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想虫懇

スレ番号 タイトル カップング 作者名備考 レス
避1想虫懇猟虫×ハンター♀ 擬人化猟虫×ハンター♀ 名無しさん猟虫=本番無し 擬人化猟虫=エロ有768〜775

※本編は768〜774で終わりです。775はおまけです。

想虫懇


『あー、「今日は素材集めするだけだから、自由に遊んでおいで!」って言われてもなー、特にあても無いってのになー』
『あー・・・獲物いねぇよぉ・・・。嫁こえーよぉ・・・。うぅ・・・』

フィールドに響く二つの羽音。

『あ?』
『お?』

ふらふら飛んでいた猟虫と、グチグチ愚痴りながら飛んでいたアルセルタスが、空中で鉢合わせした。

『なんだ、雌の尻に敷かれてるドM虫か』
『なんだとはなんだオラ、このチビ家畜虫が!』

なんだやんのか、んだコラ、すっぞオラ、などと言いながらガンの飛ばし合いが暫く続いたが、アルセルタスはある事に気が付いた。

『ってヤベエ! コイツ飛んでるって事ぁ、ハンターが近くに来てるって事じゃねぇか!!』
『おいおい、落ち着けって、今日は休みだ休み。あっちはあっちで暢気に素材採集してるだろうし』
『はぁー・・・? 休みだぁ? いいねぇニンゲンの飼い虫は気楽でよぉ・・・』
『まあ、雌にこき使われてるお前らよりはラクなもんだな』
『くそ・・・言ってくれるじゃねぇか。・・・んでもよ、お前らだってハンターにこき使われてんじゃねぇかよ! 大して違わねぇだろ!?』
『まあそりゃー狩猟の時は雇われ猫共みてえに働かされっけどー・・・』

猟虫は顎をきちきち鳴らして笑う。

『俺は溺愛されてっからな。狩りの時以外は快適なもんだぜ?』
『で、溺愛!?』
『狩りが終われば甲殻の汚れを拭ってくれるし、貰える餌はうまいし、夜になりゃ「今日はベッドで一緒に寝よう?」とか言って抱き上げてくるし。
とにかく、しつこいくらい世話を焼いてくるからな。今日だって、「いつも命令で飛んでもらっちゃってばっかだから、自由に飛んでおいで」ときたもんだ』

うれしそうに語る猟虫の話を聞きながら、アルセルタスは思い浮かべた。今の自分の境遇を。
ゲネルセルタスにこき使われ、腐食した落ち葉のようにボロボロな現状を。
獲物がとれないからといって足蹴にされ、移動したいからといって巨体をしょっちゅう持ち運びさせられ、役立たずと罵られ、道具のように扱われ、ゲネルセルタスの機嫌を損ねて捕食される事を恐れる毎日。
猟虫の生活がうらやましすぎて、アルセルタスに涙腺があれば、涙目である。

『で、でもよぉ・・・』

そんな自分が猟虫より勝っている部分なんて、もう、あれしかない。

『お、お前等がメスにありつこうなんて思ったら、ニンゲンにあてがわれるぐらいしかねーんだろぉ? 自由にメス見っけてヤれねーんだろ? かわいそうになぁー?』

食べて体力を回復させる非常食扱いされていようとも、空を飛ぶための便利アイテム扱いだとしても、自分には嫁がいる。奴にはいない。
雄としては勝利宣言できるほどのステイタスである。

『まあ、そうだな。・・・けどよぉ?』

猟虫は触角を揺らし、したり顔で語る。

『俺にゃ同種のよりイイ雌が近くにいるからな。気になんねえよ』

『ハ、ハァ!? なんだそりゃ、ニンゲンがブナハブラでも飼ってんのか? それとも、ランゴスタの女王でも誑かしたか?』

猟虫の周りをぐるぐると、嘲るように飛び回るアルセルタス。
しかし猟虫は余裕の態度を崩さない。

『違えよ、雌ってのはニンゲンだニンゲン。ニンゲンの雌』

『・・・おいおい、ニンゲンに飼われてる奴隷虫ちゃんはとうとう頭がイカれたか!? 種が! 違うって! レベルじゃねぇだろ!! 訳分かんねぇよ馬鹿!! ニンゲンが虫と交尾するわきゃねーだろ大体!!』
『甘いな、ニンゲンってのは年がら年中発情期で、性欲を持て余した奴は同種以外の生き物も相手にするらしいからな。聞いた話じゃ、伝説の古龍と番いになった奴もいるって話だ』
『マ、マジかよ、ニンゲンってすげぇな・・・』

