以下は、2006年8月11日から開催された同人誌即売会『コミックマーケット70』で、管理人が無料配布したコピー本です。
もともとは、当Wikiの書き込み指針として書き始めたものです。メカクレ分類表と合わせて参考にしてください。

ただ配り小冊子
メカクレのスゝメ

 メカクレとは、目を隠したキャラクターの略称です。類義語には、目隠れ、目隠れっ娘、目隠しっ娘、隠れ目、前髪、前髪っ娘、片目、眼帯、瓶底眼鏡などがあります。それらすべてをひっくるめて、目が隠れているならなんでもなんでもありの言葉が欲しくて、二○○六年一月一日に造語しました。だから、サングラスや帽子、仮面などをデフォルトで着用しているキャラクターも含みます。眼帯だってリストアップしています(遮光器を「アイパッチ」、医療用と聞いて連想するタイプのものを「眼球保護帯」としています。厳密にいえば両方とも医療用ですし、英語に訳せば同じpatchですが、あくまで便宜上の区別の仕方をしています)。
 語感こそ「ツンデレ」に倣いましたが、内在している性質は多種多少です。ユング派の心理学用語としての「ペルソナ(=仮面)」は、乱暴にいえば他者に対して取り繕っているファッションや性格であり、自分自身を演出したい欲求でしかありません。キャラクターデザインにおいては、メカクレのビジュアルは多種多様な性質に直結する表現といえるでしょう。
 メカクレは性質の多くは内向的です。目を隠すのは対人恐怖症や視線恐怖症のあらわれです。表情を秘匿したり、自信喪失した自己の匿名性を高めたい心理がうかがえます。その瞳を隠すということから、謎を秘めているミステリアスな魅力をもっています。パワーや感情の欠損を暗喩していることもあります。二律背反の苦悩や退廃的な印象、狷介孤高の存在であることをビジュアルで示すこともできます。
 というようにメカクレのビジュアルだけでなく、キャラクター性そのものについても傾向があることがわかってきました。造語してから三ヶ月ほどメカクレの女性キャラクターをリストアップしていましたが、次第にキャラクター性についても言及したくなりました。そこで思い切ってwikiに移転しました。
『メカクレリストWiki』
http://wiki.livedoor.jp/mekakure/d/FrontPage
 ビジュアル別にリストアップするだけでなく、キャラクター個別に解説項目を設けることが可能になりました。せっかくWikiにしたので編集権を公開しています(一部のページを除いて、どなたでも書き込みや項目の新規作成が可能ということです)。
 そこで、解説文を書いていただくにあたり、ある程度の指針が必要になりました。たとえば、『サイカチ 〜真夏の昆虫格闘記〜』榎稲穂の解説項目では、
両目隠れヘアチラリズム榎稲穂は、常に白衣姿でファッション性が低いタイプのメカクレ。昆虫の飼育や研究に熱中するあまりに出不精でボサボサの両目隠れヘアになっているが、それだけではない。小学生の主人公らにクワガタ相撲を指導することになるが、幼少時にタイ国でのゲリラ戦で父が行方不明になったトラウマを持ち、それ以降自身はクワガタ相撲をしていない。そのため、自己の消失願望も強く、両目隠れヘアになる一因と思われる。また、世情に疎くドジっ娘度も高い。というように、サイコパス以外の両目隠れのメカクレの性質をほとんどすべて備えたキャラクターといえる。」
 というような感じでどういうタイプのメカクレなのかを解説します。
 本稿は、その指針としてはあまりに力不足ですが、雑談スレッドやmixiの日記で書き散らした文章を羅列したものです。だから、結論もオチもありません。
 以前、「メカクレ年表」を付録すると予告もしましたが、執筆時現在九○○名を超えるリストの年表はページ数にして五○項を超えてしまうので、タダ配りの今回はさすがに見送りました。
 著作権法三二条に基づき、引用画像は著作権権利者の許可を得ていません。出所はそれぞれの画像に付記しています。

