笹荻@スキー合宿

「うぁー…気持ちいいなぁ…」
 背中や肩を適度な圧力で押しもんでくれてる小さな手、昼とナイターの運動で凝り固まった筋肉が弛緩していくのがひどく気持ちよかった。
今、俺は布団の上で荻上さんに上に乗ってもらってマッサージを受けてる。

…なんでこんなことになってるかというと…
 冷え込みも厳しくなった一月のある日、寒いときは鍋に限る、と斑目さんの提案でげんしけんのメンバーで土鍋とコンロを所有している高坂くん宅で行うことになった。
その材料や調味料、アルコールなどの買いだしにあたった俺と高坂君が訪れた商店街でたまたま抽選会をやっておりなんと二人揃って長野斑尾高原スキー場ツアー五名様1グループを当てたのだった。
そういうわけで渋がる斑目さんや久我山さん、初めてのスノーボードということで乗り気の俺と高坂君、大野さん、田中さん、高坂君の遠出のデートとして利用した春日部さん、そして結局意味を成す理由を言わなかった朽木君と渋々?付いてきた荻上さん…
そしてなんでお前がいるんだよ、ということで妹の恵子も付いてきた。
 
『なぜ俺はこんなところにいる!!』とか言いながらも初心者コースながら久我山さんとずっと楽しそうに滑っていた斑目さんや、大野さんが途中で疲れてからはゲレンデ脇の雪が積んであるところで二人で雪だるまから札幌雪祭りばりの雪像を作ってそこで遊んでた子供たちから喝采を受けてた田中さん。
 四年生のみんなにいい贈り物ができたかな?と自分でも少しうれしかった。

 …初心者のはずの高坂君は春日部さんと先に他のコースに行って昼前に落ち会ったときには色々なトリックを決めれるようになってた…
本人は『上手な人がいてさ、見よう見まねでやってみたんだ』って言ってたけど…今日俺は転びに転んで全身が悲鳴を上げてるよ…
経験者の春日部さん不在だった俺たちのコーチだったのが荻上さんだった。
 偏見かもしれないけどさすが東北出身、慣れた体さばきでゲレンデを滑っていた。
午前の間は初心者コースで付き合ってもらってずっと基本を教えてもらってたけど結構わかりやすい説明と問題点をすぐ見つけてくれたんで、未経験者のみんなも昼までには初心者コースを転ばずに一周できるほどになれた。

 そしてみんなでお昼を食べた後、無謀にも中級者コースに挑戦してみようとか思った俺に荻上さんは付き合ってくれて一緒にコースを回っていたんだけど、転びまくってた俺はきっとカッコ悪かっただろうなぁ…ふと、午後の情景を思いだす
『荻上さん、やっぱ上手だなぁ』
『そ、そんなこと無いスよ…ただ、先輩たちよりちょっとやったことあるのが多いだけで…』
『俺も今日と明日のうちに中級者コース一回も転ばずに滑れるようになりたいな』
『あ、大丈夫です。先輩飲み込み早いですし…』
 そこのリフトが二人がけだったから俺と荻上さんは隣同士になって座り、あんまり自分を話そうとしない荻上さんと色々会話できたのも今日嬉しかったことの一つだった。
子供のころ見てたアニメ、夏コミを作ったときの話、げんしけんのみんなをどう見てるか…素直な言葉が出てくる。
荻上さんの体がどれくらいに小さいか改めて実感するほどリフトの上では今までに無いほど体が近づいて、自分の鼓動が聞こえるんじゃないかと思うくらいドキドキしてたけど。

 そして夕食を終えて斑目さんの飲み会が始まるまでみんなでペンション内のゲーセンコーナーで遊んで… 筐体が今日びマクロスとかスト2とかであまりのレトロさがツボにハマって燃えまくってたなぁw

部屋割りの関係で2人、2人、3人、3人部屋となっていたので、春日部さんと高坂君、俺と田中さん、3人部屋は斑目さんと久我山さんと朽木君、そして残る女性陣三人が部屋割りになったんだけど…
みんな疲れもあってか酔いが早くて十一時には各部屋に戻り始めて田中さんと二人で色々話し合ってたんだけど思い切って切り出してみた。
『田中さん』
『ん?』
『俺、斑目さんたちの部屋で寝ましょうか?』
『はぁ!?』
『はは…そのせっかくの旅先ですし…』
『いや、でもお前四人で寝ることに…』
『斑目さん細いですし、前斑目さんちに遊びに行ったときもあの人の部屋寝転がるスペースも無いじゃないですか、仕方ないから一緒に寝たこともありますしね』
『ん…そう?って、こーゆーの、い、いいのかな?』
『シーツにウーロン茶こぼした、とか言っておくからだいじょうぶっすよ…それに…平然と二人部屋の彼らがいますし』
『はは…そうね、んじゃ、お言葉に甘えとくわ』
 ……ちょっと下世話だったかもしれないけど大野さんと話をつけて斑目さんの部屋に向かうと…
『な、な、なんだこれ!?』
『ZZZZZ…』
『ぐごぉー…ごぉー…』
『むにゃ…』
『こぉさかさぁん…』
 部屋を空けると匂ってくるのは凄まじいアルコールの甘いにおい… 一度お開きになってからまた飲んでたのか、というか恵子がなんでここにいる。男3人に女1人ってこれはさすがにマズイ、兄としてなんとかしなくちゃいけないと恵子の肩を揺さぶると…
『おい、起きろ恵子、恵子ってば』  
『う〜・・・・うっさぁいっ!』
ばしいいいいいいいんっ!
『ってぇ!!』
 平手が思いっきり飛んできた、そういやこいつ酔って寝たら大野さん以上に厄介だった…
仕方ないので斑目さんのところで寝ようとしたら…朽木君がいた。久我山さんの隣は考えるまでもなく却下。
幼稚園児以来久々に恵子と一緒の布団で寝るのかと見下ろしてみたら両手両足を広げて自分の立ち入るスペースは無し。