『まあ俺も最初は、甲殻も無いのはどうかと思ったけど、これが案外悪くねえんだよ』
『何がだよ』
『・・・そうだな、知ってると思うが、ニンゲンってのは身に付けてる皮を脱ぐとかなり柔らかい。で、その柔らかさがなんていうか、すごいんだよな。こう、爪の先で軽く押しただけで簡単に食い込む割に、爪を押し返してくる弾力が程良い感じで』
『ほーん、弾力ねぇ・・・』
『そうそう。ニンゲンの、特にメスはとにかく全身柔らかくて、特に胸とかすっげえぷにぷにしてんだよ。掴んだだけで爪が沈み込むし』
『ぷにぷに・・・ってーとあれか、芋虫の腹みてぇなのか?』
『ありゃブヨブヨだろ、一緒にすんな。もっとこう、アイルーどもの脚先に付いてるあれみたいな感じだ』
『あの猫どもの脚先なんて知らねぇよ! ・・・んで、そんだけ自慢げにくっちゃべってるってこたぁよ、もちろん、ヤったんだよな?』

『おう、まあ聞けって』

* * *


その日、狩りから帰還した後、猟虫の主人であるハンターは入浴で汚れと疲れを洗い流し、そのままベッドに直行した。

「ふわー、お風呂上がり暑っついー・・・そうだ、おいでビーちゃん!」

主人に呼ばれ、ビーちゃんと呼ばれたその猟虫は主人の腕にとまった。
ハンターは腕にとまった猟虫を抱きしめ、甲殻に頬ずりする。

「えへへ、ビーちゃんちょっぴりひんやりしてきもちいー」
『暑い! 熱い! それにまだじっとりしてるぞご主人んんん!!?』

触角が濡れて気持ち悪いとか、不満をもらしたところで、猟虫の言いたいことは人間には伝わらない。
猟虫を抱き上げ、ぺたぺたと、濡れた素肌を押し当ててくる。
猟虫の主人は猟虫に対して完全に無防備で、それが嬉しい半面、不満でもあった。
彼が主人に対して抱いている感情が、全く通じていないという証でもあるからだ。

「ビーちゃんだいすきー!」
『あああ、やばい、この感触は、やばい』

彼の主人は彼がそんな感情を抱いているなどとはつゆ知らず、彼女は猟虫に胸をぎゅうっと押しつける。
抱きつかれる事はそれほど珍しい事ではないが、いつもは装備越しだったりインナー越しで、直に素肌で抱かれるのは初めての事だった。
芋虫や猫の掌なんかよりよっぽど柔らかく魅惑的な弾力は、彼を魅了して止まなかった。
しかもおまけに、主人からは、なんだかいい匂いがするのだ。
種を越えてすら雄を魅了するような、そんな雌の甘い匂いが。

『・・・』

そこで彼の、虫にしてはかなり頑健だと自負していた筈の理性がぷっつり切れた。
主人の胸にがっしりとしがみつき、爪の先でぐにぐにと胸をもみしだく。

「ちょ、ちょっとビーちゃん!? やっ、だめぇ! やめてよぉ!」

主人の胸の谷間に頭を埋めた。
猟虫は興奮に激しく腹部を波打たせ、息を荒げる。
さすがに主人も異常を感じたのか、引きはがそうと猟虫を掴む。
しかし、がっしりとしがみついた猟虫はなかなか離れず、胸への刺激も相まって、主人は焦りはじめた。
大体、外れる筈が無いのだ。
狩猟の最中、どんなに動き回っても振り回しても転げまわってさえもしっかりと腕にしがみついている猟虫が、ちょっとやそっと引っ張ったくらいで外れる訳が無いのだ。
こんな状態では、命令したって無理だろう。

「はっ、んんっ、だめっ、だめだってばぁ!!」

汗ばむごとに雌の匂いも増し、更に猟虫の思考をかき乱す。
触角をくすぐるその匂いは、猟虫をさらに興奮させた。
主人は身をよじらせて猟虫をふりほどこうとしたが、その拍子に爪の先が敏感な頂に食い込んでしまった。

