歯科医院・歯科医師について
- ここでは、こんな論文があるという紹介です。歯科医院の説明を歯科医師の僕が行っても、偏見が入るので、個人個人の方が、自分で判断してください。そのため、論文の記載が中心に記載しますので、内容は高度になります。僕が、良い悪いの判断はしません。なぜなら、臨床の場面での質の高い論文がないことが多いので、できないのです。もっとも、論文の選び方に、僕の私見が入っているかもしれませんので、注意してください。全般的なことだけでなく、いろいろな歯科医院で宣伝に使われている、新しいシステム・器械・材料についも記載します。
- もっとも、2級インレーを作りまくるとかラバーダム(ラバーダムをしても消毒しないというのは、やはりダメ)をしないとかいう、基本的なことは、論外としています。
全般的なこと:
- 「忙しい・広告が多い・シーラントに消極的」な歯科医師は、う蝕修復(すなわち、削って詰めること)を、過剰に行う傾向がある。
Grembowski D, Fiset L, Milgrom P, Forrester K, Spadafora A. Factors influencing the appropriateness of restorative dental treatment: an epidemiologic perspective. J Public Health Dent. 1997 Winter;57(1):19-30. click
カリソルブ:無痛虫歯治療を実現するカリソルブ
- 「むし歯を削らず溶かして治療 カリソルブ. 初期のC1、C2程度の虫歯であれば、削らず、 カリソルブで治療できます。」とあります。
著者 | Ericson | Nadanousky | Rafique | Fure | Maragakis | Lager | |||||||
Factor | drill | carisolv | エキスカ | cari | drill | cari | drill | cari | drill | cari | |||
時間 | 分 | 4 | 10.4 | 8.6 | 9.2 | 6.3 | 5.4 | 4.5 | 5.9 | 12s | 10 | ||
麻酔 | した% | 43 | 3 | 11 | 6 | 23 | 12 | ? | 0 | ||||
疼痛 | 軽度% | 91 | 98 | 95 | 97 | 4 | 91 | 45 | 100 | ||||
RCT? | sizeOK | crossover | 1Y同じ | 乳歯 | in vitro |
- Nadanouskyらのように、エキスカで無麻酔でも除去可能なう蝕が対象です(すなわち、もともとほとんど削らなくて良いう蝕のこと)。また、エナメル質が張り出している観察不可能なところは削った方が良いです。
- Lagerら、除去後の象牙質の菌を培養:superficial dentineには差があるが、floor dentineには差がなかった。
- Fureらが1年後の予後に大きな差がなかったと報告している。これは重要で、却って2次カリエスが増えては、意味がない。このような論文の追試が待たれる。
ダイアグノデントDIAGNOdentで虫歯検査
- 「目に見えない虫歯を見つける虫歯測定器、ダイアグノデントという世界初の虫歯測定器(虫歯の程度を数値で表す装置)にてその歯の状態を把握し、後日経過を見ていく参考にします。」などとあります。
残念ながら、陽性反応適中率が抜群という論文がありません虫歯の診断 |
- 有病率が高い集団なら、陽性反応適中率は、そこそこですが、予防歯科に来院するような有病率が低い集団では、陽性反応適中率が20%以下になっているようです。
3Mix―MP法
- 「削らない・神経をとらない治療です」と書かれている。
残念ながら、内服薬のカプセルを開いて使うというもので、薬事法違反になります | http://hatahira.com/ |
- 薬事法違反の場合、効果がある・なしに関係なく、有害事象などが生じたとき患者さん保護が危ぶまれる。
目立たない入れ歯
- 「バルプラスト」というのでしょうか。「ノンクラスプデンチャー」ともあります。ともかく、クラスプのかかるアンダーカットに床縁を伸ばす方法です。
たしか、クラスプの設計には、歯牙が清掃状況も含めて設計するのだったが、このノンクラスプデンチャーが、予防歯科的にも問題ないという論文を、探せていません |
- 補綴系は、よく知りませんが、ホワイトクラスプというのもありますね(太い)。
メタルフリーで快適な生活
- 審美の面から、金属色がみえないメタルフリーや、アレルギーがないからという理由でメタルフリーが推奨されています。
コンポジットレジンインレーが金属の修復物より2次カリエスなどより優れているという明確な結論がでていません | 口腔内金属によるアレルギーの頻度は少ないようですが、関係するという論文もあるので、扁平苔鮮に紹介しました |
- 臼歯部CR系修復は技量の差が大きく、AFより優れているとはいえないので、問題のないAFを審美的理由だけで再修復するのは倫理的に疑問だカリエスの治療。
- 最近は、CR修復はわりと良いが、CRインレーは良くないという論文がありますね。
レーザー治療など最新の歯科治療
- 「3台のレーザーを用途に合わせて使っており、レーザーを使わない日はありません。臨床の幅が本当に広がりました。」とあったり、「レーザー機器は、ほとんどの処置が無痛および無麻酔で可能です。」から、「レーザーを当てることで、虫歯になりにくい強い歯にすることができます。」まであります。
レーザーを当てたほうが、う蝕になりにくいという論文を探せていません | レーザーで歯周治療の場合、セメント質も除去されるかどうか、まだまだ研究中だったと思いますが |
