「大人になるということ」

2007/2/26放送「大人になるということ」


出演:鈴木謙介、仲俣暁生、佐々木敦、柳瀬博一、斎藤哲也、津田大介、森山弘之

※以下の発言まとめは、正確な番組での発言とは異なる場合があります。

MP3その1


鈴木:本日のテーマは「大人になるということ」。どう考えても大人になれないからこんな番組やってる気がするけど。メール、93年にユニコーンが解散するとき出した「素晴らしい日々」。もう大人になったんだな。自分もユニコーンが解散したときと同じ歳になった。
僕もこの曲はよく思い出します。

〜曲〜

鈴木:サブパーソナリティのみなさんはどう大人問題と向き合ってきたんでしょうか。まずは佐々木さん。自分のことを大人だと思いますか?

佐々木:大人・・・になりたいと思ってます。42歳になるのにまだネクタイ持ってないし、しめ方も分からない。大人かどうかはリスナーの皆様に判断していただきたい。

鈴木:僕は去年30になったのを期に、ネットで検索して学びました。再チャレンジできる!続いては仲俣さん。

仲俣:僕はネクタイ締められますよ、シングルノットしかできないけど。昔は大人になりたいと思ってたけど、もう思わなくなったので、大人になったのかなと。

鈴木:そういう消去法な考え方もあるか。続いては柳瀬さん。一番大人っぽい。

柳瀬:ウインザーノットも締められますから。

鈴木:柳瀬さんくらいになるとね。ウインザーノットって幅広のネクタイでする奴ですっけ?

柳瀬:大橋巨泉さんがやってた奴ですね。ウインザー公が昔してたとかなんとか。

鈴木:そんな知識が振り回せるくらいには大人だと。続いて斎藤哲也さん。斎藤さんは大人ですか。

斎藤:大人って言わないといけないんですけど、石原荘一郎さんという「大人」の大家がいて、大人力養成講座、大人力検定っていうのがあって、それの編集をずっとやっているので、編集者も大人と言わねばならないのではないかと。

鈴木:じゃあその大人力、見せてもらおうじゃないかということで。続いては津田さん。この中では一番落ち着いてるかな?

津田:いや、大人になったと思いますよ。面と向かってこいつ殺してやるみたいな人でも、笑って握手できるようになりました。

森山:こないだワセジョワセジョって言ってたじゃん。

津田:ワセジョを語るときは童心に戻ります。あとでも、朝起きられないんですよね。

鈴木:そして最後が森山さん。この渋い声でひたすらあだち充あだち充ゆうてたわけですが、

森山:僕は、17歳で大人になって。

鈴木:何の話だよそれ!

森山:その後、大人になったり子どもに戻ったりを繰り返し続けております。

鈴木:たぶんこういう話なのかなということでメール。森山さんは全部コメントしてください。メール、中2の時に親父の買ってきた雑誌で初めての精通。これで俺も大人の男に近づいたと思ったが、20年たっても同じことをしているのは進歩がないなあと。

森山:いいメールですね。妻の目を盗んでっていうのがね。

鈴木:あ、裏でH2Oがかかってきた。「みゆき」のエンディングテーマですね。

森山:俺が喋ると常にあだち関係だなあ。

鈴木:純粋な森山さんの心と、男子のリビドーを重ね合わせて。

森山:僕の大人になる階段のひとつはあだちさんですから。

鈴木:大人の階段登る、君はまだシンデレラさと。

森山:それだけじゃない大人な私を見せていきたい。

鈴木:他にもこの手のメール。中3の時の初エッチで大人になったと思った。すべての知識を実践に移してなんとか不時着。でも5年くらい付き合った後で「いいかげん大人になってよ」なんつって振られましたが。津田さん?青春系ですが。中3って僕ら世代だと早いですね。

森山:完敗ですよね、もう。

津田:これ東京と地方で違うっていいますよね。

鈴木:東京、地方で違うし、あと精通自慢で言うと、田舎の方はね。高校に入って、隣の市から来てる奴に話を聞いたら、なんか男子のソロ活動に関してもっと開けっぴろげでおおらかだという話を聞いてびっくりしたんですけど。64組の方々は、当時はおおっぴらな人たちいました?

