当wikiは、高橋維新がこれまでに書いた/描いたものを格納する場です。

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ボケとは

 ボケとは、何度も言っている通り、ズレの作出です。ズレを作出すること自体が意図されている場合と、ズレを作出することが意図されているわけではないが、結果的にズレている場合とがあります。後者は、天然ボケと呼ばれるものです。
 ズレは言葉によって作出される場合もあれば、動きによって作出される場合もあります。容姿や服装みたいな見た目によって作出される場合もあります。どのような方法であろうと、ズレが作出されていればそれはボケです。
 前に少し触れましたが、ツッコミの外形を有する言動でもボケである場合があります。例えば一人で虚空に向かってツッコミをしている場合、「ツッコミはボケに対して行う」というのが基準状態であり、「ボケもされていないのに一人でツッコミをしている」というズレが提供されていることになります。あるいは、下手糞なツッコミや的外れなツッコミも「まともでないツッコミをしている」というズレを提供しているという意味で、ボケなのであります。オードリーの漫才における春日さんのズレたツッコミは、「ツッコミの外形をしたボケ」の良い例でしょう。なんであろうと、ズレが提供されてさえいればボケなのです。
 ちなみに、「オチ」という言葉は、広義にはボケと同義です。狭義には、笑いの一連の流れにおいて主要な役割を果たすボケのことです。最も狭義になると、流れの中で最後に行われるボケのことを指す場合もあります。この最狭義の「オチ」が一番一般的な用法ではないでしょうか。とはいえ、オチとして最後に持ってくるボケには、基本的にツッコミを入れることができず、「話の終わり」として相応しいものにする必要があるといった制約があるため、それほどおもしろくならないことも多いです。別に途中にちゃんとしたボケを仕込んでおけば、最後は、終わってる感じさえすればよいと思います。思いつかないなら無理にうまいオチを作る必要はありません。

ズレと基準状態

 ボケはズレです。前述の通りズレにも程度があり、その程度は適切であることが求められます。ズレの程度は、基準状態との関係で決まるものです。ということは、基準状態をどこに置くかによってズレの程度が適切かどうかが変わってきます。抽象的な話ばかりをしても仕方がないので、例で考えましょう。
例 Aの質問に、Bがボケて答える状況を想定してください。


々江・▲ンプドレア星
 これらが、大しておもしろくはないですが、ズレの程度としては穏当なところでしょう。いわば、普通のボケです。ただ△鷲者が作った架空の惑星なので、ズレ過ぎであると感じる人もいるかもしれません。
 両者は、ズレ方は異なります。々江については、「旅行なら何かあるところに行く」というのが基準状態で、「何もなさそうな所であり旅行先として不適切である」という点にズレがあります。▲ンプドレア星については、「旅行なら知っている場所・行ける場所に行くべきである」というのが基準状態で、「どこだか分からない・行けそうもない場所である」というのがズレであります。
ハワイ
 これは、普通の答えです。ズレはありません。
 ところが、この答えにもズレがあると考えることができます。ズレを見出すには、基準状態をいじる必要があります。すなわち「ボケて答えろと言われているのだから、適切にズレた解答を提供するべきである」というのを基準状態だと考えてみましょう。そうすると、「適切にズレた解答を提供すべきなのにズレていない普通の解答を提供している」というのがズレになります。
 これはいわば一段階高次の、メタなズレです。「メタ」というのは、筆者もあまり意味を適切に言語化することもできませんが、そのまま「一段階上にある」というような意味です。つまり「旅行先として適当な場所を普通に解答すべき」という第一の基準状態に対応する一次的なズレが、々江や▲ンプドレア星といったような解答であるのに対して、この第一段階のズレを「ボケろと言われているからズレた解答をすべき」という形で新たに基準状態とすると、ハワイという解答はここから更に「ボケろと言われているのにズレていない」というズレを提供しているといえるのです。これが、「メタなズレ」ということの意味です。


いΔ鵑魁Νス板消し
 第一段階のズレと同じで、この第二段階のズレの態様も複数考えられます。基準状態は、「適切にズレた解答をすべき」というものです。ここからのズレとしては、ハワイのような「ズレていない普通の解答をする」というズレの他に「適切でないズレ過ぎの解答をする」というものも考えられます。す板消しやイΔ鵑海箸い辰寝鯏は、旅行先を聞いているのにそもそも場所を答えていないという意味で、第一段階のボケとしてはズレ過ぎの、お客さんをひかせてしまう解答ですが、第二段階のズレとしては適切であるとも言えます。あるいは別の態様として、「ボケろと言われているのにおもしろくないボケをする(そしてすべる)」というものも考えられます。これが巷間で「すべり芸」と言われているものであり、そのような意味ですべり芸もメタなズレのひとつと位置付けられるのです。



 なお、更にもう一段階上のズレも理論的には考えられます。「ズレた解答をすべきであるところその裏をとって普通の解答をすべき」という基準状態に対するズレです。その更に一段階上のズレも考えられます。今度は、「ズレた解答をすべきであるところその裏をとって普通の解答をすべきところ更にその裏をとってズレた解答をすべき」という基準状態に対するズレになります。理論上、これは無限に続いていきます。ただし、三段階目以降は複雑になり過ぎるので、受け手に分かってもらえない危険性が高いです。そのため、実務ではほとんど念頭に置かれていないと言ってよいです。ゆえに、基本的に一段階目のズレと二段階目のズレのことを考えておけば大丈夫です。
 いずれのボケにしても、ツッコミはボケの解答の何がどうズレているかを瞬時に把握したうえで、適切にツッコむ必要があります。ボケが提供し得る数々のズレは、どこを基準状態と把握すれば適切なボケとなるかがまちまちであり、受け手がズレの存在を理解しきれていない可能性が高いからです。
 ハワイやす板消しみたいな答えが来た場合は、例えば以下のようなツッコミが考えられます。


 
 いずれのボケについても、上図のようなツッコミを入れて、基準状態を上へと移行させればおもしろいボケになるということを、お客さんに理解させる必要があるでしょう。他にも、ボケが普通のボケを言ってすべったのであれば、「なんでおもしろくないことを言うねん」「すべっとるやん」などとツッコみましょう。
 このような知的作業を求められるものである以上、ツッコミには、確かな判断力と、ボケに即応する瞬発力が必要になってきます。このことは、ツッコミの難しさを示すものではありますが、逆の見方をすると、ボケが不発に終わっても、適切なツッコミさえ入れられれば、その失敗さえも笑いに変えられるということです。ボケがお客さんをひかせてしまったら、「お客さんひいてますよ」とツッコめばいいのです。すべったら「すべってるやん」とツッコめばいいのです。こういう役割を果たさずに失敗したボケばかりを責めているとしたら、それはツッコミの職務放棄です。
 更に、ツッコミが失敗した場合でさえも、まだチャンスは残っています。失敗したツッコミは、一応外形的にはツッコミですが、「適切にツッコむべきなのに適切なツッコミが為されていない」という点でズレが生じているので、ボケであるともいえます。この点を更なるツッコミによって適切に指摘すれば、まだ笑いが生じ得るのです。



 この可能性の連鎖は、理論的には無限に続いていきます。あんまり失敗してばかりいると何が何やら分からなくなるので、早めにフォローを入れた方がよいですが。

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