文責・管理人

近年、ライトノベルの表紙で眼帯キャラを見かけることが多くありませんか。とくに2011年に入ってからはオリジナル作品のものが毎月のように刊行されています。どれほどハイペースで増えてきているのか確認したくなったので、その表紙を年代別に並べてみたのが本項です。こうやって並べてみるとわかりやすくなるんですが、明らかに数が増えてきている!
ついにアイパッチブーム到来……ではなく、ライトノベル刊行数の増大と比例しているだけなんでしょうけど。
ライトノベル特有の要因としては、『涼宮ハルヒの憂鬱』以来(2003年、アニメは2006年)、ヒロイン観察日記の様式が確立したこともあげられるんじゃないでしょうか。ラノベの表紙がアダルトビデオの女優物のジャケットそのもののようになったのは、つまりそれだけヒロインのキャラ性に焦点が当ってきているということでしょう。そのおこぼれでアイパッチキャラクタもたまにはスポットが当たる、これでしょうね。
あともう一つ、大きい要因は、『銀魂』柳生九兵衛、『家庭教師ヒットマンREBORN!』クローム髑髏(ともに2006年初登場)の存在でしょう。じつは、アニメ業界では女性の身体の欠損表現を自主規制する傾向が少なからずありました。『円盤皇女ワるきゅーレ』五巻、介錯、スクウェア・エニックス、二〇〇四年の描き下ろしページで明かされたところによると、作中に登場するネスティ―はアイパッチキャラクタにしようとしたが「実はTVアニメだと片目のキャラはNGになる事が多いので」との理由で、つまりアニメ化の際の自主規制に抵触する恐れがあるために片目隠れヘアにしたとのことです。
以下の年代別表紙の枚数を数えていただければ一目瞭然ですが、突如増えだすのは柳生九兵衛・クローム髑髏以降のことです。ここ数年でU局のアニメの性表現のタガが外れてきているのはご存じのとおりですが、大メジャーであるジャンプアニメでアイパッチキャラクタが人気を博したことで、別種の自主規制が緩んできているのかもしれません。

二〇一一年五月追記
2011年の上半期が終わろうとしていますが、現段階ですでに柳生九兵衛・クローム髑髏以降のハイペースを上回る勢いでアイパッチキャラクタが供給されています。ここここにいたって、さすがにこの供給過多を五年前の柳生九兵衛・クローム髑髏に主因を求めるのは無理というものです。他になんらかの要因があるはずです。過去と比べて現在だけにある特徴から考えれば答えは明確ですね。お分かりの方も多いでしょう。
そうです、「中二病」です。
もっといえば、「中二病の流行がピークを迎えつつある」が答えではないでしょうか。
「中二病」という造語はずっと前から存在していたので、ここでは区別するために「厨二病」と表記します。ウィキペディアの中二病の項目でいうと「邪気眼系」というやつです。「中二病」と何が違うかというと、あくまで私見ですが、「クラスの人気者にもなれないボクだけど実は!」という白昼夢に特化したのが「厨二病」。自分の身辺の人間関係ですら満足に消化できないがゆえに、そのフラストレーション。白昼夢の中で卑近なテーマとはかけ離れた非現実的な設定となる。
非力な己にも隠された能力がある。この、「隠された」というところがポイント。邪気眼系とひとくくりにされるのは、「隠された力」を文字通りアイパッチで隠すからでしょう。アイパッチは厨二病の象徴そのものです。『ひみchuの文子さま』に厨二病の妄想に憑りつかれた困ったちゃんキャラ・王ヶ島嵐が登場するんですが、これが当然アイパッチキャラ。目が疼くそうです。
『ひみchuの文子さま』に王ヶ島嵐登場するのが『月刊チャンピオンRED』2009年10月号、『Steins;Gate』10月発売、厨二病アンソロジー『中二病でGO!!』11月。2009年の末からネタにされ始め、2010年の一年間をかけて普及した感があります。
これはあくまで私個人の印象でしかりませんが、「厨二病」のネタ化は「ツンデレ」ムーブメント時と重なります。2004年にネット上で頻繁に使われるようになり、ジャンプ誌上で読切『おとなりさんパニック!!』(「あててんのよ」)。『つよきす』2005年8月、『ツンデレ大全』同年9月。それから一年かけて『週刊プレイボーイ』やファッション誌などの一般誌でも取り上げられるようになります。
厨二病がツンデレと同じ道程を歩むとして、「厨二病」(中二病の意味合いとは違う)の発生を2009年とするならピークを迎えるのは今年。そろそろ女性ファッション誌で取り上げられたりする時期なんじゃないでしょうか(もちろん意味合いは更に変化するでしょうが)。
厨二病ムーブメントのピーク2011年説。以下のラノベ表紙まとめからはその予兆が見て取れますが、さてどうなりますでしょうか。

