風邪の無口っ娘中本(仮題)
「寒くない?」
パタ
「そう、これ飲む?」
パラパラ、パタ
「ほい。缶熱いから」
「……なぁ、お前らそれでいいの」
俺と中本が昼食後の一時を過ごしているところへ、明宏が口をはさんできた。
「何が?」
「いやいやいやいや、気付いとこ。ここは。な。お前らのそれは会話としてなんかおかしーだろ」
やたらと早口で言われたことに俺らは首をかしげる。何もおかしくはないと思うんだが。
「ちゃんとコミュニケーションが成立してるし」
な。と横にいる中本に同意を求めると、コーンポタージュスープの缶を伸ばしたセーターの袖でくるんだまま何度も頷いた。
もう少し冷ましてから渡すべきだったかな。
「成立とか言ってる時点でアウトだろー。片方が話しかけたのに対する返事がスケッチブックっておかしいだろ」
明宏の主張に中本はスケッチブックの白いページを開き、サラサラとペンを走らせる。
『風邪うつしたくない』丸っこい文字の並びに弛みそうになる頬をおさえた。
いつもより筆談の割合が多いなとは思っていたけど、こんなこと考えていたんだ。
「そうか、俺のためだったんだ。ありがとな、あと気づけなくてごめん」
謝ると中本は笑顔で首を振る。そして唇だけで『ご・め・ん・ね』と言った。
「ストッピーン! お前それで和むなよ!」
「明宏うるさいだまれ」
「ノンブレス!」
ぎゃいぎゃいと文句をつける明宏を叩き黙らせながら、俺は今日の帰りに薬局で良く効く薬を買おうと思った。
おわり
作者 6-476
パタ
「そう、これ飲む?」
パラパラ、パタ
「ほい。缶熱いから」
「……なぁ、お前らそれでいいの」
俺と中本が昼食後の一時を過ごしているところへ、明宏が口をはさんできた。
「何が?」
「いやいやいやいや、気付いとこ。ここは。な。お前らのそれは会話としてなんかおかしーだろ」
やたらと早口で言われたことに俺らは首をかしげる。何もおかしくはないと思うんだが。
「ちゃんとコミュニケーションが成立してるし」
な。と横にいる中本に同意を求めると、コーンポタージュスープの缶を伸ばしたセーターの袖でくるんだまま何度も頷いた。
もう少し冷ましてから渡すべきだったかな。
「成立とか言ってる時点でアウトだろー。片方が話しかけたのに対する返事がスケッチブックっておかしいだろ」
明宏の主張に中本はスケッチブックの白いページを開き、サラサラとペンを走らせる。
『風邪うつしたくない』丸っこい文字の並びに弛みそうになる頬をおさえた。
いつもより筆談の割合が多いなとは思っていたけど、こんなこと考えていたんだ。
「そうか、俺のためだったんだ。ありがとな、あと気づけなくてごめん」
謝ると中本は笑顔で首を振る。そして唇だけで『ご・め・ん・ね』と言った。
「ストッピーン! お前それで和むなよ!」
「明宏うるさいだまれ」
「ノンブレス!」
ぎゃいぎゃいと文句をつける明宏を叩き黙らせながら、俺は今日の帰りに薬局で良く効く薬を買おうと思った。
おわり
作者 6-476
2009年01月05日(月) 23:53:27 Modified by ID:z0ZlJTbkWw