両目隠れ 両目隠れヘア、瓶底眼鏡、仮面
 人相学や人相占いの物の本では運気をあげるには、先ず額を開けろとあります。古代中国の医学書『霊枢経』(前漢、紀元前二○六年〜八年頃?)などにも人相についての記述がみられますが、その後、陳希夷(?〜九八九年)が『神相全編』(年代不明)として占法をまとめます。日本でも、平安時代に伝わり、江戸時代には観相学者の水野南北(一七六○年〜一八三四年)が『南北相法』(一八○○年前後)を著しました。また、西洋でも、古代ギリシャでピタゴラス(紀元前五八二年〜紀元前四九六年)やプラトン(紀元前四二七年〜紀元前三四七年)、アリストテレス(紀元前三八四年〜紀元前三二二年)などが顔面と性格の関係性を研究していたといいます。古今東西を問わず独自に発展してきた人相学は、上司や部下、異性からモテたいという当時のファッションモデルみたいなものです。他者からの見た目が重要ですから、相手と目を合わせる瞳の周辺は開けているに越したことはないという学問なのです。そのほとんどすべてで、世界中で必ずいちいち否定されている髪形が両目隠れヘアです。運気が無い、と一目見てわかるからでしょう。
 両目隠れヘアキャラクターの起源を探すと、『超少女明日香』和田慎二(『別冊マーガレット』一九七五年四月号〜、集英社)の砂姫明日香、『ガラスの仮面』美内すずえ(『花とゆめ』一九七六年一月一日号〜、白泉社)の乙部のりえなど、少女漫画ばかりから確認できます。現代の女性作家にもいえることですが、少女漫画家の多くが「瞳の消失」の演出を好む傾向にあります。前髪が目深になり、表情を隠します。髪型にかかわらず、たとえば山岸凉子先生の作品では、核心に触れるシーンでは必ずといっていいほどコマから顔が見切れていて読み手の想像力を刺激します。古い少女漫画では、ショック状態を表現するのに、瞳を省略したりもします。文字通り、絵にも描けない感情を読者に思い起こす演出手法です。

▲四項にわたり厩戸王子の表情を一切見せない演出。
(『日出処の天子』四巻、山岸凉子、一二九項、白泉社、一九八一年)

 演出の手法というだけではなく、前髪を整えている両目隠れヘアは、他者と目を合わせることを避けている視線恐怖症であることがうかがえます。匿名化することで、自信のない自己の消失、逃避とも考えられます。自己の消失願望は、ドジっ娘であることが起因していることも多く、必然的に「匿名性」と「ドジっ娘」は等しく高い傾向にあります。野暮ったい髪型は不精でファッション性が著しく低いとわかります。自分の容姿に注意が向かないほど、何かに執着していて、サイコパスの気質も強くなることもあります。

▲夏原織江
ドジっ娘度が高く、オロオロとした挙動不審の立ち絵が用意されている。
(『AYAKASHI OFFICIAL GRAPHIC WORKS』APRICOT、六八項、フォックス出版社、二○○六年)

 同人誌で刊行が始まった、そのものズバリのシリーズタイトル『目隠れっ娘世にはばかる!』赤坂素人。二○○六年五月に司書房から単行本にまとめられたばかりなので探しやすいでしょう。両目隠れヘアのメイド・音夢と、その屋敷の主人とのラブコメディです。メイドという職業上清潔感もありメイド服に乱れなく、それほど不精ではありません(前髪に一本アホ毛がありますが)。その分、自己の消失願望が強く、同時にドジっ娘性が高い気質にあります。その自己の自信のなさのもどかしさがラブコメを盛り上げます。

▲音夢
(『目隠れっ娘世にはばかる!』赤坂素人、表紙、司書房社、二○○六年)

 二○○五年九月一日発売の『週刊少年チャンピオン』二○○五年九月一五日号、四○号、秋田書店で両目隠れヘアのキャラクターが大役で登場する連載が始まりました。漫画『サイカチ 〜真夏の昆虫格闘記〜』藤見泰高、カミムラ晋作榎稲穂(両目隠れヘアチラリズム)です。音夢と同じ両目隠れヘアでドジっ娘ではあるものの、タイプはやや違います。自分の服装には無頓着で不精がゆえの両目隠れヘアです。それだけ昆虫の飼育や研究に熱中しすぎているのがわかります。数え切れないほどの昆虫を飼育しているので相当臭いものと思われます。同じ女子高生の友達はほとんどいないようで、もっぱらクワガタ相撲指導を通じて小学生を相手にするばかりです。いや、小学生相手でも頬を赤らめて緊張することすらあり、対人に苦手意識が垣間見えます。世情に疎く、常識のなさが笑いどころに使われます。両目隠れヘアのいいところどりのようなキャラクタです。それに加えて、榎稲穂は、少年たちから「師匠」「先生」などと慕われ、教え導く母性を兼ね備えているのが特徴でしょう。インターネット上の一部で人気を博し、連載は翌年二○○六年六月一日号、二五号で終了し単行本も一巻以降は未刊行となっていますが、『チャンピオンRED』二○○六年九月号、秋田書店で同両作者による榎稲穂を主人公とした読み切り漫画『ベクター・ケースファイル -稲穂の昆虫記-』が発表され、読者アンケートの投票結果次第では続編・連載化の望みがつながっているといいます。