柳瀬:僕の頃には、おおっぴらな奴はいなかったわけじゃないけど、僕らの頃が一番遅いんじゃないかな。日本って終戦直後まで別に結婚するのも早かったし、16でお母さんなんて普通だった。戦後の教育でそういうのから離れていくピークが僕ら前後みたい。大人になってからそれを感じますね。僕らはマンガで影響を受けた最初の世代で、エロマンガの最初は永井豪。ハレンチ学園、キューティーハニー、けっこう仮面。でも永井マンガは、ギリギリのところで子どものためのマンガだったなと。で、その皮が文字通りむけるのは、中1、中2のときの『俺の空』なんですよね。永井豪から本宮ひろ志っていうのが、マンガのエロシーンにおける大人の階段だった。

佐々木:よく覚えてるね。いま電撃的に思い出したよ。第一話の冒頭が、女教師とのナニから始まるわけですよね。

柳瀬:しかも卒業式の後ですからね。

津田:ギャルゲーとかのすべてのオリジンがあそこにありますよね。

鈴木:俺は本宮とかは通ってないので、ひとつが「F」ですよね。赤木群馬はあちこち手を付ける男。もう一つがめぞん一刻ですよね。あれの童貞問題っていうのがあって、童貞のままだと未亡人の響子さんにアタックできないので、ソープで童貞を捨てたかのような描写が出てくるんですよね。大学生にもなって臆している五代君と、やりまくりの赤木群馬の間で、俺どっちだろうなと思ってた。

佐々木:さっきのメールの人、34とか28ですよね。童貞喪失=大人になるって時代がかつてありましたって話ですよね。でも今ってそういう感じじゃないでしょ。

柳瀬:多分何にも関係ないんじゃないかな。

鈴木:今は童貞かどうかより、相手がちゃんとした人だったかどうかが問題になってますよね。素人さんか、とか、あとはずみで、とか。ちゃんと付き合ってた彼女だったかどうかってことの方が大きいって、大学生とかから聞きますけど。

佐々木:「ちゃんと付き合ってる問題」ってのもあるからね。何を持ってちゃんと付き合ってると言えるのか。

鈴木:その手のことを掘り下げていくと色々あるけど、もういっこメール。憧れの女性の時、責任を取れる大人の女性、理想はナウシカって書いたら「お前が大人になれよ!」ってチャーリーに言われてわなわなと怒りが(笑)。ところで俺って大人なの?と自問。自分が大人なのかどうかは分からない。AVを何の恥じらいもなく借りられるようになったときとか。自分で人生を組み立てられるようになったときが大人かなあと。
いっこだけ申し開きをするとね、「大人になれよ!」っていうのはメール原稿に黒幕が書いてる奴ですからね。で、今日は黒幕、原稿になんて書いたかっていうと、「AV借りて人生を組み立ててるってやっぱり大人じゃないぞ」って書いてある。
ま、それとは別にAVで言うと「ソロ活動問題」ってのはありまして。斎藤さんが以前「エロの敵」の話をしていて、ネットの普及でエロメディアが壊滅していると。でもニーズは減ってないんですよね。ということは、必然的に活用しなければならないわけで、いったい世の人はこんなにダウンロードして、どうしてるんだと。あっっ、みんな口ごもったよ。

斎藤:そら使ってるんですよ。昔だったら、順序がある訳じゃないですか、接触可能なメディアの。

鈴木:最初は空き地のエロ本から始まって。

斎藤:週刊プレイボーイ、平凡パンチから徐々にハードルを上げていく。でも今って、もろですよね。

鈴木:かなり一次情報に近いものが。

森山:「俺の空」のときとは偉い違いだ。

柳瀬:物語性は欠落してますよね。

斎藤:AV借りるのって一大決心じゃないですか。

鈴木:借りたことないんだよなー俺。

柳瀬:買いに行くときですよね。意味もなく参考書に挟んで。誰しもが同じパターンをとって。

鈴木:近所のおばちゃんがやってるコンビニで買ったら、エロ本だけ取り出されて「これいくだらだっけー」って大声で言われたことがあって、あのおばちゃんだけは絶対ゆるさねえとか思いましたけどw

柳瀬:最近だと、アマゾンでやたらリコメンドがそっち系になるだけで、それ以上はなくなりましたけどね。

一同笑

鈴木:「あなたにはこれもお薦め!」って出てくるものが若干偏るという。あるある。

津田:中学生にとってはリスクがなくなりましたよね。11PMを親に隠れて見るとか、エロ本が整理されてるとか。

森山:11PMが見たくて、ビデオの録画を3倍にして9時からのドラマを撮ってようやく見てたもんね。

津田:そんな裏技が!

