▼タイ海軍の軽空母「チャクリ・ナルエベト」（911）と併走する「シミラン」。
▼上空から撮影された「シミラン」。船尾楼後端部左右にある丸い物体は37mm機関砲の台座。
■性能緒元
| 満載排水量 | 23,000t |
| 全長 | 171.4m |
| 全幅 | 24.6m |
| 喫水 | 9m |
| 主機 | HD-SEMT-Pielstick 16 PC2 6V400ディーゼル 2基（24,000馬力） 2軸 |
| 速力 | 19kts |
| 航続距離 | 10,000nm/15kts |
| 搭載量 | 燃料7,979t、航空燃料2,500t、清水1,095t、潤滑油70t、弾薬やドライカーゴ680t |
| 乗員 | 157名（士官19名）、26名分の増員が可能。 |
【兵装】
| 近接防御 | なし（37mm連装機関砲用の台座4基は装備） | |
| 搭載機 | シコルスキー S-70B7「シーホーク」 | 1機 |
【電子装備】
| 対水上/対空レーダー | 354型（Eye Shield ） | 1基 |
| 航海レーダー | Racal Decca 1290 ARPA | 1基 |
シミラン（Similan）級補給艦は中国がタイに輸出した艦隊補給艦である。建造された上海滬東造船廠に因んで「滬東級」と呼ばれることもある。タイプ名として「R22T」型という名称も存在する[1]。
1990年代初め、タイでは好調な経済発展を基礎として軽空母の取得を初めとした海軍の大幅な拡張を計画していた。大型艦艇の調達とあわせてこれらの艦に補給を行うための艦隊補給艦も必要とされ、1993年11月29日にタイ政府は中国船舶総工業公司（当時）との間で補給艦一隻の発注契約に調印した[1]。主契約社は中国船舶貿易工程公司、補給艦の設計作業は第708研究所、実際の建造は上海滬東造船廠が担当する事になった[2]。建造開始は1994年12月、1995年11月9日に進水、1996年9月12日にタイ海軍に就役した[1]。
この補給艦の元になったのは中国海軍向けに開発が進められてた903型補給艦設計案であった。中国海軍では、1988年に「903計画」と命名した次世代の艦隊補給艦の開発に着手した。903型補給艦の建造は中国海軍の遠洋補給能力の向上を図る目的があり、充実した補給能力に加えて一定の医療任務にも対応することが求められていた。903計画自体は、技術的・財政的な問題から1992年に一時中止とされたが、中国はタイ海軍の補給艦計画に903型をベースとした設計案を提案して採用を得ることに成功した[2]。
シミラン級は満載排水量23,000t、全長171.4m、全幅24.6m、喫水9m。主機はHD-SEMT-Pielstick 16 PC2 6V400ディーゼル 2基（24,000馬力）推進軸は 2軸、最高速力は19ktsで、航続距離は15ktsで10,000nm。船体形状は船首船尾楼型で、艦中央部には補給指揮管制所を挟んで給油やドライカーゴの移送に使用する洋上補給ポストが2組用意されている[1][3]。船尾楼にはヘリコプター格納庫が設置されており、ヘリコプターによるヴァートレップ輸送も可能。シミランの発着甲板はタイ海軍のAV-8Sハリアー戦闘機の着艦も可能な強度を確保している[2]。
シミランは燃料7,979t、航空燃料2,500t、清水1,095t、潤滑油70t、弾薬やドライカーゴ680tの搭載が可能[2]。艦固有の乗員は157名（士官19名）であるが、26名分の増員が可能なスペースが用意されている[1]。補給任務の他に、洋上作戦中に一定の工作・修理作業を行うことも可能。また、人道支援、物資や難民の輸送、海上救難任務に従事することも想定されている[2]。
兵装は未搭載であるが、船首楼と船尾楼には37mm連装機関砲を搭載可能な台座が合計4基用意され、艦橋部には機関砲制御用の火器管制レーダー搭載区画も確保されている[1]。
シミラン級の設計は成功と見なされた様で、中国では自国海軍向けにシミラン級をタイプシップとした903型補給艦（フーチー型/福池型）を建造することになる。
| シミラン | Similan | 871 | 1994年12月起工、1995年11月9日進水、1996年9月12日タイ海軍に就役。 |
【参考資料】
[1]Jane's Fighting Ships 2009-2010（Stephen Saunders (編) /2009年6月23日 /Janes Information Group）815頁。
[2]軍武狂人夢「福池級油彈補給艦/撫仙湖號定點補給艦」
[3]世界の艦船2005年9月「注目の中国新型艦艇(6)福池型補給艦 」（海人社）88〜89頁。
903型補給艦（フーチー型/福池型）
中国海軍