「ひうぅっ・・・!!? やっ、ひあっ、やめっ、は、離してぇ!」

すっかり力が抜けて弱々しい声を出す主人の体の上で向きを変え、一番強い雌の匂い、その根源に脚を伸ばした。

* * *


猟虫は、主人との情事をアルセルタスに語って聞かせた。
無論、「ビーちゃん」と、ちゃん付けで呼ばれていることは伏せて。

『んで、それからどうしたんだよ?』
『ああ、それから・・・・・・って、何だこの匂い?』
『あぁ、コレぁ俺の嫁からの命令フェロモンで・・・・・・ヒィ!』

フェロモンを嗅いだとたん、アルセルタスは激しく動揺しだした。

『お、おい、どうした!?』
『よよよ嫁が、いいい、『いつまでグズグズしてんだい! いますぐ獲物を捕ってこれないってんなら、獲物の代わりにアンタに腹に収まってもらうよ!』って、ヒィイ・・・ヤベェ・・・ヤベェよぉ・・・』
『大変だなお前・・・』
『こうしちゃいられねぇ、早いとこ獲物見つけねぇと・・・!』
『お、おう・・・がんばれよ』

アルセルタスは、獲物を求めて勢い良く飛び立っていった。

「おーい、ビーちゃーん!」

それからしばらく後、猟虫を呼ぶ主人の声が聞こえてきた。
猟虫は声に応え、まっすぐに主人の元へと飛び、腕に止まる。

「・・・よし、帰ろっか」

ハンターはモドリ玉をポーチから取り出し、地面に叩きつけた。
だが、当たり所が悪かったのか力の入れ方が悪かったのか、モドリ玉は炸裂する事無くコロコロ転がって何処かへ行ってしまった。

「あっちゃあー・・・歩きかぁ」

まあいっか、と呟いて帰路に就く。その主人の背後、遥か遠くから、聞き覚えのある悲痛な叫び声が聞こえてきた。
どうやら、あの巨体が満足するだけの獲物は手に入らなかったらしい。
主人には聞こえなかったらしいその悲鳴を遠くに聞きながら、猟虫は、アルセルタスに話せなかった話の続きを思い起こしていた。

そう、彼はそれから一気に―――・・・

「やっ・・・やめてぇ、ビーちゃん・・・っ」

懇願する主人の涙声で我に返った猟虫は

「・・・ビー・・・ちゃん・・・?」

一気に、主人の体から離脱したのだ。


それから、朝になって主人と狩りに出かけるまで、繰虫棍の近くでずっと蹲っていた。
何も聞かず、何も見ず、ひたすら意識を閉ざして眠る事だけに集中した。

長く人間と暮らしていると、人間がどういうものなのかがよく分かってくる。
確かに、人間以外と交わる人間はいる。ハンター業をやっている人間にそういう人間が多いのも知っている。
そして、そういう人間が、人間の間でどう思われているかも知っていた。
主人が、そんな風に思われるのは耐えがたい。
いくら主人が大事にしてくれようとも、主人は自分と同じ感情など抱いていないし、抱かない。
自分は主人の所有物にすぎないのだから。

ネコタクに揺られる帰路の途中、主人は繰虫に話しかけつつ甲殻を撫でる。

「・・・ビーちゃん、帰ったら操虫棍を強化してもらうから、今夜は武器屋さんのところにお泊りしてね?」

小さく顎を鳴らして、いつものように、いかにも物わかりのいい忠臣のように返事をした。
しかし、いつもと変わらない筈なのにどこかぎこちない。うまく噛み合っていない気がする。まるで研ぐのを怠った刃物のようだ。

彼女はやさしい。
だからこそ好意を持ってしまったし、だからこそ、傷つけたくなかった。
後悔先に立たずとはよく言ったもので、猟虫の後悔は凄まじかった。
できれば、ただ甘えてじゃれていただけなんだと解釈して、全部忘れてくれないだろうか、などと都合のいい事も考えたが、さすがに主人もそこまで鈍いお人よしでもないだろう。
アルセルタスにあんな話をしたのも、単に半分ヤケになっていたからだ。
せいぜい鬼嫁にこき使われながら、優しい人間に世話を焼かれる俺をうらやましがればいい、程度に思っていた。
今思えば、悪いことをしたと思う。