仲俣:そのためにバイトして自分用のテレビ買いましたよ。

津田:今って中学生が、中学生の援交動画とかを見れるじゃないですか。

鈴木:その話をしようと思ってて、一次情報に近いっていうのは、そういう意味で一次情報に近い。妄想をたくましくするというより、単に隣の女の子がやってることかもしれないとか、そういう意味でのつらさですよね。エロ話はなんのかんの言ってもりあがるなあ。メール、14歳の子どもです。公私混同しない人が大人。感情的になっちゃうから自分はまだ子どもだな。
黒幕のコメントが、しっかりした子だな、30過ぎてなにやってんだチャーリー。

森山:いいメールだね。

鈴木:中学生くらいで真剣に聞いてくれている人もいるというのに、

柳瀬:何が「俺の空」だよと。

鈴木:次のメール、肩こりになってる自分を見つけて大人だなあと。人は年を取って行かなきゃならないと。一曲挟もうかな。

柳瀬・佐々木・仲俣:集中攻撃だw

鈴木:あとメール、深夜ラジオを聴いてたら大人だと思ったけど、24にもなって聴いてるのは大人じゃない。
じゃあ出てる俺等はどうなんだよ!
次のメール、自分から歯医者に行ったとき。パートを辞めて仕事しないといけない。やるしかないですね。
リアルに生活を抱えている方もいる。童貞捨てたとかいってる場合じゃない!

〜曲〜

MP3その2


鈴木:メール、大人になれている人は少ない、自分も含めて。自己中心的な人が多い。今の日本、大人にならなくても生活できる。
メール、大人になんか黙っててもなれると思ってたけど、40過ぎてもまだまだ子ども。日本に大人はいるのか。
オヤジーズの方々、大人ですかって聞かれるのもどうかと思うんですけど、どうですか仲俣さん。

仲俣:43になったばっかりなんですけど、僕、小学校の4年のとき、駆け落ちしたいくらい好きな子がいて、そのとき早く大人になりたかった。「小さな恋のメロディ」に影響を受けて。

鈴木:トロッコとか乗るぞ!みたいな。

仲俣:そうそう。俺、小学生なのにどう食っていけばいいんだって思い詰めたとき、早く大人になりたいなって。だから通過儀礼じゃなくて、お金を稼ぐとか、そういうことだと思ってきたんで、大人のハードルが低いんだよね。だからもうなったと思ってるのかもしれない。メールの人が言うようなことは、大人の条件じゃないんじゃないかな。一人前じゃなくても大人でいいんじゃないか。

佐々木:どこをもって大人っていうのか、っていうのは難しいよね。大人買いできるようになったときか、みたいな。とか言うとますます信憑性が低くなるw

鈴木:大人買いって単語は「大人げない」から大人買い、でしょ。大人なのに、っていう。

仲俣:子どもの視点から言ってるわけだよね。せっかく買おうと思ってたのに、大人が金にあかせて全部買っていっちゃうっていう。

津田:社会人って忙しくなるから、手間と時間をお金で解決するようになるじゃないですか。それが多分、大人買いなのかなと。

鈴木:大人げない問題で言うと、メール、街を歩いててキャッチに声をかけられて大人だなと思った。さて大人になることが前提のテーマだけど、なんで大人に「なる」のか、大人にならなかったらどうなるのか、社会人と大人は同義なのか。
大人にならなくても困らなくない?という話は大人に聞かないと。

柳瀬:あ、私ですか。さっきの仲俣さんに激しく同意しつつも、自分が大人かっていうと、まったく自信はない。かつての自分からするといい年こいたおっさんだなと思う。大人って、15の時は20、20の時は25って、少し先の自分が大人だと思う。42くらいまで生きてくると、ホントの大人っていうのは、完成された大人があるんじゃなくて、それを追っている状態が大人なのかなと。だからこのメールに答えると、大人であるということは、基本的には目指した方がいいと思うんですよね。

鈴木:開始35分で結論出ちゃったよ!大人を目指すのに臆することなくなった瞬間ということですよね。森山さんどうですか。

森山:大人の定義によるんだけど、一番大人かどうかっていうのを言われたの、父親と衝突とかするじゃないですか。その時、経済的に独立してないと、文句言えないなと思ったんですよね。でも議論だったりとかいうところでは、父親殺ししちゃうじゃないですか。でも独立してないから言えないなと。そこが僕の中では転換点でしたね。

鈴木:今日は、フリーで食ってる人が多いから、そういう自律的な答えが多いのかな。津田さんは?

津田:僕は大学時代、ほとんど何もしないで一日中ゲームやってニートみたいな生活してたんで、大人になるのがやだなっていうのはすごくあったんですけど、前、働くって回でも言ったんですけど、家族全員が無職になったことがあって、これは働かないとまずいなとなって社会に出たんですけど。柳瀬さんが言ってた、とりあえず社会に出ろ、働けっていうのはそうだなと思って。働いて、大体月に15万とか20万とか入ってくる。最初は楽しいから色々買っちゃうんだけど、そのうちこの先どうするんだろうみたいなことを考え始めて。多分その辺なんでしょうね、今から振り返れば。

鈴木:ちゃんと考えてる人がおおいぞ、どうしよう!こういうときはちゃんと考えてなさそうな人に振るべきなんだけど、失礼になるのかな・・・・佐々木さん!

