日本の周辺国が装備する兵器のデータベース




053H3型(ジャンウェイII型/江衛II型)は、1998年から就役が始まった江衛I型の改良版で、2005年に10隻の整備計画が完了した。

【建造経緯】
053H3型の開発に関する研究は1990年に開始された。中国海軍では、053H2G型フリゲイト(ジャンウェイI型/江衛I型)の建造により、バランスの取れた対空、対艦、対潜戦闘能力を有する汎用フリゲイトを実用化することに成功したが、その性能は海軍を完全に満足させる物ではなかった。海軍では、053H2G型は、各国の1980年代中期の水準の艦艇であると評価しており、1990年代以降も第一線での運用を行うには、より高い能力が求められると見ていた[5]。

中国海軍では、053H2G型の船体設計には基本的に不満は無かったので、1980年代以降に西側諸国から入手した各種技術や国内で開発した新式装備を導入することで、同級の能力を大幅に向上させることが出来ると判断し、053H2G型の改良型の開発を行うことを決定した[5]。この改良では、053H2G型の運用試験で判明した各種不具合の解消も行われることとなった。

053H2G型の改良型には「053H3型」のクラス名が与えられた。西側では053H2G型フリゲイト(ジャンウェイI型/江衛I型)の発展型であるとして「JIANGWEI II」型の識別名称を付与した。「JIANGWEI II」は漢字表記では「江衛II型」で表記されることが多い。

ネームシップの「嘉興」(521)は、上海の滬東造船廠で1996年10月から建造が開始され、1997年8月10日に進水、1998年11月に就役した。その後の建造ペースは速く、翌1999年には、一挙に4隻が就役、2000年に1隻、2002年に2隻、2005年に2隻が就役している。なお、後期建造艦の3隻(#567、#527、#528)は一部の電子装備が変更されている[1]。

【兵装】
053H3型は、船体や機関部の基本構造はタイプシップとなった053H2G型を踏襲している。改装は主に、兵装と電子装備に関する分野において行われた。

053H2G型で最も問題とされたのは、対空ミサイルであるHQ-61B/M艦対空ミサイルの能力不足であった。1960年代の技術に基づくHQ-61は、低空域の目標への迎撃能力に劣り、053H2G型ではミサイル誘導用のイルミネーターを一基しか搭載していなかったので、一度に一目標しか迎撃することしかできなかった。また、ミサイルランチャーが短SAMとしては大型に過ぎたこと、ミサイル搭載数は6発のみで継戦能力に疑問があることも問題視された。

053H3型では、HQ-61Bに換えてHQ-7NB(紅旗7NB)を艦対空ミサイルとして採用した。053H3型では、HQ-61のあった箇所まで第二甲板を延長して、その箇所にHQ-7NB用8連装発射機を搭載した。ミサイルランチャーがHQ-61Bの6連装から8連装になったことで携行ミサイル数が増加した。さらにHQ-61Bのミサイルの重量は300kgを超えるため人力での再装填は不可能であり、予備ミサイルの搭載が出来なかったが、HQ-7の重量は発射筒込みでも100kgに満たず、十分に人力での装填作業が可能であった[6]。053H3型の艦内には10発の予備ミサイルが収納されており、携行弾数は053H2G型の6発から18発へと3倍に増加した。

HQ-7NBは、HQ-61Bに比べてミサイルの性能も大きく向上していた。HQ-7NBの有効射程は速度400m/sの目標に対し8,600m、速度300m/sの目標に対して1,0000m、ヘリコプターに対して12,000m、有効高度は30〜5,000m。ミサイルの誘導は無線指令誘導方式を採用しているが、電子妨害などによりレーダーが使用できない状況に備えて赤外線/光学追跡モードも用意されている。最大30目標を探知し、そのうち12目標を追尾して、同時に4目標にミサイルの誘導を行うことが可能。目標の探知から6秒以内にミサイルを発射することが可能であり、低空から飛来する亜音速対艦ミサイルに対する迎撃成功率は85%とされている。同時多目標迎撃能力は053H2G型には無かった能力であり、053H3型は対空迎撃能力を大幅に向上させることに成功したと評価できる。ただし、対艦ミサイルの迎撃可能範囲は、4〜8kmと航空機に対する迎撃範囲よりもかなり狭いものに留まっており、複数の対艦ミサイルによる攻撃に対しては十分な防御能力を有していないことが指摘されている[7]。