武器屋の工房の隅で、様々な後悔と自責の念に駆られながら、夜を過ごす。

夜が明けるのが不安だと思ったのは、初めてだった。

* * *


一夜明け、朝。
猟虫の主人は猟虫と操虫棍を武器屋から引き取ると、そのまま狩り場へと向かった。
いつもなら武器を強化した後は、通称『先生』の指導を仰ぐのだが、今日は昨日と同じ、素材ツアーだった。

「今日も自由に飛んでおいで!」

そう言って放たれた猟虫は、ひとまず主人の前から飛び立ち、主人の姿が見えなくなるところまで飛ぶと、適当な梢にとまった。

猟虫の胸中を、ある不安がぐるぐると渦巻いていた。
もしかしたら、このまま捨てられるんじゃあないだろうか、と。
だってそりゃあ当然だろう。
あんな事をされれば、いくらやさしい主人だろうと、嫌悪感を抱いていたっておかしくない。
大概の事ならば主人は許してくれるだろう。しかし限度がある。
こんな接しづらい奴を武器にして狩りなんてやりたくもない筈だ。

猟虫は決意した。
謝ろう。
例え言葉が通じなくとも、全身全霊で反省と謝意を示せば、少しくらい通じるかもしれない。
可能性さえあるなら、主人のそばにいられるならなんだってする。
通じなければそれまでだ。許してもらえなくてもそれまでだ。どこへなりとも去ろう。

決意を胸に、猟虫は飛び発った。

* * *


「・・・ん、っふ・・・あ・・・っ」

なんで自分はこんなことをしているんだろうか。
熱に浮かされたような思考の中、彼女はぼんやりと思った。
それでも、動かす指は止められなかった。

ベースキャンプのベッドの上。
装備を外し、インナーもはだけさせたあられもない姿の女ハンターは、自らの胸を揉みしだいていた。

昨日からずっと、身体が熱い。
一昨日の夜は寝付けずに、ネムリ草を少し使って無理矢理眠った。
しかし目が覚めても火照りが収まらず、結局ベースキャンプで・・・
そして昨夜は、結局、疲れて眠るまで・・・
こんな状態じゃ、狩りなんて、できない。

「んっ・・・、ふぅ、う・・・っん」

気持ちいい。でも、これじゃ足りない。
何が足りないのかは思い当っていた。けれど、考えないようにしていた。
だめだ、そんなのは、絶対。
・・・でも。

このままでは満たされない。甘く疼いて求める身体を、抑えきれない。

「・・・ビー、ちゃん・・・っ!」

囁くように求めるものの名前を口に出してしまえば、思い浮かべてしまえば、もう止まらなかった。
相棒の猟虫がじゃれてきたあの時を思い出して、身体が快感に戦慄いた。

こんなの、駄目なのに。
きっと、じゃれてふざけていただけで、そんなんじゃ、ないんだから。

でも、もし、もう一度身体に触れてくれたら。
そして、あの時触れられなかった、もっと敏感なところを触られたなら、どうなってしまっていただろう。
そしてもし、猟虫が、この都合のいい妄想で考えているのと同じように、自分を思っていてくれたなら。
そんな妄想が頭を支配し、彼女を昂らせてゆく。

「ビーちゃん、ビーちゃん・・・!」

もし昨日、繰虫棍を武器屋さんに預けていなかったら。ビーちゃんがそばにいたら。
そしたらきっと、自分は・・・

「はぁ、ああっ、あ・・・ん、っん、く・・・っ!」

妄想の中の自分は、嫌だ止めてと口では喚きながらも、もっと触って欲しいと躰をくねらせ、悶えていた。
あの爪が食い込む様を想い描いて秘所に滑り込ませた指を動かせば、ぐちゅぐちゅという淫らな音とともに、強烈な快感が背筋を駆け上がってくる。

「・・・いっ!! ・・・っ・・・ぅ!」

必死に声を押し殺し、びくびく跳ねる躰を押さえ込み、静かに達した。
大声を出せば、猟虫が戻ってきてしまうかもしれない。
汗ばんだ身体を弛緩させたまま、ベッドの上でぐったりと寝そべった。
しかし、快楽の絶頂に至り、自己嫌悪と後悔に胸中を蝕まれて尚、彼女の心も体も、まだ満たされないとばかりに疼いている。
あの時からずっとだ。
こんな状態で、どんな顔をして猟虫と接すればいいというのだろうか。