- 最新には違いないのですが、いろいろ調べても、研究中のことが多いような気がします。レーザーのが、長期予後が悪くないかも不明です。また、私論ですが、顎炎での切開の場合、開業医の先生は波動がしっかり触れてから切開しますので、もともと切開時の疼痛は少ないでしょうね。また、アフタ性口内炎の治療効果の論文もみたことがないので、どなたか教えていただけると幸です。
- しかし、レーザーは、これから開発が待たれます。楽しみに待つしかないようですね。
- 下記のまとめ論文でも、従来の手法と比較して、明らかな利点があるわけでないと書かれていました。しかし、その将来性には、期待したいとも書かれています。
レーザーのまとめ論文 Free. DOUGLAS N. DEDERICH, B.S.E.E., D.D.S., M.Sc.,Ph.D.; RONALD D. BUSHICK, D.M.D., Ph.D., M.S. Lasers in dentistry Separating science from hype J Am Dent Assoc, Vol 135, No 2, 204-212. click
3DS(Dental Drug Delivery Syste)
- 「3DSとは 『 デンタル・ドラッグ・デリバリー・システム 』 の略で虫歯や歯周病を簡単に抗菌剤で除去し再発を予防する方法です。」などと紹介されている。
残念ながら、臨床研究で、むし歯が抑制できたという論文を探せていません |
- もっとも開発者たちは、簡単に予防できる画期的な方法とは言っていませんよ。実験的には、ミュータンス菌が減るそうですね。CHXを使用中は良いが中止すると増える、という論文を、根面カリエスに紹介していますので、少し気になるところです。ともかく、臨床データが速く欲しいですね。日本発なので、良い結果を期待しています。
PMTC(歯科医師または歯科衛生士が器械を使って行う歯面清掃)
- 「PMTC 1回 ¥5,250」と一回のみの値段が書かれている。
残念ながら1回のみ行って、予防・審美的に効果があったという論文がなかった |
- メインテナンスの間隔も参照してください。
3ヶ月に1回、定期的にクリーニング(PMTC)
- 「定期的なメインテナンス 治療が大事です。 できれば、1ヶ月〜3ヶ月に1回程度・・・」のように、3ヶ月が多いです。
メインテナンスの間隔 | NICE guideline | もともと6ヶ月であったが、3ヶ月から24ヶ月の間で患者と医師間の相談で決めていくのが良いということが推奨されるようになった |
- 一律何ヶ月と定期受診をすすめることは、推奨されない時代みたいです。
- 毎回、スケーリングしても歯が削れるだけです。拡大鏡などで、ポイントのみの清掃をお願いしたいですね。
ドライマウスの検査
- 「口腔乾燥症(ドライマウス)は、超高齢化社会を迎えるわが国 にとって重要な課題です。」などと書かれています。
ドライマウスの有効な治療の研究が探せていません |
- シェーグレン症候群は唾液を増やす内服薬がありますが、ドライマウスだけの方には適応がありません。オーラルバランスなどは、僕も使っていますが、緩和させるだけです(これすら、一般の健康な方への論文不明)。治療に対症療法しかないのに、どうして自身を持ってドライマウスを治療しようと書けるのか。その対症療法すら知らずに困っている方が多いので、啓蒙のためでしょうか。また、ドライマウスが多いのは、50歳代以上の女性の方ですね。
体に優しいデジタル・レントゲン
- 「放射線量を通常の半分以下に抑えた、体に優しいデジタル・レントゲンを使用しています。」などとありますが。
かんじんのクラウンの下のカリエスなど、差がないという論文があります虫歯の診断 |
- 僕の、個人的印象ですが、従来の写真のがみやすいです。しかし、時々、デジタルのがわかることもあるので、微妙です。もっとも、目的意識を持った写真をとることのが大切ですが。まあ、デンタル1枚が、CT一枚と、いやいや胸部写真1枚と比較して、どれだけ線量に違いがでるのか疑問ですが。もっとも、国民の総線量を減らすということから考えると、デジタルも良いと思います(作成のエネルギーの消費に関しては不明ですが)。
痛みがない麻酔を実現する電動注射器
- 「コンピューター制御により注射開始から注入速度がゆるやかに上がる痛みのない理想的な注射器です。」などとあります。また、バイブレーションしながら行える注射器もありますね。
- 確かに、良いと思いますが、手で触るところの消毒は、どうするのでしょうか?日本歯科評論増刊2002の清潔な歯科医院の実践のp92ぐらい徹底して行わないといけませんので、大変です。
パタカラ「ユーミー」で口元をひきしめます
- 「表情筋を活性化、歯周病や口臭予防、前頭葉の血流アップで脳の老化防止や痴呆症の予防、口呼吸から鼻呼吸へ」などが書かれています。
英語の臨床試験の論文がありませんでした |
- うーん、論文がないのに、本がでている?
アンチエイジング
- すいません、まったくわかりません。いろいろと調べたのですが…。いったい、何なのか教えてください。
リラックスしたゆとりの空間
- 残念ながら、個室でなければ、まったく、時代に反していますので、注意して観察されると良いと思います。
まとめ
- それにしても、多くの歯科医院のHPで、「当院は、○○をしています!」と宣伝されている、最新の技術・装置に、エビデンスが少ないことがわかりますね。特に長期予後がないと、何とも薦められません。もっとも、こうしている間に、新しい論文がでているかもしれません。後は、自分で探して、そして、考えて、歯科医院をお選び下さい。
2007年08月13日(月) 08:49:50 Modified by mxe05064