日本の周辺国が装備する兵器のデータベース


▼2009年9月6日、天安門広場前で撮影された09式装輪歩兵戦闘車(ZBL-09)。

▼同年10月1日に開催された建国60周年記念軍事パレードに登場した09式装輪歩兵戦闘車

▼鉄道輸送中の試製車両。左から一人用砲塔搭載の歩兵戦闘車型(のち輸出型装輪歩兵戦闘車「VN-1」に発展する。)、装輪突撃砲(フロントエンジン型)、自走122mm榴弾砲型。

▼09式装輪歩兵戦闘車の車体後部。

▼輸出型のVN-1装輪歩兵戦闘車の車体後部。09式には無いランプ・ドアがあり、細部もかなり異なっているのが分かる。


09式装輪歩兵戦闘(ZBL-09)性能緒元
重量21トン
全長8m
全幅3m
全高2.1m
エンジンBF6M1015FC型六気筒ターボチャージド水冷ディーゼル(455hp)
最高速度100km/h
浮航速度8km/h
航続距離1,000km
武装30mm機関砲2A72×1
 7.62mm機関砲×1
 HJ-73対戦車ミサイル発射機×2
 6連装発煙弾発射機×2
装甲均質圧延鋼装甲+セラミック付加装甲
乗員3+7名

【開発経緯】
中国軍では1990年代に入ると、従来の装軌式車両中心の装甲師団や機械化歩兵師団の旅団規模へのダウンサイジングを実施するともに、装輪車両を多く装備した機動性の高い軽機械化歩兵部隊の編制を開始した。これは、冷戦の終了により最大の仮想敵であったソ連地上軍が大幅に縮小され、北方からの脅威が軽減された事により重型師団の存在意義が低下した事が背景にある。冷戦終了後は、地域紛争、平和維持活動、非対称戦争など軍が対処に当たる任務は多様化することになる。さまざまな形態の脅威に速やかに対処するため、各国ではより小型で戦術・戦略的機動性の高い部隊を編制する様になった。中国の軽機械化歩兵部隊もその流れに沿ったものであると位置づける事が出来る[1]。

装軌式装甲車に比べて、空輸が容易で路上機動性に優れた装輪装甲車は、維持コストや調達費用が安価なこともあり上記部隊装備として注目を集めることになった。中にはアメリカ陸軍のストライカー旅団のように主要車両を全て装輪装甲車で編成する部隊まで登場するようになった。中国軍の軽機械化歩兵部隊はストライカー旅団ほど徹底したものでは無いが、1980年代に開発された90式/92式装輪装甲車(WZ-551/WZ-551A)と90/92式の各種派生型が配備されている。

WZ-551/551Aは機動性に優れ、整備も容易で、調達費用も安価であることからかなりの車両が配備されており、中国軍の主力装輪装甲車の地位を占めるに至った。WZ-551/551Aは6輪装甲車であるが、21世紀に入ると、各国では装輪装甲車の果たす役割の増大を受けて、より高い性能や多用途性を要求するようになった。そのため、従来は4輪、6輪、8輪式の各種サイズの装輪装甲車が存在していたのに対して、新世代の装輪装甲車の殆どはシャーシに余裕のある8輪車両となっていった。

中国軍では、軽機械化歩兵部隊の装輪装甲車として6×6式と8×8式を検討した結果、6×6式のWZ-551系を選択した経緯があったが、その後も8×8装輪装甲車の研究開発は継続していた[3]。1990年代に入ると、兵器工業主管部門では、2000年前後の中国軍に必要な装輪装甲車に関するスタディを行い、次世代の装輪装甲車は設計段階から各種派生型のベースとなることを前提として開発されるべきであるという報告を纏めた[7]。この構想では、開発される派生型として、対戦車自走砲型、122mm/155mm自走榴弾砲、25mm/35mm対空自走砲などが想定されていた[7]。1990年代中期に入ると、前述した通りWZ-551/551Aの配備が進み、同車をベースにした100mm装輪突撃砲やHJ-9ATM搭載型など各種派生型が実用化されるようになった。兵器工業主管部門では、WZ-551/551Aのファミリー化とその運用から得られたノウハウを元にして、次世代装輪装甲車のファミリー化では次の二点に留意して開発を行う必要があるとの認識に達した[7]。