一同爆笑

佐々木:いやいやそんなことないですよw でも経済的な自立っていうのが大人になるっていうのは、後から考えたらそうだったなって思うんだけど、たとえばそれこそいま津田君が言ったみたいなニート生活みたいな、毎日好きなことやって、本を読んで、たまに映画見て、で過ごしていければ、僕、今でもそうやって過ごしていたいと思いますよ。だけれども、そうやってては生きていけないということだと思うわけ。でもそんなことをしなくてもいいくらい、資産があるとか、庭から石油が出たとかあれば別。でもそれができないから、仕方なく働くだけだから。でも仕方なくでもできたわけだ。

鈴木:特に何か決意した訳じゃなく。

佐々木:そうそう。大人になろうって決心したわけじゃなくて、目の前のものを乗り越えていくうちに、後から考えたらあれがそういう意味では、人が言うところの大人になったという瞬間だったのかなと思い出されるのかなって。

鈴木:じゃあそんなフリーの皆様に辛いメールを。大人の条件は、決定の結果を引き受けること。体調などをおいても、約束(例:〆切)を守らなければいけないということ。自分の弱いところを認めないといけない。大人と感じた瞬間は、一人暮らしのとき自分で手続きをしたとき。
さ、〆切を守ると大人だという問題、

斎藤:それは違うんですよ。

鈴木:おっと?

斎藤:あのね、言われたことをそのままやるっていうのは子どもじゃないですか。

一同大爆笑

斎藤:それは大人力とはまったく関係ない話なんですよね。

津田:人が設定する〆切と、自分の〆切は違うものですからね。

佐々木:さっきから、見方によって大人にされたり子どもにされたりしてる感じ。

斎藤:そこで駆け引きして、ここまでなら大丈夫だって言うのを読む力が大人ですよ。

鈴木:分かりました、そのへりくつが言えるようになることが大人だ!こういうことがすらすら言えるようになることが大人力か!
メール、最近は、大人なんだからこうあるべきっていうのが減った。今の人は寄り道するファクターが減った。あとファッション意識。
津田さん、ゲームの話がありましたけど、寄り道する要因が増えて、大人になるのに時間がかかるっていうのはありますよね。

津田:そうですよね。一番僕が感じているのは、僕らが小学生の頃の30歳、40歳って、もっと老けてた感じがするんですよね。でも自分が20代30代になって、格好も若くなったし、若く見える人が増えた。男性も女性もそう。寿命が延びてるんだから当たり前って考え方もできるんですけど。

柳瀬:それ、僕気づいた話があって、サザエさんの話。波平さんはいくつに見えますかっていうと、多くの人が70近くって答える。フネさんは?って聞くと、60過ぎ。でも会社に行ってますよねっていう。マスオさんとサザエさんは、っていうと、マスオさんが37、8で、サザエさんが32、3って言うわけですよ。じゃあカツオはっていうと、みんな小学五年生ってきちんと答えられるんですよ。じゃあサザエさんとカツオの関係は?って言うと、あ、兄弟だ、と。でそんなに歳離れてると思う?ってところからチューニングしていく。波平さんが確か53、フネが50歳くらい、マスオさんが早稲田商学部卒の28歳で、サザエさんが24歳なんですよね。
で、あれって「東京物語」の、笠知衆さんなんかの設定とまったく同じ。50過ぎたら見立てとして老人なんです。当時の平均寿命を考えると、60くらい。だからかなり若くして、会社辞めたら5年とかで死んでるんですよね。だから大人って言うのは、残りの人生がどのくらいあるのかっていうのと関係しているんじゃないかな。それがサザエさんと僕たちの差ですよね。

鈴木:それを寿命が延びたからって言うかどうかはともかく、40くらいになっても、まだ先が長いんだから、もう一花っていって、レオン、ニキータ読んで、セクシーな格好しちゃう。そういうことなのかなと。
メール、37で独身。大人だなあとは思わない。大人は顔に出る。マスコミで働いてると、苦労していないお坊ちゃんが多い。今後は世の中が豊かになって、大人を感じる顔の人が減るんじゃないか。
さっきの佐々木さんの話みたいに、働かなきゃならないっていう前提。でも安倍晋三は銀のさじをくわえて生まれてきたとか言われているけど、銀のさじをくわえているからこそ、首相の仕事をしなきゃならない。政治家は50代でもはつらつとしたイメージを作るために整形もする時代ですけど、ああいう形の仕事をやって、まあ安倍晋三が大人かどうかという問題はあるのであまり詳しくは言わないですけど、働いて皺を作るのではない大人が信頼される時代なんじゃないかな。若作りってのとは違う、はつらつとした、アンチエイジングって言うんですか、そういう大人の方が求められているのかな。佐々木さん、働かなきゃっていうのもそうだけど、歳の取り方ってのが、もっと気楽になってきたのかな。

