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09/06/10
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メールの時だけ無口っ娘(仮題)

「え?」
 洋一くんの言葉に、私は目を丸くした。
「だから、メール嫌いなのかなって」
 少し考えてから聞き返す。
「どうしてそう思うの?」
「いつも内容が短いから」
「……普通、だと思うけど」
「そうですか?」
 洋一くんは携帯を取り出して受信フォルダを開く。
 瞬間、私は顔が紅潮するのを感じた。
「『うん』『ううん』『違う』『いいよ』『待ってて』……さすがにそっけなさすぎると
思いますよ」
「……」
 顔が曇るのが自分でもわかった。
「いや、責めてるわけじゃないです。ただ、舞子さんいつも明るいのに、メールだと
極端にそっけなくなるから何かわけがあるのかな、って」
「……別にない、よ」
「ならいいですけど」
 洋一くんは多少怪訝そうにしつつも、あっさり引き下がった。
「……」
 ちょっと不意打ちな質問だった。
 理由と言うか、まあ少し思うところがあるのは確かなので、やっぱり話すべきなの
だろうか。
 本当になんでもないことなのだけど。
「……あの」
「ん?」
「えっとね、その」
 なかなか言い出せない。踏ん切りがつかないのはちょっと恥ずかしいから。
 彼は特に急き立てることもなく、黙って見つめてくる。
 見つめられると結構言い出しにくいけど、まあ、とにかく。
「……相手にメールが届くじゃない」
「…………ん?」
 言ってから当たり前だと思った。
 洋一くんの顔に「よく解らない」といった色が混じる。
「だ、だから、相手の履歴に残っちゃうじゃない!」
「……嫌なんですか?」
「いやっていうか……」
 私はその場に立ち止まり、思わずうつ向いた。
「……………………恥ずかしい……」
 一瞬の静寂が訪れる。
 洋一くんは小さく吹き出した。
「わ、笑うな!」
「ご、ごめんなさい。で、でも」
「だって、恥ずかしくない!? 相手にずっと履歴が残ってて、たまに開いて読まれたり
するんだよ? 迂濶なこと書けないじゃない!」
 答えてしまった反動か、言い訳にも熱が入る。
 言ってることは何も間違っていないつもりなのだけど、やっぱり変なのだろうか。

 洋一くんはどう思って、
「ごめんなさい。ちょっと意外だったものだから」
「意外?」
「いつも明るくていろんなことを話すのに、そこにこだわるのが意外」
「会話とメールは違うもん……」
 会話は残らない。でもメールは残る。
 私には二つは全く違うものに思える。
 ああいうことを話した、こういうことを話した、そんな記憶はあってもみんなはっきり
とは思い出せないものだ。
 もちろん深く心に残る言葉はあるけど、誰も機械のように記憶するわけじゃない。
 もし人間があらゆる会話を脳に刻めるなら、きっと私は何も言い出せなくなる。
 なんでもないことさえいつまでも残るというのは、あまりに怖いことじゃないのか。
 内心で密かに震えると、洋一くんが言った。
「でもぼく、舞子さんのことならほとんど全部覚えてますよ」
「え?」
 言っている意味がわからない。
「全部って」
「だから、全部。ぼく、記憶力はいいんです」
「例えば?」
「去年の六月、図書館での会話の内容とか。『身長いくつ?』『本棚高くない?』って」
 固まった。
「そんなこと言ったの? 私が?」
 この一年で一気に背が伸びた(本人曰く15センチ程)洋一くんは、それでも私と同じ
160センチくらいしかない。
「言いました。ちゃんと覚えてますよ」
 慌てて謝る。
「ご、ごめん」
「なんで謝るんですか?」
「だって、失礼じゃない」
「気にしてません。それにそのあと舞子さんはこう言ったんです。『いつか私に本を取って
ほしい』って」
「──」
 私はいよいよ恥ずかしくなって、一歩も歩き出せなくなってしまった。
 なんだ、そのわけわからん台詞は。
 それは確かに好きな相手が自分より小さいというのは、ちょっと気になる問題でもある
けど、だからといってありえない台詞だろう、それは。
 でもきっとそれは、その頃の私たちがまだ付き合ってなくて、私の方は洋一くんに完璧に
惚れてしまっていて、それで不用意に発してしまった一言なのだと思う。覚えてないけど。
 恥ずかしい……。
「頑張って身長伸ばそうと思いましたよ。カルシウムたくさん摂ったおかげかようやく
舞子さんに並べました」
 すぐに追い越しますからね、と洋一くんはにっこり笑った。
 それはなかなか頼もしくも子供っぽくて、ちょっとかわいい笑顔だった。

「……他にも覚えてるの?」
「もちろん。一学期の終業式の日は『一緒に帰らない?』『雨が降る前に駅に着かないと』
『校長の話長すぎ! 緑化事業の話とかどうでもいいじゃん』『洋一くんは真面目だね……
何しゃべってたか私よく覚えてないよ』『曇ってきた』『降りそうだから走ろっか』『夏は
これだから……」
「ま、待って待って。もういいからっ」
 私は慌てて制止する。
 洋一くんの言葉には偽りもでたらめもないようで、私は恥ずかしがるより先に呆れて
しまった。
「どんな頭してるの?」
「それだけ舞子さんのことが好きってことで」
「……」
「だから」彼は言う。「会話もメールもあんまり関係ないですよ」
「今すぐ忘れて」
「無理です」
「……」
「そんなに嫌ですか?」
 まっすぐ尋ねられて、私は口をつぐんだ。
「舞子さんのことは全部覚えておきたい、ってぼくは思ってます。それは会話もメールも
いっしょで、何も変なことなんてなくて、えっと、『大切にしたい』って思っているん
ですけど……ダメですか?」
 真摯な目はひどく澄んでいて、私は少し怯んだ。
 個人的にはやっぱり恥ずかしいのだけれど、
「……絶対に忘れないの?」
「はい」
「私は忘れるよ?」
「メールは残りますよ」
「……」
 なるほど。記録に残るのも悪いことばかりではないらしい。
 恥ずかしいけど……。
「頑張ってみる」
「ええ、待ってます」
 帰ったら早速打ってみよう。自分からメールすることなんてない私だけど、洋一くんに
ならさらけだせるはず。
 彼にはずっと覚えていてもらいたいから。



「舞子さんからのメールには全部保護かけときますね」
「なっ……」
「そうすれば嫌でも忘れませんよ」

「やっぱり恥ずかしいよー!」



作者 7-128
2009年01月06日(火) 08:58:36 Modified by ID:qJtd+iEylw




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