〜1999年
オリジナル 一作
メディアミックス 一作
今のところこれだけしか発見できず。九十年代はほぼほとんどのラノベの表紙はチェックしていたはずなんですが全く思い出せません。『SMガールズ セイバーマリオネットJ』も表紙にはアイパッチ登場せず。
32bitマシン登場によりキャラクタ消費時代に入ったにもかかわらず意外とラノベではそうでもなかったのかもしれません。
電撃文庫が月産十作以上を刊行するようになったのは90年代末期。それに引っ張られてラノベ市場が本格的に倍々に拡大していくのはゼロ年代に入ってから。
(1998年)(1999年)

2000年
オリジナル 二作
メディアミックス 一作
『十兵衛ちゃん -ラブリー眼帯の秘密-』(1999年四月放送)のノベライズがだいぶ遅れて、この年の暮れに刊行。下巻は翌年一月発売。




2001年
オリジナル 二作
メディアミックス 一作




2002年
オリジナル 一作
『シスター・プリンセス』(テレビアニメ2001年)、『あずまんが大王』(テレビアニメ2002年)がスタートし、超キャラクタ消費時代への揺籃年とも。


2003年
オリジナル 二作
『涼宮ハルヒの憂鬱』が刊行された年で、ラノベのAV女優物ジャケット化が広まる。


2004年
オリジナル 六作 (『モンスターハンター 英雄の条件』はオリジナル作品とした。)
メディアミックス 一作
この年、『十兵衛ちゃん2 -シベリア柳生の逆襲-』放送。




2005年
オリジナル 二作
メディアミックス 三作 (『侍ジュピター』は後ろを向いているためアイパッチは見えない。)
この年あたりから「ツンデレ」という語彙が普及し始める。やがて「ヤンデレ」へ。




2006年
オリジナル 六作
メディアミックス 二作
この年、『銀魂』に柳生九兵衛、『家庭教師ヒットマンREBORN!』にクローム髑髏がそろって登場。翌年、翌々年のJBOOKS版の表紙に。アイパッチブーム到来を予感させるも、劇場映画『デスノート the Last name』でレムの声を演じたのはピーターさんだったことに意気消沈。レムっていちおうメスって原作設定なんですけどね。




2007年
オリジナル 六作
メディアミックス 一作
『君が主で執事が俺で』五月発売。ノベライズが大量に刊行されるがアイパッチキャラ表紙は翌年に持ち越される。人気なかったんだろうか。




番外


2008年
オリジナル 一〇作 (『コスプレ幽霊 紅蓮女』単行本2006年、『シフト』一巻単行本2005年は、この年に刊行された文庫版の表紙でアイパッチ登場。)
メディアミックス 六作
『君が主で執事が俺で』『銀魂』『家庭教師ヒットマンREBORN!』のヒット作三本がそれぞれアイパッチ表紙のノベライズを刊行。メディアミックス作品数でこの年を超えるのは当分無さそう。
一方、この年、アイパッチヒロインが多数登場する漫画『円卓の姫士!』一巻刊行。眼帯マニアにはたまらない作品だったが、ひっそりと全三巻。いや、それがなくてもおもしろい作品だったんですが。



番外



2009年
オリジナル 九作 (『疾走れ、撃て!』三巻はアイパッチを外しながら登場。)
メディアミックス 二作 (『ストライクウィッチーズ』二巻はアイパッチを外しながら登場。)
『ドリームクラブ』発売されるも、当然アイパッチキャラがノベルスの表紙を飾ることもなく、人気なかったんだろうか。




2010年
オリジナル 一〇作 (『召喚教師リアルバウトハイスクール』一八巻、『IS〈インフィニット・ストラトス〉』四巻はアイパッチを外しながら登場。目隠し表紙の『リアル王様ゲーム 〜女子高生.com〜』は番外とした。)
メディアミックス 三作
『家庭教師ヒットマンREBORN!』の次の新刊にアイパッチの姿が消える。はて。




番外


2011年
オリジナル 一七作 (『メガクルイデア』はアイマスク。『フリークス』は文庫版のみアイパッチ表紙、新書版1996年刊行。『ダンタリアンの書架』五巻2010年刊行はアニメ化に合わせて期間限定でアイパッチ表紙に。)
『IS〈インフィニット・ストラトス〉』がアニメ化し大ヒットした年。『Rewrite』六月発売。
上半期だけで前年を超える、かつてないハイペース。ほぼ毎月のようにアイパッチ表紙が刊行される。
が、『銀魂』のノベルス新刊にアイパッチの姿が消える。はて。
メディアミックス 二作




番外


2012年
オリジナル 八作
メディアミックス 三作




2013年
オリジナル 八作



2014年
オリジナル 一五作
メディアミックス 二作





2015年
オリジナル 一一作
メディアミックス 二作


番外


2016年
オリジナル 一四作
メディアミックス 一作


番外


2017年
オリジナル 六作
メディアミックス 一作

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