佐々木:さっきのサザエさん話で多分言えることは、昔と比較して、10歳くらいひいて考えないといけないんじゃないか。僕ら40代が、昔で言うと30頭くらいなんじゃないかな。

仲俣:七掛けとか八掛けとか言いますよね。

佐々木:そんな感じになってるから、昔とは違うよね。老成するって言葉もあったけど、そんな人いないもんね。

仲俣:60代とか70代になったって、なんてのかな、若いじゃないですか。

佐々木:感覚が幼いとかじゃなくて、全体的にスライドしてますよね。

鈴木:新しいものについていくっていうと、60代以上の人でも、ケータイメールやパソコンを使いこなすし、40代のブロガーも増えてきたし。じゃあ大人になるって言うのもそうだけど、昔子どもだって言われてたものはどうなったのかって話ですよね。津田さん、ゲームの話を振ろうと思ったのは、昨今、ゲームの世界は高齢化してるって言われてて、昔だったら小学生中学生がやるものだったのが、昔の小学生がそのまま30、40になってもゲームやってるって感じしますけど、ゲーマー高齢化問題はどうですか。

津田:やっぱりゲームに関してよく言われているのは、3Dとかの高度なゲームが出てきて、ついて行けなくなったので通勤途中とかに遊べるレトロなゲーム、DSとかがうけてますよね。ゲームそのものはやりたいんだけど、一日中それに費やす時間がない。移動中っていうのはいいソリューションで、しかも昔のゲームなら説明書を読まなくても大体分かる。そこがうまく任天堂が目を付けたところかな。

鈴木:PSPでも昔のゲームを再発してますよね。あとDSは、OLのニンテンドッグスから火が点いたとか。津田さん最近ゲームします?

津田:いま、PSPで太閤立志伝4をやりながらここに来ましたよ。

鈴木:(爆笑)大人じゃねー!俺はケータイゲームは最近やらなくなったなあ。あ、でもいまグランド・セフト・オートっていう超バイオレンスなゲームにはまってます。あとあとこないだ「ひぐらしのなく頃に」っていう超怖いアドベンチャー系のゲームを買って、ずっとそれやってて仕事の打ち合わせとかできずに、すごい子どもぶりとかを発揮してるんですけど。あれ、ゲーマーが他にはいないのか。

佐々木:ゲームやったことないんですよ。

鈴木:コンピューターゲームの洗礼を受けたっていうと、斎藤さんより下ですか?

斎藤:いや、柳瀬さん達も。。。

柳瀬:僕らだとやる人とやらない人にすっぱり分かれますね。たまたまだと思います。僕もゲームにはまらなかった。

仲俣:下手だったりとかね。ブロック崩しでいっこも返せなかった。

柳瀬:平安京エリアで酷い目に遭ったとか。負けたんですよw

鈴木:ゲームも今は、コンピューターゲームが高齢化して、RMTなんかで社会人がお金を使ってるとかありますけど、昔は花札、トランプ。あれは大人のゲームですよね。

佐々木:親戚が集まって麻雀とかやると、あれは大人のゲームだなと。

津田:麻雀って大人のコミュニケーションに使われてますよね。新入社員になって覚えて、初任給を賭けて奪われてみたいな。麻雀って僕らの代より下から、全然できなくなっていくんですよね。

仲俣:昔は遊ぶものってなかったから、小学生くらいを超えるとホントに花札とかしかなくて。麻雀とか。ゲームっていうものがなかった。

柳瀬:トランプくらいが間にあって、将棋とか囲碁。その後は花札、麻雀、パチンコ。大人のコミュニケーションツールが、麻雀とゴルフしかなかった時代が長く続いてた。僕らが入社した頃でもそうだった。僕は割とどっちもやらないので異質だったんですけど。ただ、今の若い人たち見てると、好きな子はいるけど、個別にいるだけで、常識とかコミュニケーションツールのベースとしては機能しない。