* * *


「・・・ビーちゃん・・・」

彼女が小さく名前を呼んだその時。

『うぉおおおおおお!!! ご主人んんんんんん!!!』

興奮しきった激しい羽音を響かせながら、ベースキャンプの近くの茂みから、猟虫が飛び出してきた。
そのまま猟虫は主人の方へ、まるで弾丸のようにすっ飛んできた。

「ひぇっ!? び、ビーちゃん!!?」

猟虫は、実は少し前から茂みに潜んでいたのだった。
そりゃあ出て来られよう筈もない。
決意を胸に戻ってみれば、主人があられもない姿で快楽を貪り、雌の匂いを漂わせているのだから。
その上、嬌声に混じって自分の名前が聞こえてきた。何度も何度も。
猟虫とてその意味が分からないような朴念仁ではない。
胸中を渦巻いていた不安も決意も理性もなにもかも、全部まとめて吹っ飛んだ。

だって仕方ないだろう。
空腹に苛まれている時に、素晴らしく食欲をそそる御馳走が目の前に据え置かれ、どうぞ召し上がれと言われたようなものだ。
こんな状況で冷静でいられるなんて雄じゃねぇとばかりに、箍の外れた猟虫は飛び出した。

『うぉおおおお!! ご主人ー!! 好きだぁああ!!!』
「えっ、やっ、やだっ?! 駄目っ! み、見ないで! 来ないでぇえ! ビーちゃんっ!!」

しかし、突然のことに驚いた猟虫の主人はとにかく、あられもない猟虫に見られたくない一心で、とっさに手近にあったものを投げつけた。
飛んでくるものを華麗に避けつつ主人に向かって飛ぶ猟虫。
しかし全ては避けきれず、飛んできたアイテムにぶつかってしまう。

ぼふん、という音と共に、緑の煙が視界を埋め尽くした。
猟虫の主人が我に返るのと、猟虫がいた場所から何か大きなものが落ちる音が聞こえてきたタイミングは、ほぼ同じだった。

「び、ビーちゃん?! ごめんね、大丈夫だった!?」

立ちこめる緑の煙を振り払って猟虫を探す。
しかし、見つかったのは

「いたたた・・・、くそ、背中から落ちちまった、羽折れてねえよな・・・!?」
「へっ!? あれっ!? ど、どこのどなたですか!?」
「? 何を言ってるんだ? ご主人」

煙が晴れて出てきたのは、見知らぬ男だった。

* * *


「だっ、誰なんです!? 一体どこから来たんですか!? なんで全裸なんです!?」
「誰って・・・誰に言ってるんだご主人? ・・・ってうわぁなんだこれ全身がグニャグニャしてるうぅうう!? 触角も羽も無いぃい!? ていうか人間になってるぅうう!?」

見知らぬ男は自分の体を見て、いきなり慌てだした。
全裸男がどたばたとしだしたのを見て、猟虫の主人も慌てだした。

「うわわわっ、ちょっ、ちょっと!? そんな格好で動き回らないでください! 服はどうしたんです服は!!」
「俺は服なんて最初から着てないぞご主人!?」
「ええっ!? そ、そんなの変態じゃないですか!」
「変、態・・・? ご主人、俺は変態なら済んでるぞ? 成虫なんだからな」
「わ、訳分かんないこと言わないでください! 大体、ご主人ご主人って、私はあなたの主人になった覚えなんてないですよ!?」
「そんな! ご主人は俺のご主人だろ!? ・・・ああ、この姿じゃあ分からないのか・・・!」
「何をごちゃごちゃと・・・。あぁ! そんなことより、あなたが居た辺りに猟虫が居たはずですけど、知りませんか?」
「いやだからそれが俺なんだご主人」
「・・・ふざけないでください。あなたのどこが猟虫なんですか!」
「だから、多分さっきの緑のあれで人間になったんだ! 信じてくれご主人!」
「きゃっ?! そ、そんな格好で近寄らないで!」
「何で・・・、何で分かってくれないんだ・・・ご主人・・・!」