(1)装輪装甲車のシャーシは各種装備を搭載しうる十分なスペースを用意する必要がある。
(2)大口径砲を搭載した際にプラットフォームとしての安定性を確保するため、シャーシの車高はできるだけ抑える必要がある。

この時期、次世代装輪装甲車ファミリーの共通シャーシの開発に関する研究が進められると同時に、歩兵戦闘車の装輪化に関する研究も行われていた。関係機関での検討の結果、この二つの事業は統合される事が決定され、まず各種装備を搭載する基礎となる装輪式シャーシを開発、そのファミリーの1つとして装輪式歩兵戦闘車を開発するという二段構えの開発を行う事が決定された[7]。

1990年代後期に入ると、世界各国で装輪装甲車の開発が盛んに行われるようになったが、中国では、各国での装輪装甲車開発の動向や運用実績の収集と検討を行い、次世代装輪装甲車開発の参考としている[7]。関係機関での検討の結果、次期装輪装甲車の共用シャーシは「ピラーニャIII」などの西側の8×8装輪装甲車に相当する性能を実現する事が目標とされ、さらに将来の技術革新を反映できるだけの設計上の余裕を持たせることも求められた。

次世代装輪装甲車は、各種のファミリー化を前提としており大量生産が確実視されていたため中国各地の防衛産業が有望な企画と見なして開発に関心を示したが、最終的には重慶鉄馬工業集団有限公司、内蒙古第一機械製造集団有限公司、済南中国重型汽車集団という3つの企業による競争試作の形式を取る事となった。

重慶鉄馬工業集団有限公司の前身は、WZ-551/551Aシリーズを開発した中国兵器工業256廠であり、同社は豊富な装輪装甲車の開発ノウハウを有していた。重慶鉄馬工業集団有限公司の設計案(以下「重慶案」と略す。)は、同社製のWZ-551をベースとしてシャーシを延長して8×8化するというものであった。開発では各コンポーネントのモジュール化が行われ、エンジン、動力系統、兵装、車体長などを各種の要求に応じて柔軟に変更する事が可能であった。多くの部品は既に実用化されて信頼性が保障されているWZ-551の物が流用され、開発コストの低減が意図されていた[7]。

重慶案の車体サイズは、全長7.8m、全幅3m、車体高1.5m(WZ-551より10cm低い)、車体重量24t。エンジンは車体前方右部に搭載され、操縦席は車体前方左部に配置、戦闘室は車体中央部に置かれ、車体後部にはハッチが配置される形式が採用された。搭載エンジンはBF6M1015FCターボチャージド水冷ディーゼル(455hp)で、変速装置はミッションタイプが採用された(全自動変速装置への換装も可能)。動力伝達系統は車体中心底部に配置されている。タイヤの空気圧調整装置が装備されており、装甲路面の状態に合わせて空気圧を調整する事が出来る。最高速度は100km/時。水上航行能力を有しており8km/時で航行が可能。車体は均質圧延鋼装甲で製作されており、車体前面の装甲厚は15mm、側後面は8mmとなっている。必要に応じてセラミック付加装甲の装着が可能で、その際の防御力は前面で距離1000mから発射された25mm徹甲弾に抗堪、側面は距離100mからの7.62mm徹甲弾に抗堪するとされた[7]。

内蒙古第一機械製造集団有限公司の前身は、主力戦車や北方「奔馳」大型トラックを生産してきた中国兵器工業617廠である。同社の設計案(以下「内蒙古案」とする)は、ソ連のBTR-60〜80シリーズにも似た比較的低車高の8×8装輪装甲車であった。中国は1980年代にルーマニアから、同国がBTR-70をベースに開発したTAB-77装輪装甲車を技術的参考として輸入しており、その影響も窺える。