津田:90年代はそこにカラオケが入ったんですよね。

鈴木:あー、カラオケ行けば麻雀くらいの連帯感は生まれてたかもしれないですね。

佐々木:そういう組織の中で何かするんじゃないレベルでの、ゲームを通じて社交を学ぶっていうのが減りましたよね。

斎藤:カラオケって大人と子どもの区別もないですからね。

鈴木:大人じゃないと参加できない何かっていうのがなくなったと。それこそあとは酒とかになるのかな。酒も中学生が「飲み会」って単語使うしなあ。

柳瀬:でもうちで連載してる「U35男子」の企画で、素面男子の話をやったんですよ。それは、最近の男の子が飲まないぜって話。飲む子の数が、男子で減ってる。女子は飲むんですけどね。

鈴木:喫煙がまったく同じで、20代の喫煙率は下がってるんだけど、女性の喫煙率は上がるんですよね。

柳瀬:だから20代の男性で、お酒をコミュニケーションツールとして使うって言うのは減ってますね。

鈴木:昔ながらの飲みニケーションって奴ですよね。

森山:僕らの世代だと、ぎりぎり、誘われたら二次会には行かなきゃいけないし、麻雀にも行かなきゃいけなかった。そこで経験値のある人たちが、新人に対してイニシエーションしてた。そういうのが20代の人にはなくなってる。

佐々木:上の世代との付き合い方ね。そういうのがなくなってる。

森山:みんな帰るのうまいんだよね。

鈴木:ちょうど今の話でいうと、上の世代と付き合う必要があったから、飲みニケーションってのが必要だった。しかしよくよく考えてみると、上の世代と仕事以外のコミュニケーションする必要ってあったっけ、と。

津田:ゲームでも、女性が増えてるんですよね。ライトなものだけじゃなくて、30時間、40時間とかかかる大作も。かつて男の子の領域だったものが、女性に開放されてますよね。明らかに増えてる。

鈴木:男子は何をしてるんですかね。飲む打つ買うをやらずに。

柳瀬:スタバでお話とかかな。

鈴木:あ、そう!僕、この番組で一回メールを紹介した、友人の社会学者で高原基彰君ってのがいるんですけど、先輩の偉い人に焼き肉連れてってもらって、2時間くらいで解放されて、じゃあその後「お茶でも飲んでく?」ってその後4時間くらいスタバでお茶飲んでたことがあって。飲んだ後にお茶って言うw でもそっちの方がね、「俺たちこれからどうする?」みたいな飲みニケーション的話をしてるんですよ。飲みに行くとそういう話にならないですね。

津田:男の子が乙女になってるのかな。

柳瀬:あと酩酊する必要がなくなりましたよね。ホントの友人とかだと別に酔う必要はないと。それは必ずしもおかしなことではない。最近、内田樹さんが「下流志向」でも言ってましたけど、すべての行動を、目的・非目的で分けちゃって、目的に合わないものはいらないってデジタルに分けちゃうところは、行動パターンとして見えてる感じがしますね。そうしたときに、曖昧な「お酒を飲む」っていうのが切り捨てられちゃってるのかなと。

鈴木:その辺が、サラリーマンのオジサンが考えている大人と、若者が考えている大人の差ですよね。じゃあ、サラリーマン、職場、働くって話を、この後しましょうか。

〜曲〜

MP3その3


鈴木:メール、服をお母さんに買ってもらわなくなったら大人。
でも今は子どもの服もオシャレだから、自分で買うようになっても変わらないんじゃないか。
メール、大人になったと思う。「子どもに戻りたい」と思うようになったから。
大学生の頃、同級生の女の子が、二十歳になんのがイヤで泣いてた、って話を聞かされたとき、すごい胸きゅんだったなあ。何の話だw
メール、幼稚園の頃から父親に聞かされていたビートルズ、読んでいた村上春樹のよさが分かるようになったとき。あと周囲が結婚・出産しているけれど、基礎体温付けてない自分はまだまだ子どもかも。お肌の黄金タイムに起きてる今も。。。
基礎体温付けた方がいいよー、本当に去年、僕の周囲はばたばたとおめでた婚しまして。男性の方も気をつけるように。いつも雑誌を置いてるところにゼクシィとかあったらマジ気をつけてください。色んな謀略が働く可能性がありますから。
あとはね、仕事をするって話で、メール、大人になるとは忘れること、気にしなくなること。忘れることができるようになって行きやすくなった。次のメール、ウェブサイトに『モラトリアム人間の時代』を引用してたんですけど、それへのアンサー。自分の職業が、将来もあるかどうか分からなくなっている。終身雇用も崩壊。帰属意識なんて幻想。
なんでこのふたつを紹介したかっていうと、単なるお金を稼ぐ手段としてだけじゃなく、残ってるかどうかも分からない。人間関係を気にしてびくびくしなくても済むようになると、すぱっと割り切って次行けばいいやって、関係を切る方向に向かっちゃうんじゃないかと思ったから。
斎藤さん、働くっていう問題、学生達の問題、10年くらい議論されてきたわけですけどどうですか。