 そして、どうしようもないのでとりあえず自販機コーナーで酔い覚ましの緑茶を飲んでいるとそこに荻上さんがやって来た。
『あれ、荻上さんも何か買いに来たの?』
『あ、はい。ちょっとのどが渇いて…どうしたんでスか、先輩は?』
『いやー…それが…』
 自販機コーナーのソファーに二人で腰をかけながら事情を説明する、リフトの上でもずっと隣あわせだったのに何だかひどく緊張した。
荻上さんが浴衣姿だったのが原因なのかな…説明し終えた後、特に何も言葉を交わすこともできずお茶をすすっていると突然荻上さんがとんでもないことを言い出した

『あ、あのっ先輩、私の部屋で寝ねすか?』
『ぶはぁっ!?げほっ、ごほっ…な、何を言って…』
 口に含んでた緑茶を噴出して、むせながら荻上さんを見る。
雪焼けで火照ったのか、それともこういうこと言ったことを恥ずかしがってるのか赤く染まった頬、普段のトレードマーク?の筆みたいな髪型を下ろしているけどそれも新鮮で可愛らしくて、涙が潤んだ目で見られて…
『あ、すんませんス…変なこと言っじまって…』
『…ううん、ありがとう。気を使ってくれて』
『はい…』
 真っ赤な顔をうつむけてもじもじとしている荻上さん…何だかとても可愛くて…
それに、自分のためにそういうことを言ってくれたのがすごく嬉しかった。
別に、同じ部屋にいるといっても何かをするという気さえ起こさなければ問題は…無いと思うし、
体はくたくたなんですぐに寝てしまえると思っていた。
『…やっぱり、泊めさせてもらうよ。明日もまた迎えのバスが来る六時までスノボするだろうから寝たいしね』
『!!…はい………』

荻上さんの3人部屋に入るとそこは他の溶質と違って和室になっており川の字に布団が敷かれていた、
さすがに隣同士で寝るのはマズイと川の字に敷かれた布団の端と端に寝ることにした、おやすみなさいと声を掛け合って電気を消す。
(…寝れると思ったけど……やっぱり寝れない………どうしよう…)
暗闇の中、自分の心臓の鼓動がリフトの時以上に高鳴り始めている、煩悶とした気持ちをごまかすように寝返りを打つ。
運動不足を実感できる筋肉や関節の節々の痛みが寝返りをうつ度にうずきだす。
『いててて…』
『どうしたスか?先輩…』
 暗闇の中から荻上さんの心配げな声が聞こえる。
『あ、いや、なんでも無いよ。ただちょっと筋肉痛がね…痛つ…』
『…先輩、肩とかマッサージするスよ?』
『え!?あ、そ、それはさすがに…』
 あ、でもマッサージしてもらってるうちに眠ってしまえるかも…そんな甘い期待を抱いてまた俺は『お願いします』と、言ってしまった。


そして、今、荻上さんは自分の体の上に乗って指圧してくれてる。
「うわ、先輩すごくこってるスね」
「はは…運動不足だなぁ」
 ぎゅー…っと指を押し当てて離す、それを場所を少しずつずらしながら適格な場所に行ってくれる快感に浸る。
「どうでスか、先輩?」
「すごく楽だよ…ありがと」
 ぐっと首を曲げて背中の上の荻上さんを仰ぎ見る。照れたような笑顔でこっちを見ている、その笑顔に胸が熱くなってすぐに視線を敷布団のしわに反らす。
(…なんだろ、この感じ)
 萌え、とかとは違う別の感覚。
ひどく愛しく思えて、気恥ずかしくて暖かい感じ…大学生になってからこっち、ほとんど感じていなかった感情を思い出していく。
だけど、その感覚を思い出そうと記憶を辿る作業は中断された。

ぴと…
「お、荻上さん?」
自分の腰と背の間辺りに乗っかってマッサージをしていた荻上さんが自分にもたれ掛かって額を自分の背にあわせている。
「…先輩…」
「な、なに?」
「………先輩には今、好きな人とかいるんスか?」

笹荻@スキー合宿その2
2006年06月27日(火) 21:15:56 Modified by korewanetadesu




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