その場を離れようとする猟虫の主人に追い縋る男。
猟虫の主人は足を掴まれ、ベースキャンプのベッドの上に倒れ込んでしまう。

「や、やだやだ・・・っ! ビーちゃん、助けて!」
「だから、俺がそのビーちゃんなんだ!」

身動きのとれない中、全裸の男が迫ってきているという恐怖に錯乱し、男の頭を殴り付ける。

「痛っ! 痛い! やめてくれご主人!」

猟虫の主人はひたすら猟虫の名前を呼びながら、半泣きで、男をひっぱたき続けていた。
男はしばらくひっぱたかれるままになっていたが、このまま殴られ続けているわけにもいかないと、男は猟虫の主人の腕を掴んだ。

「頼む、分かってくれ・・・ご主人・・・! 本当に、俺は・・・」
「やっ!? は、離し・・・・・・・・・え?」

猟虫の主人は、縋りつくように掴まれたその腕を、ふりほどくことができなかった。
掴まれた右腕に感じる感触は、確かに人間の手の感触だというのに。
でも、確かに感じるこの感覚は、ハンターになってからずっと感じていた、なじみ深いもので

「あ、れ・・・何で? ・・・ビー、ちゃん? ほんとに、ビーちゃんなの?」
「・・・だから最初っから、そう言ってるじゃないか、ご主人」
「ご、ごめんね、分かってあげられなくて・・・。・・・大丈夫? 痛かったでしょ?」
「平気だ、ご主人。俺だって分かってくれただけで十分だ」
「・・・でも、どうしてこんな姿に・・・」
「俺にだって分からねえよ」

あらためてまじまじと男を見る。

「ふふっ、変な感じ。さっきまで腕にとまれるくらい小さかったのに、今は私よりおっきいなんて」
「・・・ご主人・・・」

猟虫が主人の笑った顔を見るのは実に一昨日ぶりで、

「ひょえっ?!」
「なんだ!? どうしたご主人!?」
「て・・・手に、その、あれ、当たってるんだけど・・・」

意図せずして体の一部がたかぶってしまうのも、仕方のない事だった。

そして、猟虫の主人は、自分がさっきまでどんな状態だったかを思い出した。
顔は火照り、躰も、思い出したように疼き出す。

「・・・ねえ、ビーちゃん。・・・この間の、夜のことなんだけど・・・」
「・・・一昨日か?」
「あれって、ただじゃれてただけ? ・・・それとも・・・」

はぐらかすように尋ねた問の答えは、明白なものだった。

* * *


「んっ、あ・・・っ、んんっ」
「人間の指って便利だな。すごい揉みやすい」
「何言って、ん・・・っ、もう、ビーちゃん、胸ばっかりっ、んんっ、あぁ・・・っ!」
「ん? なら、もう挿れればいいのか? ご主人」
「・・・うん、いいよ。慣らしながら、ゆっくりね?」
「人間の体ってのは難しいな。虫だった時より自制が効かない」

種が違ってさえも魅了された雌の匂いは、同種となった今ではもはや、直接脳を焚き付けられているかのようで
虫の体だった時は勝手に上がる事なんて滅多になかった体温が急激に上昇して脳味噌が煮えそうだし
何より、人間の体は欲望に対して実に忠実だった。
さっきから、充血しっぱなしの生殖器が痛いほどに疼いている。

「や、やさしく、してね?」
「言われなくともそうする。けど、どうにも、どこもかしこも柔らかすぎて不安になる。触ってて気持ちいいけど、力を入れたら壊しそうで怖い」
「・・・そこまで脆くはないから、大丈夫」
「わかった。でも、ほんとにいいのか? ご主人。俺みたいな猟虫が番で」
「もちろん。・・・猟虫でも人間でも、私、ビーちゃんが大好き」

そして、ぎゅーっと男を抱き寄せた。
お互いに初体験ではあるものの、人間初心者の元猟虫をその主人が導く形で、体を重ねてゆく。

「ここが生殖孔でいいんだよな? ・・・挿れるぞ」
「んん・・・っ、く・・・ぅ・・・」

こじ開けられる苦痛と内から押し広げられる違和感に喘ぐ。
しかし、これこそが待ち望んでいた感覚だといわんばかりに、体は貪欲にその刺激を求め、順応してゆく。

「ご主、人っ、大丈夫か?」
「う、ん、平気・・・っ」
「本当か? 生殖孔から体液がこんなに漏れてるが」
「っ!? み、見せなくていいから! 大丈夫だから!」
「そうか・・・人間は水っぽいもんな」