斎藤:飲みニケーションをやらなくなってきたという話。終身雇用によってこの人との「その先」があることが前提。でもそういうものが根こそぎ奪われた後で、71年生まれの僕以降は、転職が当たり前で、ここに一生勤めるなんて思ってない。そういう意識で、上司とムリしての見に行かないのは当たり前かなと。

鈴木:最近、携帯の話でよくするのは、同じ中学、同じ高校の友達と全然切れなくなってて、その一方で切っていいところは切るみたくなってるのかなと。さっきのメールで、globeの「Precious Memories」が大人のイメージだっていうのをもらってて、別れがあって出会いがあって、みたいな関係が、変わりますよね。別れない人たちと、出会ったけれどいつでも切れる人たちっていう。それがこれまで会社とかで維持されてきた関係と、整合的なのかどうか。オヤジーズの意見が聞きたいよね、若い人が関係を選ぶようになって、でもそういうのを部下を抱えないといけなくなっているわけですが。

柳瀬:部下はいないんですけど、じゃあ私がいきましょう。いま話を聞いてて思ったのは、大人の概念そのものっていうのが、戦後60年の大人のイメージなのかなと。僕らの親っていうのが昭和ヒトケタ、戦後第一世代のサラリーマンなんですね。うまく残っていると、社長さん、会長さんになってる。そこから僕らくらいまでの大人のイメージって、さっきの波平さんなんですよ。頑固で融通が利かなくて変わらない。

鈴木:8時だよ!全員集合!の長さんがやってたみたいな。

柳瀬:そう、彼がカリカチュアライズしてやってた。で、若いサラリーマンは、植木等さんをやる。つまり、コミュニケーションの秀才として生きていくのが大人ということ。植木等のクールさっていうのは、コミュニケーションの達者なところ。ところがその前提にあったのは高度成長期で終身雇用で、マーケットが成長するというところ。その人達が作った枠組みで、子どもに「大人になれ」っていう圧力を掛けているという話がある。でも他方、戦前ではみんな大人になってたかっていうと、そんなこと全然ない。農家の次男坊・三男坊っていうのはフリーター・ニートみたいなものだった。
北杜夫さんの「ニレ家の人びと」なんか読むと、魅力的なおじさんっていうのが出てきますよね。で、ああいう、お金持ちのご実家にいる、何やってるか分からない不良のオジサンっていうのがすごくチャーミング。イギリスだとああいう人が、学者だったり文学者になる訳なんですけど、彼らは決して大人じゃない。

鈴木:そうだよなー。フーテンの寅さんもそうだし、こち亀の両さんもそうですよね。

柳瀬:大人がいるのが前提の社会で、大人でない人たちを受容するのが大人の社会。全員が強制的に大人を目指すと、すごく子どもっぽくなっちゃう。あと分かりやすい終身雇用ってモデルがなくなったから、頑固で変わらないって大人のモデルも壊れている。臨機応変じゃないといけない。

鈴木:その問題は大きくて。今の話を整理すると、大人になることっていいますけど、まず大人と子どもの間の「青年期」っていうのが発見されたのが最近のことでしかない。青年期っていうのが大人になるまでの不安定な時期だ、なんてのが一般化したのも戦後の話。その「大人になる」って話がある。それから大人になるための条件として、終身雇用を前提に、18とか23で決めた道で大人になることができた。だからそこの決断が一番大事だった。労働条件が変われば大人の条件も変わるってのは当たり前ですよねと。
で、一番最後のがでかい。いま、競争とか自己責任とかいって、大人になれっていう一方で、毎年成長する、変わり続ける、前の年の自分よりバージョンアップすることが前提になっている。あ、今かかってきたのは「愛の才能」。「成長しないって約束じゃん」ですね。この、「大人」と「成長」は、アメリカでは別の概念だったんだろうけど、日本では同じものとして扱われてきた。あるところで成長を止めるのが大人だとみんな勘違いしてた。今はそこが引き裂かれて、大人にはなってほしいけれど、成長もしてくれって言われている。これは森山さん、大分辛い気がしますよね。

森山:僕もねー、今会社で大人になることを強制されていて、今日はそんなことを考えながら来たんですけど。

鈴木:その場合の「大人になる」って、えらい含蓄のある言葉ですね。上層部から圧力をかけられて「君も大人になったらどうかね」みたいな。

森山:あんまり細かく言えないんですけど。

鈴木:あはは。津田さん、大人と成長が分かれてきた今、僕らはどう成長してったらいいんですかね。

津田:だからネットの話にすると、今は情報だけはすぐ簡単に取り込める。無駄な万能感って言うのが若い子に出てきてるじゃないですか。それを租借して、情報をリアルの世界に活かしていくことが成長。ただ、成長しやすくはなってると思うんですよ。それの培養の仕方ですよね。

斎藤:ちょっと話が見えなくなったんですけど、チャーリーが言ってたのは、成長するっていうのが大人ってことになったってこと?

