16 神秘家列伝 其の壱(1)
- 1 mike3854 2006/12/28(木) 23:59:52 ID:5iDha9Ur
- 神秘家列伝 其の壱（角川書店)のあとがきで、荒俣さんが面白いことを書いています。水木さんの死生観がうまく表現されているので、ここに抜粋します。
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15年前の水木氏は、死ぬことがこわいお方だった。妖怪も、ひょっとするといないかもしれない、と正直に思うお方だった。なるべく仕事から開放されて遊びたい、と思うお方でもあった。
ところが7年前あたりから、死んだあとも生きているときと同じ暮らしがあって、生きているとは「ゆっくり死んでいる」ことにほかならぬ、という死生観に思い至られた。妖怪は「見えない存在」で、この見えない存在を具体化しようとした人間の努力が、妖怪話や妖怪文化を築いた、と悟られた。また、自分は見えない世界の力に生かされ、妖怪を広め伝える仕事を依頼されている、と納得されるようにもなった。
さらに3年前から、老いるとは、自分をどんどん神に明け渡すことであって、ボケる事は楽しい、と明言されるようになった。もう私は死んでいる、と驚くべき発言をされて、わたくしたちを仰天させることも多くなられた。また近年は、妖怪だけでなく世の中の不思議にビックリされるようになった。先日は、ついにこのビックリする能力こそ、宇宙の神秘に通じた古代人の重要な資質だったという発見に至られている。ビックリしたり、面白がったりする力を失った「おもしろ音痴」こそ現代の業病だとも指摘された。
おもしろ音痴！
この警句こそ、水木氏が示した最新の金言である。おもしろいことがわからないことほど、不幸なことはない。妖怪とは、いつもビックリしていられる人の魂を指しているのである。
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2008年09月20日(土) 22:03:38 Modified by mike3854