対艦ミサイルについても、053H2G型のYJ-8I艦対艦ミサイル 3連装発射筒2基から、YJ-83(鷹撃83/C-803) 4連装発射筒2基に変更された[6]。YJ-83は1990年代中頃に完成したYJ-8の発展型で、150〜200kmの射程をもち、ヘリコプターや航空機に搭載されたレーダーから得た情報をデータリンクで飛行中に受け取って中間軌道を修正するアップデート機能を有するのが特徴である。また飛行速度は高速になり、最終段階ではマッハ1.5まで加速する(YJ-8はマッハ0.9)。053H3型に搭載されたZ-9C対潜ヘリコプターを利用することで、艦のレーダーでは探知困難な水平線外の目標へミサイルを誘導することが出来、YJ-83の長射程を有効に活用することが可能となる。

艦載砲は、92式56口径100mm連装砲(H/PJ-33A)が搭載されている[5]。92式は、79A式と呼ばれることもある053H2G型の79式56口径100mm連装砲(PJ33A)の発展型である[1][5]。発射速度などの基本的な性能には大きな変化は無いが、砲のシールドが複合材製になり軽量化が施されるとともに、システムの自動化が進められ射撃制度や反応速度が改善されるなど実用性の向上が行われている[5][8]。100mm砲に関しては、近年になってレーダー波反射率を低減させたステルスシールドを採用した99式56口径100mm連装砲(H/PJ-33B)に換装される事例が確認されている。

CIWS(Close In Weapon System:近接防御火器システム)については、76A式37mm連装機関砲(H/PJ-76A)4基に変更は無いが、搭載位置の関係で射角に制限があった後部の37mm砲は、ヘリコプター格納庫の上部に配置箇所が変更された(正確にはヘリコプター格納庫天井部と高さを同じにした張り出し部を設けて、その上に搭載している)[5]。

対潜兵装や搭載ヘリコプターに関しては053H2G型を踏襲しているので、本稿では省略する。

【電子装備】
電子装備についても、他の装備と同じく基本的には053H2G型のものを踏襲している。ただし、兵装の変更に伴って、関連する火器管制用の電子装備も換装された。

053H2G型では艦橋中央部に位置していた、100mm砲用の343型(Wasp Head)火器管制レーダーが撤去され、その跡にレーダーを搭載する二段式の塔楼が設置された。下の段にはHQ-7NBの誘導管制に使用される345型射撃管制装置(MR-35)が搭載されており[1]、上の段には100mm砲とYJ-83対艦ミサイルの誘導管制用の343G型(資料[1]。[8]では343型、[9]では343GA型)レーダー(後期艦では344型(MR-34)に変更[9])が設置されている。ヘリコプター格納庫上部に76A式37mm連装機関砲の管制用の347G型レーダーを備えているのは、053H2G型と同じ。

戦闘情報システムについては資料[1]ではZKJ-3C、資料[4]ではZKJ-XC、資料[8]ではZKJ-4B/6、資料[9]ではZKJ-2と、諸説入り乱れており確定が難しい。いずれにしても、053H2G型よりも情報処理能力や通信機能が改善され、また当初からデジタルデータリンクシステムが導入されており、情報化の水準と共同作戦能力は053H2G型に比べて大きく向上している[6]。