鈴木:ううん、逆、逆。大人になるっていうのは漠然と「ならなきゃいけないもの」としてあって、それとは別に、大人になったらそこでゴールって思ってたつもりが、毎年バージョンアップしてね、って言われてる。ウェブで引用した小此木敬吾さんなんかも、いつまでも「自分がこれで生きていくんだ」っていうのを決められない若者が出てきたって書かれている。「決めたら変えない」ってのが大人だったのに、今は同時にバージョンアップも求められている。

斎藤:その場合のバージョンアップっていうのは?

鈴木:仕事の業績を上げるとか、スキルを磨くとか。分かりやすいものもあるし。フリーの人間であれば、来年は本を出そうとか、何部売ろうとか。

佐々木:波平さんの変わらない像っていうのは「変わらなくていい」ってことじゃないですか。成熟って言葉でそれを表現すると、もう片方にあるのは「未熟」。成熟って言うゴールの像に向かっていくときに、足りないものを埋めていく過程だった。で、あるところまでくると、もう成熟しなくていいですよと言われる。でもそのゴールがなくなっちゃったから。

柳瀬:成熟の先に、今は「腐敗」がありますよね。

鈴木:年を取っていく老化問題はオヤジーズが潰れた後でやりたいんですけど、いま佐々木さんがおっしゃったのは、減点性でゼロまでもっていくのが大人だったとすると、その先もずーっと尺が続いていてゴールがないってことですよね。むしろ佐々木さんや仲俣さんにうかがいたかったのは、大人っていうのを初めて意識した、そういうのを思わせてくれた作品ってなんかあります?僕、課題図書で「あすなろ物語」とか読まされたクチですけど、何の感動もなかったので。

佐々木:大人になるってことかどうかは分からないけど、世界のどうにもならなさみたいなのを思い知らされたのは、カフカの「変身」を、小学校6年で読まされたときかな。不条理小説って言うんですけど、起きたら虫になってたって、こういうとアホみたいな話だけど、彼がなんでこんな小説を書いたのかっていうのは分からないけど、どうにもならないものがあるっていうのを感じたんですよ。

鈴木:そっかー、俺、黒井千次とか読んでるばあいじゃなかったんだな。

佐々木:黒井千次も読みましたよ。

仲俣:しかし、すごい文学少年だよね。僕は中学生の頃かな。大学生っていうのがイメージできなくて、大学生になると大人になると思ってた。そのルーツははっきりしてて、ガロの髭を生やしたルックス、女と同棲して、みたいなただれたイメージ。その頃は学生運動の名残があったから、そういうのに巻き込まれて、殺したり殺されたりの世界になるのかなって思ってた。

佐々木:逆の意味で早熟だよ、それ。

仲俣:でも実際に大学にはいると、制服から私服に戻って、気持ちとして小学生に戻る。全然大人になれてはいないっていう。でもその頃、二十歳の時に初めて勤めた会社と、そこを辞めて次に勤めた会社の社長が、20代、30代のすごい若い社長で、津田さんみたいな人だったのね。要するに、大人げない社長だったんですよ。すごい周りで支えなきゃならないっていう。みんなで彼をばかやろーって想いながら支えてたときに、「これでいいんじゃん」って思って、自由になった思い出がありますね。会社の中のコミュニケーションに悩むっていうのが、幸いにしてなかったんですよ。あのだらしない社長にね。ありがとうございました、育てていただいて。

鈴木:その都度その都度、5年先くらいのロールモデルが見えてたと。

仲俣:ロールモデルってのは大きいと思う。

斎藤:それが今はもうないんですよ。

鈴木:こういう人になりたいっていうのが。

仲俣:あんなんでもいいんだっていうのも含めてね。

佐々木:成熟のゴールとしての理想像っていうのがないから、どんどん先に行くしかない。違うところに大人って概念を持ってこないと成立しないよね。

鈴木:あーあれだ。「先輩」っていうのと「大人」っていうのが、シームレスに繋がってた時代は良かったんだけど、

佐々木:上司とかね。

鈴木:先輩を見てるだけでは、その先の大人が分からないっていうことかな。じゃあ先輩後輩話も含めて、ちょっと人間関係の話をこのあとしようかな。聴いていただく曲は、100sの「希望」。

〜曲〜

「大人になるということ」Part2
2007年03月11日(日) 10:52:50 Modified by life_wiki




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