リサは充電器に携帯をつなぎ、ベッドの上に座った。不安な様子で、ずっと携帯をいじっている。マサキさんは自分の仕事や趣味の話をし、場を盛り上げようとした。

■泊める代わりに体求める

 シャワーを浴び、リサが寝巻きに着替える。マサキさんは女性経験が少ない。緊張が走る。
 だが、沈黙を破るリサの言葉に、下心も失せた。
「やらないなら、寝てもいいですか」
『実録・闇サイト事件簿』などの著書があるジャーナリストの渋井哲也さんは、家出サイトの実態をこう話す。
「独身で生活に余裕のある30代40代の男性が優しい言葉で待ち受けている。泊めてもらう代わりに体の関係を求めることは、暗黙の了解になっている」
 渋井さんが取材した家出少女(17)は、家出サイトに書き込みをしたところ、1日で40通のメールが届いたという。
 結局マサキさんはベッドをリサに貸し、自分はソファで寝た。
 翌日、リサに年齢を問うた。つまらなそうな表情を見せ、お礼の言葉を残して去って行った。
 ただ、マサキさんのような男性ばかりではない。
 6月下旬、家出した中1少女2人とみだらな行為をしたとして、ホームページ制作会社社員(34)ら3人が愛知県警に逮捕された。男2人は、警察の取り調べに同様の言葉を吐いた。
「ハーレムの関係を作りたかった」
 会社員は少女2人と8日間同居した。食事と寝床を提供し、体の関係を持った。
「面倒になった。預かってくれる人いませんか?」
 金銭的な負担を感じ、インターネット上で呼びかけると、デザイナーの男(30)が応じた。3週間にわたり、少女2人と同居。その間、少女の1人はケータイサイトを通じ別の男(29)の元へ転がり込んだ。
 事件の発端は、少女による家出サイトへの書き込みだ。

■プロフでエンコー勧誘

 6月にはやはり家出サイトを通じ、少女(16)に5000円を払ってわいせつな行為をした公務員(49)が逮捕されている。
 夏休みから夏休み明けにかけ、家出少女は激増する。警視庁によれば、例年、家出人の補導件数は9月にピークを迎える。
 アエラは7月中旬、東京・渋谷と池袋で女子中高生100人に街頭調査をした。家出サイトを知っていると答えたのは25人。
 ただ、家出サイトだけが危険ということではない。
 文部科学省の全国調査によれば、中高生に人気のある携帯サイト「プロフ(前略プロフィール)」を公開している高校2年生の家出少女は約44%。だが、それを知っている親は約17%に過ぎない。さらに親がどこまで中身について理解しているかは疑問だ。
 千葉県松戸市のミキさん(14)は、プロフに自分の顔写真を公開している。
「ゲストブック(掲示板)で、エンコーを持ちかけられたこともあります。リンクが張ってあり、アクセスすると風俗の求人サイトだったこともありました」
 試しにプロフのキーワード検索で「家出 相談」と打つ。
 家出サイト同様、少女を誘惑する男性の書き込みも散見され、なかには未成年に風俗系の仕事を斡旋する書き込みもある。
 携帯の小さな画面に、親の知らない大人の刃が潜んでいる。
 携帯電話は安全意識も低下させる。文科省の調査では、携帯の所有率は小学6年生で24・7%、中学2年生で45・9%、高校2年生では95・9%にも上る。

■携帯で安全意識弱まる

 小学6年生が携帯を持った理由は、「保護者から持つように勧められたから」が、最も多い。
 だが、浜松大学准教授の木宮敬信さんらの調査で、思わぬ結果が出た。携帯を持っている子どもほどこわい人から声をかけられた経験や、人通りの少ない場所でも気にせず歩く傾向があった。
「子どもは携帯を持っていることで、何かあったら連絡すればいいと、安全意識が弱まっているんです」(木宮さん)
 作家の石原伸司さんは、2004年から繁華街の夜回り活動をし、これまでに5000人を超える若者と会ってきた。
「親に暴力振るわれてて帰りたくないよ」
「親を殺したい」
 携帯にも日々、少年少女の悲痛な叫びが届く。
 石原さんは言う。
「繁華街にたむろしたり、見知らぬ男の家を泊まり歩いたり、楽しいわけがないんです。家出は街の中での“引きこもり”。携帯の使い方以前に、家庭に居場所さえあれば、危ない目に遭うこともない。家出の原因は、100%家庭にあるんです」

(AERAより引用)
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