日本の周辺国が装備する兵器のデータベース


▼「高雄」(LCC-1)。通信能力強化のため、多数のアンテナが設置されているのが見て取れる。



性能緒元
基準排水量1,653t
満載排水量3,675t
全長100m
全幅15.2m
喫水4.3m
主機ゼネラル・モーターズ社製 GM 12-567A型ディーゼル 2基(1,800馬力)
速力11.6kts
航続距離11,200nm/10kts
乗員195名

【搭載艇】
揚陸艇LCVP2隻

【兵装】
近接防御ボフォース 60口径40mm機関砲連装2基/単装4基
 T75S 20mm機関砲単装2基

【電子装備】
対空レーダーレイセオン SPS-581基
水上用レーダーSPS-101基

 高雄級揚陸指揮艦は、中海級戦車揚陸艦(LST-1型/「中字」型)の1隻「中熙」(219)を改造して、指揮通信能力の強化を行った上で1962年に揚陸指揮艦としたものである。揚陸指揮艦への艦種変更に伴って、艦名も「高雄」(LCC-1)と改名された[1]。
 台湾海軍では戦後、アメリカから多数の揚陸艦艇を供与され1950年代末には180隻もの揚陸艦艇を保有しており、東アジア諸国で最大規模の揚陸艦戦力を保持していた[2]。これらの揚陸艦艇は、1940年代末から50年代初めにかけての中国大陸や島嶼部からの中華民国軍の撤退作戦や、1958年の中国軍による金門島砲撃において台湾軍守備部隊への補給任務などに従事した。
 台湾に本拠地を置いた中華民国政府は「大陸反攻」をスローガンとして軍の再建を行っていたが、「大陸反攻」は最大の支援国であるアメリカの了承と協力が得られなければ実施は困難であった[2]。そして、アメリカも台湾防衛には積極的に関与したが、中国軍との全面戦争の危険を冒してまで「大陸反攻」を支援する意図は無かった。揚陸艦艇に関しても、アメリカから提供された艦艇の多くは小型の揚陸艇であり、台湾単独で中国本土への上陸作戦を実施できるだけの戦力は得られなかった[2]。
 その様な状況下においても、台湾海軍では揚陸戦力の整備が推進され、その一環として実施されたのが前述した「中熙」の揚陸指揮艦への改造であった。両用作戦では、陸・海・空3軍が緊密に連携を行い敵戦力の排除を行いつつ、多数の揚陸艦艇を混乱を来たさないように着上陸地点に誘導しなければならず、その実現には各部隊を一元的に指揮・管制する指揮センターの存在が不可欠であった[3]。第二次大戦中に多数の揚陸作戦を行ったアメリカ海軍では、揚陸作戦の指揮・管制任務専用の揚陸指揮艦を建造することでこの課題に対処した。揚陸指揮艦は、充実した通信設備を搭載し、指揮管制に従事する多数の要員を乗船させて作戦指揮を行った[3]。台湾海軍でも、両用作戦能力の整備を行う上で揚陸指揮艦の整備は不可欠であると認識しており、それによって「中熙」の揚陸指揮艦への改造が実現したと言える。
 改装では、指揮・管制を行う空間確保のため艦橋は大型化され、艦橋中央部にはレーダーや各種通信装置を搭載する大型のラティス式マストが設置された[1]。艦内にはアメリカから購入した指揮管制用機材が搭載され、指揮管制に従事するスタッフ用の収容施設も新設された。原型のLST-1型では100〜125名の乗員であったが、指揮艦に改造された「高雄」では指揮・管制要員が乗船する事により乗員が195名にまで増えている[4]。
 台湾海軍では「高雄」に続いて、中海級戦車揚陸艦(LST-1型/「中字」型)の「中治」(226)も揚陸指揮艦に改装することを計画したが、アメリカが揚陸指揮艦用の各種装備の引渡しに同意しなかった事により改装は実現しなかった[1]。
 「高雄」は1974年に近代化改装を実施し、その際に通信能力をさらに強化するため船体中央部にラティス式マストを追加装備している[4]。同艦は建造から60年以上が過ぎており退役も間近であると思われるが、大陸反抗政策が現実性を失った現状では「高雄」の後継となる指揮管制艦が調達される可能性は低いと思われる。

【艦対空ミサイル開発の試験艦へ改装】
 2017年1月2日の報道によると、台湾海軍では、退役間近の揚陸指揮艦「高雄」に米製Mk41垂直発射装置(VLS)を搭載し、開発中の新型艦対空ミサイル「海弓三」と「海剣二」艦対空ミサイルの試験を実施する方針[5]。
 「海弓三」は、「天弓三型」地対空ミサイルを艦載化したもので、その性能は現用のスタンダードSM-2MR艦対空ミサイルを上回ることが目指されている[5]。「海剣二」は、「経国」戦闘機用に開発された「天剣二型」空対空ミサイルの艦載型で短〜中距離の防空任務に使用される[5]。シースパローやESSMを装備していない台湾海軍にとって、「海剣二」の実用化は短〜中距離での防空能力改善に大いに資するものと見られる。
 「高雄」の主任務である揚陸指揮は、大陸反抗政策が現実的なものでなくなったことで重要性を失い、最近では弾薬や物資の輸送が主任務になっていた[5]。もともとが揚陸艦なので艦内スペースは豊富でMK41 VLSを搭載する十分な余裕があることが、「高雄」が試験艦任務に転用される理由とされる[5]。

艦名発音艦番号米海軍時の艦名米海軍への就役台湾海軍への再就役年と艦歴
高雄Kao-HsiungLCC-1旧LST-735→Dukes County1944年4月1957年5月台湾海軍に引き渡され「中熙」(663)と命名される。1962年1月に揚陸指揮艦「高雄」(LCC-1)に艦種変更。

【参考資料】
[1]中国軍艦博物館「201 中海, 202 中權(新), 203 中鼎, 204 中興, 205 中建, 206 中基, 208 中訓, 209 中練, 210 中榮, 213 中功, 215 中有, 216 中光, 217 中肇, 218 中啟, 219 中熙(高雄), 221 中權(衡山), 222 中勝(原211), 223 中富, 224 中程, 225 中強, 226 中治, 227 中明, 228 中肅, 229 中萬, 230 中邦, 231 中業(新)」
[2]台湾問題-中国と米国の軍事的確執(平松茂雄/勁草書房/2005年)102〜103頁。
[3]世界の艦船2007年1月号別冊(2007.NO.669)アメリカ揚陸艦史(海人社)16〜25頁。
[4]Jane's Fighting Ships 2009-2010(Stephen Saunders (編)/2009年6月23日/Janes Information Group)793頁
[5]聨合新聞網「老軍艦迎第二春 將成新式飛彈測試平台」(2017年1月2日/程嘉文)

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