▲榎稲穂
(『サイカチ 〜真夏の昆虫格闘記〜』一巻、藤見泰高、カミムラ晋作、表紙、秋田書店、二○○六年)

 榎稲穂よりも熱中度が高すぎる両目隠れヘアの一例が、『ムヒョとロージーの魔法律事務所』西義之、集英社のパンジャ(両目隠れヘアチラリズム)です。主人公の一人であるロージーに片思いをしてストーカーとなった死霊で、挙句の果てには短剣を切付け回したり化け物に変わり果てて周囲に危害を振りまきます。サイコパスの気質が強すぎる両目隠れヘアの典型例といえるでしょう。

▲パンジャ
(『ムヒョとロージーの魔法律事務所』西義之、『週刊少年ジャンプ』二○○六年七月三日号、二九号、集英社)

 瓶底眼鏡は、本来透過するはずのレンズが曇っていることから、より強く匿名化、記号化されます。とくに、教育ママ的なキャラクターの人格はほとんど記号も同然です。また、子供から見た大人は得体の知れない怖い存在として記号化され瓶底眼鏡として描かれることも少なくありません。他に、「不精」「お局」「勤勉」などの記号として使用される場合もあります。瓶底眼鏡は、メカクレのなかでも人格そのものを秘匿するもっとも匿名性の高いビジュアルです。

▲秋本・カトリーヌ・麗子
あのゴージャスな麗子が庶民派を騙るために「貧乏」として瓶底眼鏡を着用。
(『こちら葛飾区公園前派出所』秋本治、『週刊少年ジャンプ』二○○六年八月二一日・二八日合併号、三六・三七号、三一二項、集英社)



片目隠れ 片目隠れヘア、アイパッチ、眼球保護帯
 鬼太郎を代表とする前髪で片目を伏せる髪型です。「アシンメトリー asymmetry」「アシメトリックスタイル asymmetric style」「ワンサイド one side」「オフバランス off balance」「鬼太郎ボブ」などとも呼ばれますが、どれも左右非対称という意味合いしかありません。じつは、もっと適切な用語があります。一九六七年のアメリカの美容雑誌に紹介され流行した「アイハイディングコワフ eye-hiding coif」という片目を隠したヘアスタイルです。文字通り「目を隠す」という意味です。ウインクをしているように魅惑的演出になるとされていたといいます。マリリン・モンローがセックスシンボルと呼ばれ始めたのが一九五○年代半ばから。セクシーなポーズにウインクも含まれることがすでに様式化した時代に、ウインクをイメージして作られたのが片目隠れヘアです。
 つまり、セクシャルの魅力を強めるヘアスタイルということです。
 昨今はキャバクラ漫画作品が増えましたが、セックスアピールが比較的重要視されるキャバクラ嬢のキャラクター群のなかに、たいてい一名は片目隠れヘアが紛れ込んでいることでしょう。「年上の成熟した女性」の記号として用いられていることがわかります。それは、男性の片目隠れヘアのキャラクターが「キザ」の記号一辺倒なのに対する、女性のそれの定番の性質です。

▲如火
まだまだ精神的に幼い主人や仲間をひっぱる唯一の大人の女性。
(『乱飛乱外』田中ほさな、『月刊少年シリウス』二○○六年七月号、二項、講談社)

 しかし、女性の片目隠れヘアはそれだけに収まりません。セックスアピールから派生して妖艶な魅力も強まり、神秘性が増します。漫画『アウターゾーン』光原伸(一九九一年〜一九九四年)、集英社のミザリィ(片目隠れヘアブラインド左目)、漫画『涅槃姫みどろ』大西祥平、中里宣、秋田書店(二○○六年〜)のみどろ(片目隠れヘアブラインド左目)など、片方の目ですべてのことを見通しているかのような振る舞いをする謎のキャラクターで、狂言回し役をつとめます。古来の幽霊像が様式化していることもあるでしょう。アニメ『ローゼンメイデントロイメント』(二○○五年二○日〜二○○六年一月二六日放送)の薔薇水晶(アイパッチ左目)は、第一話から戦いの始まるを告げる存在で、最終話まで物語の謎を牽引するキャラクター配置にありました。

▲春日野椿
神秘性で千人以上の信者を従え、その動向を完全に予知できる。
(『未来日記』えすのサカエ、『月刊少年エース』二○○六年九月号、四二項、角川書店)

 セックスアピールや神秘性だけでなく、虚無的退廃的なイメージとしても使用されます。一九世紀末からの病的な唯美性を美徳とするデカダンスに通ずるファッションでしょう。現代のゴスロリにも一部受け継がれています。

▲たまき
退廃的かつエキセントリックなファッションばかりする。
(『くみちゃんのおつかい』軽部華子、二一項、朝日ソノラマ社、一九九九年)