ソナーは、SJD-7中間周波数統合型ソナーシステムが採用された。これはバウソナーと舷側ソナー、可変深度ソナーを統合したものである。これに加えて、2000年以降一部の艦は曳航ソナーを追加搭載している[8]。

【総括】
053H3型は、単体としてみると何か突出した性能があるわけではなく、1990年代後半から2000年代初めにかけて登場した同世代の各国のフリゲイトと比較すると、むしろ立ち遅れを感じる面も少なくない。

しかし、中国海軍にとっての053H3型の位置という観点から見ると、その評価は大きく変わってくる。同級は、中国海軍がはじめて入手した対空、対水上、対潜の各方面でそれなりの能力を備えた汎用フリゲイトで、しかも建造費用は052型駆逐艦(ルフ型/旅滬型)の半額であり、ほとんどのコンポーネントを国内で賄えるという利点を有していた[6][7]。1998年から2005年までの10年に満たない期間に、中国海軍は合計10隻の053H3型を就役させた[6]。これは年1隻以上の建造ペースであり、これほどのペースで建造されたのは1970年代後半の053H型フリゲイト(ジャンフーI型/江滬I型)以来であり、中国海軍が本級に対して非常に高い評価を与えていたことの表れであるといえる[6]。

その反面、大型駆逐艦の建造は、1990年代後半に建造された052型駆逐艦(ルフ型/旅滬型)2隻と、051B型駆逐艦(ルハイ型/旅海型)1隻に留まっている。沿岸海軍からの脱却を図っていた中国海軍にとって当面必要とされたのは、少数の高性能艦ではなく、艦隊のワークホースとして運用することが可能な、ある程度の性能と一定の隻数を有した汎用フリゲイト群であったことを意味している事例であるといえよう。

【2008年11月3日追記】
2008年11月2日昼頃、053H3型フリゲイト1隻と051C型駆逐艦1隻及びフーチン級補給艦1隻、他1隻が沖縄本島北西約400kmの東シナ海を南東進しているのを、海上自衛隊のP-3C(鹿屋基地所属)が発見した。

【2013年02月05日追記】
2013年1月30日に東シナ海において本級が海上自衛隊第3護衛隊群第7護衛隊の護衛艦DD-103「ゆうだち」(定係港:佐世保)に対し約3,000mの距離で射撃管制用レーダーの電波を数分間照射した、との防衛大臣記者会見が行われた。「ゆうだち」はレーダーを回避するため針路を変える等の対応を行ったという。2月5日に防衛省から発表された写真によると、この艦は053H3型の2番艦#522「連雲港」であることが判明した[10]。

性能緒元
基準排水量2,250t
満載排水量2,393t
全長111.7m
全幅12.1m
主機CODAD 2軸
 18E-390VAディーゼル 2基(14,000馬力)
 MTUディーゼル 2基(8,840馬力)
速力26.5kts
航続距離4,000nm/18kts
乗員168名

【兵装】
対空ミサイルHQ-7NB艦対空ミサイル(紅旗7/海紅旗7/HHQ-7//CSA-N-4))/ 8連装発射機1基
対艦ミサイルYJ-83(鷹撃/C-803)/ 4連装発射筒2基
対潜ロケット87式250mm6連装対潜ロケット発射機(FQF-3200)2基(36発
92式56口径100mm連装砲(H/PJ-33A)1基
近接防御76A式37mm連装機関砲4基
搭載機Z-9C対潜ヘリコプター1機
注:一部の艦は100mm砲をステルスシールドの99式56口径100mm連装砲(H/PJ-33B)に換装している。