元猟虫は何かを思いついたように、主人の素肌に唇を寄せた。

「ひゃ、っあ、ちょ、ちょっと、ビーちゃん」
「何だ、ご主人? ご主人だって、俺の甲殻にいつもやってるじゃないか」
「それは、そう、だけど・・・んむぅっ!? ・・・っぷは、く、口には、してないよぉ?」
「・・・酒場で見かけた人間の番はやってた。・・・嫌だったか?」

首を傾げる仕草が、猟虫だった頃とおんなじで、とても愛おしくなって、彼女の方からも猟虫に口付けた。

「っ・・・そろそろ、出そう、なんだが・・・」
「いい、よ、私も、もう・・・っ!」

生殖器をぐっと奥に押し込み、雄は最奥に精を放つ。
快楽の絶頂に細く悲鳴のような声を上げながら、雌の躰はそれを受け入れた。

出し切って萎えた生殖器を塗れそぼる秘所から抜き取り、白濁した体液まみれの体を清めるのもそこそこに、満たされた感覚とやり遂げた充足で脱力し、二人そろってぐったりとベッドに横たわった。
が、何かを思いついたように元猟虫は体を起こし、若干興奮気味に主人に話しかける。

「なあ、ご主人」
「なあに?」
「卵と幼虫の世話は俺も手伝うから、心配するな」
「へ?」
「人間は育つのに時間がかかるって聞いたことがあるからな。これからは俺が獲物を狩ってくる。人間の雄はそういうもんなんだろ? 猟虫だった時は無理だったけど、人間の体なら出来るだろ! で、いつ生まれるんだ? いくつ産むんだ? やっぱり巣の中に産みつけるのか? だったら早く巣に帰ったほうがいいのか?」

目をきらきらさせながら、息も荒く訊ねる元猟虫。
猟虫の主人は少し申し訳なさそうに答えた。

「ビーちゃん、ええとね、人間は卵では生まれないし、今日は大丈夫な日だから、多分妊娠もしないと思うの」
「そうなのか!?」

あからさまに落ち込む元猟虫。

「あ、で、でも、ビーちゃんが人間になったんだから、ハンターとして、一緒に狩りに行けるよ? だから子供とかはその・・・仕事が落ち着いてから、ね?」

ちょっと渋ったが、それもそれで楽しそうだと、元猟虫は納得した。

「それと、ビーちゃん。番なら私のこと、ご主人って呼ばずに、ちゃんと名前で呼んでね?」

「・・・ルト」
「・・・ふふふっ、なーあに? ビーちゃん」

「俺はいつまで『ちゃん』付けなんだ?」

「・・・だめ?」

かわいいのに、と、少し悲しそうな表情を見せてしょんぼり抗議する。
・・・潤んだ上目遣いになんて、勝てるわけがなかった。

「・・・他の猟虫と人間の前以外なら、ちゃん付けでいい」

ビーちゃん大好き! と、猟虫だった頃の自分のように腕を抱きしめて頬を寄せる元主人の笑みに、もしかしたら自分にもいつか、アルセルタスのように尻に敷かれる日が来るのだろうかという、ちょっと幸せな不安が脳裏をかすめるのだった。




おまけ


『うぅう・・・、今日はなんとか仔アプトノス一匹で許して貰えたけどよぉ・・・。辛ぇなぁ・・・』

今日も今日とて、アルセルタスはゲネルセルタスのため、餌を探し回っていた。

『何か腹の足しになるようなもんは落ちてねぇかなっと・・・・・・ん? 何だこりゃ』

アルアセルタスが拾ったのは、つい先日、ハンターが落っことしていったモドリ玉だった。

『こりゃあ、ハンター共がどっかに逃げるときに使ってるやつだよなぁ? なんだ、食えねぇならいらねぇなぁ・・・』

しかし、モドリ玉を投げ捨てようとしたその時、アルセルタスにある考えが浮かんだ。

『・・・あいつが怒ってる時にこれ使ったら、俺、逃げられんじゃねえか? もしかして』

そう、ゲネルセルタスが怒ったらこの緑の玉で一時撤退、あとは機嫌が直るまで、どこかに潜んでいればいい。

『そうなりゃ、いい拾い物かもなぁこりゃ』

アルセルタスはモドリ玉をこっそり隠し持ち、また、獲物を求めて飛び立っていった。


つづく?
2015年03月23日(月) 18:17:20 Modified by sayuri2219




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