 とくに、眼球保護帯は、SMの世界に通ずる加虐性愛と背徳心をくすぐります。アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』(一九九五年一○月四日〜一九九六年三月二七日)の第一話では、見るからに身体中の怪我が癒えていない綾波レイ(眼球保護帯右目)が出動を強要され、碇シンジは彼女を守るためにもエヴァンゲリオンへ搭乗を決意します。包帯だらけの綾波レイを目の当たりにして碇シンジの父性とヒロイズムが目覚めたのでしょう(劇中で碇シンジがみせる数少ない能動的なシーンの一つです)。そして、完結編に当たる『新世紀エヴァンゲリオン 劇場版 THE END OF EVANGELION Air/まごころを、君に』(一九九七年七月一九日劇場公開)の終了間際では、眼球保護帯を左目に着用した惣流・アスカ・ラングレーに向かって、なんと碇シンジは彼女の首を絞め殺そうとします。第一話で綾波レイを守ろうと立ち上がった碇シンジが、です。愛護心とそれに反する加虐性愛の渦巻く眼球保護帯を象徴的に使用しています。
 片目隠れは、デカダンやセックスアピールを演出するファッションですが、キャラクターの願望や心理を表現したデザインでもあります。キャラクターが抱える自己矛盾や苦悩をビジュアルで示すことができるのです。伏せた目と裸眼は、暗黒の気、陽の気を連想させ、一つの表情に陰陽二元論をみてとれます。
 その最たるキャラクターが、二○○五年一二月一五日に発売されたプレイステーション2ソフト『テイルズ オブ ジ アビス』ティア・グランツ(片目隠れヘアチラリズム右目)でしょう。なんと、片目隠れヘアがメインヒロインを務めるゲームソフトが、よりにもよって大ヒットシリーズから発売されたのです。現状なかなか端役以上には抜擢されることのない片目隠れヘアがメインヒロインとなったのには理由があると思われます。片目隠れヘアのティア・グランツに対して、物語途中で長髪の主人公ルーク・フォン・ファブレが後ろ髪を切り捨て愚かな過去と決別することからも、この作品にとって髪型の意味は決して軽視できないからです。もともとツンデレ的な二面性を反映させたキャラクターデザインということが公表されていますが、なにも性格的なものの要素だけではありません。自分の信仰そのものや教団に対する疑問・不信感、宗教の預言を巡って愛する兄や師匠との反目、敬虔な宗教家にして暗殺者、というようにそれまでのテイルズシリーズでは描かれてこなかった自己矛盾を数多く抱えたキャラクターです。キャラクターデザインの藤島康介先生の透明感のあるタッチに、柔和でかつ意志の強い片方の瞳もまた印象的です。二律背反の葛藤をビジュアルで示したキャラクターデザイン最高傑作の一つといえるでしょう。

▲ティア・グランツ
二律背反の葛藤を数多く抱えるヒロイン。
(『テイルズ オブ ジ アビス イラストレーションズ 藤島康介のキャラクター仕事』藤島康介、一三項、一迅社、二○○六年)

 また、片目を伏せることは半身の欠損でもあります。負傷箇所が顔面にあることでより凄味が増して尋常ではない経歴・軍歴・戦歴を匂わせます。とくに、物語の途中で片目を負傷し、アイパッチや眼球保護帯を着用することになったキャラクターは、より一層の半身の欠損が協調され、性格自体が豹変することもあります。
 半身を奪った対象を憎悪し、復讐鬼と化しますことも。物語の復讐劇は、えてして別の落しどころに走るものですが、アイパッチメカクレは、身を滅ぼすことに顧みこともなく地の果てまで追いかけてきます。アイパッチは半身を失った憎悪の象徴となり、狂気的な執着心をみせます。

▲雨流みねね
もともとが残忍なテロリストで、左目を負傷しさらに凶暴性を増す。
(『未来日記』えすのサカエ、『月刊少年エース』二○○六年九月号、三七項、角川書店)


▲争怒
左目とともに仲間を失い復讐鬼と化す。
(『魔砲使い黒姫』一○巻、片倉・狼組・正憲、四一項、集英社、二○○六年)

 片目隠れヘアにしろ眼帯にしろ、裸眼の方の瞳の眼光が鋭い場合は、伏せた方の瞳が他者に対する拒絶を表し、裸眼は敵愾心を周囲に誇示しています。ヤンキー的な狷介孤高のキャラクターがこれです。なんらかの「業」を背負い、自己犠牲精神の裏返しであることもあります。「ツンデレ」の孤高系と通ずる性質といえるでしょう。


二○○六年八月一○日発行

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