内蒙古案も重慶案と同じく、設計にはモジュール化の概念が採用されており、ユーザーの要望に応じた様々な設計変更が可能[7]。内蒙古案では、4種類のシャーシが提案されていた。内容は以下の通り。
第1案車輪は6×6式、エンジンを車体前方に搭載。車体長6.9m、全幅2.85m、車体高1.36m。最高速度85km/時。
第2案6×6式、エンジンを車体後部に搭載。全長6.8m、全幅と車体高は第1案と同じ。最高速度85km/時。
第3案8×8式、エンジンを車体後方に搭載。全長7.64m、全幅3m、車体高1.46m。最高速度100km/時。
第4案8×8式、エンジンを車体前部に搭載。全長7.9m、全幅・車体高・最高速度は第3案と同じ。
全て水上航行能力を有しており、最高10km/時での航行が可能。

内蒙古案の特徴として、足回りの動力伝達系統にH型伝動機構を採用していることがあげられる。これは中国の装甲車としては余り例の無い機構である。この方式のメリットは、車体中心に動力系統がある装輪式装甲車に比べて車高を低くすることが可能であり、システムは複雑になるが動力部系統を小型化できるので車内容積を広く取ることが出来る利点もある。同様の動力伝達機構はイタリアのチェンタウロ装輪対戦車自走砲やフランスのVBCI装輪歩兵戦闘車などでも採用されている。中国では1990年代から研究が行われていた。中国で運用されているHQ-7近距離地対空ミサイル(紅旗7/FM-80/クロタール)のベース車体であるP4R 4×4装輪装甲車(フランス製、のち国産化。)がH式伝達機構を採用しており、この車両の動力伝達機構が「BK系列輪式底盤」開発に生かされたのではないかと推測される。車体の構造と防禦能力については重慶案と同じ。122mm榴弾砲を搭載したタイプの全備重量は23t。

エンジンを前方に置いた車両の詳細は明らかでは無い。車体後方にエンジンを配置したタイプの場合、車体前方には操縦手と車長席が左右に設けられており、各座席前方には視界を確保するため大型の防弾ガラスがはめ込まれている。防弾ガラスは7.62mm小銃弾に対する耐弾性を有しているが、危険度の高い状況では折畳み式の装甲板で覆うことが出来る。車両の乗降は、車体前部上方にある2つのハッチ、及び車体中央下部の両側面にあるハッチから行なう。動力部を後部に置いたため、歩兵の乗降に便利な後部ハッチは装備されていないが、動力部を後部に置くことで、兵装を安定性の高い車体中央に配置することが可能となり、砲の発射時の反動を吸収しやすくなる利点がある。

済南中国重型汽車集団は、元来防衛産業であった前二社とは異なり純然たる民間企業であった。同社は1990年代中期にオーストリアのシュタイアー社からの技術提供を受けて大型トラックの生産を行うようになり、このノウハウを生かして次世代装輪装甲車共用シャーシの競争試作への参入を行った。同社案(以下「済南案」とする。)の詳細は明らかではないが、「ピラーニャIII」や「チェンタウロ」といった外国の8×8装輪装甲車に似た形式の車両を構想していた。しかし、同社は装輪装甲車の生産に携った経験がなかったこともあり競争試作の早期の段階で脱落し、試作車の完成には至らずに終わった[7]。

1999年、重慶案と内蒙古案に基づくそれぞれの試作車両が完成した。重慶の試作車両は8×8式でエンジンを前方右側に配置したタイプ。内蒙古の試作車両は、6×6式でエンジンを車体後部に搭載した第2案と、8×8式でエンジンを車体後部に搭載した第3案に基づく2種類が製造された。これらの試作車両は、各メーカーでの試験を経て、2000年には中国兵器工業主管部門に引き渡されて各種試験に供される事となった。各種試験では、シャーシにさまざまな兵装を搭載して、その実用性の確認が行われた。確認されている搭載兵装は122mm榴弾砲、105mmライフル砲、100mm滑腔砲、120mm滑腔砲がある[7]。それぞれの車両については以下のリンク先を参照されたし。
重慶案+105mmライフル砲搭載型105mm装輪自走対戦車砲(WZ系列装輪装甲車派生型)
重慶案+100mm滑腔砲搭載型100mm装輪自走対戦車砲(WZ系列装輪装甲車派生型)
重慶案+122mm榴弾砲搭載型122mm装輪自走榴弾砲(中国)
内蒙古6×6+105mmライフル砲搭載型105mm装輪自走対戦車砲(BK-1970)
内蒙古6×6+122mm榴弾砲搭載型
内蒙古8×8+105mmライフル砲搭載型105mm装輪自走対戦車砲(BK-1990)
内蒙古案8×8+120mm滑腔砲搭載型120mm装輪自走対戦車砲(BK系列装輪装甲車派生型)
内蒙古8×8+122mm榴弾砲搭載型122mm装輪自走榴弾砲(BK系列装輪装甲車派生型)

