ガイドライン作成の手引き
コクラン共同計画ハンドブックV5とGRADEシステムの解説 動画でGL作成手順解説
- ガイドライン作成に関しての誤解:EBMを実践する人が、ガイドラインとかSRの論文をまとめる能力があるのではないということです。EBMの実践に必要なEBMの手順と、ガイドラインやSR作成の手順は、明確に異なります。特に、SR作成の手順は、やはり研究ですから、研究者用の手順で、臨床医の手順じゃありません。もちろん、PICOの立て方から検索方法まで、まったく異なります。
- ガイドラインの作成は、Minds 診療ガイドライン作成の手引きに従うが、実際の手順が書かれていない。そのため、ここにまとめてみました。SRについての詳細は、系統的レビュー作成の手引きを参照してください。Minds診療ガイドライン作成の手引きに、なぜ、このようなことが書いてないか?それは、簡単です。お金を払って、委託しているからです。お金さえあれば、翻訳・アブストラクトテーブルも作ってもらい、チェックするだけです。たとえば、その業務内容はここに書かれています。なぜかエビデンスレベルの判定が大変だったとまで書かれており、えっ、そんなこともホントはやっていたのではないか、と推測させる文章が随所にあり面白いです。また、PQの患者インタビューも調査会社に委託(協力だというかもしれませんが)してしまう学会もあります。すなわち、お金ですよね。リンク集が、ここにあります。
- この顛末記を読むと、。○○教授たちのそうそうたる名前が並んでいても、GLなんてものは、実際は、ここのような委託会社がほとんど作っている産物だと疑ってしまいます。ですから、Mindsの手引き書には、具体的な手順がないのです。
- さて、これらの情報を読んでも、4点、最新の事が書かれていません。ネットで検索するとみつかるので、充分に勉強してくださいね。
- GL作成そのものに患者が参画する(外部評価でない、また、患者向けパンフレット作りでもない)。
- CQごとに検索式を立ててSRを行う。
- 実際の患者より、ペイシェントクエッションを把握する(そして、クリニカルクエッションに反映させるか、そのまま使うかは不明)。
- エビデンスレベル・エビデンスの質と推奨度の判定が、GRADEシステムを利用するようになってきている。
I:仕込み
- 委員の選定と、予算や文献整理などの補助員の確保。
- 主旨を作る。特に、目的を、最終的にガイドラインとして発表できる程度のレベルで文章化する。
- これまでにガイドラインがあるのなら、周辺のガイドラインも含めて集めて、違いを明文化します。
- QC形式なので、QCの素案を作る。この時点では、案で、作業を通じて変わることが多いです。どのQCから行うか、順番も作ります。
- 代表的なQCについてのみ、SR(系統的総説)の手順で、エビデンスを探す。詳細は、別記。
- すこし、あたりをつけて、検討する。あたりの付け方は、
- まず検索式がいい加減でも少し検索する、
- 選択基準で論文が選択できるか、
- エビデンスレベルをつける、
- このあたりは専門家が作るので、自分の知っている論文を数編集めて、実際にQCに解答してみる、
- このポイントは、実際に「○○治療が推奨される(グレードB)。」のように、書いてみることです、
- 書けなければQCを再検討する、などです。
- ある程度の素案がなくては、患者代表の方など、まったく検討の余地がなくなってしまう。また、組織が大きくなると、小回りがきかない。
- また、メールのやり取りが頻回になります。これのまとめが大変です。メールでどこまで書いたかがごちゃごちゃになります。また、メールも引用の>記号ばかりになって、それをなおしたりするマメな性格でないと続きません。だれかが、こまめに議論をまとめないといけません。また、議論にならない(だれも発言しない)ことも多くて、リーダーシップをとる人が必要です。
- Mindsの手引きや、Agree評価など、また、京都大学の中山先生の論文などで勉強する。さらに、系統的レビューの本を読んでも勉強必要(メタ解析の統計の本は読まないこと!、EBMの検索法などもGL作成には有害情報です)。
- 患者代表のお願い、開業医代表のお願いなど、いろいろなことを決めなければなりません。GL作業部会・担当を参考にしてください、いっぱいありますよ。
II:正式スタート→GL作業部会・担当
- あらためて、委員などの組織編成。この時点で、一般開業医・患者代表などが入る。
- 患者の参画は、障壁が大きいが重要ポイントでもある→ガイドライン作成に患者参画
- 委員に、今回のGLで利益を受ける人がいないか(特に薬剤)。また、各人が利益を得ないことの同意書。
- 外部委員会の設置。
- 患者アンケートや開業医アンケート、グループインタビューなどを実施。→Clinical Question (CQ) 作成
- あらためて、Iの3−5を委員会で検討する。
- 推奨エビデンスレベルを、どの評価法で行うかなどを決定する。
- プロトコールの公開。
III:実際の作業
- 集めたプロトコールの意見を集約して、プロトコールの書きなおし。
- ここからしばらく、SRの作成手順に準じます(EBMの手順ではない)。
- 検索←EBMの検索と違って、ひたすら感度を上げて、選択基準で選択します。
- Included studyとexcluded studyの選別。アブストラクトテーブルなど。
- 質の検討。いわゆるエビデンスレベル。
- 専門医の意見のエビデンスをまとめる。SRでは、必要ないですが、GLでは、やはりコンセンサスも利用します。
- 4と5の情報を使って、エビデンスを整理。
- エビデンスに、推奨レベルをつける。一般開業医で実施不可能なエビデンスは、エビデンスレベルが高くても、一般開業医用のGLでは、推奨レベルは下がります。
- まとめた文や表を作る。
- また、他のQCも続けておこなうなら、上記を繰り返す。
- 全体の文章を作る。
- さらに、一般開業医向け・患者向けに、図を盛り込んだ、フローチャートのようなまとめを作る。
- ガイドラインの素案完成。
- 外部評価の検討もする(Agreeなど)。
IV:評価
- ガイドラインの素案公開。
- 学会などで意見を、一般の会員などから聞く。
- 実際に、ガイドラインに沿った治療ができるか、検討。
- ガイドラインの改正。
- ガイドラインの確定版の公開。
- 患者からの「わかりやすさの評価」、受診行動の変化などのアンケートもしくはインタビュー調査
- 次回の改訂作業の準備。3〜4年毎に改訂作業が必要です。
V:追加
- ガイドラインを本にして販売して印税を学会にまわす。
- ガイドラインを小冊子にして医薬品会社のMRの宣伝としてもらって、印税を学会にまわす。
- 解説書を作って、印税とする。
- 雑誌などの対談にでる。
- 冗談は、さておき、せっかく作ったGLだから、使ってもらうようなマーケティングを考える。
2008年03月12日(水) 21:29:28 Modified by mxe05064