無口で世話好きな彼女
「ね、姉さん。確かに助かるけどさ…」
「……?」
目をぱちくりさせキョトンとした表情を見るに目の前の我が姉は俺の言わんとすることが分かっていないようだ。
「前にも言ったけど、弁当を忘れたくらいでわざわざ教室まで届けに来ないでくれ」
全くこの人は…昔から世話好きなためか今日みたいに俺が弁当を忘れると教室まで一々届けに来るのだ。
小学生の時は毎朝持ち物チェックをし、中学生の時は教科書や体操着を届けにきた。
ただ高校生となった今もこれが続いているのはいささか問題ではないか?
それ以前に姉さん、大学はどうした?
確かに元はといえば忘れ物をする自分が悪い。
でもクラスメートからは変な目で見られ(中には羨望の眼差しを向ける者もいるが)いい気はしない。
『別に弁当を忘れても食堂に行くから。もう届けなくてもいいよ』
そう言おうとして姉さんの方を見直した時
「……」
うわぁ…ものスゴくしょんぼりしている。まるでこの世が終わってしまうかのように暗い顔だ。
「はぁ…とにかく、ありがとう姉さん」
その姿を気の毒に思い、つい思っていたのと違う言葉が口から出る。
「……」
すると姉さんは一転して、語尾に音符マークがきていると分かる程嬉しそうにニッコリと笑みを浮かべた。
変わり身の早さに驚きつつ、友人曰く天使を思わせる可愛らしい微笑みに思わずドキリとさせられる。
姉さんは一歩俺に近付くと片腕を目一杯伸ばし、俺の頭の上にその小さな手のひらをポンと置いた。
なでなでなでなで
何かあると有無を言わさず頭を撫でる。昔からの姉さんの癖。口数の極端に少ない姉さんなりのスキンシップなのだろう。
恥ずかしいから止めてくれとは言わせない。俺の髪型がクシャクシャになってもお構いなしの姉さんの無言の圧力。
うるさかった教室も何故か静まり返る。
「………」
俺の頭から手を離すと姉さんは瞳を輝かせながら満面の笑みを浮かべ教室を出て行った。
軽くスキップしているように見えたのは多分気のせいだろう、うん絶対にそうだ。
それにしても最近になってふとした姉さんの仕草にドキッとすることが増えた気がする。
弁当を忘れるのも悪くないかもしれないな
ほんの一瞬でも思った自分に何故か腹が立った。
次話
作者 こたみかん ◆8rF3W6POd6
「……?」
目をぱちくりさせキョトンとした表情を見るに目の前の我が姉は俺の言わんとすることが分かっていないようだ。
「前にも言ったけど、弁当を忘れたくらいでわざわざ教室まで届けに来ないでくれ」
全くこの人は…昔から世話好きなためか今日みたいに俺が弁当を忘れると教室まで一々届けに来るのだ。
小学生の時は毎朝持ち物チェックをし、中学生の時は教科書や体操着を届けにきた。
ただ高校生となった今もこれが続いているのはいささか問題ではないか?
それ以前に姉さん、大学はどうした?
確かに元はといえば忘れ物をする自分が悪い。
でもクラスメートからは変な目で見られ(中には羨望の眼差しを向ける者もいるが)いい気はしない。
『別に弁当を忘れても食堂に行くから。もう届けなくてもいいよ』
そう言おうとして姉さんの方を見直した時
「……」
うわぁ…ものスゴくしょんぼりしている。まるでこの世が終わってしまうかのように暗い顔だ。
「はぁ…とにかく、ありがとう姉さん」
その姿を気の毒に思い、つい思っていたのと違う言葉が口から出る。
「……」
すると姉さんは一転して、語尾に音符マークがきていると分かる程嬉しそうにニッコリと笑みを浮かべた。
変わり身の早さに驚きつつ、友人曰く天使を思わせる可愛らしい微笑みに思わずドキリとさせられる。
姉さんは一歩俺に近付くと片腕を目一杯伸ばし、俺の頭の上にその小さな手のひらをポンと置いた。
なでなでなでなで
何かあると有無を言わさず頭を撫でる。昔からの姉さんの癖。口数の極端に少ない姉さんなりのスキンシップなのだろう。
恥ずかしいから止めてくれとは言わせない。俺の髪型がクシャクシャになってもお構いなしの姉さんの無言の圧力。
うるさかった教室も何故か静まり返る。
「………」
俺の頭から手を離すと姉さんは瞳を輝かせながら満面の笑みを浮かべ教室を出て行った。
軽くスキップしているように見えたのは多分気のせいだろう、うん絶対にそうだ。
それにしても最近になってふとした姉さんの仕草にドキッとすることが増えた気がする。
弁当を忘れるのも悪くないかもしれないな
ほんの一瞬でも思った自分に何故か腹が立った。
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作者 こたみかん ◆8rF3W6POd6
2009年01月05日(月) 17:17:26 Modified by ID:QoBh7SNwMg