▼重慶案に基づく試作車両の1つ、122mm装輪自走榴弾砲(WZ系列装輪装甲車派生型)

▼内蒙古案の試作車両の1つ、105mm装輪自走対戦車砲(BK-1990)


2002年にはこれらの兵装を搭載した試作車量の写真が公開され、中国の次世代装輪装甲車ファミリーとして話題を呼んた[7]。

中国兵器工業主管部門での評価試験では、H型伝達装置を採用したことで車高を低くする事に成功した内蒙古案への評価が高かった[7]。装軌式車両に比べてプラットフォームとしての安定性に劣る装輪車両の場合、大口径砲を搭載した際の車体の安定性が問題となる。出来るだけ安定性を高めるには車高が低い車両の方が有利であり、重慶案の車高1.5mに対して1.36m(6×6型)/1.46m(8×8型)の内蒙古案は優位に立つことになった。また、システムをコンパクトに出来るH型伝達装置の特徴から、重慶案に比べて車高が低いにも拘らず車内容積を多く確保できたという点でも内蒙古案は評価された。エンジンの配置については、前置式の重慶案、後部配置の内蒙古案とも兵器プラットフォームとしての性能はそれぞれ問題ないとの実験結果が出ている[7]。

総体として重慶案がWZ-551をベースとして既に定評のある既存の技術を多く使用しているのに対して、内蒙古案では新規技術の積極的な採用が図られているのが特徴であった[7]。中国兵器工業主管部門では最終的に、次世代装輪装甲車共用シャーシの開発メーカーとして内蒙古第一機械製造集団有限公司を選択した。なお、競争試作で脱落した重慶鉄馬工業集団有限公司は、設計案を元にして輸出用のWMZ-5516×6装輪装甲車を開発し、さらに海外市場向けの8×8装輪装甲車の研究も独自に行っている[7]。

次世代装輪装甲車共用シャーシの開発メーカーに選ばれた内蒙古第一機械製造集団有限公司に対して、兵器工業主管部門は、新たに開発される共用シャーシはエンジンを前方に配置して車体後部に乗降用ハッチを設ける形式に統一するとの方針を伝えた。これは、エンジン配置の異なる重慶案と内蒙古案の何れも兵器プラットフォームとしての問題がなかったことから、わざわざエンジン配置の異なる二種類の車両を整備するよりも1種類のシャーシにした方が生産性やコストなどで利点が大きいと考えたためと見られる。そのため、内蒙古第一機械製造集団有限公司は、試作車両とは異なるエンジン前方配置の車両を新たに設計する事となった。(なお、エンジンを後部に配置した内蒙古案の試作車両の技術は、近年登場したHQ-7短SAMの新型6×6シャーシに生かされているとの情報がある[7]。)

内蒙古第一機械製造集団有限公司では、上記の要求に沿った新たな設計案を提出した。しかし、この案は兵器工業主管部門を満足させるには至らなかった。特に問題になったのは、要求された搭載兵器の1つである155mm榴弾砲の搭載が実際には困難である事が明らかになった点であった。この件については、最終的に、発射時の反動を抑えた軽量型155mm榴弾砲の開発を待って、それを搭載するということで落ち着いた。

新たな設計案の車体サイズは、歩兵戦闘車型が全長8m、全幅3m、車体高1.65m、車体は均質圧延鋼装甲で構成され、防御力強化のため車体各部にセラミック付加装甲の装着が可能。榴弾砲や戦車砲を搭載する装輪共用シャーシは、全長と全幅は歩兵戦闘車型と共通であるが、プラットフォームとしての安定性を高めるため車体高は10cm低い1.55mとされた。また、軽量化のため歩兵戦闘車型よりも装甲厚が薄くされている。路上での最高速度は100km/時であり、航続距離は最大800km。何れの車両も水上航行能力を有しており、最高8km/時の速力で浮遊航行可能。

