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球春到来

 カーンといい音が響き、数瞬後、それが遠くの方で大歓声を呼ぶ。俺達は野球観戦に来ていた。
 前々から気になる娘だった。普段は無口なくせに、喋る時は火が付いたように喋り出す。何よりかわいい。
そこに惚れた。
 苦心して趣味を調べ、プロ野球球団・トラーズのファンだということが分かると、俺はすぐさま最寄の野球
場のチケットを予約した。そうして球場近くのレストランも念入りに調べ上げ、そこそこの店を予約した。
 無愛想な彼女と少しずつ会話を重ねていき、ようやくこじつけた初デート。今日は勝負の日だ。
 俺の隣に腰を下ろした彼女はいつも通り無口で、しかしいつも以上に不機嫌だった。理由は簡単。トラーズ
が一方的に滅多打ちに遭っていたからだ。回はまだ6回だが既に投手は3回は交代しており、それぞれが3点以
上の失点を許していた。更にはたった今、交代したばかりの投手が不用意な一球からソロホームランを喰らっ
ている。
 俺のほうは……申し訳無いけど漏れ出る笑顔が止まらない。彼女には伝えていなかったが、実は俺は今日ト
ラーズと対戦しているラビッツのファンなのだ。年に5試合あるかどうかの派手な試合を見ることが出来て楽
しくて仕方なかった。
 ただ俺にとって残念なことには隣の席に彼女が座っていること、そしてここがトラーズの応援団のド真ん中
であることだった。彼女はどんどん俯いていくし、周りからは俺が好きな選手に対する野次がひっきりなしに
飛んでいるしで、正直すぐにでも帰りたかった。
 周囲の重い空気に耐え切れず、攻守交替でやや静かになったときを見計らって声をかける。
「なあ、もう帰るか?」
「次の回、4番まで回ればまだ分からないし。」
「って……」
 次の回の先頭は7番バッターから。ほぼ打順一巡を期待しているということだ。しかしそれでもはるか及ば
ない点差だということは彼女もよく分かっているはずなので、ファンの見る夢物語以上の説得力はなかった。
「……最後まで付き合うよ。」
 俺は溜息をつきながら、半分持ち上げていた腰をもう一度ベンチに据えつけた。
 7回表、ツーアウト。
 残念ながら彼女の期待したような結果にはならず、当然のように9番バッターに代打が送られた。最近注目
されている若手がバットを激しく振りながら出てくる。
 俺は内心、もうこれで帰れる、と息を吐き出した。この若手、ベテランが怪我をした隙を縫うようにして開
幕スタメンに名を連ねたのだが、打率1割を切る極度の打撃不振とベテランの復帰から2軍落ちは時間の問題な
のだ。
 過去の主軸選手のものを流用したヒッティングマーチを聞きながらグラウンドを眺めていると、俺の手を彼
女が強く握った。驚いて振り向くとポツリと言葉を吐き出す。
「……まだ、分からないもん。」
 まるで俺の心の内を読みすかしたような一言に声を失っていると、ヒッティングマーチが鳴り止んだ。
 初球、内角を突いたボール球。続けて内角へ投げた2球目、少しだけ甘くなってぎりぎりストライク。今日
のウチの先発は絶好調だ。ストレートが冴え、それが得意の変化球を生かす。いい形でゲームを作っていた。
だが若手とはいえトラーズの代打もプロだ。そこからファウルで2球粘ってカウント2-1の形にする。
 ストライクカウントが増えるたび、彼女は俺の手を潰れそうになるほど強く握る。まるで代打の選手に念を
送っているようだ。ファウルを打つたび力いっぱい握るので俺は顔をしかめるのだが、彼女はトラーズの若手
以外のものが見えないらしい。
 5球目、今日10個目となる三振を狙ったのか外角低めへ流れ落ちる変化球。打者は必死で喰らいついてバッ
トを伸ばすとボールは高々と舞い上がった。その瞬間、球場の全員が打球を追いかける。
 俺のそれに倣おうとしたが、彼女に無理矢理首を捻じ曲げられた。同時に彼女の顔が俺の視界を支配する。
 打球が溜息と共にキャッチャーミットに収まるまでのほんの数秒間、唇を合わせて繋がりあった俺達は、暫
くお互いを見つめあう。まだ付き合ってもいないのに、といきなりのキスに俺は戸惑っていた。
「……帰ろ。この回で点が入らなきゃ、どうしようもないよ。」
 彼女はすくっと立ち上がると出口へ向かってずんずん歩き出した。不機嫌なのか鞄も何も置いていくもんだ
から拾ってから追いかける。
 通路まで出ると意外と人が多かった。彼女と同じように今日のゲームを見限った人たちだろう。数秒間目を
細めて探すと、いた。俺が彼女の後姿を見間違えるわけが無い。しかし見失ってしまってはどうしようもない
ので彼女の方へ急ぐ。
 200mほど追いかけて手を握ると俺を一瞥したきり何も言わない。いくら普段から喋らないとはいえ彼女らし
くない態度だ。よっぽど機嫌が悪いのだろう。
「ゴメン、今日は誘うべきじゃなかったかな?」
 ふるふると首を横に振って否定する。
「情けなくって、何も言いたくない。」
 自分のひいきチームのことだろう。もし俺が逆の立場だったら同じように思うだろうから、そこは分かる。
ただ誘った側からすると、機嫌が悪いまま家に帰らせるのもちょっとひっかかる。
「……じゃあ飯食いに行くか。代金は俺が持つしさ。」
 その言葉にも首を横に振る。……俺はどうすれば?
「家、来て。」
 彼女の口から飛び出した言葉に俺は自分の耳を疑った。今日が初めてのデートなんだけど。この娘こんなに
積極的だったんだ。
「ラビッツファンなんて……あなたの性根、叩きなおしてあげる。」
「……え、バレてた?」
 今日はなるべく顔色に出さないようにしたのに、と言うと、今日初めて彼女が微笑んだ。
「私もあなたのこと、調べてたから。」
 バツが悪くなって苦笑いを浮かべると手を引かれる。
「……今日は寝かせないからね。」
 本当ならわくわく出来る言葉なんだけど、どうやら今夜はそっちじゃないみたいだ。それでもいいや、少し
ずつお互いを知り合っていけたらいい。

 ただ、ラビッツファンを辞めるつもりは無いけどね。

次話
作者 ◆6x17cueegc
2008年08月03日(日) 00:59:12 Modified by n18_168




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