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▼「中正」(LSD-191)


性能緒元(「中正」(LSD-191)
基準排水量4,790t
満載排水量9,375t
全長144.8m
全幅23.2m
喫水5.5m
主機蒸気タービン(7,000馬力) 2軸
速力15.4kts
航続距離8,000nm/15kts
乗員243名(士官13名)

【搭載部隊】
揚陸艇LCU 3隻 or LCM 18隻 or LVT 32輌
搭載機なし(ヘリ発着可)
揚陸兵員(米海軍時代は332名)

【兵装】
対空ミサイルRIM-72艦対空ミサイル「シーチャパレル」 / 4連装発射機1基
近接防御ボフォース 60口径40mm機関砲連装2基/4連装2基
 12.7mm重機関銃8挺

【導入経緯】
アシュランド級は第二次大戦中にアメリカが建造したドック型揚陸艦。27隻が建造され、25隻が就役(2隻はキャンセル)している。後期建造艦15隻は主機と速力の違いから、カーサ・グランデ級と呼ばれることもある[1]。

台湾では1960年、アシュランド級の「ホワイト・マーシュ」(LSD-8)を1960年にアメリカから受領して「東海」(LSD-618)の名が付与された[2]。同艦は1975年、国家元首であった蒋介石総統の死去を受けて艦名を蒋介石の字である「中正」に改称している[2]。合わせて艦番号もLSD-639に変更したが、こちらについては1981年になってもとのLSD-618に戻された。「東海」は長年に渡り台湾海軍最大の艦艇であり、観艦式などでは総統御座艦として使用されていた[2]。その後、1977年4月にはアメリカ海軍から退役したカーサ・グランデ級の「フォート・マリオン」(LSD-22)が台湾海軍に引き渡され同年6月29日に「鎮海」(LSD-192)として再就役した[2]。

1985年になって、台湾の民間企業がスクラップとしてアメリカ海軍から退役したカーサ・グランデ級の「カムストック」(LSD-19)を購入した。解体前の「カムストック」を調査した所、状態が良好であったことから、解体直前に台湾海軍が取得して海軍籍に編入[2][3]。「カムストック」には「中正」(LSD-191)の名が与えられた。「中正」(LSD-191)の就役と同時に、前述の「中正」(LSD-618)は現役を退くこととなった。「鎮海」と「中正(LSD-191)」は1986年に改装を実施、RIM-72艦対空ミサイル「シーチャパレル」4連装発射機1基を艦橋手前に搭載している[2]。

「鎮海」は1999年に退役、2001年12月8日に人工漁礁として爆破沈没させられたが、「中正」は現在も台湾海軍での運用が続けられている[2]。「中正」は2001年6月28日、高雄港近くでパナマ船籍の商船と衝突事故を起こして艦首を破損、5ヶ月間に及ぶ修理を余儀なくされている[3]。

【性能】
アシュランド級はアメリカ海軍初のドック型揚陸艦。ドック型揚陸艦は、航洋性に欠ける戦車揚陸用舟艇を艦内のドックに収納して上陸作戦海域まで輸送して、発進・揚陸させる事を目的にイギリスで考案された[1]。大型の浮きドックの前部に艦首を装着、ドック後端部にヒンジ付きゲートを設けて船として、ドック部ウェル・デッキ下方に機関区画と各種タンクを配置、ドック両側に乗員と揚陸部隊の居住区画を用意している[1]。

「中正」(LSD-191)は基準排水量4,790t、満載排水量9,375t、全長144.8m、全幅23.2m、喫水5.5m。機関は蒸気タービン(7,000馬力)2軸で、最高速力は15.4kts、航続距離は8,000nm/15kts。艦固有の乗員は士官13名、下士官・水兵230名の合計243名[2]。

「中正」の船内ドックのサイズは全長118m、幅13mで[1]、LCU 3隻もしくはLCM 18隻、またはLVT 32輌を搭載出来る[4]。また、小型船舶をドックに入渠させて修理を行うことも可能[2]。米海軍時代の近代化改装によって船体後部にはヘリコプター用発着甲板が設けられている。格納庫こそ無いもののUH-1Hヘリコプターであれば4機、小型の500MDヘリコプターであれば8機まで臨時収容出来る[2]。対空兵装としては、艦橋手前にRIM-72艦対空ミサイル「シーチャパレル」4連装発射機1基、艦橋前後に40mm連装機関砲2基と4連装機関砲2基が装備されている。「中正」の「シーチャパレル」はRIM-72A艦対空ミサイルを合計8発用意している。その他に、近接防御用に12.7mm重機関銃8挺が艦の各部に搭載されている[2]。

台湾は1980年代、海龍級潜水艦の調達に当たってドイツ製SUT長魚雷を使用する事を決めていたが、ドイツから直接兵器の調達ができなかったため、SUT魚雷をライセンス生産しているインドネシアから魚雷の提供を受けている。その際、代償として台湾海軍のLCUとLCMを複数隻インドネシアに譲渡。これらの艦艇をインドネシアまで輸送したのがドック型揚陸艦「中正」であった[5]。

2012年6月17日付けの報道によると、台湾海軍は揚陸艦「中正」を2012年7月初めに退役させる方針であることが明らかになった[5]。退役後は当面の間、左営の海軍基地で保管され、その後解体か標的艦として使用するかが判断される。

1番艦東海→中正Dong Hai→Chung ChengLSD-618→LSD-639→LSD-618旧LSD-7(White Marsh)1944年1月米海軍就役1960年11月17日「東海(LSD-618)」として台湾海軍に再就役。1975年「中正(LSD-639)に改名」。1981年艦番号をLSD-618に戻す。1986年退役。
2番艦鎮海Chen HaiLSD-192旧LSD-22(Fort Marion)1946年1月米海軍就役1977年6月29日「鎮海(LSD-192)」として台湾海軍に再就役。1999年退役。
3番艦中正Chung ChengLSD-191旧LSD-19(Comstock)1945年7月米海軍就役1985年スクラップとして台湾企業が買収、その後台湾海軍が同艦を購入。1986年2月5日「中正(LSD-191)」として台湾海軍に再就役。2012年7月退役予定[5]。

【参考資料】
[1]世界の艦船2007年1月号別冊(2007.NO.669)アメリカ揚陸艦史(海人社)30〜33頁。
[2]中国軍艦博物館「191 中正(東海) , 192 鎮海」
[3]世界の艦船別冊 中国/台湾海軍ハンドブック 改定第2版(2003年4月/海人社)134頁。
[4]Jane's Fighting Ships 2009-2010(Stephen Saunders (編)/2009年6月23日/Janes Information Group)792頁
[5]中央廣播電臺新聞頻道「海軍傳奇艦 中正號7月除役」(曽国華/2012年6月17日)

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