新設計案は兵器工業主管部門と軍の審査に合格し、試作車両の製造が許可された。2005年頃から各種装備を搭載した新型8×8装輪装甲車ファミリーの試作車両が路上試験を行っているのが目撃されるようになった。2006年には新型の6×6装輪装甲車式、8×8式装輪装甲車を開発しているとの情報が中国の軍事雑誌に掲載された[3]。この内、6輪装甲車については、8×8装輪装甲車の技術を生かした輸出向け車両であり、2006年にその存在が公開されたが、8×8装輪装甲車についてはしばらく公開されなかった。JDWでは8輪装甲車について、PF-2006という名称である可能性があると伝えていた[2]。

試作車両のうち、30mm機関砲を装備したGCTWN 1人用砲塔を搭載した歩兵戦闘車型については、一部の設計を変更した上で2008年に輸出向け装輪歩兵戦闘車「VN-1」としてその存在が公開された[5]。VN-1の開発と並行して中国軍向けの装輪歩兵戦闘車の開発も継続されていた。中国軍向けの装輪歩兵戦闘車では、海軍陸戦隊での運用が開始されていた05式水陸両用歩兵戦闘車(ZBD-05/ZBD-2000)の2人用砲塔(30mm機関砲搭載)をと同じものを搭載する事とされていた。中国軍向け装輪歩兵戦闘車と共用シャーシの量産型のプロトタイプは2006年末に完成した。その後、二年にわたる実証試験を経て、2009年初めに「09式8×8輪式歩兵戦車(ZBL-09)」(歩兵戦車とは歩兵戦闘車の中国語訳)として制式化された。制式化と同時に『雪豹』のニックネームも与えられている。従来、装輪装甲車は92式装輪装甲車(ZSL-92)のように「ZSL」という軍の制式名称コードが与えられていたが、09式ではそれがZBLに変更されている。ZSLのSは「送(輸送)」を表わしているが、ZBLのBは「歩戦(歩兵戦闘)」を意味しているとされ[7]、より攻撃的な任務に当たる事が想定されている。

【性能】
09式装輪歩兵戦闘車は、前述の通り開発当初からファミリー化を前提とした設計が施されており、歩兵戦闘車型以外にも122mm自走榴弾砲、指揮通信車、装甲回収車、戦車駆逐車、輸出向けVN-1歩兵戦闘車など各種の派生型の存在が確認されている。

09式のサイズは、全長8m、全幅3m、全高2.1m(砲塔含む)、全備重量は21t[7]。車体配置は、最前部右側が機関室、左側が操縦手席と車長席となっており、車体中央には二人用砲塔を設置、車体後部は兵員室とされている。車体前部は避弾経始を意識した楔形形状を採用している。車体後部には横開き式ハッチが設置されており、兵員の乗降や物資の搬入に使用する。輸出向けのVN-1では車体後部の降車用ランプ・ドアに横開式ハッチが設けられおり、必要に応じてハッチから降車するかランプ・ドアを下ろして降車するかを選択できるが、09式ではランプ・ドアは装備されていない。このほか車体上部にも開閉式ハッチが設けられており、乗降や小銃射撃に使用される。最近の西側の歩兵戦闘車では防御上の問題からガンポートは廃止される傾向にあるが、09式では兵員室両側面にそれぞれ1基、車体後部に1基のガンポート(と外部視認窓)が設けられており、中国軍では依然として乗車戦闘に有効性を見出していることが見て取れる。09式の乗員は、車長、砲手、操縦手の3名と乗車歩兵7名の計10名から構成される。搭乗歩兵の座席は対面式で、座席は地雷の爆発による衝撃を緩和するために車体上部から吊り下げる形式が採用されており、床面とは接合されていない。車内設計では人間工学にも配慮されており、搭乗歩兵の体力減耗を最小限に抑えることが意図されている。動力部と乗車部分は防音・断熱・防振隔壁で遮られている。車体内部は、防振・防燃・断熱効果を有する材質で覆われており、生存性と車内環境の向上に資している。このほか長期間の無停止行動のため、空調装置やトイレ等が設けられており搭乗員の体力維持に充分な配慮が施されている[2]。