【電子兵装】
長距離対空レーダー517A型もしくは517H-1型(いずれもNATOコード名はKnife Rest)1基
対空対水上レーダー360型(H/LJQ-360S型/SR-60型)1基
火器管制レーダー345型(MR-35)SAM用1基
 343型(343型や343GA型との資料も)。後期艦では344型(MR-34)SSM&砲用1基
 347G型(EFR-1/Rice Lamp)機関砲用1基
光学電子照準機JM-83H砲用1基
航海レーダーRM-1290(Racal Decca)2基
戦闘システム諸説あり 
ECMシステム981-3型艦載ECCM装置 
 946(PJ-46)15連装チャフ・フレア発射装置2基
 RWD-8(Jug Pair)ELINTシステム 
 SR-210レーダー波警告装置 
 651A型敵味方識別装置 
ソナーSJD-71基(一部の艦は、これに加えて曳航ソナーを装備)
衛星通信用アンテナ1基

同型艦
1番艦嘉興Jiaxin5211996年10月着工[1]、1997年8月10日進水[1]([8]だと同年6月5日)、1998年11月就役[1]東海艦隊所属
2番艦連雲港Lianyungang5221996年12月着工[1]([8]だと1997年)、1997年8月8日進水[1]、1999年2月就役[1]([8]だと同年6月)東海艦隊所属
3番艦三明Sanming5231997年6月着工[1]、1998年8月10日進水[1]([8]だと同年12月)、1999年10月就役[1]([8]だと同年12月23日)東海艦隊所属
4番艦莆田Putian5241997年12月着工[1]([8]だと同年年6月15日)、1998年12月進水[1]([8]だと1999年1月)、1999年11月就役[1]([8]だと同年12月15日)東海艦隊所属
5番艦宜昌Yichang5641997年12月着工[1]、1998年10月進水[1]、1999年12月就役[1]([8]だと就役は2000年1月)南海艦隊所属
6番艦玉林→三亜Yulin→Sanya5651998年5月着工[1]、1999年4月進水[1]、2000年7月31日就役[8]。2008年艦名を「三亜」に変更[8]。南海艦隊所属
7番艦懐化Huaihua5662000年5月着工[1]、2000年10月3日進水[1]、2002年7月就役[8]南海艦隊所属
8番艦襄樊Xiangfan5672001年3月着工[1]、2001年8月進水[1]、2002年5月就役[8]南海艦隊所属
9番艦綿陽Huangpu5282003年着工[1]、2004年5月23日進水[8]、2005年就役[8]北海艦隊所属
10番艦洛陽Luoyang5272003年着工[1]、2004年9月30日進水[8]、2005年就役[8]北海艦隊所属

▼手前は053H3型の#523「三明」。奥の2隻は1世代前の053H2G型フリゲイト

▼チャフを展開する#564「宜昌」

▼#567「襄樊」のYJ-83対艦ミサイル発射シーン

▼HQ-7対空ミサイルの人力による再装填(左)と発射シーン(右)


【参考資料】
[1]「JIANGWEI II(TYPE 053H3)CLASS(FFGHM)」『Jane's Fighting Ships 2006-2007』(Jane's Information Group)133頁
[2]世界の艦船(海人社)
[3]艦載兵器ハンドブック改訂第2版(海人社)
[4]戦場文集 第2巻 2006年6月専刊「碧海争鋒-中日両国駆護艦艇50年的発展対比與反思」(新民月報社)
[5]艦載武器 2005年12月号「従”江衛”級看中国海軍未来軽型護衛艦的発展」(王浩/中国船舶重工業集団公司)
[6]艦載武器 2007年5月号(No.93)「従「江湖」到「江凱」-中国海軍現代護衛艦研制的躍変」(衛天/中国船舶重工業集団公司)
[7]現代艦船2005年第2期A「“江衛”級技術特性分析」(沢元/現代艦船雑誌社・中国船舶重工業集団公司)
[8]軍武狂人夢「江衛級護衛艦」
[9]Chinese Defence Today「Type 053H3 (Jiangwei-II Class) Missile Frigate」
[10]防衛省公式サイト「中国海軍艦艇の動向について 平成25年2月5日」
同上「別添:ジャンウェイ教薀侫螢押璽函▲献礇鵐イ亀薀侫螢押璽函PDF:264KB)」

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