在日のほんとうの姿を知りたいあなたへ。

Q 在日に通名(日本名)を使う人が多いのはなぜですか?


まず、外国人登録証に通名が併記されるようになった経緯を簡単に説明します。

戦前から日本に住んでいた朝鮮人には差別や摩擦を避けるため、あるいは日本になじむため、「内地名」と呼ばれる日本風の名を使っている人もいたのですが、これが「創氏改名」により徹底され、全ての朝鮮人が日本式・日本風の名前を持たされることになりました。

「創氏改名」は終戦直後、制度の上では撤廃されました。しかし日本に在住していて、生活上・仕事上で創氏名を使うことになじんでいた朝鮮人の中には、この突然の変化にとまどう人もいたようです。すでに創氏名による登記や名義が広く利用されており、これを全て本名に書き換えるのは非常に困難で、かえって混乱を生じさせるおそれもありました。

そこで外国人登録令が実施された約七ヶ月後、「外国人登録証に本名以外の通名も併記して良い」という主旨の通達が出されました※注1。これが現在の形でのいわゆる「通名」の始まりです。



さて、現在の在日コリアンが通名を使用するのには個人によって様々な思い、理由がありますが、大ざっぱには次のようなものに大別されるでしょう。


(1) 日常生活や仕事上のやり取りを円滑にするため

単純に在日コリアンの名前には、読み方や使用される漢字が日本人になじみのないものが多いという事情があります。そのためふだんは日本人にとって親しみやすい通名を使っているという人もいます。


(2) 日本の社会・文化への同化

多くの在日コリアンにとって通名は幼い頃からごく普通に家庭で呼ばれ、日常生活でも使われるなじみ深いものです。本名は単なる戸籍上のものに過ぎず、パスポートの取得や役所関係のみでしか使われない、あまりピンと来ないもの、という人も大勢います。日本人にとって「名前が二つある」というのは不自然で不可解のように思われるかもしれませんが、多くの在日にとってそれはごく当たり前のことなのです。ですから、特に「本名(在日コリアンであること)を隠す」という感覚もなく、ごく自然に通名を使用している人も大勢いるのです。


(3) 差別や摩擦を避けるため

残念なことに、現在でも在日コリアンに対する差別や偏見はなくなっていません。就職差別もかつてに比べると減り、職種によっては国籍より能力重視する企業や、在日コリアンを含めたマイノリティーを積極的に雇用する企業も増えたようですが、一方で在日コリアンの雇用に際して通名の使用を求める企業もあるようです。また外国人であることを理由にアパートやマンション、賃貸住宅の入居を断られる「入居差別(住宅差別)」も多くの在日コリアンが経験しています。

そうした露骨な差別でなくても「外国人」という理由で無遠慮な好奇の目で見られたり、無用の誤解をされたりすることもあります。そうした煩雑さを避けたいという思いから、通名を使用し、自分が在日コリアンであることを隠している(あるいは限られた人にしか言わない)人もいます。

また、在日コリアンの中には自分が在日コリアンであることに誇りを持てず、そのためそれを頑なに否定し、周囲に対して隠そうとする人もいました。例えば大学教授の姜尚中氏もそのような理由で若い頃「永野鉄男」という通名を使用していたそうです※注2



以上が通名を使用する主な理由として挙げられるものですが、一方で通名の使用をやめ(あるいは始めから使用せず)本名で生活する在日コリアンも少しずつですが増えていますし、教育現場でも「本名を名乗ろう」という気運が高まっています。これは在日コリアンに対する差別が(以前に比べれば)減少し、また自らの出自に自覚と誇りを持つ在日コリアンが増えたことの表れと言えます。こうした流れを促進するためには、日本の社会が在日コリアンを含めたマイノリティーを良き隣人・尊重すべき他者として受け入れる成熟した社会、真の意味で「豊かな」社会に成長していくことが不可欠でしょう。



※注1 外国人登録令が実施されたのは1947年5月2日からですが、同年12月21日付の内務省調査局長通達で「本国名の外に日本名を有する者又は二以上の氏名を有する者については、氏名欄に本国名又は日常最も多く使用するものを記入し、日本名又は爾余のものは氏名欄に併記せしめるか、又は備考欄に記入すること。」という補足がなされました。現在では「本名のほか、日常用いている通称名があれば、それをカッコ書きして併記すること。」となっています。


※注2『在日』 姜尚中(Amazon)

参考

『金英達著作集I・創氏改名の法制度と歴史』 金英達(Amazon)
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