エンジンは、BF6M1015FC六気筒ターボチャージド水冷ディーゼル(440〜455hp)を搭載。BF6M1015FCは独Deutz社が開発したエンジンを中国でライセンス生産したもの[12]。出力/重量比は21hp/t。変速装置はオートマチック式で前進9段後進1段。車輪の懸架方式は前4輪がマクファーソン・ストラット式サスペンションで、後方4輪が油気圧懸架式となっている。動力伝達機構はH型伝達機構を採用[7]。これは普通の自動車の様に車体中央のプロペラシャフトによって前後2本の車軸を駆動するのでなく、2本のプロペラシャフトを車体の左右からH型に伸ばして、左右のタイヤを個別に駆動する方式である。H型動力伝達機構は、構造が複雑になる問題はあるが、車内スペースの拡大と車高の低減には効果的であった。タイヤの空気圧は車内から調整が可能で、路上の状態に応じて最適化される。09式の路上最高速度は100km/時。前述の通り、水上航行能力が付与されており、車体後部に設置されたスクリューを使用して推進力を得る。

09式の車体は均質圧延鋼装甲で製造されており、車体正面は距離100mから発射される12.7mm徹甲弾に抗堪、車体側面は距離100mからの7.62mm徹甲弾に抗堪する[12]。必要に応じてセラミック付加装甲を装着する事が想定されており、脅威のレベルに応じて異なる防御力の付加装甲が用意されている。標準的なセラミック付加装甲を装着した場合の防御力は、車体正面は距離1000mからの25mm徹甲弾に抗堪、車体側面は距離100mからの12.7mm徹甲弾に抗堪するとされる[6][12]。

09式は、車体中央部に30mm機関砲を装備した二人用砲塔を搭載している。前述の通り、この砲塔はもともと海軍陸戦隊で運用されている05式水陸両用歩兵戦闘車(ZBD-05/ZBD-2000)に搭載されたものであった。砲塔の構造は車体と同じく、均質圧延鋼装甲で構成されその上にセラミック付加装甲が装着されている。砲塔正面は距離100mから発射された12.7mm徹甲焼夷弾に対する抗堪能力を有している[7]。砲塔右部には車長席が、左部には砲手席が用意されている。車長用ペリスコープには夜間暗視装置が内蔵されている。砲手用ペリスコープには、暗視装置に加えて光学/レーザー測遠装置が組み込まれており、搭載された簡易式射撃統制装置を利用することで命中精度の高い射撃が実現できる[7]。その主武装は2種併用給弾型の30mm機関砲で、同軸に7.62mm機関銃が装備されている。30mm徹甲弾を発射した場合の砲口初速は1000m/秒、発射速度は毎分300発。砲手は単射、3〜5発連射、5〜7発連射を選択できる。地上目標に対する最大有効射程は4,000m、空中目標には2,500mである[2]。この30mm機関砲はロシアのBMP-3歩兵戦闘車に採用されている30mm機関砲2A72を元にして開発された物で、VN-1歩兵戦闘車や新型空挺戦闘車(WZ-506/ZLC-2000)86式歩兵戦闘車(WZ-501/BMP-1)90式/92式装輪装甲車(WZ-551/WZ-551A)の改良型などでも採用されている。09式装輪歩兵戦闘車や05式水陸両用歩兵戦闘車の30mm機関砲は銃身を支える枠が付いているが、これは射撃時の銃身の動揺を抑えて命中精度を向上させるための装置と推測されている[8]。

砲塔の両側面にはHJ-73対戦車ミサイル搭載用のランチャーが各1基ずつ用意されている。HJ-73対戦車ミサイルはソ連の9M14Mマリュートカ(NATOコード:AT-3 サガー/Sagger)のコピーであるが、09式に搭載されているのはその発展型で、誘導方式が手動式指令照準線式から半自動指令照準線式に変更されている。NORINCOの発表したスペックによると最大射程3,000m、命中率90%を達成しているとのこと。NORINCOでは、最新のHJ-73はタンデム式HEAT弾頭を装着しているので、ERA(Explosive Reactive Armor:爆発反応装甲)をつけた800mm厚の装甲を撃ち抜く事が出来ると主張している[2]。

この他、30mm機関砲を挟んで6連装発煙弾発射機二基が装備される。砲塔上面には衛星通信用のアンテナが搭載されており、「北斗衛星位置測定システム」を利用して車両の現在位置を確認する事が可能。09式や輸出型のVN-1は、近年の流行であるネットワーク化を意識した設計が施されているのも特徴であり、部隊・車両間、ヘリコプターなどと情報を共有するデータリンクシステムを標準装備しているとされる[2]。

09式は、従来の中国の装輪装甲車とは次元の異なる戦闘能力を有しており、中国軍が望んだ装輪式歩兵戦闘車というのにふさわしい性能を実現した車両であると評価する事が出来る。

ただし、その性能は先進国の最新式の装輪歩兵戦闘車と比較すると、なお及ばない点も見られるとされる[1]。近年の装輪装甲車は、防御力の向上や搭載力の強化といった要求をうけて車体重量が20トン台の後半に達する車両も珍しくない。しかし、09式は水上航行性能が要求されたこともあって全備重量21tと比較的軽量で、車体規模もやや小型で、防禦性能や将来の発展性について先進国の車両と比べると遜色があるとされる[7]。また、榴弾砲や戦車砲を搭載する共用シャーシでは、水上航行性を維持するために装甲が薄くされており、防禦性能について歩兵戦闘車型以上の懸念が存在する[7]。水上航行性能については中国軍の要求した項目であるが、これによって車体重量の増加に一定の限界が生じると共に、付加装甲の重量や外形についても浮航性に問題のない範囲でしか装着が出来ないという問題が生じる事となった[7]。そのほか、射撃統制装置の能力、変速装置についても西側先進国との間にはかなりの技術格差が存在するとの指摘がなされている[7]。

とはいえ、09式は制式採用されたばかりの最新装備であり、今後部隊での運用で得られた経験も踏まえて上記の問題点の解消も進められるものと思われる。09式とその派生型は、軍だけでなく人民武装警察でも採用されるとの話もある[2]。

【派生型】
前述の通り、09式は開発当初からファミリー化を前提とした設計が施されており、既に各種の派生型が確認されている。
09式歩兵戦闘車型ZBL-09中国軍で運用される歩兵戦闘車型、30mm機関砲を装備した二人用砲塔を搭載。固有の乗員3名に加えて歩兵7名が搭乗。
10式装甲兵員輸送車型ZSL-1012.7mm重機関銃×1挺を搭載した一人用銃塔を備えた装甲兵員輸送車型。車体後部の天井が嵩上げされている。
09式122mm装輪自走榴弾砲PLL-09車体後部に122mm榴弾砲を装備した砲塔を搭載[10]。
装甲弾薬補給車型車内の砲弾ラックに122mm砲弾を搭載。車体後部ハッチは観音開き式に変更され車体後部には搬出作業用にクレーンが装備。PLL-09とセットで運用される。
装輪突撃砲(フロントエンジン型)105mmライフル砲クラスの戦車砲を搭載した火力支援車。異なった形状の砲塔を搭載した二つのタイプが確認されている。
11式105mm装輪装甲突撃車ZTL-11リアエンジン式のシャーシに105mmライフル砲を装備した砲塔を搭載した火力支援車型[9]。
09式装輪装甲指揮通信車ZZH-09車体後部の区画を上部に拡大、指揮通信任務に使用される[11]。
装甲偵察車(1)ZBL-09に偵察用レーダーなどの偵察用機材を搭載した車輌[9]。
装甲偵察車(2)ZBL-09の砲塔を撤去、車体前方の天井が嵩上げされている[9]。
装甲回収車型車体上部にクレーンを装備。武装は12.7mm機関銃×1基。シャーシの形状の異なる二種類の車両が確認されている
装甲架橋車型車体上部に折りたたみ式の橋体を搭載。
装甲工兵車型砲塔を撤去、車体前部にマインプラウを装備するなどの改修を施した車輌。
電子戦対応型車体上部に伸縮式の大型アンテナを装備。
通信能力強化型?車体後部の天井部を嵩上げしているが、その高さはコマンドポスト型よりも低い。車体中央部に大型ドームを搭載している。
VN-1装輪歩兵戦闘車NORINCOが販売を行っている輸出向け歩兵戦闘車型。GCTWM型1人用砲塔を搭載。固有の乗員3名に加えて歩兵7名を乗車。
07P式装輪歩兵戦闘車2009年2月にUAEで開催されたIDEX2009国際兵器展示会で初公開された輸出向け歩兵戦闘車型[6]。外観はVN-1歩兵戦闘車型と同じ。07P式の名称から解放軍系の企業「保利集団」が輸出を担当していると推測される。
VN-1A装甲兵員輸送車型車体後部天井を嵩上げしたシャーシに、12.7mm重機関銃×1を装備したオープントップ銃塔を搭載。乗員2名に加えて歩兵13名が搭乗[13]。
VN-1戦車駆逐車型VN-1の車体後部に105mmライフル砲を搭載した砲塔を搭載。戦闘重量24トン、乗員4名に加えて歩兵1名の乗車が可能[13]。
歩兵戦闘車型 25mm〜30mmクラスの機関砲を外装式に搭載した砲塔を装備した歩兵戦闘車型。情報が少なく詳細は不明。
新型6輪装輪装甲車 2006年にその存在が明らかにされた。09式の試作車両の技術を生かして開発された輸出向け装輪装甲車。

このほか、自走120mm迫撃砲型、自走155mm榴弾砲型なども開発されているとの情報がある。

【参考資料】
[1]人民解放軍-党と国家戦略を支える230万人の実力(竹田純一/ビジネス社/2008年)272-278頁
[2]軍事研究2008年11月号別冊-新兵器最前線シリーズ7 陸戦の新主役 ハイパー装輪装甲車「各国陸軍現用の最新タイプ装輪装甲車-中国の大形8輪装甲車VN-1」(古是三春/ジャパン・ミリタリー・レビュー/2008年11月1日発行)
[3]現代兵器2008年6月(総第354期)「猟豹出撃-従VN1看我国新型8×8輪式装甲車的発展」(李成軒・郭嘉楠/中国兵器工業集団公司)
[4]International Assessment and Strategy Cente「IDEX 2007 Showcases Chinas Productive Weapons Secto」(Richard Fisher, Jr. Research)
[5]Jane's Information Group 「Jane's Land Forces News - NORINCO markets new Chinese APC」(Christopher F Foss/2008年5月7日)
[6]Army Recognition「The new Chinese wheeled armoured personnel carrier Type 07P from Norinco」(IDEX 2009 Show News Daily 25 February 2009)
[7]「鉄甲飛騎踏燕来--我国新型8×8輪式歩兵戦車発展全記録」
[8]bigblue「蹈海軽騎 踏浪而行-漫話"国産AAAV"與高速両棲戦車技術的発展」『現代兵器』2008年12月号/総第360期(中国兵器工業集団公司)10-19頁。
[9]China Defense Blog「PLA's ZBL09 IFV (VN1 Export) 8x8 family」(2011年5月15日)
[10]中華網「換装速度真猛!09式装甲車大量列装解放軍」(2013年9月10日)
[11]Chinese Military Review「ZZH-09 Armoured 8X8 Wheeled Command and Communication Vehicle」(2013年9月)
[12]Military-Today「ZBL-09 Armored personnel carrier」
[13]清谷信一「着実に進む国産装備の開発 ヨルダンの特殊部隊見本市SOFEX 際立つ"中国の存在感"」(『軍事研究』2012年8月号/ジャパン・ミリタリー・レビュー)100〜107ページ

VN-1装輪歩兵戦闘車(07P式/PF-2006)【輸出用】
09式装輪歩兵戦闘車の派生型
新型6輪装甲車 【輸出用】
11式105mm装輪装甲突撃車(ZTL-11/11式水陸両用突撃戦闘車)
中国陸軍

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